桂久武

桂久武/wikipediaより引用

幕末・維新

西郷の親友となった桂久武(赤山靭負の弟)西南戦争での哀しき最期

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期せずして、奄美大島で再会した西郷と久武。

同じ斉彬派であった二人が、自然に恵まれた奄美の青い海を見つめながら、将来や政治を語り合ったであろう時間は、かけがえのないものであったことでしょう。

ここで二人は親友とも呼べる間柄となるのでした。

 

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「薩長盟約」に同席

元治元年(1864年)、久武は大目付、のちに家老(1865年)として藩政に復帰。

名門の出でもあり、大島で交渉力を磨いた久武は、激動の政局において力を発揮します。

何と言っても存在感を示したのが1866年でしょう。

この年、薩摩は、激しく対立していた長州藩と手を結ぶ「薩長盟約」(薩長同盟)に舵を切ります。

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この重要な局面に久武も同席したと伝えられます。

薩摩藩においても、倒幕賛成派と反対派の意見は対立していました。

それでも最終的には倒幕で一致し突き進んだのは、同じく薩摩藩の家老であった小松帯刀と同様、桂久武らの働きもあったと伝わります。

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明治維新のあとも、鹿児島藩参政・執政を皮切りとして、久武は政治に参加しました。

・明治3年(1870年)権大参事
・明治4年(1871年)都城県参事
・明治6年(1873年)豊岡県権令

着実に出世しながら、豊岡県権令の後に病と称して官職を辞し、故郷に戻りました。

その後は出仕を断り続け、霧島山麓で鉱山開発を行います。

彼に何があったのか。どんな経緯で中央から身を退いたのか。詳細は不明です。

 

西郷と運命をともに

西郷より一足先に鹿児島へ戻り、ノンビリと暮らしていたであろう桂久武。

その周囲がにわかに騒がしくなっていくのは、これまた西郷と同様に、彼が1873年、征韓論に敗れて下野してからのことになります。

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翌年以降、毎年のように不平士族の反乱が勃発。

・佐賀の乱(1874年)
・神風連の乱(1876年)
・秋月の乱(1876年)
・萩の乱(1876年)

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こうした情勢は、当然ながら、桂久武の耳にも入っていたことでしょう。

しかし彼は当初、参戦する予定はなかったと言います。

迎えた明治10年(1877年)、ついに西南戦争が勃発。

不参戦を決めていた久武ではありましたが、出陣する西郷を見送るうちに、その“輜重隊”の粗末さに不安を感じました。

輜重隊とは、物資、つまり兵糧や武器、弾丸などを運ぶ部隊です。戦争では目立たない、されど絶対に欠かせない重要な役割でした。

それを見た久武は、家人に刀を取りに行かせ、戦場へ向かうことになるのです。

そしてそのまま物資の運搬などを担う大小荷駄隊本部長を務めました。

桂久武/wikipediaより引用

久武は、西郷に従って各地を転戦。

途中から敗戦を繰り返し、西郷最期の地となった城山までたどり着いた側近40名の中に入っています。

そして城山落城の際、岩崎谷で流れ弾が当たって亡くなりました。

享年48。

その直後、西郷も腹を切るのです。

最期まで西郷と志をともにした、親友の死でした。

なお、桂久武の長子・久嵩も西南戦争で亡くなっております。

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文:小檜山青

【参考文献】
家近良樹『西郷隆盛:人を相手にせず、天を相手にせよ (ミネルヴァ日本評伝選)』(→amazon
北康利『命もいらず 名もいらず 西郷隆盛』(→amazon
『国史大辞典』

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