脚本家の三谷さんが、一喜一憂しているとか。
◆(三谷幸喜のありふれた生活:792)視聴者反応に一喜一憂(→link)
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第八回までは否定的意見が倍くらいあったことで、凹んだ三谷氏。
しかし第九回の放映後はそれまでの十倍ほど意見が届き、しかもその九割が好評意見でした。
好評意見の多くはメールによる若年層からのものだったとか。応援したいなら、届けよう、ということですね。【ここ】から送信できます。
とはいえ、視聴率は低下気味でこんな批判も出てきます。
何度も書いておりますが、私は時代考証の三氏がオーケーを出しているものに、突っ込む気はまったくございません。
こちらを見てもわかるように、今年はむしろガチです。
◆大河ドラマ史上初の肩書き!?「戦国軍事考証」担当が語る 『真田丸』ココだけの話(→link)
家康は、好きな層もいることですし。
◆骨太からキュートまで 内野聖陽が「真田丸」の“バカ殿”で新境地(→link)
視聴率はともかく、観光面では好調とか。
◆真田丸大河ドラマ館の入場者「66666人」達成 2カ月足らずで「花燃ゆ」の年間入館者超え!(→link)
低視聴率にあえぎ続けた前作「花燃ゆ」のドラマ館(山口県防府市)の年間入場者数は6万1544人にとどまった。1月17日に開館した「真田丸」のドラマ館は2カ月足らずでそれをあっさり超えた。
ええと、これについて書くと屍に鞭打つようで気が引けるのですが……。
『花燃ゆ』で思い出したので、昨年ふれた銅像問題をちょっと調べてみました。
◆NHK大河ドラマ:「花燃ゆ」銅像寄付、不足分800万円は税金 公金投入は計1300万円に 前橋市(→link)
◆「花燃ゆ」銅像 寄付金の目標届かず… 市が1000万円支出へ(→link)
◆東京新聞:「花燃ゆ」にちなんだ銅像の制作 寄付目標に届かず(→link)
……結構洒落にならないことになっているようですね。屍といえど、土にかえり次の種を育てることはできます。昨年は犠牲になったと、折に触れて思い出しましょうね。
さて本編です。
【TOP画像】
『真田丸 完全版ブルーレイ全4巻セット』(→amazon)
今週もブチ切れ室賀さん
今週は室賀正武がブチ切れるところからスタート。
「おまえは徳川と北条にナメられてんだよ! 領土全部取られたじゃねーか! 勝手に分けられてもう信じらんない! ふざけるなーーー!」
そう昌幸を罵り、走り去る室賀さん。今週は「黙れ小童」はおあずけのようです。
徳川家にとどまっている真田信尹は、約束が守られていないと抗議。
しかし家康は「雑魚はほっとけ」とやる気なし。
本多正信は、「雑魚は雑魚でも猛毒があるから、呼び寄せた方がいいですよ」とアドバイス。
やはり策士は策に敏感ということでしょうか。さて、昌幸はここでどう出るのか?
根っからのギャンブラーの昌幸はこれにノリノリ。信幸と信繁を名代として派遣します。
信幸は最初からフルスロットルで、北条と和睦するなんて信じられないですねえ、これからどうするんですか、と釘を刺します。
ここで信幸は上杉方の虚空蔵山城(こくぞうさんじょう)に対抗して、その正面にある海士淵(あまがふち)に城を作るから協力して欲しいと持ちかけます。なかなか図々しいですね。
この城がのちに上田城となります。
上田城をよりにもよって徳川の協力で作ったというのが、のちにパンチとなって効いてくるんですねえ。
とりあえずここは、信繁が示した城の図面に家康も納得します。家康は城の普請にゴーサインを出すのですが、それと引き替えに沼田領を渡せと迫ります。
実は北条方が、織田方から沼田城を追い払ったのだから、こちらに引き渡せと家康に迫っていたのです。
後にこじれにこじれる沼田領問題となります。
この家康のオファーを、信幸は断固として拒否。上野領を一気に失うわけにはいかないのです。
ここでのきりっとした兄上、実に格好よいです。「じゃがではござらん!」という決め台詞も最高です。
しかしこの態度に本多忠勝が激怒し、切り捨ててくれるわと信幸に迫ります。
ぎりぎりのところで、信繁が止めに入ったあ!
信幸、クールな顔をしているようで「やべえ、俺今ちびりかけたわ……」という動揺が顔に出ている気がします。
だって相手はあの忠勝ですよ。そりゃ怖いわ。
真田信幸" width="370" height="320" />
やはり信幸は疲れて、交渉が終わるとへろへろになって倒れてしまいます。
きりっとした演技も、脱力演技も、流石です。まだ実年齢は高校生くらいですからね。
信繁と信尹は、上田城はいつか徳川と戦うための城になると見通しを語り、信幸を激励。
信幸は家康の隣にいるあの男(忠勝)マジ怖い、ああいうの苦手……と言います。
その後の展開、つまりあの男が未来の信幸の舅であると、ここで有働アナがナレで語ります。兄上の胃壁がやっぱり心配です。
家康が休みながら今後の策を検討していると、阿茶局が人質の中にふてぶてしい老女=昌幸母=とりがいると明かします。
これは使えると思いついた家康、早速とりに面会に行きます。
とりはあくまでマイペースで、薬草摘みをしてきたようです。家康を前にしても平然としています。
交渉後の宴会で、家康はとりを三人に引き合わせます。
信繁には笑顔なのに信幸には「ああ?」と言うとりのふてぶてしさに、やっぱりいつものばばさまだ〜〜と孫兄弟は大喜び。
信尹はとりの肩を揉み、母にサービス。このマッサージする信尹叔父さん、本当に人がよさそうで、あの春日謀殺をした人とは見えないんですよね。そこがかえって怖かったりします。
家康はとりを返すから沼田の件をよろしくね、と念押し。そりゃまあ、ただで人質はかえって来ませんよね。
真田の郷に戻った兄弟は、父に首尾を報告。流石の昌幸も沼田返還を承諾し、城に向かいます。ところが沼田城代の矢沢頼綱(昌幸の叔父)は激怒し断ります。
「この城は勝頼公から預かったんだぞ、ファッキュー! 帰せというなら俺を殺してからにしなーッ!」
そう交渉にきた信幸を脅す頼綱。ジ、ジジイーッ!
人質はかえってきたのに、これではどうするのかと焦る昌幸たちです。
かえってきたとりは、真田の女たちを前に結束を固めようとミーティング。
とりはこの非常時に女に何ができるか考えましょう、と提案するのですが、薫はさりげなく「私は人質になりたくない」アピールするし、こうは相変わらずゲホゲホしています。
さらに薫は「信繁に嫁をとって人質にしたらどうか」とさりげなく提案。そこで空気を読まないことに定評があるきり。
「人質要員として信繁の嫁取るとかどうよ、って私思うけどぉ〜」
と、視聴者の声を代弁します。この子、やっぱり鋭い。それとも、まだ自分が信繁の嫁になるかもとワンチャン狙ってる?
沼田が戻らないことに家康は焦りますが、正信は北条が攻めるから問題ないとアドバイス。正信の読み通り、北条氏政は沼田攻めを決行します。
沼田は北条の関東制覇のため大事な城です。
北条の使者が沼田に向かいますが、なんと頼綱は「うっせーバーカ!」と槍で突き殺します。ジ、ジジイ……どんだけ血の気が多いんだ!
ちなみに古今東西、使者や交渉担当者を殺すのは禁じ手です。
ルール無用のように見える戦国時代でも、使者を殺すのは禁忌中の禁忌です。
使者を殺してしまうと、話が悪い方向へこじれることが多いのです。使者を殺すというのは、不退転の決意を示します。
案の定激怒した北条勢は沼田を責めるのですが、七十近い頼綱はノリノリで防ぎます。もうやだこの一族……。
あ、そういえば氏政の心情はお菓子の食べ方でわかります。
落ち着いている時は丁寧な食べ方ですが、イライラしているときはつかみとって口にガッと放り込んでボリボリ噛みます。
昌幸は上田城を建設中。ここで高梨内記と碁を打っていますが、碁盤をひっくり返します。
アルファ碁にでもこれで勝ちそうだな、昌幸。
昌幸が囲碁で負けそうになると、やけになって盤面をひっくり返し、そのため周囲から囲碁の相手にしたくないと思われていたのは史実だったとか。
昌幸は頼綱の息子・三十郎に父を連れ帰るよう指令。
信繁には、上杉を頼るしかないから、頭を使って何とかしてこい、と言い出します。あの、上杉を騙くらかしたのって、ついこの間の八回目でしたよね。もうやだ、この一族。
これが信幸ならどん引きするところですが、信繁は策大好きの変態的なところがあるので、なぜかうれしそうです。
出立前に堀田家で梅と語り合う信繁は、梅から「やや子ができちゃったみたい」と告げられます。
おおっ、そうなのか! 先週帰りが遅いと思ったら、やけにニヤニヤしていると思ったら、そうかそうか。梅も身分差を考えたら、既成事実を作るのが策ではあります。
うーん、でもこれって……そりゃきりも饅頭ブン投げるわな。
愛染明王の怒りの炎に火をつけろ
上杉家は新発田の乱を鎮圧できず、さらに佐々成政とも一触即発という状況。ここにどのツラさげてか信繁がやって来ます。
直江兼続は不快感をバリバリに見せて、
「どのツラさげてきた? おまえが裏切ったのを忘れたと思ったのか?」
と言います。
ですよねー。ここで信繁が信尹の息子であると嘘をついていたこともバレ、ますます兼続激怒。許せぬ、斬り捨てましょう、と提案します。
しかし景勝は「逆に興味がわいてきた」と言い出します。景勝さん、いい人すぎ。兼続の胃壁も、辛いと思います……。
ここで信繁、
「虚空蔵山城と沼田城で八百長の戦しない? 上杉が攻めて、真田が撤退すると。それで、上杉が沼田から北条めがけて攻めて来るって嘘を流すんだ。どう? 面白いでしょ!」
と厚かましくも提案。
兼続はもうこいつ本当に死ねよと言いたげですが、景勝は引き込まれています。
ここでレアものの景勝の笑顔も登場。話に乗ります。
ちなみにこの間、信繁は上杉の兵士から刃を突きつけられています。見ていて本当に胃痛がしてきそうです。
景勝は、信繁の勇気に免じて乗ることにした、と言うんですよね。どこまでいい人なんだ。景勝の人のよさに兼続はイライラしています。
顔は冷静なんですけど、兼続はイライラすると声のトーンが高くなって、早口になるんですね。声だけで心情を示していて、とてもよいと思います。
それにしても信幸が忠勝に切り捨てるぞと迫られたのに、信繁はホワイトエンジェル枠の景勝相手でラッキーではあるんですよね。
人質奪還失敗の時も、相手が滝川一益だから助かったようなものですし。
沼田ではアイアンジジイ頼綱が粘っていました。とはいえ、だんだんと追い詰められているようです。
三十郎はまもなく信繁が敵を追い払いますと告げるのでした。
はい、ここで今日の八百長開始。
真田と上杉は対峙し、戦の作法に従って矢をつがえ、鉄砲を構えます。
法螺貝を鳴らし、太鼓を叩き、「えいえいお〜」と声をあげる敵と味方。
こういうところがちゃんとしっかり考証しているから本作はぬかりないんですよね。
一通り戦うとデモンストレーションをしたところで、信繁が兼続の前にやってきて八百長を確認。上杉勢が勝ちどきをあげます。
ここで兼続は「猿芝居じゃ……」と吐き捨てるのでした。
真田が大敗したことは各地に広まります。
徳川、北条は息を吹き返した上杉対策を迫られます。北条の陣では、一人の足軽が「このままでは真田を倒した勢いにのって、上杉がこっちに来るぞ!」と言い出します。
その足軽の顔をよく見ると、佐助です。本当にいい仕事をするプロですね。
北条はプラン変更を迫られます。
またしても真田、うまく騙しました。ここで撤退する北条勢が映るのですが、戦いそのものはカットされがちでも、軍装がどうなっているかとか、わかるのがいいですね。
家康は西の羽柴秀吉のことが気になり始めています。
北条から沼田の件を持ちかけられても、もう知らんと吐き捨てます。正信は真田を潰す、昌幸暗殺計画を提案。その実行役に選ばれるのは果たして?
そんなことはつゆしらず、上杉から戻った信繁はデキ婚を提案。
身分の差を越え、プロポーズします。梅ももちろん感激し、承諾するのでした。
正信が暗殺実行役に選んだのは何と、室賀正武! このままでは「おのれ小童……!」になってしまうのか!?
今週のMVP:矢沢頼綱
アイアンジジイとか失礼なことを書いてしまいましたが、あまりに元気で血の気が多すぎてそう呼んでしまいました。
使者を瞬時で突き殺す場面は黒い笑いがありましたね。
ちなみに史実だともっと北条方の使者を殺していたらしいです。
昌幸&信繁の強さが有名だけど、それ以外も強い。本当に真田一族は敵に回したくありません。
僅差で次点は直江兼続。景勝の決断にイライラしながら従う様子が伝わって来ました。
彼はまだまだ見せ所がありそうなので、今回は次点で。
今回の兼続はLOVEじゃなくて、紛れもない、愛染明王にかわって俺が殺す系の直江だ、という感じです。
このインタビューは必読ですね。特にここ。
姿勢と視線は気を付けています。
例えば、信繁と景勝が話しているシーンでは、話している信繁を見ながらも、お館さま(景勝)がまた難題を引き受けないか心配なので、そちらに意識を向けている…という芝居をしました。
わかる……わかります。そういう感じが出ています!
インタビューを読むとしっかり役作りをしているのが伝わって来ます。「直江状」の音読を聞いてみたいですね。
総評
天正壬午の乱は先週まででしたが、第十四回までは徳川・北条・上杉間を泳ぎ回る展開になるようです。
今週の「上田城を作るスポンサーに徳川を引き込んだ件」は、最近研究で判明した成果です。
このあとの展開は、徳川が作った城に真田が居座って、二度も徳川の邪魔をするわけで、本当にそれは腹が立つ展開だなと思ってしまいます。
覚悟の足りないスタッフならば最新学説は無視して、ひたすら徳川が悪いとするはずです。そこを敢えて真田の汚さを表現するのは、本当にチャレンジ精神を感じます。
頼綱の使者殺しもやるなあ、と思いましたね。汚い、流石真田汚い。徳川も北条も真田の被害者ですし、上杉も騙されている感が出ています。
それにしても、弱小勢力ながら、びしっと物言う真田には独特の爽快感があります。
本作は世代間で評価に断絶がありますが、それもこの真田の行動に感情移入できるかどうかではないかと思うのです。
どうしても上の世代は、上司の目で真田を見てしまうのではないでしょうか。そうなると言うことを聞かずに自分本位な彼らが腹立たしくて仕方ありません。
一方、若年世代には、大きな力に逆らう真田が爽快感を伴って見えるのかもしれません。
サビ残はしない、休日出勤はしない、有給休暇は絶対にすべて使い切る、賞与が足りなければ抗議、昇給されなければ抗議。
あまりに理不尽な扱いを受けたら労働基準局に駆け込む。
条件が悪ければ転職、しかも自分の考えた技術は持ち出す!
こう書くと上司は眉をしかめるかもしれませんが、部下の自分がそうできるのならば最高だと思えませんか?
武士の価値といえば主君への忠義が第一にクローズアップされますが、本作の真田家のように自身と家族の財産や幸福を追求するのだって、武士である前に人として当たり前のことであるはずです。
俺が俺らしく生きて何が悪いと高らかに叫ぶ、これはある意味戦国版『ありのままで』ではないでしょうか。
そうそう、今週「おおっ!」と思ったのが真田と上杉の八百長合戦です。
八百長ですから血は一滴も流れないわけですが、法螺貝や太鼓を鳴らして臨場感を出していました。
軍事考証がある成果が出ていると思います。小競り合いでこれですから、第一次上田合戦が楽しみでなりません。
みんなで歌おうコーナー
OPが「だまされた〜」と聞こえるという話を読みました。
これはもしかして、『風林火山』のコッペパーン以来のソングができるかと思い、実験してみました。利用はご自由に。
「真田丸」のテーマ
作詞:武者震之助
歌:真田昌幸被害者の会のみなさん
騙された 今日も騙された
許せない おのれ昌幸め
騙された またも騙された
許すまじ おのれ安房守
だ〜ま〜され〜た〜 だま〜さ〜れた〜
嗚呼 だま〜された〜 嗚呼だまされた〜 嗚呼ま〜た だまされた
騙された 今日も騙された
許せない おのれ昌幸め
だ〜ま〜され〜た〜 だま〜さ〜れた〜
嗚呼 だま〜された〜 嗚呼だまされた〜 嗚呼ま〜た だまさ〜〜れ〜〜た〜〜
嗚呼〜 う〜そつきめ〜 この野郎 嘘つきめ〜
ひどい奴 ゆるせない また〜だま〜され〜〜た〜〜
謀略 策略 ま〜た〜も〜騙し討ち
騙しう〜ち〜騙し討ち〜 またも騙し討ち〜〜
騙された〜 また騙された〜
騙された〜 また騙されたぁぁ〜
ひどい奴許せない
ほんとにもう許せない〜
ひどい奴 まさに外道な奴
ずるい奴 本当にずるい奴うう〜〜〜
だ〜〜〜ま〜〜〜さ〜〜れた〜〜 だまされ〜〜た〜〜だまされた〜〜
だ〜〜〜ま〜〜さ〜〜〜れた〜〜〜〜
騙された 今日も騙された
許せない おのれ昌幸め
許すまじ 許すまじ おのれ安房守
それではまた来週!
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霜月けい・絵
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真田丸感想