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【仁義なき幕末維新】
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「仁義なき」って映画とかけただけじゃない
本書のタイトルを見て、大半の方はこう思うことでしょう。
「ああ、文太さんの代表作品とひっかけたわけね」
実は、それだけじゃないんです。
本当に心の底から、
「明治維新に仁義なんてない」
と、お二方が言い切っているのです。
孝明天皇毒殺疑惑。
倒幕の密勅の胡散臭さ。
相楽総三はじめとするアウトロー、非情の斬り捨て。
奥羽諸藩が被った絶大な被害。
維新の英雄たちに、二人が向ける目線は冷たいのです。
『アイツら、まるで仁義なんかねぇことをしやがったな……』というもの。
そもそも明治維新が素晴らしいものと言えるのかよ、というところまで到達しております。
言われてみれば明治初期は、日本中で不平不満がくすぶっておりました。
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それをうまくなだめて、薩長こそ正義で、国が出来たのだと教育できた成果はたいしたものだ。
そこを褒めてはおりますが、皮肉たっぷりの口調です。
それもそのはず。
「仁義なき幕末維新」を【誤魔化す方法だけはたいしたものだ】と言ってるようなもんですからね。
賊軍子孫の抵抗の仕方
この対談は、「賊軍子孫の遺言になったな」という締めくくりがなされます。
お二人が「どうせ150周年ということで盛り上げるつもりだろう」と冷たい予想をしていた2018年を迎えております。
予想は的中しておりますね。
大河ドラマの『西郷どん』は、ドラマの質的にも視聴率的にも大苦戦。
その苦戦の理由も、本書を読めばわかります。
未だに薩長にだけ都合がいい、戦前レベルの歴史観で作られたドラマが面白いワケがない。
そんなもん、本書を読んで喝采を送るような賊軍子孫からしたら、ふざけたシロモノでしかありません。
本書の行間から、負けてしまった側が抑え込まれながらも、どうやって先祖の業績を残そうとしてきたかが伝わってきます。
こういうエネルギーを踏んづけて、見なかったことにして、軽薄な美化を垂れ流して、それが受けるほど甘くはないってことです。
お二人のスタンスは、賊軍子孫の戦闘姿勢が実によく出ております。
賊軍という呼び方も、最近では使われないようになっております。それを、敢えてこの二人は「賊軍」と名乗り、叛骨心を見せ付けているわけですね。
そんな二人は、安易な美化に走らず、史料を重ねて武器にして、フィールドワークをして歩いてゆきました。
そこまで徹底的に理詰めにして、厳しい目線をチラつかせながら、斬り込んでゆく。
これが、賊軍の戦い方だな。
そう思うんです。
「明治維新イエーイ! お祝いしよう!」っていう感じの勢力に、史料を束にして突っ込む感じですね。
『西郷どん』も、作品そのものはツマラナイですが、冷静に突っ込む意見はものすごく面白かったりする。
明治維新は日本が真っ二つになった戦いです。
どちらを描いても、反発は喰らいます。
この二人の対談を読みますと、明治維新礼賛がどんな反発を喰らうのか、実によくわかるのです。
しかも、反発するにせよただの感情論ではなく、あくまで理詰めで、斬り込んで来るというわけ。
それが賊軍魂だ!
この戦い方が、まさに文太兄ぃの姿とも重なります。
知識とフィールドワーク、それに感性を武器にして、歴史に斬り込む姿は、これぞファンが見たかった菅原文太像です。
スクリーン以外でも、演じる以外でも、こんな戦い方ができる文太兄ぃ。
やっぱりカッコよすぎますわ。
こんなにカッコイイ役者さんだったのに、ある歴史的人物を演じることに躊躇していたとわかるあたりも、感慨深いものがあります。
惜しまれる点があるとすれば、東日本大震災や文太兄ぃの死により、対談がここまでで終わったところでしょうか。
ともかくこれは、濃厚でものすごい一冊です。
タレント本じゃない。
断じてそんなものじゃない。

『仁義なき幕末維新 われら賊軍の子孫 (文春文庫)(→amazon)』
文太兄ぃは、自分の脚で歩いて歴史を探り、本を読み、そして頭できっちりと考える人です。
作家の半藤さんは言うまでもございません。
歴史に向き合って、自分たちを「賊軍子孫」と胸を張って言える。
本書はそんな骨太な一冊なのです。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考】
菅原文太/半藤一利『仁義なき幕末維新 われら賊軍の子孫 (文春文庫)(→amazon)』