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【ドラマ大奥医療編 感想レビュー第15回】
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また動き出す人痘接種
松方を通じて家斉に届いた書状は、黒木から。
黒木が家斉の頼みを断わると、その後、伊兵衛が訴えてきたことが書状に書かれていました。
伊兵衛は言います。
青沼は死の間際、生き延びた者たちが人痘を再開するように託していたじゃねえか!
そう言われて動揺する黒木に、るいと青史郎が話しかけてきます。
類が及ぶことを恐れているなら離縁すればいい。
なんだか素っ気ない態度ですが、彼女は「人別だけの話」と断りを入れています。今でいうなら戸籍上の話で、言い方は悪いですが偽装離婚ですね。
息子の青史郎もあっけらかんとこう言う。
「うん、どうせいなかったし」
息子に指摘されて動揺する黒木。そなたのために出かけていたのに通じていないって!
そんな悲哀を見せると、息子はあっけらかんと「みんなまとめて助けてあげて欲しい」と言い切ります。
妻も子も友も、私より賢く頼もしい。愚かなのは自分だけだった。そう悟った黒木です。
伊兵衛っぽくいえば、真面目すぎんだよ。
でもこういう真面目な人間だからこそ、安心できますよね。
黒木からの書状を受け取り、歓喜の家斉に対し、「田嶋屋は待たせてある」と松方が伝えます。
将軍・家斉と面会し、僖助が託された黒木宛の書状。
黒木のものより紙質も字体もフォーマルです。江戸後期に武家の間で流行っていた唐様(からよう・中国風)ですかね。
書状の中身は、天文方に翻訳局を作り、黒木を雇用するというものでした。
表向きは蘭書翻訳であり、実際は人痘接種を提供する施設にする――これなら公金で運営できます。
天文方というのもポイントですね。
千代田の城から離れた浅草で、今も天文台跡がありますね。
翻訳局は新設だから、黒木が集めてよく、しかも江戸城へ登城する必要がない。
素晴らしい案です!
しかし、それがまだ許可を得ていないのだとか……。
家斉はおずおずと幕閣に切り出します。
近頃、異国船がうろついているし、国の事情を知った方がよいから、オランダ語に堪能な学者を幕府が抱え、調べさせたい。
これには老中も納得。
天文方配属ならば出費もそこまでかからず、喜んだ家斉は、治済に申し上げて欲しいと老中たちに話しかけます。
「男のわしから言うと、角がたつゆえ! の!」
くだらない話といえばそうだけど、これぞ男女逆転の極みかもしれない。男女が逆だと今でもよくある現象でしょう。
ここで少々歴史解説でも。
田沼時代がフランス革命の頃だとして、その後の時代はどうなったか?
【ナポレオン戦争】に突入します。
結果、オランダはフランス支配下に置かれ、そうなるとフランスの敵国であるイギリスは、
「敵国オランダの商館が日本にあるらしいな」
と、いきなり襲いかかります。
【フェートン号事件】です。
当時の海軍は、宣戦布告もなしに敵対国を襲撃してもお咎めなしですから、そういう無茶振りが通ってしまう。
一方でロシアは、ナポレオン戦争で不凍港どころではなくなり日本から目を離します。
西で戦争があると東への攻勢が弱まる。
けれども西が落ち着くと東に目を向ける。
ロシアのこうした動きは、第二次世界大戦末期にもありましたね。
ともかく家斉時代にはもう、幕府も知恵の回る学者たちもわかっています。
このままではまずい。何らかの抜本的対策を講じないままでは……。
と、家斉の政策を聞く治済の姿勢はどうか?
脇息に左肘を乗せ、右手でお菓子を食べるという実にだらけきった姿です。
和装の際、肘を見せるのはマナー違反です。それなのにチラッと肘まで見えるこの姿勢は相当だらしない。何かやる気が失せているようです。
かくして、治済の目も潜り抜けることができました。
化物を出し抜き、骨抜きにする
家斉は化物である母を出し抜き、松方の前で小躍りして喜んでいます。
そうか、小躍りってこういうことか!
そんな納得感のあるはしゃぎぶりですが、松方はまだまだ油断ならぬ目をしていますね。
浅草に移った黒木は、玄白の弟子を集め、治療所は伊兵衛に任せることにしました。
史実の玄白も、自分のあと、蘭学がこうも盛んになったと記していました。彼の弟子の中では、大槻玄沢が有名です。
大槻玄沢が発展させた蘭学&医学とその生涯~師匠の玄白や良沢はどう見ていた?
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家斉はさらに隠密を放ちます。
目的は赤面の種探しですね。
蛇足ながら、“隠密”については先日大変興味深いニュースが配信されていましたので、よろしければご覧ください。
◆『私のご先祖様では?』江戸初期に薩摩で暗躍した「密偵=スパイ」の正体が判明 代々一族に伝わる話と一致する文書の内容とは(→link)
人痘接種再開のため家斉が取り掛かった様々な行動が、治済の耳に入ってしまいます。
そして家斉と松方のもとへ、やってくる治済。
「隠し事はないか?」と問い詰められ、家斉がうろたえてしまいます。
大奥を追われた者と会って何をしているのか!
母親から脅され、さらに怖がる家斉ですが、松方は冷静に受け答えします。
治済公用の“奥”をこっそり用意していたのだ、と。
家斉は相変わらず愕然とするばかりで、テキパキと話を進めていく松方。
化け物の治済も、少し心が揺らいでいるようで、家斉も話を合わせて、下劣な孝行息子の演技をします。
「くだらぬ」と言う治済はちょっと甘い声になっています。
よっしゃ、ガードが緩んでいるぞ!
極めつけは、松方が選りすぐったイケメンです。扉を開けたら、その先にズラリ!
用意が良いですねぇ~。さしもの治済も目が泳いでしまう。そこで「大奥を追われた者と会っていたのも、美男探しだ」と松方が畳み掛ける。
「まったく、まことくだらぬ」
そう笑い飛ばしつつ、朱唇をゆがめる治済。
こういう紅を塗った美女が唇を歪めるフォルムで、江戸の人々は美貌や表情の変化を見定めました。
まさにその朱唇です。喜んでいますね。
そして、音楽が奏でられ、イケメンが踊り狂う江戸のホストクラブが展開!
なんかイケメンダンスの振り付けが、ギリギリの下品さですね~。
しょうもない!
くだらない!
笑い転げる治済、どうした?
骨抜きとはまさにこのこと。化物退治はこうでなければ。まずは油断させることが肝要ですね。
このあと家斉が、男まで用意していた松方を褒めます。
松方は大奥最高位の男の知恵だと誇らしげ。家斉に言われて気にしていたんですね。
家斉はリスクを犯す松方を気にかけると、松方も治済にはいいようにされてきて、男の人生はこんなものかと諦めていたとか。
それが家斉の言葉に、不覚にも胸が打たれたとか。
男が強くなれば、女ばかりがのさばる世も終わるのではないか。そう希望を胸に灯していたのでした。
家斉の誠意はちゃんと伝わっていたのです。
しかし茂姫の病状は止む気配はなく、今では「家斉のことを息子の敦之助だと思う」ようになっていました。
夫を亡き息子として見ている妻。
実の母よりもあたたかい母となった妻と接する夫。
歪んでいるけど、ある意味幸せなのかもしれません。
広まる熊痘
そんな最中、ついに黒木のもとへ、“種”が届いたと伊兵衛が走ってきます。
隠密曰く、熊痘はすぐに治るため、患者のかさぶたを集めてきたとのこと。
効くかどうかは、わからない。
そこで黒木の息子・青史郎で試すこととなりました。果たしてどうなるのか……。
家斉と松方のもとへ、赤面発生の知らせが届きました。
いつもの赤面か?と思わず聞き返してしまう家斉。
人の道にはもとるけれども、我らには追い風だと言う松方。
確かに流行を喜んではいけない。それでも人痘普及という目標のためにはプラスとなりますね。
家斉は、あらたな案を松方に提案します。その策とは?
江戸の街では読売師が【熊痘の効能】を説いています。僖助も関わった宣伝策のようです。
読売師は、黒木が青史郎で試したことまでペラペラと語り、かくして浅草には熊痘接種を求める行列ができました。
作戦成功ですね。
赤面流行の中、熊痘を受けた男子が走り回るようになったと幕閣が家斉に報告します。
小道具班の努力も感じます。熊痘の解説画は元絵がないものを、当時の画風でそれらしく描く必要があります。
諸大名も、わが藩で取り入れたいと訴えているとか。
それでも家斉は治済のことを気にしていますが、なんでも治済は政治に興味を失ったそうです。
家斉は幕閣に熊痘接種を好きにせよと返し、満面の笑みを見せます。
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