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幕末に登場し明治時代は外車並の贅沢品! 自転車の歴史が意外と深い

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前輪が大きくなる!

チェーン発明前――自転車は、ペダルで一回転させてこそ前に進むものでした。

そうなると、推進力となる前輪を大きくすればするほど、素早く移動できるということになります。

1870年、イギリス人のジェームズ・スターレーが、前輪が大きく後輪が小さい自転車「ペニー・ファージング型」を発明したのです。

当時の一般的な自転車/photo by Agnieszka Kwiecień (Nova) wikipediaより引用

日本では「だるま車」と呼ばれ、前輪の巨大化が進み、ついには2メートル近くになるものも!

脚力で速度も変わるわけで、レースも開催されるようになりました。

しかし、こうなると当然ながら問題も続出します。

まず、漕いでいるだけで疲れ果ててしまう。

そしてそれ以上に問題視されたのが、危険性です。

小石程度で簡単に転倒してしまうのです。

しかも、高さは2メートル近いわけですから、恐ろしい話ですよね。

こうした問題を抱えたペニー・ファージング型は、15年ほどで廃れてしまいました。

そのユニークな形状は現在もイラスト等で見かけますよね。現在でも愛好家はおり、イベントも開催されているようです。

ペニー・ファージング型自転車/wikipediaより引用

ちなみに日本人と自転車の出会いは、幕末の外国人が持ち込んだもの。

日本人が知った時点では、ペニー・ファージング型までということになります。

 


「ローバー安全型自転車」の革新

1878年、ウィリアム・ヒルマンがペニー・ファージング型にチェーンをつけた「カンガルー型」を開発しました。

カンガルー型自転車/wikipediaより引用

1879年にはヘンリー・ジョン・ローソンが、現在のように前輪と後輪をチェーンでつなぐ「バイシクレッタ」を開発。

チェーンの導入により、前輪のサイズは小さくなり始めました。

車輪が大きいことと速度が連携しなくなっていったからです。

1885年、ジョン・ケンプ・スターレーとウィリアム・サットンは、新たな自転車「ローバー安全型自転車」を作ります。

・前輪と後輪の大きさが同じである

・チェーンによって後輪が動く

・フレームが三角形のダイヤモンド型

おっ、これで、ほぼ現代と同じですね!

ローバー安全型自転車/wikipediaより引用

当時としてはあまりに斬新。

人々は『本当に速いのか……』と首をひねりながら、いざ一度乗り始めてみると、これが今までのものよりずっと快適であると実感します。

1888年には、ダンロップが自転車のタイヤにゴムを使用し、発売します。

このことはコンゴを地獄の底に突き落とすきっかけとなるのですが……それはさておき画期的なことでした。

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自転車の安全性と快適性が、格段に向上したのです。

こうした決定打の登場により、自転車ブームが到来したのでした。

 


自転車ブーム到来!

ローバー安全型自転車やゴムタイヤが登場するまで、自転車は変わり者が乗るものであり、女性とは無縁のものでした。

その状況が一転し、オシャレでトレンドの最先端をゆく乗り物となったのです。

女性たちも競って乗るようになりました。

1880年代半ばから、自転車はヨーロッパで大ブームとなったのです。

イギリスのバタシー・パークでは、こぞって上流階級の女性が自転車を乗り回すようになったとか。

自転車雑誌も登場し、サイクリングファッションも誕生するほど。

かつては変わり者の乗り物であった自転車が、乗らないほうがむしろ変わり者とされるほど、急速に普及していったのです。

シャーロック・ホームズシリーズの作者であるコナン・ドイルも、このブームに乗ったわけです。

19世紀のアメリカ、自転車を楽しむ女性たち/wikipediaより引用

『シャーロック・ホームズ』生みの親アーサー・コナン・ドイルの素顔

1902年、ロンドン留学中の夏目漱石も、四苦八苦しながら自転車に乗ったのだとか。

気落ち気味であった彼を気遣った下宿先の女性が勧めたようです。

かなり苦労して乗りこなせるようになった漱石。

夏目鏡子夫人の回想によれば帰国後は、

「東京は道が悪いから……」

とかなんとか理由をつけて乗らなかったそうです。あまりよい思い出ではなかったのかもしれませんね。

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漱石が自転車に苦戦した翌年、1903年。

ついにフランスでは自転車レースが始まります。

現在に至るまで世界最大のものである「ツール・ド・フランス」です。

初代ツール・ド・フランス王者の写真/wikipediaより引用

自転車は人々の間に定着していったのでした。

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