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『衛府の七忍』の薩摩のぼっけもんたち
鬼才・山口貴由先生の豊かなイマジネーションが生み出した薩摩。
そのあまりに強烈な薩摩ぼっけもんの暴れぶりは、インターネットを中心に話題となりました。
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伝奇時代劇の魂が宿った漫画『衛府の七忍』閲覧注意の意欲作とは
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人気漫画およびそのアニメ化作品である『ポプピピテック』の、
「チェスト竹書房ォ゛ーイ゛!!」
は、本作が元ネタです。
徳川家康がロボット超人である本作は、実在人物が飛躍した設定になっているため、史実について考証をする意味があまりない気がします。
が、一応やってみましょう。
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史実の徳川家康は三度の絶体絶命をどう乗り越えた?天下人の生涯75年
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「チェスト関ヶ原」とは、島津家の隠語で「ぶち殺せ」との意である→実は「チェスト関ヶ原」という言い回しはあります。
「チェストいけ 関ヶ原」という使い方で、島津義弘の「関ヶ原の退き口」を思い出して、頑張っていこうと鼓舞するニュアンスです。「妙円寺参り」で言われたりするようです。
当たり前ですが、本来「ぶち殺せ」という意味ではありません
「誤チェストにごわす」「またにごわすか」
→チェスト(いきなり相手に斬りかかりぶち殺す行為)して間違うこと。そもそもチェストはそんな意味じゃないです
「チェスト種子島!」
→刀ではなく種子島(銃器)で攻撃すること。そもそもチェストはそんな意味じゃないです
「それが薩摩だろう チェストとは“知恵捨て”と心得たり」
→薩摩ぼっけもんに感化された宮本武蔵の台詞。ちがう、チェストはそんな意味じゃない!
「臓物抜いて腹の中空にすっで 飯詰めて炊いて食ってにもし!」
→失敗を恥じて、切腹しようとした中馬大蔵の台詞。これから切腹するから、腹の中に米を詰めて炊いて食べてください、の意味。元ネタは「えのころ飯」と思われます。いや、そんな食べ方流石にしないから
ぼっけもん
→本作では「武家者」という字をあてて、バーサーカーのような薩摩武士をこう呼んでいますが、どうしてそうなった!
鹿児島弁では豪胆な者、向こう見ずな人を指します。
「木強漢(ぼっけもん)刀ん尖端で髭を剃っ」という薩摩狂句がありまして。
豪胆な薩摩の男性が、刀の切っ先で髭を剃っている様子を詠んだものです。このように、愛すべき豪胆な男性を指す言葉なんですってば
ひえもんとり
→本作における薩摩武士の処刑方法にして鍛錬。武器を携帯せず、褌のみを身にまとった若者たちが死刑囚に群がり、内臓を引き抜くこと(詳細後述)
数々の誇張されている薩摩武士の習慣。
まぁ、前述の通り、薩摩ネタでは現時点で頂点だとは思います。
漫画として大変面白いですし、是非お読みいただければと。
※本来のチェスト関ヶ原はこんなかんじ
こうした強烈な薩摩描写。
流石に信じる人はいないと思うのですが……しかし、無から作り出されたわけではなく、一応元ネタはあります。
ここからは、こうした創作作品は史実として正しいのか、という検証です。
犬を食べる
『ドリフターズ』では、島津豊久が織田信長に対して、「えのころ飯」の作り方を説明します。
まとめるとこんなところです。
1. 犬を捕まえる
2. 腹を切開して内臓を抜く
3. そこに米をつめる
4. 針金でくくって焼いて食べる
大田南畝の『一話一言補遺』に記載があります。
実は「犬を喰らう薩摩人」というイメージは、江戸時代からありました。
川柳では薩摩武士といえば、やたら犬を食べる連中というお約束があったのです。
赤犬か 紛失したと 芝でいい
【意訳】赤犬がいなくなったと、芝の薩摩藩邸付近で言っているよ。きっと薩摩藩士が食べたんだね、やーねー
幕末に来日したロシア人の記録にも「薩摩人は死んだ犬を食べる」とありますので、実際にあったことなのでしょう。
ただし、犬食文化そのものが日本各地にあったのです。
縄文時代の遺跡からは、犬を食べたあとの骨が見つかります。
戦中戦後の食糧難の時機も食べられており、映画『仁義なき戦い 広島死闘編』でも犬の肉を食べる場面が出てきました。
※ただし映画では積極的に食べるというより困った顔をしている設定でしたが
こうした犬食のタブーは、江戸時代の【生類憐れみの令】以降広まったようです。
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そんなものをものともせず、未だに犬を食べている薩摩武士って怖いよね〜、というのが江戸っ子の感覚だったようで。
結論から言いますと、
【犬を食べる薩摩武士怖いよねえ〜、は江戸時代からあった感覚】
ということになります。
戦国時代から薩摩では当たり前だった豚肉食も他の地域の人からすれば異様だったようで。
現代人からすれば、何ともありませんね。
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