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【信長の死因】
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こんがり焼けたらファイティングポーズ
いきなりですが言葉の定義からご説明させてください。
焼死とは
「生体が火災などに巻き込まれ、高温、有毒ガス、酸素欠乏などの複合作用によって死に至ること」
を指します。
従って信長が切腹で絶命した後に死んで、火災で焼けてもそれは焼死とは言えません。
刑事ドラマでも殺されてから火災で死んだのか、火災自体で死んだのか――というネタを目にしたことがあるかと思います。
ちなみに、こんがり焼けた死体は「拳闘家姿位(pugilistic attitude)」といってボクサーのファイティングポーズになります。熱によって腕や足を曲げる筋肉が縮んで発生する現象のことです。
ただ、これだけでは残念ながら死因の特定にまでは至りません。
信長さんが火災時に生きていた証拠(生活反応)が判明すれば一発なのですが、これはどこで判断するのか。
参考までに現代医学の観点から例を挙げてみましょう。
「気道粘膜が熱変性しているかどうか」
「気管や食道内に煤があるかどうか」
「血中の一酸化ヘモグロビン(一酸化炭素とくっついたヘモグロビン)はどうなってるか」
「一酸化ヘモグロビンによって血液や臓器はピンク色の変化があるか」
少し専門的な話でごめんなさい。
仁が江戸時代ではなく戦国時代にタイムスリップしていれば、あるいはその死因は判明したかもしれませんね。
こうした前提を踏まえたうえで、信長の死因に迫ってみます。
死因は火傷と一酸化炭素中毒が9割
仮に信長が切腹で絶命した場合、「死んでから焼けた」で話が終わります。
では、切腹でうまく死ねなかった場合、あるいは切腹せずに死んだ場合はどうなるのでしょうか?
ここからが『焼死』の話になります。
火災による死因の統計をみると、火傷によるものが45%程度、一酸化炭素中毒・窒息によるものも同程度で、この2つが9割を占めます。
『一酸化炭素中毒』は恐ろしい症状です。
火災現場でモノが燃えると様々な有毒ガスが発生しますが、その中で死亡原因の1位を占めるのが一酸化炭素なのです。
なぜ、そんなに悪名高いのか?
一酸化炭素はどんなモノが燃えても発生し、特に酸欠で不完全燃焼をした場合に多く発生するからです。
しかも、赤血球中のヘモグロビンと結合しやすい(酸素の約250倍)上に、ヘモグロビンが酸素を放出しにくするため、凄まじい勢いで全身が酸欠に陥ります。
真っ先にやられるのが脳ですね。
さらに厄介なことに一酸化炭素は無臭でして。中毒初期(頭痛や耳鳴り)ではそれが原因と気付かれにくく、締め切った室内でジワジワと中毒になる場合、「気がつくと身体が動かない、または意識が薄れて昏睡」となります。
ある程度高濃度(1%以上)になるとわずか1〜3分で昏睡状態となるのですから、名前の割にエグいやつとご理解いただけるでしょうか。
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