ドラマ大奥医療編 感想レビュー第13回

大奥公式サイトより引用

ドラマ10大奥感想あらすじ

ドラマ大奥医療編 感想レビュー第13回 あまりにも理不尽じゃないか!

平賀源内が、梅毒に罹患してしまった――青沼は衝撃を受けます。

しかし、おかしい。女性同士の性行為(といちはいち)では感染しないはず。青沼が破れた服に目をとめると、源内は言葉を濁します。

青沼は、源内が無理やり感染させられたことを察し、拳を叩きつけます。

明るく強がる源内は、蘭方で治療できないか?と尋ねますが……完治の手段はなく、静養するしかないと知ると、動揺を隠せません。

最後は気が触れてしまうと言い、源内は叫びます。

生きて働かなければ意味がない! 頭が冴えていて、体も動かなくちゃダメだ! そんなの平賀源内じゃない!

死にたくないとうろたえる源内は、青沼の胸の中で泣きじゃくるしかありません。

 


源内のセクシュアリティ

源内のセクシュアリティについて補足でも。

原作では女性同士で恋愛関係を築いており、あの襲撃事件も痴話喧嘩を装ったものでした。

史実の平賀源内も同性愛者とされています。もしも源内が家を継ぐ立場ならば結婚はしているはず。そうせずとも趣味と技能だけで源内は世を渡っていた。

こういう気ままな文化人は、文明が成熟しなければ出てきません。それほどまでに江戸後期に突入する日本は、成熟したのでしょう。

なお、シーズン1の綱吉と柳沢吉保では、時代劇では珍しい女性同士の同性愛が描かれていました。

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平賀源内が、世の改革を為すのだ

源内はどうした?

と、田沼に呼び止められた青沼は言葉を濁すしかありません。

すると田沼は、自ら源内に会いに来ます。

励ます方法を考えたのでしょう。手渡した書面には「女子蘭学の禁を解く」とありました。

これが田沼意次の考えた褒美でした。

学問の自由を広く許すことこそ、源内が喜ぶとわかっています。

一人だけの自由ではなく、世の中をより良い方向へ変えること。皆がありがとうと言ってくれる改革こそを、欲しているのだと。

これは源内、青沼、田沼に共通する志なのでしょう。一人はみんなのために、みんなは一人のために尽くす。そんな近代の息吹がそこにあります。

世の改革の背後に平賀源内がいたこと。そのことを強調する田沼に、源内は笑いながら嬉し涙をにじませます。

そして私の番だと決意を固めます。田沼が吉宗に誓った赤面撲滅のために、またしても旅出つのです。

青沼が言うように、このさき静養していれば、自分一人の安寧と寿命は確保できるかもしれない。しかし、そんな個人の幸福よりも、大義と恩を返すことに、意義を見い出したのでしょう。

自分のことよりも変革を重視する大義が、彼らにはあるのです。

 


天下万民に、人痘接種を

源内は、軽症の赤面患者を探しに行きました。

その間、治療法に名前がつけられました。

人痘接種――人の痘を種として接種する。本来は天然痘に用いられていた呼称であり、それをドラマに取り入れました。

歴史を考えるヒントになります。

実際に、江戸時代後期以降、日本では人痘接種が行われて、効果もあった。しかし、それ以降も天然痘は流行している。

なぜか?

人痘接種を広めたい青沼たちは、まずは周囲にこの方法を説明しました。

しかし、蘭学を学ぶ者ですら戸惑ってしまう。天然痘の場合だと、死亡率は3パーセントはある。これは高いか、低いか。

例えばこんな風に考えてみるとよいかもしれません。

目の前に100個入りのお菓子がある。非常に美味ではあるけれど、そのうち3個は毒入りである。さぁ、食べて!と言われて手を伸ばす勇気が湧くかどうか。

しかもこれは天然痘の場合であって、赤面疱瘡にどこまで有効か、定かではありません。「気持ち悪い」として拒まれても仕方のないところです。

どうしたらよいのか……悩む田沼と青沼。

死のリスクについての但し書きがよくないと青沼は考えますが、田沼としてはそれを伏せることはできないと考えている。

そんな二人のもとに、高丘が急を知らせに来ます。将軍の一子である家基が、急死してしまったのです。

嘆き悲しむ将軍・家治。そんな家治に、医師が薬湯を差し出し、ごくごくと飲み干しています。

その様子を見た医師が、廊下にいる女性とあやしげな目線を交わしている……表情だけで不穏さを醸し出す人物を演じているのが、佐藤江梨子さんです。

彼女はグラビアアイドル出身です。

シーズン1で大岡忠相役を演じたMEGUMIさん。『鎌倉殿の13人』北条政子役の小池栄子さん。デビュー当時は、彼女らと三人組扱いされることが多かった。

しかし、この三人にはそれぞれに強い個性があって、今こそ生かされている。

たった一瞬で不穏な空気を生み出す。彼女にはすごい力があると思います。

 

地球規模の天災が日本を襲う

天明3年(1783年)夏――田沼意次の老中就任から10年が経過しました。

家治の後継問題が浮上し、幕閣の話題の俎上にのぼります。次の将軍候補は吉宗の孫世代であり、筆頭は一橋治済でした。

政道批判が激しい松平定信よりはマシかもしれないようで、果たしてそうなのか。

確かに定信は田沼路線をひっくり返しそうではある。一方で治済は、理解があるとみられています。この辺も時代が変わりつつありますね。

政治の主体は将軍なのか、それとも幕閣なのか。家治はあまり口出しせず、幕閣に委ねていました。

田沼もそのことはわかっている。御用人あがりとしては、上様の意向には背けない。

するとここで江戸が大地震に見舞われます。

大地震に加えて浅間山大噴火が起こり、凶作が発生。

火山噴火はヨーロッパでも起こって世界史規模の凶作となり、パンが値上がりして怒った民衆がバスチーユに押し寄せていく――フランス革命の引き金になる。

ルイ16世にせよ、田沼意次にせよ。気候変動というコントロールできない不運ゆえに貶められたことを思えば、再評価がふさわしい人物かもしれません。

田沼に怒りを見せる民衆は、マリー・アントワネットの首飾り疑惑に憤るフランス人と似た顔をしているのではないでしょうか。

現在のフランス史では、ルイ16世の名誉回復が進んでいます。田沼意次再評価も今後どんどん進むことでしょう。

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こうした実際の歴史に本作ではSF要素が加わります。

大奥内に赤面が入り込んだのです。

「変革のせいだ!」と避難する者たちによって「人痘接種は中止せよ!」と命じられ、なにゆえか?と田沼が必死の抵抗を示すものの、訴状があがっています。

漢方医。中臈。そして松平定信から。

定信はただ反発しているだけでもない。彼女が治める白河藩領では餓死者を出さなかったのです。

これはなかなか重要な点でして、江戸時代後期の飢饉となると、米どころであるはずの仙台藩あたりがともかく酷い。

米はたくさん取れる。なのになぜ飢饉に対処できないのか?

というと、米に対して過剰な商品価値を見出したことが背景にあります。

江戸時代に入るまで、東北地方は飢饉と隣り合わせでした。稲作の開発が進まず、寒冷ゆえに食料は常に不足気味。

それが江戸時代になると、幕藩体制の中、新たな米どころとなります。

と、ここまではよかった。

米本位を転換し、経済を活性化してゆく中、仙台藩は米を金銭に換えることを進めていく。豊作ならばよい一方、凶作だと危険なことになる。

例年通りに収入を得ようと換金してしまい、蓄えが無くなってしまう。そのせいで仙台藩は周辺の藩よりも飢餓が深刻化してしまいました。

白河藩は、飢饉を見越して食料を蓄えていた。

こういう作物と経済、そして飢饉の関係は、イギリス領でも発生しています。

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そういうゆきすぎた資本主義が人を殺します。武器を使わぬこうした虐殺も世界にはあるのですね。

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