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【上野彦馬】
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写真のちょっと気まずい使い方
こうまとめますと、写真は消えゆく日本の原風景や、江戸の人々を残したものと思えて来ます。
これも上野彦馬がパイオニアかつ、表舞台に残っているからこそ。名もない、あるいは残さなかった写真家もいます。
その使い道も、綺麗なものだけではもありません。
ちょっと困った使われ方も見てゆきましょう。
グロ画像をお土産に
証拠写真であればまだよいものの、生首がお土産写真になったというのですから、洒落になっておりません。
この困ったブームは、江藤新平の生首写真によって問題化し、やっと終止符が打たれたのでした。
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美女とエロ画像で一儲け
どうせなら美人の写真が欲しい!
そういう欲求は、当然ながらあるものです。
「お歯黒と眉剃りをした既婚夫人はどうかと思う。しかし、日本人女性の切れ長の涼しい目と黒髪はセクシー。お土産にちょうだい!」
そんな外国人の要望もあり、日本人女性を撮影したブロマイドも人気があったものです。
来日外国人はしょうもないな〜、と思いますか。
確かに、遊郭に入り浸る、覗きをする、そんな人もいました。
中には、外国からいやらしい写真を持ってきて、日本人に売り払うということも……お互い様です。
しょうもない交流は、幕末からありました。
明治時代も、美人コンテストの上位入賞者のグラビアは大人気でした。
なりきりや自作自演写真
幕末から明治の写真は、どう考えても顔が引きつっていたり、不自然なものが結構あります。
演出をしているからです。
お土産になるからと、お白州で裁いている場面を演じたり。美少女が集まっていたり。
緊張感や納得できていない表情にも味があるものです。
コラージュもあり
写真のコラージュや修正は、誕生と同時にありました。
これぞ元祖Photoshopです。カラーでないモノクロのぶん、ばれにくなったかもしれません。
アングルが気に入らないとか。もっと美形に見せたいとか。
割と気軽にコラージュはされていたようです。
肖像写真であれば大問題ですが、お土産ポートレイトではありとみなされたようですね。
時代がくだり明治となりますと、一発でバレるパロディコラージュもできました。
アスリートの体に、政治家の顔を組み合わせるようなものです。
風刺画ならぬ、風刺コラ写真ですね。
修正だってあり
修正で有名であるのが、土方歳三です。
彼に出会った人が揃って美男子と証言するトシさん。そのブロマイド写真はお土産として人気でした。
せっかくだからもっと美形にしちゃえ!
そんなノリで、皺を消して目をパッチリとさせた写真が流通したのです。
現在は修正前が多いものですが、古い書籍では修正後を掲載していることがあります。気になる方は、ご確認ください。
確かに修正後の方がキラキラ感はアップしていますが、ちょっとわざとらしいものを感じます。修正前で十分美男子ですよ!
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あの顔とボディを合成して!
さて、コラージュですが。
それはあの禁断の欲求を叶える技術でもあります。
エロ画像も、どうせなら理想の顔と、肉体であれば言うことはないわけです。
明治時代には、顔は日本髪の日本人、肉体は西洋人というエロコラ画像が出回っていたとか。
人間の欲求は、明治もそんなものでした。
コスプレをしよう!
コスプレ写真も、幕末からあります。
甲冑姿でポーズを取る侍の写真は、ぎこちないものがあって味わい深いものです。
来日外国人が、武士のコスプレをした記念写真もあります。なかなか微笑ましくて、味わいがこれまたあるものです。
大物コスプレイヤーといえば、明治の徳川慶喜でしょう。
謹慎して駿河で楽隠居状態になってからは、趣味の写真をバチバチ撮りまくる日々でした。しかも、コスプレとしか言いようのないものも多いのです。
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幕臣は貧困で苦労したものですが、将軍ともなればそうでもありません。
明治時代をコスプレはじめ趣味に生きた慶喜こそ、究極の勝ち組という気がしない訳でもありません。
写真に「いいね!」をつけて欲しい。
インスタ映えする写真を撮影したい。
コスプレ姿を写真で残したい。
コラ画像で楽しみたい。
エロい画像、グロい画像をこそこそ見たい。
こうした欲求は、現代人特有の病理のように思われがちです。
そんなことはありません。幕末明治、写真が伝来したころからありました。
当時の偉人の写真を見ていると、なんだか素晴らしい時代のように思えます。
が、いやいや、それだけではありません。
カチコチに緊張してカメラの前に立った人。
エロ画像を見て興奮していた人。
美人の写真を集めて喜んでいた人。
そういう無名の人も、大勢いました。
人間とはそういうものなんですね。
なんだか彼らに親しみを持てませんか?
そんな幕末や明治の写真を、ぜひご覧いただければと思います。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考文献】
八幡政男『上野彦馬―幕末のプロカメラマン (1976年) (文明開化の先駆者たち〈1〉)』(→amazon)
日本カメラ博物館『秘蔵古写真 幕末』(→amazon)
後藤和雄・松本逸也『写真集 甦る幕末―ライデン大学写真コレクションより』(→amazon)