その中でも、屈指の人気キャラクターといえば、なんといっても志々雄真実(ししお まこと)でしょう。
極悪人。
弱肉強食。
元維新の志士でありながら、悪に堕ちた強敵。
なかなか興味深いこの人物を考察してみると不思議なことが見えてきました。
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“人斬り”の悲哀と教育格差
『るろうに剣心』について突っ込んでいくと、割とすぐ不可解さにつきあたります。
それは「作者がどの勢力に肩入れしているのか」実はわかりにくいのです。
そもそも和月先生が司馬遼太郎ファンだからかもしれませんが、ともかく難解。
志々雄真実は京都出身で、長州藩の汚れ仕事を引き受けた――アッサリそう言い切るわけですが、彼について明らかなのは「思想的なバックボーンが少なそうなところ」であります。まぁ、これは剣心もそうなのですが……。
幕末の志士は西洋思想があると考えられがちです。
実はそう単純でもなく、ざっと以下のような階層がありました。
◆知識のある幕末武士とは?
Bランク:基礎
江戸時代の武士として、まずは儒教の朱子学を習っていることが前提。漢籍は当然読める。
Aランク:時代ならではの思想
それをベースに【尊王攘夷】へ。実は、維新志士とされる側も、佐幕派の新選組もそう。
Sランク:かなりすごい
ここから先、西洋の技術があればさらにヨシ!
SSランク:無茶苦茶すごい
デモクラシーまで知っていればすごい! 武士でも経済感覚があればレアだ!
※以下は「儒教」まとめ記事となります
日本史に欠かせない「儒教」とは一体何なのか 誰が考えどう広まったのだろう?
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残念ながら、家庭環境や本人の資質で、基礎教養まで身につけられない人物もおります。
幕末の「人斬り」は、そういう傾向があり、例えば岡田以蔵や桐野利秋らは
「もうちょっと思想があればのう……」
と惜しまれたりもしました。
儒教すら学んでいない、武士の基礎すら身についていないと下に見られてしまうわけです。
岡田以蔵~人斬り以蔵と呼ばれた男は実際どれだけ斬ったのか?
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桐野利秋(中村半次郎)は幕末最強剣士か?人斬り半次郎の生き様・実像に迫る
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志々雄真実の場合、名前にも現れている気がします。
「真実」を「まこと」と読ませていますが、幕末は一文字名前がちょっとしたブームだったんですね。
諱(いみな)の定番である二文字より、なんか時代っぽくてカッコいい。
現代人ならば「真実」で「まこと」の方がカッコいいといえばそうなのですが、幕末から明治にかけては「何だそれ……」と突っ込まれるセンスだったのかと思ってしまうのです。
どうにも志々雄真実には、人斬りにされるのもやむを得ない――人間的な欠陥や教育欠如があったと思わせる何かがあります。
芹沢鴨は“混沌”なのか?
志々雄真実は、SNK『サムライスピリッツ』シリーズの「牙神幻十郎」をオマージュしていることは、もう突っ込むのも野暮であるとは思います。
斎藤一にも反映されているし、いったい和月先生はどれだけ牙神が好きだったのでしょう。
そしてもう一人は、芹沢鴨です。
ただ、これも他の新選組隊士同様、司馬遼太郎バージョンが元となっている点は注意が必要かと思われます。
芹沢の悪逆非道はともかく盛り上がる。ただ、引っかかるところがある。
・同志討ちをいきなりしている近藤勇らを庇うために、悪事が強調されていないだろうか
・愛妾お梅のエロスで盛り上げるあたりは、男性読者向けの昭和的サービス感があるのでは?
・芹沢は水戸藩出身であり、実は混沌どころか、思想のベースがかなり濃い
芹沢鴨は、実は水戸藩の思想がかなり濃い人物であります。しかし……。
新選組に思想なんかないという戦前までの蔑視。
思想はあっても土方歳三が担っていて、近藤勇はそうでもないという創作上の設定。
このあたりが入り混じり、そのトバッチリが影響か、芹沢も混沌だけの人物となってしまった感が否めません。
近藤勇が新選組で成し遂げたかったことは?関羽に憧れ「誠」を掲げた35年の生涯
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【ちょっと待った! その芹沢鴨の理解は適切ですか?】
そんな意地悪なツッコミが生まれてしまうのも、令和だからだとは思うのです。
平成の作品ならば、そういう芹沢像がベースでも別に構いはしなかったでしょう。
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