原田左之助

幕末・維新

新選組十番隊組長・原田左之助は幕末をひたむきに生きた青年剣士

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幕末の青春と教育格差

そんな近藤に利用される駒として原田は便利な存在でした。

芹沢鴨暗殺に永倉が声をかけられず、原田だった理由――一つ大きな要因として考えられるのが【教育】です。

幕末の訪日外国人たちは、確かに日本の識字率の高さに驚きましたが、その一方で当時から【教育格差】は存在しておりました。

注目したいのは以下の二人です。

◆土佐藩の岡田以蔵

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◆薩摩藩の“人斬り半次郎”こと桐野俊秋(中村半次郎

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剣術の腕すさまじく「幕末の四大人斬り」にも数えられるこの二人には【教養がない】という共通点がありました。

四書五経のような武家の伝統的教養もないまま、勢いだけで突っ走る――そんな者たちを利用しながら、彼らの上に立つ者たちはため息をついていたものです。

岡田以蔵に対しては、武市瑞山が。桐野利秋に対しては、西郷隆盛が。

「あれももっと教養があれば……」

そう嘆いたものです。

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思想的背景がない者は、よくも悪くも利用しやすい――そこは残酷な史実です。

確かに幕末は教育格差が縮まった時代ではあり、相楽総三のように、豪農出身でありながら思想を身につけた人物もおりました。

土方歳三もまた、こうした典型例になりましょう。

漢詩を詠む近藤勇ほどの教育は受けていない。俳句を嗜むオシャレな青年であった土方。

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彼なりに、修練をしたのでしょう。メキメキと勉学に励み、人の上に立つ力量と知性を発揮しております。

しかし土方のように勉学に励む者はあくまで少数派。

原田左之助も、岡田や桐野のように勢いで突き進む、幕末の典型的な一青年でした。

 

近藤にとって使い勝手のよい存在

草莽崛起(そうもうくっき)――。

こんな言葉があります。吉田松陰が語った概念であり、世直しの意識を持つ在野の人材が、藩籍に縛られずに立ち上がるということです。

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これは吉田が一から考えたわけでもなく、彼特有のものでもありません。

背景には“フレイヘイド”があります。“自由”とざっくりと翻訳されますが、そこにあるのはフランス革命にあった熱い魂でした。

ナポレオンの伝記を読みふけった吉田松陰の脳裏には、ある姿がありました。

革命の旗を掲げ、イタリア遠征を勝ち進む、ナポレオン・ボナパルトのものです。

こうしたフランス革命の情報を幕府は必死に隠蔽します。

第一帝政終焉からおよそ半世紀を経て、革命の熱気は日本にも到達。

立場を超えて、何かを成し遂げたい、世を改革したい気持ちは、日本の青年の胸にも伝わっていたのです。

この熱気が松下村塾生だけのものであると誤解すると、幕末史は理解しにくくなります。

藩、身分、立場は違えど、草莽の若者たちは大勢いました。

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そんな中、原田のようなタイプは、なまじ思想がないだけに使いやすいと言えます。

新選組を描くフィクションでは、インテリタイプが危険で陰険なように描かれがちです。

『るろうに剣心』で武田観柳のモデルとされた、武田観柳斎が典型例でしょう。

 

なぜ、そんな描かれ方になるのか?

近藤勇が憧れていたのは、関羽でした。

そのための義を為すためには、諸葛亮のような軍師・ブレーンが必要となり、武田のようなインテリが重用されます。

しかし、なまじ思想があると、自分の抱いてきた思いと一致しないと、どうしても疑念を感じてしまう。ゆえに、自分の知能で策を練り、やがて新選組から離反してしまう。

それを「陰険だ!」と断罪する、歪んだ構造があったんですね。

ただしこれは新選組特有の話ではありません。

長州藩の脱退騒動もそうですし、薩摩藩に至っては西南戦争という内輪揉めをやらかしました。

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長くなりましたが、要は近藤にとって原田は使い勝手が良かったんですね。

武田観柳斎のような頭脳、思想はない原田。その人気の理由をつきつめていくと、槍の名人であることが浮かび上がってきます。

リーチの長さは特徴的。屋内戦闘では不利でも、屋外であればむしろ有利です。

池田屋事件】では、土方隊に所属し、屋外で追跡をしていたとされます。

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フィクションでも、武器が異なるため目立ち、華やかな存在となります。

確かに新選組には、谷三十郎という槍の名人もおりますが、それでも原田が目立つのは滅法明るいキャラクター性ゆえのことでしょう。

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