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映画『ブレイド・マスター』&『修羅:黒衣の反逆』レビュー 地獄の公務員よ!

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映画『ブレイド・マスター』&『修羅:黒衣の反逆』レビュー
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こんなマイナーなゲス話を入れるだけでもすごい

で、本作の難点ですが。

難易度が無茶苦茶高い!

酷い時代だと書きましたが、明末というのは本当に憂鬱でして……。

王朝末期、しかも宦官の腐敗で無茶苦茶。北から女真族が迫るわ、朝廷は腐敗しきっているわ。

マイナーかつ爽快感が全く期待できない時代なので、映像化作品は言うまでもなく、関連書籍すら豊富とは言えません。

誰が明末に興味あるんだよ!
そういうツッコミはしておきたい。この時点で、はっきり言って厳しいし、難しいのです。

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『2』は、メインプロットに天啓帝の船遊び事件が組み込まれています。

こんなマイナーでよろしくない話を……よくぞ盛り込んだと感動すらしました。

どういう話かというと、天啓帝と宦官・魏忠賢が舟遊びをしたら、皇帝の方が小さい船でひっくり返ったというもの。

宦官の方が皇帝より権勢がある――そういうどうしようもない話として、記録に残っております。

こんなゲスな話をわざわざ取り上げる時点で、半端ないものがある。ある意味、センス抜群だとは思えるんですよね。

 


銃撃戦と倭刀術だけでも見る価値はある!

本作は考証面でもかなり気合が入っています。

銃が武器として流通しており、部隊単位で射撃しておりますが、当時のことを考えれば当たり前です。日本ならば江戸時代初期ですので、銃はあって当然なのです。

ただ、武侠だと火器は避ける傾向がありますので、この時点で面白い!

もうひとつ、ご注目いただきたい武器があります。

日本刀です。

中国では「倭刀」と呼ばれておりました。

『2』にはこの「倭刀術」、「戚家刀法」を使う女侠・丁白纓(てい・はくえい/演:辛芷蕾 シン・ジーレイ)が出てくる!

実はここがものすごく見て欲しいところでして。「倭刀術」とは、日本の剣術です。

どうして日本刀を使えるのか?

これが興味深い。

倭寇に苦しんだ明朝。それというのも中国では刀剣は廃れており長柄の武器が主流です。

三国志』の関羽と張飛もそうですし、『水滸伝』でもそう。

けれども、船のような狭い場所での接近戦となると、日本刀に勝てないのです。

そこで戚継光が、日本刀で戦う戦闘術を導入しました。

これが「戚家刀法」なのです。影流の影響が強いとされております。

戚家刀法の使い手というのは、実は武侠ものでもそこまで出てこない。いわばレア。

「戚家刀法」を中国映画で見られるだけでも、強力にプッシュしたいのです。

『2』は前日譚なので、前作を見ていなくても大丈夫です。これだけでも、ぜひ見ていただきたい。

倭刀術は日本の剣術のようで、そうではない。アレンジされていて、素晴らしい。本当にいいんですよ。アクションが全体的に本作はハイレベルかつ斬新です。

武器特性やリーチを考慮していて、アクションはリアリティを追求。ワイヤーアクションでバンバン飛ばすものから進化していて、バッチリ見どころがあります。

銃器あり、集団戦闘あり、倭刀術あり。

倭刀術の使い手が来日して、柳生一族と戦ってくれないかなあ。そう妄想できるほど、おもしろい!!

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むしろゲス時代劇先進性があると思える

そんなわけで、個人的には全力で勧めたいのですけれども……。

設定が暗いし、難易度高いし、ハードルがありすぎて辛いのは否めない。

時代設定が明末、主人公が錦衣衛という時点で厳しいなぁと尻込みしながら、脳内で一人問答してしまう。

「錦衣衛が主人公で、史実重視で、ひたすら暗い。いいよね!」

「そうかなあ?」

「明末の腐りきった時代感をよく描いている!」

「それ、アナタ以外、誰が求めている要素なん?」

「いやあ、この倭刀術がいいよねえ!」

「いや、だから、誰が求めているの?」

「暗い、陰謀まみれ。そういう話があってもいいと思うよね!」

「…………」

実際に感想漁りをすると、チャン・チェンかっこいい、萌え〜……あたりに行くとか、あるいは地味、暗い、わけがわからないで終わるとか。

最近のキラキラした中国時代劇恋愛ものにハマった人には薦められないし、武侠ものの爽快感を求める人にも勧められない。

割と八方塞がりの作品だな。そうしみじみと思えてくる。

ただ、ここまで時代考証が精密で、アクション面でも生々しく魅力的であるとなると、可能性はとても感じられる作品だとは思うのです。

見て欲しい、おもしろい――そう言いたいけれど、強くは勧められない。

そんなドツボのようなお話。

ちょっとでもこのレビューを読んでピンときたら、ぜひご覧いただければと思います。

「ふざけやがって、最悪の気分になった!」と言われたら、「それはそうですね」と返すしかないのですが……。

ただ、時代の先を見据えているという可能性はあります。

 

『成化十四年』の放送に合わせて……

2020年、鳴り物入りのテレビドラマ時代劇として『成化十四年』が放送されます。

イケメン二人が主人公で、ダブル主人公の一人は錦衣衛。イケメンが逮捕、拷問をするのかと思うと胸が熱く……なるかどうかはさておき。

だいたい成化帝年間という時点で、ろくでもない予感がビシビシとしてきます。

ただね……。

そういうゲスな時代劇ブームがこれから来るのかもしれません。

誰の需要なんだよ!

というのは自分で突っ込みたいところですが、そんなゲス時代劇ブームが来た時、本作を見ていればこう笑顔になれます。

「明が舞台で錦衣衛だって? そりゃもうゲスで酷いよね」

その前振りのためにも、ゲスで、勉強になって、そしてアクションが最高な本作をぜひ見ていただきたいところです。

もちろん単にゲスなだけではなく、権力の腐敗とそれに巻き込まれる人間の悲哀も学べます。

映画としては自信を持って勧められる。されど、見た後の精神状態については責任を負えない。

観るも観ないも自己責任――どうかご自身お決めください。

どちらもAmazonプライムで鑑賞できます。

『ブレイド・マスター』無料(→link
『修羅:黒衣の反逆』500円(→link


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文:武者震之助

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