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【鳥居元忠】
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4万の大軍相手に徹底抗戦!
慶長5年(1600年)7月18日、西軍がついに伏見城にさしかかりました。
三成のほかに宇喜多秀家や小早川秀秋、島津義弘など、一説に4万もの大軍。
万に一つの勝ち目もありませんが、三成としても、できるだけ兵の消耗は避けたいところですので、最初は降伏勧告の使者を出します。
しかし、とうに覚悟を決めていた鳥居元忠は、使者に対して力強く主張。
「我らがこの城を守っているのは主命によるもの。主君の命なくして明け渡すことなどできるはずもない!」
そして使者を斬って遺体を送り返し、徹底抗戦の態度を崩しませんでした。
伏見城に残った家臣や兵たちも、元忠に応えて奮戦をし、その後なんと13日間も粘るのですが、やはり多勢に無勢。
徐々に押され、最後は城内でもかなりの激戦になりました。
もちろん元忠も自ら戦っています。
そして8月1日、鈴木重朝(雑賀孫市)と一騎討ちを演じて討死にしたと言います(※元忠が自害して重朝が介錯したとも)。
享年62、まさに「城を枕」にした最期でした。
元忠の首は敗軍の将として京橋口に晒され、後に親交のあった商人が引き取り、葬られています。
一部始終を聞いた家康は、その忠義を称え「皆の記憶に残そう」と考えました。
そこで、最後の激戦の地となった伏見城の畳を江戸城に運ばせ、伏見櫓の天井に備え付けさせたといいます。
江戸城はたびたび火災に見舞われているため、伏見櫓も改修されていますが、この血染めの畳は幕末まであったようです。
そして明治維新で江戸城が新政府に明け渡された後、この畳は鳥居家に引き渡されました。
子孫の人々は、元忠を祭神とする精忠神社の境内に「畳塚」を築いて埋納したといいます。
また、伏見城の床板は供養のために養源院(京都市)や興聖寺(宇治市)などの天井に用いられ、現在も「血天井」(養源院→link)として知られています。
こちらをご覧になり、元忠の名や伏見城の戦いのことを知った方も多いのではないでしょうか。
最後に、武士の心意気がうかがえる、元忠の息子たちの話を二つ見たいと思います。
元忠公の鎧をお返ししたい
まずは嫡子の鳥居忠政。
彼は伏見城の戦いの後、父を討ち取った鈴木重朝から連絡を受けます。
鈴木重朝は紀伊の雑賀党当主でした。
”雑賀孫市”の名で知られる鈴木重秀の息子とされていますが、養子説や他人説もあり、血筋は不明です。
なかなかこざっぱりとした人物だったらしく、元忠所用の鎧「糸素縣縅二枚胴具足」を後日、息子である忠政に返そうと打診してきたのです。
忠政は深く感謝した後、逆にこの具足を重朝に譲ったとか。
糸素縣縅二枚胴具足はその後も長く鈴木家に伝えられ、2003年に鈴木家から大阪城天守閣に寄贈されています。
日経電子版のニュース記事が詳しいので、興味のある方はこちらを読んでみるのも一興かと。
◆敵将への敬意伝え400年 徳川の忠臣の鎧、大阪城に展示(時の回廊)(→link)
大阪城天守閣での公開は不定期とのことですが、大河ドラマ『どうする家康』が始まれば長く展示されるかもしれませんね。
一応、大阪城天守閣のサイトも記載しておきますので、時間があるときにチェックしてみてください。
◆大阪城天守閣(→link)
さらに次男の鳥居成次については、次のような話が残されています。
「三成はお前の父の仇なのだから、憤りをぶつけてもかまわない」
と言ったそうです。
しかし、成次は三成の衣服を整えるなどしてもてなし、恨みを見せず、家康にはこう伝えたと言います。
「確かに三成は父の敵です。しかし父は元から家康様のために命を捧げていたのですから、三成のせいではなく、私的な恨みはありません」
二つとも清々しい逸話で、父の薫陶がうかがえますね。
凄惨な逸話でありながら、血天井を見学に行く人々が絶えないのは、元忠の忠義がこの清々しさに通じるからでしょうか。
2023年の大河ドラマで鳥居元忠がどう描かれるか。
今から楽しみですね。
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長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
煎本増夫『徳川家康家臣団の辞典』(→amazon)
笠谷和比古『関ヶ原合戦と大坂の陣』(→amazon)
戦国合戦史研究会『戦国合戦大事典 京都府・兵庫県・岡山県』(→amazon)