黒木に頭を下げ、人痘接種の再開を訴える11代将軍・徳川家斉。
男と女が同じ力を持てる世をめざしたい。男が女を守る。そんな世に変えたい。男が種付けしか脳のない木偶の坊である時代を変えたい。これでは何もできぬ、妻や子を守ることすらできぬ――。
本心から、そう訴えるように見えますが、黒木はどうしても許せない。
青沼を冤罪で打首にした。私利私欲の権力闘争に走った女どもを打首にしてやらねば気が済まない!
そうしなければ話を進められないと突っぱねます。
男女逆転の極みがここにある
男女逆転した世界観が特徴である本作。
その極みが見えてきました。
女は妊娠出産しか能がないとか、産む機械だとか、そういうことを言われているけれど、人々の意識を変えてゆきたい――実際そんな思いが世の中を動かしてきました。
立場を逆にすることで、男女間の権利についてシビアに考えることができるでしょう。
トボトボと家斉は城へ戻り、きらびやかな鈴の廊下を歩いてゆく。
オットセイ将軍が歩いているのに、そこには何ら喜びはない。
男は性欲さえ満たされていればいい。下手をすれば男性自身すらそう思い込まされていかねない偏見を打破する場面です。
権力があろうが、美女が大勢いようが、それが一体何だというのか。
人生を賭けた結果、酒池肉林を得るのならばまだしも、はなから用意されているとなると味気ない。
家斉は世を変えることの重要性を知ったのでしょう。
そんな家斉の後ろには、あの志賀がいます。
と、そこへ御台の茂姫がやってきて、般若の形相で立ち塞がると「志賀がなぜそこにいるのか!」と叫びます。
志賀は治済の寵愛を受け、今は大奥総取締・滝沢となっているそうです。武女の後継者ですね。
目をぎらつかせ、尋常な様子ではない御台が志賀に掴み掛かり、殴る。
蓮佛美沙子さんは、まるで凄絶な美人画のようだ。

茂姫は、カステラで敦之助を殺されたと怒りに燃えています。
思えばこの薩摩出身御台の男児が夭折したことは、歴史的な転換点といえました。
もしも彼が次期将軍ならば、歴史が大きく変わったことでしょう。御台の無念の背後には、悔しがる薩摩藩もあるのです。
家斉が何とかして御台を止めるものの、地獄そのものの状態……思いあう妻が発狂してしまった。
どうすればいい?
この家斉はただの好色な人物ではありません。心が通じる妻を愛していました。妻のために彼はどうするのか?
治済に取り入る志賀改め滝沢
悲劇を引き起こした治済は、ゴシップを面白がる感覚で、嫁発狂の知らせを聞いています。
毒を盛るなんて人の所業ではない……とかなんとか平気でのたまうのですから、恐ろしくぶっ壊れてますね。
そんな治済に「あんな女は自害すればいい!」と訴えるのは滝沢。御台が側室の子を間引いていたと吹聴しています。
治済はそなただけが頼りだと滝沢に言い、菓子の毒味を任せる。
御台の逆恨みを恐れているのだとか。
滝沢は真剣な顔になり、毒味をつとめます。
治済の狙いはわかる。こやつは滝沢は頭の軽いどうでもいい女だと思っているからこそ、寵愛したのでしょう。チョロいやつだとすっかり油断し切っています。
茂姫は、無惨にも狂い、夫の前で叫んでいる。御台は御台で、滝沢が殺したのだと叫んでいます。
家斉はそんな妻を狂気ごと抱きしめるしかありません。
松方のもとに会いに来た田嶋屋とは
家斉は妻を救うため、黒木に頼み込み、人痘を実現したいと言います。
妻が後押ししてくれていた人痘。
これを為せば、彼女も正気を取り戻してくれる……と、家斉はなかなかロマンチストですね。
天下とか世を変えるとか、そんな目的が一人への愛に変わっているとも言える。
けれどもそれを告げられ、松方は治済の耳に入るからと止めます。
苛立ち、ならば治済の耳に入らぬ策を考えよと怒る家斉。
「それでも大奥最高の地位にあった男か!」
そう言われた瞬間、松方の目にもカッと火がついたようにも思えます。さあ、どうなるのか?
松方のもとに、田嶋屋という薬種問屋が薬の売り込みに来たと告げられます。
その相手は、なんと大奥にいた僖助でした。
ずいぶん立派になりましたね。僖助は、松方に書状を託します。
松方を演じる前田公輝さんの所作が実に素晴らしいですね。
書状を一息にサッとふって広げるところが素敵です。彼の有能さが所作一つで伝わってくる。
書状の字も見事で、質感もいい。黒木の書状を書く所作もいい。時代ものは、やはりこうでなくては!
また動き出す人痘接種
松方を通じて家斉に届いた書状は、黒木から。
黒木が家斉の頼みを断わると、その後、伊兵衛が訴えてきたことが書状に書かれていました。
伊兵衛は言います。
青沼は死の間際、生き延びた者たちが人痘を再開するように託していたじゃねえか!
そう言われて動揺する黒木に、るいと青史郎が話しかけてきます。
類が及ぶことを恐れているなら離縁すればいい。
なんだか素っ気ない態度ですが、彼女は「人別だけの話」と断りを入れています。今でいうなら戸籍上の話で、言い方は悪いですが偽装離婚ですね。
息子の青史郎もあっけらかんとこう言う。
「うん、どうせいなかったし」
息子に指摘されて動揺する黒木。そなたのために出かけていたのに通じていないって!
そんな悲哀を見せると、息子はあっけらかんと「みんなまとめて助けてあげて欲しい」と言い切ります。
妻も子も友も、私より賢く頼もしい。愚かなのは自分だけだった。そう悟った黒木です。
伊兵衛っぽくいえば、真面目すぎんだよ。
でもこういう真面目な人間だからこそ、安心できますよね。
黒木からの書状を受け取り、歓喜の家斉に対し、「田嶋屋は待たせてある」と松方が伝えます。
将軍・家斉と面会し、僖助が託された黒木宛の書状。
黒木のものより紙質も字体もフォーマルです。江戸後期に武家の間で流行っていた唐様(からよう・中国風)ですかね。
書状の中身は、天文方に翻訳局を作り、黒木を雇用するというものでした。
表向きは蘭書翻訳であり、実際は人痘接種を提供する施設にする――これなら公金で運営できます。
天文方というのもポイントですね。
千代田の城から離れた浅草で、今も天文台跡がありますね。
翻訳局は新設だから、黒木が集めてよく、しかも江戸城へ登城する必要がない。
素晴らしい案です!
しかし、それがまだ許可を得ていないのだとか……。
家斉はおずおずと幕閣に切り出します。
近頃、異国船がうろついているし、国の事情を知った方がよいから、オランダ語に堪能な学者を幕府が抱え、調べさせたい。
これには老中も納得。
天文方配属ならば出費もそこまでかからず、喜んだ家斉は、治済に申し上げて欲しいと老中たちに話しかけます。
「男のわしから言うと、角がたつゆえ! の!」
くだらない話といえばそうだけど、これぞ男女逆転の極みかもしれない。男女が逆だと今でもよくある現象でしょう。
ここで少々歴史解説でも。
田沼時代がフランス革命の頃だとして、その後の時代はどうなったか?
【ナポレオン戦争】に突入します。
結果、オランダはフランス支配下に置かれ、そうなるとフランスの敵国であるイギリスは、
「敵国オランダの商館が日本にあるらしいな」
と、いきなり襲いかかります。
【フェートン号事件】です。
当時の海軍は、宣戦布告もなしに敵対国を襲撃してもお咎めなしですから、そういう無茶振りが通ってしまう。
一方でロシアは、ナポレオン戦争で不凍港どころではなくなり日本から目を離します。
西で戦争があると東への攻勢が弱まる。
けれども西が落ち着くと東に目を向ける。
ロシアのこうした動きは、第二次世界大戦末期にもありましたね。
ともかく家斉時代にはもう、幕府も知恵の回る学者たちもわかっています。
このままではまずい。何らかの抜本的対策を講じないままでは……。
と、家斉の政策を聞く治済の姿勢はどうか?
脇息に左肘を乗せ、右手でお菓子を食べるという実にだらけきった姿です。
和装の際、肘を見せるのはマナー違反です。それなのにチラッと肘まで見えるこの姿勢は相当だらしない。何かやる気が失せているようです。
かくして、治済の目も潜り抜けることができました。
化物を出し抜き、骨抜きにする
家斉は化物である母を出し抜き、松方の前で小躍りして喜んでいます。
そうか、小躍りってこういうことか!
そんな納得感のあるはしゃぎぶりですが、松方はまだまだ油断ならぬ目をしていますね。
浅草に移った黒木は、玄白の弟子を集め、治療所は伊兵衛に任せることにしました。
史実の玄白も、自分のあと、蘭学がこうも盛んになったと記していました。彼の弟子の中では、大槻玄沢が有名です。
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大槻玄沢が発展させた蘭学&医学とその生涯~師匠の玄白や良沢はどう見ていた?
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家斉はさらに隠密を放ちます。
目的は赤面の種探しですね。
蛇足ながら、“隠密”については先日大変興味深いニュースが配信されていましたので、よろしければご覧ください。
◆『私のご先祖様では?』江戸初期に薩摩で暗躍した「密偵=スパイ」の正体が判明 代々一族に伝わる話と一致する文書の内容とは(→link)
人痘接種再開のため家斉が取り掛かった様々な行動が、治済の耳に入ってしまいます。
そして家斉と松方のもとへ、やってくる治済。
「隠し事はないか?」と問い詰められ、家斉がうろたえてしまいます。
大奥を追われた者と会って何をしているのか!
母親から脅され、さらに怖がる家斉ですが、松方は冷静に受け答えします。
治済公用の“奥”をこっそり用意していたのだ、と。
家斉は相変わらず愕然とするばかりで、テキパキと話を進めていく松方。
化け物の治済も、少し心が揺らいでいるようで、家斉も話を合わせて、下劣な孝行息子の演技をします。
「くだらぬ」と言う治済はちょっと甘い声になっています。
よっしゃ、ガードが緩んでいるぞ!
極めつけは、松方が選りすぐったイケメンです。扉を開けたら、その先にズラリ!
用意が良いですねぇ~。さしもの治済も目が泳いでしまう。そこで「大奥を追われた者と会っていたのも、美男探しだ」と松方が畳み掛ける。
「まったく、まことくだらぬ」
そう笑い飛ばしつつ、朱唇をゆがめる治済。
こういう紅を塗った美女が唇を歪めるフォルムで、江戸の人々は美貌や表情の変化を見定めました。
まさにその朱唇です。喜んでいますね。

歌川国芳の美人画/wikipediaより引用
そして、音楽が奏でられ、イケメンが踊り狂う江戸のホストクラブが展開!
なんかイケメンダンスの振り付けが、ギリギリの下品さですね~。
しょうもない!
くだらない!
笑い転げる治済、どうした?
骨抜きとはまさにこのこと。化物退治はこうでなければ。まずは油断させることが肝要ですね。
このあと家斉が、男まで用意していた松方を褒めます。
松方は大奥最高位の男の知恵だと誇らしげ。家斉に言われて気にしていたんですね。
家斉はリスクを犯す松方を気にかけると、松方も治済にはいいようにされてきて、男の人生はこんなものかと諦めていたとか。
それが家斉の言葉に、不覚にも胸が打たれたとか。
男が強くなれば、女ばかりがのさばる世も終わるのではないか。そう希望を胸に灯していたのでした。
家斉の誠意はちゃんと伝わっていたのです。
しかし茂姫の病状は止む気配はなく、今では「家斉のことを息子の敦之助だと思う」ようになっていました。
夫を亡き息子として見ている妻。
実の母よりもあたたかい母となった妻と接する夫。
歪んでいるけど、ある意味幸せなのかもしれません。
広まる熊痘
そんな最中、ついに黒木のもとへ、“種”が届いたと伊兵衛が走ってきます。
隠密曰く、熊痘はすぐに治るため、患者のかさぶたを集めてきたとのこと。
効くかどうかは、わからない。
そこで黒木の息子・青史郎で試すこととなりました。果たしてどうなるのか……。
家斉と松方のもとへ、赤面発生の知らせが届きました。
いつもの赤面か?と思わず聞き返してしまう家斉。
人の道にはもとるけれども、我らには追い風だと言う松方。
確かに流行を喜んではいけない。それでも人痘普及という目標のためにはプラスとなりますね。
家斉は、あらたな案を松方に提案します。その策とは?
江戸の街では読売師が【熊痘の効能】を説いています。僖助も関わった宣伝策のようです。
読売師は、黒木が青史郎で試したことまでペラペラと語り、かくして浅草には熊痘接種を求める行列ができました。
作戦成功ですね。
赤面流行の中、熊痘を受けた男子が走り回るようになったと幕閣が家斉に報告します。
小道具班の努力も感じます。熊痘の解説画は元絵がないものを、当時の画風でそれらしく描く必要があります。
諸大名も、わが藩で取り入れたいと訴えているとか。
それでも家斉は治済のことを気にしていますが、なんでも治済は政治に興味を失ったそうです。
家斉は幕閣に熊痘接種を好きにせよと返し、満面の笑みを見せます。
御台との愛は取り戻せるのか
さて治済は、化物らしい嗜虐心を満たすお遊びをしていました。
毒の盃を美男に飲ませるロシアンルーレットです。
当たりを飲んで悶絶する男を見て、はしゃぎ、小判を投げつける治済。すっかり目つきがおかしくなっています。
さすがに美食も美男も飽きてきたと呟くと、この一瞬のために用意された美食が映ります。ああ、これは確かに美味しそうだ。
そのころ、家斉は最愛の茂姫に人痘成功のことを報告していました。
聞いているのか、いないのか? 彼女の目は、相変わらずボーッとしている。
「まぁあ! では、そなたももう赤面で亡くなることはないのですか?」
理解したのか、喜ぶ茂姫。
これでもう我が子が赤面で亡くなることはなく、いつまでも共にいられると手を伸ばす。
「父上はなんとご立派なのでしょう。これでどれほどの母親が救われることか」
そう家斉を褒め称える茂姫の言葉。
「御台」
頬に手を伸ばした茂姫に、愛おしさがほとばしる家斉。
しかし彼女の心はそこにはないのでした。
化物退治、決着へ
治済のもとへ、孫の徳川家慶がやってきて「熊痘を受けたい」と言い出しました。
家斉の所業をようやく理解した治済は、頭を回転させ始めます。
すべてが噛み合い、仕置きをすると微笑みつつ誓う家斉。
この化物にとって、己を崇めぬものは死あるのみ――そう誓う様を滝沢が見つめています。
治済は、家斉と茂姫を呼び出しました。そして菓子を食らうよう勧めます。
腹が空いていないと家斉が断ると、治済は自分の前にある菓子を口に運び、熊痘の顛末について、ひとつひとつ問い詰めてゆく。
毒の入った菓子を勧めつつ、自分は平然と食べる。
なんと禍々しい朱唇なのか。
治済はしらを切ろうとする家斉に、大奥を追われた罪人を雇っていいと思っているのかと問い詰めます。
口籠る家斉に、政には手を出すなと言っていたと泣きだす治済。
「そなたは上様。そなたを裁ける者など誰もおらぬ。これではもう母が、母がそなたを手にかけるしかのうなってしまった。せめてそなたの好きな甘いもので送ってやるゆえな。召し上がりゃ」
そう言って、毒入り菓子を勧める治済。
もう、こういう化物は徹底して責任転嫁をするものなので、自分に我が子を殺させる相手が悪い、自分は可哀想という思考回路に酔っ払っています。
それでいて、どこか楽しい。誰も殺せぬ上様を殺せるなんて、まさに天下人の振る舞いだもの。
「そもそも彼らは罪人ではございませぬし、彼らを憎んでおる民もおりませぬ! 母上が私に手をかけるというのなら!」
強い口調で言い返し、刀に手をかける家斉。
治済はなおも面白がっています。
「ほ、ほほ。なんと母を斬ると。この母を斬ると! 斬れると!」
煽りまくる治済。
その隣で咳き込む茂姫。どうやら菓子を口にしてしまった様子です。
茂姫を気遣う家斉に、治済は勝ち誇った口調でこう言います。
「かわいそうにのぅ。御台はそなたと添うたがために狂った。かわいそうに。そんな御台を一人で逝かせる気か? ほれほれどうする、死んでしまうぞ?」
今度は茂姫を利用して、我が子もとい、己を崇めぬ不届者を始末しようとする治済。おもしろくて仕方ないようで、ニタニタ微笑んでいますね。
と、そのとき突如、化物のほうが崩れ落ち、血反吐を吐きました。
いったい何が起きたのか?
家斉が人を呼ぼうとすると、茂姫がガバッと立ち直ります。そして誰も呼んではならないと止めるのです。
滝沢も駆けつけ、吐き気を催す薬を持ってしまったと詫びています。
一体この二人は何をしたのか?
呆然とするだけの家斉に、化物退治の種明かしが始まります。
全ては狂言だったのです。
敦之助の死のあと、茂姫は悟りました。カステラの送り主は志賀(滝沢)ではない。それ以外の誰かが毒を盛った。
敬之助の急死を思い出し、母である宇多に確かめます。敬之助は治済に喉を踏まれていた子です。彼にも御台名義で毒入り羊羹が送られていました。
志賀の産んだ総姫も、御台名義のちまきを食べて死んだ。そのうえ、治済は御台が嫉妬していることを吹き込み、志賀名義でカステラを送ったと。
真相にたどりついた茂姫と志賀。
そして化物成敗を胸に誓った。
茂姫は狂ったふりをした。志賀は治済に取り入り、少しづつ毒を盛った。
けれども治済には、なかなか効かない。
ただし、まったく効いていないとも思えません。もしも絶好調だったら、治済だけに途中で化物退治策や熊痘に気づいたかもしれない。
毒のせいで普段より判断力が低下していたことは考えられます。
ともかく化物がいよいよ家斉の行動に気付き、御台もろとも殺そうとした。そこで、もはやこれまでと、志賀は強い毒を盛ったのです。
志賀はものすごい目で、血反吐を吐く治済を睨みつけます。
しかし自身もまた血を吐く。なんせ毒味役も兼ねていますので、無事では済まなかったのです。
覚悟を決めていた、これで姫と会えると微笑み、死にゆく志賀。
茂姫は、その死を泣きながら看取るしかありません。
無害そうで愛くるしい佐津川愛美さん。美人画そのものの表情となる蓮佛美沙子さん。見事な二人でした。
そしてこの間、血反吐まみれで畳に突っ伏している仲間由紀恵さんの凄絶さよ。
治済の横で、茂姫は家斉の母を弑した咎めを受けると頭を下げています。
家斉はそんな妻に理解を示しながら、それでも助けを呼ぶと言う。
化物だろうと、母は母。まだ息がある。死なせるわけにはいかないのだと。
茂姫の絶望し切った顔よ……普遍的な嫁と姑の対立がそこにはあります。
「あなた様はそういうお方ですものね」
治済は一命は取り留めたものの、以降は、体も口も利かぬ身となりました。
大奥は茂姫によって光が戻ったのです。
源内よ、青沼よ、田沼よ! 見ているか?
黒木良順の編み出した熊痘は、公儀じきじきの施作となり、全国に拡大。
外国の脅威が迫る中、これは急務だということで、財政圧迫は度外視してでも進めると宣言されます。
家斉は強く、世を変えた将軍になりました。
しかし、男女が同数になるということは、バランスが大きく変わるということでもあります。
公儀に認められ、伊兵衛は感無量。岡本圭人さんが気のいい顔を見せます。
黒木は源内の言葉を思い出します。
人痘は公議が認めるものとなり、黒木はその頭となったのだろうと。
「やっぱ天才だな!」
伊兵衛がそうまとめながら、天才源内のことを思い、涙する仲間たち。
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田沼の時代を盛り上げた平賀源内!杉田玄白に非常の才と称された“山師”の生涯とは
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源内。
青沼。
田沼。
彼らの思いは無駄にならず、実りました。
阿部正弘の忠誠
全国から赤面疱瘡はなくなり、世は変わります。
青史郎も父の跡を継ぎました。
男が稼ぎ、女が家内のことをこなす。そんな世となり、家斉は男子の家督相続を奨励します。
とはいえ、そんな役目を受け入れられぬ男女もいる。
阿部正寧がその典型です。
弱気な彼は、徳川に仕える当主としての地位は継ぎたくないと、妹に訴える。
種をつけ、妻に尽くせと教えられてきたのにもう無理だ!
そう訴える兄に、妹の阿部正弘は「女の家督はもう許されない」と訴えるのですが……しっかり者の彼女は、むしろ重責を負いたいようにも思える。
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幕末日本の先を見据えていた阿部正弘の生涯|その死後に幕府の崩壊が始まった?
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登城せぬと怯える兄に代わり、正弘は家斉のもとへ。
病だと告げる正弘に、家斉は事情を察した言葉をかけます。
男の家督相続を進めるということは、才のある女が世に出られないのか……と。
正弘は、赤面により世に出られぬ男もいただろうと、思いやりを見せる。
自己アピールよりも徳を見せるような賢さが彼女にはあるんですね。
けれども、兄は赤面時代のほうが生きやすかったという正弘。
そして阿部は神君家康公の身代わりとなった家だと、由来を語ります。忠誠心を示し、家督相続を認めてもらえぬか?と家斉に訴えるのでした。
家斉の子と、孫は…
そのころ家斉の孫・祥子が、家康の身代わりになった阿部正勝の逸話を読んでいました。
襖が開き、そこへ父の徳川家慶が入ってきます。
人払いは済ませたといい、逃げ出す娘の口をふさぐ家慶。
そして畳に押し倒し、鬼畜そのものの振る舞いに及びます。
「そなただけじゃぞ、祥子」
そう去っていく父と、死んだような目で宙を見つめる娘。
おそるべき親子がまだ出てきました。
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12代将軍・徳川家慶の知られざる生涯~無気力政治が後の幕府崩壊に繋がった?
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圧巻の演技と毒殺合戦
医療編の前半は、源内が歩き回り、遊女の子である青沼が大活躍。
田沼意次が引き上げていました。
そうした開明的な明るさは消え、陰惨な毒殺合戦が展開されています。
歴史に残る毒殺の記録はまことなのか?
というと毒味役もいるし、「そうそう死なせられるものではないのではないか」と本郷和人先生のご著書にも書かれていましたが、フィクションならば大いに“あり”です。
このプロットは実に複雑で、一度見ただけではわかりにくいかもしれません。
しかし伏線は巧妙に張り巡らされ、前回の段階で茂姫は総姫がちまきを食べたと聞かされ、「ちまき?」と怪しんでいました。
武女の毒殺という要素もあり、スムーズに流れてゆくようにできています。
そして圧倒の演技合戦でした。
仲間由紀恵さんは『ちむどんどん』の優しい母親役あっての起用だとか。
同作でこれまた演技が光っていた佐津川愛美さんが志賀を、前田公輝さんが松方を熱演していましたね。
演技する方、見抜く方、すべてが噛み合った高度なドラマが展開されてゆきます。
◆「大奥」“サイコパス”治済に仲間由紀恵を起用した理由 底知れぬ闇を段階を経て表現(→link)
そんな毒殺合戦の中、背景にちらりと出てきただけの対外関係も幕末編では出てきます。
この作品は原作から、最新研究に基づく素晴らしい考証がなされているんですね。
歴史総合を学ぶ高校生にも十分勧められる素晴らしい幕末が描かれるでしょう。
期待しかありません!
地獄のような連鎖は続く
徳川家斉はずっと母・治済のもとで圧迫されて生きてきました。
その家斉は権勢を振るうようになり、我が子・家慶になかなか実権を譲りません。
我が子を押し倒す家慶は何事か?と困惑しますよね。
何もできずに鬱屈した欲求を、己の美しい娘にぶつけている醜態かと思えてきます。
そして男性性の毒も体現しています。
子どもがどんどん生まれていく過程で幕府財政が圧迫されてゆくことが一段階目。
それでも家斉は根が優しく、茂姫とも愛し合っている。だからこそ当人は暴走しなかった。
家慶時代となると我が子ですら男性の性欲で苦しめるという帰結を見せてきます。
そしてキャストが発表された徳川慶喜。
今回の黒木の怒りを思い出してください。
人の命や尊厳なんて気にかけずに、パワーゲームを楽しむ連中を彼は罵倒していました。
そんな治済の一橋家を継ぐ慶喜は、この人間をガチャ扱いする最悪の所業をかまします。
『青天を衝け』の慶喜は記憶から洗い流してください。
あれは演じる役者からイメージを膨らませた、当て書きだと明かされていました。
それは歴史劇ではやってはいけないパターンだ。あんなにイイ人として解釈された慶喜像は、歴史理解を下げるから有害でしかない。
たとえばこのニュースの場面は、実は慶喜が「大失敗をやっちまった」話。繰り返しますが、あれは忘れてください。
◆青天を衝け:草なぎ剛“慶喜”覚醒!? 久光ら「天下の大愚物」とバッサリ! 視聴者も「快なり!」(→link)
このさき、人の心がかけらもない、何もかもスマホゲーで遊ぶ感覚でやらかす、そんな慶喜にイラつきましょう。
なんでこんな酷いことが続くのか?と疲弊しているかもしれませんが、慶喜は最低の将軍像を更新します。
しかも空虚そのもののやらかしなので、どうしようもない。
最終回まで期待して見て参りましょう。
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ドラマ『大奥』/公式サイト(→link)







