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【ドラマ大奥医療編 感想レビュー第15回】
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御台との愛は取り戻せるのか
さて治済は、化物らしい嗜虐心を満たすお遊びをしていました。
毒の盃を美男に飲ませるロシアンルーレットです。
当たりを飲んで悶絶する男を見て、はしゃぎ、小判を投げつける治済。すっかり目つきがおかしくなっています。
さすがに美食も美男も飽きてきたと呟くと、この一瞬のために用意された美食が映ります。ああ、これは確かに美味しそうだ。
そのころ、家斉は最愛の茂姫に人痘成功のことを報告していました。
聞いているのか、いないのか? 彼女の目は、相変わらずボーッとしている。
「まぁあ! では、そなたももう赤面で亡くなることはないのですか?」
理解したのか、喜ぶ茂姫。
これでもう我が子が赤面で亡くなることはなく、いつまでも共にいられると手を伸ばす。
「父上はなんとご立派なのでしょう。これでどれほどの母親が救われることか」
そう家斉を褒め称える茂姫の言葉。
「御台」
頬に手を伸ばした茂姫に、愛おしさがほとばしる家斉。
しかし彼女の心はそこにはないのでした。
化物退治、決着へ
治済のもとへ、孫の徳川家慶がやってきて「熊痘を受けたい」と言い出しました。
家斉の所業をようやく理解した治済は、頭を回転させ始めます。
すべてが噛み合い、仕置きをすると微笑みつつ誓う家斉。
この化物にとって、己を崇めぬものは死あるのみ――そう誓う様を滝沢が見つめています。
治済は、家斉と茂姫を呼び出しました。そして菓子を食らうよう勧めます。
腹が空いていないと家斉が断ると、治済は自分の前にある菓子を口に運び、熊痘の顛末について、ひとつひとつ問い詰めてゆく。
毒の入った菓子を勧めつつ、自分は平然と食べる。
なんと禍々しい朱唇なのか。
治済はしらを切ろうとする家斉に、大奥を追われた罪人を雇っていいと思っているのかと問い詰めます。
口籠る家斉に、政には手を出すなと言っていたと泣きだす治済。
「そなたは上様。そなたを裁ける者など誰もおらぬ。これではもう母が、母がそなたを手にかけるしかのうなってしまった。せめてそなたの好きな甘いもので送ってやるゆえな。召し上がりゃ」
そう言って、毒入り菓子を勧める治済。
もう、こういう化物は徹底して責任転嫁をするものなので、自分に我が子を殺させる相手が悪い、自分は可哀想という思考回路に酔っ払っています。
それでいて、どこか楽しい。誰も殺せぬ上様を殺せるなんて、まさに天下人の振る舞いだもの。
「そもそも彼らは罪人ではございませぬし、彼らを憎んでおる民もおりませぬ! 母上が私に手をかけるというのなら!」
強い口調で言い返し、刀に手をかける家斉。
治済はなおも面白がっています。
「ほ、ほほ。なんと母を斬ると。この母を斬ると! 斬れると!」
煽りまくる治済。
その隣で咳き込む茂姫。どうやら菓子を口にしてしまった様子です。
茂姫を気遣う家斉に、治済は勝ち誇った口調でこう言います。
「かわいそうにのぅ。御台はそなたと添うたがために狂った。かわいそうに。そんな御台を一人で逝かせる気か? ほれほれどうする、死んでしまうぞ?」
今度は茂姫を利用して、我が子もとい、己を崇めぬ不届者を始末しようとする治済。おもしろくて仕方ないようで、ニタニタ微笑んでいますね。
と、そのとき突如、化物のほうが崩れ落ち、血反吐を吐きました。
いったい何が起きたのか?
家斉が人を呼ぼうとすると、茂姫がガバッと立ち直ります。そして誰も呼んではならないと止めるのです。
滝沢も駆けつけ、吐き気を催す薬を持ってしまったと詫びています。
一体この二人は何をしたのか?
呆然とするだけの家斉に、化物退治の種明かしが始まります。
全ては狂言だったのです。
敦之助の死のあと、茂姫は悟りました。カステラの送り主は志賀(滝沢)ではない。それ以外の誰かが毒を盛った。
敬之助の急死を思い出し、母である宇多に確かめます。敬之助は治済に喉を踏まれていた子です。彼にも御台名義で毒入り羊羹が送られていました。
志賀の産んだ総姫も、御台名義のちまきを食べて死んだ。そのうえ、治済は御台が嫉妬していることを吹き込み、志賀名義でカステラを送ったと。
真相にたどりついた茂姫と志賀。
そして化物成敗を胸に誓った。
茂姫は狂ったふりをした。志賀は治済に取り入り、少しづつ毒を盛った。
けれども治済には、なかなか効かない。
ただし、まったく効いていないとも思えません。もしも絶好調だったら、治済だけに途中で化物退治策や熊痘に気づいたかもしれない。
毒のせいで普段より判断力が低下していたことは考えられます。
ともかく化物がいよいよ家斉の行動に気付き、御台もろとも殺そうとした。そこで、もはやこれまでと、志賀は強い毒を盛ったのです。
志賀はものすごい目で、血反吐を吐く治済を睨みつけます。
しかし自身もまた血を吐く。なんせ毒味役も兼ねていますので、無事では済まなかったのです。
覚悟を決めていた、これで姫と会えると微笑み、死にゆく志賀。
茂姫は、その死を泣きながら看取るしかありません。
無害そうで愛くるしい佐津川愛美さん。美人画そのものの表情となる蓮佛美沙子さん。見事な二人でした。
そしてこの間、血反吐まみれで畳に突っ伏している仲間由紀恵さんの凄絶さよ。
治済の横で、茂姫は家斉の母を弑した咎めを受けると頭を下げています。
家斉はそんな妻に理解を示しながら、それでも助けを呼ぶと言う。
化物だろうと、母は母。まだ息がある。死なせるわけにはいかないのだと。
茂姫の絶望し切った顔よ……普遍的な嫁と姑の対立がそこにはあります。
「あなた様はそういうお方ですものね」
治済は一命は取り留めたものの、以降は、体も口も利かぬ身となりました。
大奥は茂姫によって光が戻ったのです。
源内よ、青沼よ、田沼よ! 見ているか?
黒木良順の編み出した熊痘は、公儀じきじきの施作となり、全国に拡大。
外国の脅威が迫る中、これは急務だということで、財政圧迫は度外視してでも進めると宣言されます。
家斉は強く、世を変えた将軍になりました。
しかし、男女が同数になるということは、バランスが大きく変わるということでもあります。
公儀に認められ、伊兵衛は感無量。岡本圭人さんが気のいい顔を見せます。
黒木は源内の言葉を思い出します。
人痘は公議が認めるものとなり、黒木はその頭となったのだろうと。
「やっぱ天才だな!」
伊兵衛がそうまとめながら、天才源内のことを思い、涙する仲間たち。
ドラマ10大奥・平賀源内は史実でも田沼が重用? 天才本草学者の生涯
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源内。
青沼。
田沼。
彼らの思いは無駄にならず、実りました。
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