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【谷垣源次郎】
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命を取らず、使い方を問い続ける谷垣
谷垣の戦闘力を推察すると、劇中随一の強さがあると推察できます。
彼は体重が重い。
攻撃の威力は腕力と体重が重要ですから、一撃では屈指の威力があると思えます。
しかし「キルレシオ」(殺傷率)は最低クラスです。
谷垣より体重は軽いけれども、首から上や人体の正中線上を高確率で当てていく鯉登。
狙撃手である尾形。
このあたりと比べると、谷垣は“殺す動きをしない男”といえます。
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これはそもそもの発端からして明らかでした。
阿仁マタギの村に生まれた谷垣は、名前の示す通り次男であり、それが一転したのは、妹のフミの死によるものでした。
フミは谷垣の親友である青山賢吉に嫁ぎました。その賢吉により殺され、賢吉が失踪したのです。
復讐に燃える谷垣は、家族の制止をも振り切り、賢吉が入ったという北海道の第七師団に入ります。
そして日露戦争の戦場で、谷垣はついに賢吉を見つけます。賢吉は敵のダイナマイトに覆い被さり、爆破から味方を守ったのでした。
賢吉の最期の言葉は、フミの死の真相でした。
疱瘡に感染したフミは、それが広がらぬよう、夫である賢吉に「殺してくれ」と頼んでいたのです。
フミは死ぬ前、病気に感染していなければ、その命の使い方を探すように賢吉に言い残していました。
賢吉は妻の言葉を胸にして、ダイナマイトに覆い被さることで、命を使い切ったのです。
死にゆく賢吉に、マタギの食べ物であるカネ餅を食べさせる谷垣。
クルミを入れるカネ餅は、同郷の友人に看取られての死であると悟り、命を終えるのでした。
妹であるフミ。
親友である賢吉。
命をどう使うべきか?と託された谷垣。
鶴見に洗脳されかけるものの、そこから解かれると、彼自身の命を使う旅へと出てゆきます。
鶴見の誘いを振り切るとき、谷垣はマタギであると断言します。
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動物の命を食べ、生きてきたマタギ。命の使い方を考え、生きてゆくマタギ。
兵士ではなくマタギとして生きると決めた谷垣は、劇中一優しい男として、金塊探しに挑みます。
彼は金塊ではなく、命とその使命を探す旅をしているのです。
彼の辿る道からは、死ではなく生命がこぼれてゆきます。セクシーな肉体は豊穣の象徴のように思えてくるのです。
劇中で結婚への過程が描かれる
谷垣は当初、第七師団の一員として登場しました。
杉元一行と対立するも、アイヌのコタンで毒矢の負傷を癒すうちに、別の目的を見つけます。
世話になったフチのために、アシㇼパを無事に連れ戻すこと。その過程で谷垣は天涯孤独であるインカㇻマッとチカパシに出会い、擬似家族のような集団で旅をすることになります。
はじめこそインカㇻマッを信じきれなかった谷垣ですが、二人は情けを通じます。
二人の愛の描写はかなり慎重に描かれています。
箇条書きにしてみましょう。
・二人はオチウ(性的な関係)に及ぶとはいえ、その場面でのインカㇻマッは背中しか見えない。蝮のお銀と比較すると、性的なニュアンスを抑制されている
・催淫作用のあるラッコ鍋を食べたせいだと理由づけがなされ、インカㇻマッ側が積極的である
・これによりインカㇻマッが妊娠することが、谷垣の運命を大きく変える
どのあたりが慎重か?
杉元とアシㇼパでも言えることなのですが、先住民と入植者の恋愛関係は搾取的になりがちです。
悪例としてあげられるのが『ポカホンタス』です。
この組み合わせは搾取のごまかしや美化ではないかと疑念を呈されることがある。入植者側が強引に迫る。あまりに先住民がご都合主義に描かれると、反発が生じます。
アイヌ女性と和人男性にまつわる悲恋話は、北海道各地に残されています。
大抵は女が男を待ち続けて命を落とすような悲恋ものです。
またそのパターンか。そのアイヌの女は和人男に惚れるというパターンはもう飽き飽きだとなりかねません。
そうしたご都合主義のステレオタイプから脱する工夫は重要でしょう。
インカㇻマッには狡猾さがあり、谷垣も当初は警戒心があります。それが一線を踏み越えることで関係性が深まってゆきます。
チカパシの仲介もあり、食べかけの食事の椀を介したアイヌ流の婚儀も行い、二人は晴れて結ばれる。
谷垣が本当にどうしようもない男だったら、それこそインカㇻマッを無視しかねません。
そうなるどころか、キロランケに彼女が刺されたことが樺太先遣隊参加の理由でもありますから、彼は誠実なのです。
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