箱根駅伝の歴史

明治・大正・昭和

箱根駅伝の歴史と歴代優勝校~そもそも誰が何のために始めたか

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駅伝の功罪

ここでもう一度、金栗の初志を振り返ってみましょう。

箱根駅伝の目標は
「世界に通用する長距離走選手の育成」
です。

その初志に、疑念が投げかけられたことがなかったわけではありません。

戦争を挟んで中止された直後の昭和26年(1951年)からは、あの慶応大学が駅伝の効能に疑念を抱き、8年間連続不出場であったほどです。

ロード走行によって、トラック競技に必要な柔軟性を失うのではないか?

中距離選手の育成に不向きなのではないか?

そんな懐疑論が呈されることもありました。

駅伝の功罪のうち、罪がクローズアップされるようになったのは、皮肉にもテレビ中継による盛り上がりが顕著となった頃からです。

箱根駅伝こそ、陸上の花形競技になりました。

日本の男子陸上選手は、駅伝で走ることこそが最高の栄誉だとみなされる、そんな時代となったのです。

前述の通り、大学としても箱根駅伝では好成績をあげたい、ゆえにそこを目指すわけです。野球少年が甲子園を目指すようなものでしょう。

しかし、こうした学生時代のスポーツを頂点だとみなすことには、危険性がつきまといます。

例えば海外から見ると、高校球児の酷使は異常を感じることもあるほど。

◆アメリカ球界が見る「KOSHIEN-甲子園-」「日本の高校球児は投げすぎだ」は本当なのか。(→link

「アメリカの高校やカレッジでも、目先のゲームに勝ちたいがために連投とか無理な投手起用をする学校がないわけじゃない。

私はそういったスクールを〝アウトロー(無法者)〟と呼んでいるんだ。

彼らは選手たちの健康と将来を考えているとは思えないからだ。

私の考えに反するからといって、日本のシステムを批判するつもりはないが、ア・リーグの某チームで選手の育成担当をしていたときには、私は若い投手には2日間の連投すら絶対にさせなかったよ」

甲子園での激しい投球が祟り、故障・消耗してしまう選手は少なくありません。

異常な暑さの中でも夏の高校野球は続けられます。

果たしてこれでよいのでしょうか?

危険では?

ハタから見ていてもそう感じることがあります。

それは陸上競技も同じで、箱根駅伝への注目度があがればあがるほど、マラソンでの活躍が難しくなるような状況が続いているのです。

金栗が日本の長距離走を盛んにするために、推進してきた駅伝。

しかし、近年ではその本末転倒とも言える弊害が見え始めています。

同じ長距離走でも、駅伝とマラソンはどうしても違う。駅伝で強い選手が、マラソンで力を発揮できるとは限りません。

何と言っても20キロ走行とその倍の距離では、勝手が違います。マラソンに挑むからには、その対策をしなければならないのです。

箱根駅伝代表を経て、五輪に出場するというルートも、だんだんと変わりつつあります。

高校卒業後、実業団入りした五輪選手が出てくるようになりました。

スポーツとは、時代とともに変化するものです。

金栗の時代とは、スポーツ医学の考え方も異なるようになりました。当時では、通じないことがあっても何ら不思議はありません。

駅伝の歴史を通して見えてくるもの。

それはスポーツとそれを取り巻く環境が、いかに変化するかということでもあるのでしょう。

 


箱根駅伝の全優勝チームまとめ

1920年の第1回大会から2022年の第98回大会まで。

一体いくつの大学が優勝したり、連覇を重ねてきたのか?

最多は中央大学の14回で、同校はこれまた史上最多となる六連覇も達成しております(次点は日体大の五連覇)。

最近は青山学院大学の強さが飛び抜けていますが、長い歴史で見ればようやく強豪校と肩を並べたところでしょうか。

一度勝ち始めると何年も天下の続くケースが多く、青山もその傾向を踏襲しているとも言えます。

なお、10回以上の優勝を数えるのは以下のチーム5です。

中央大学 優勝14回
早稲田大学 優勝13回
日本大学 優勝12回
順天堂大学 優勝11回
日本体育大学 優勝10回
駒沢大学 優勝8回
明治大学 優勝7回
青山学院大学 優勝6回
大東文化大学 優勝4回
東洋大学 優勝4回
山梨学院大学 優勝3回
神奈川大学 優勝2回
亜細亜大学 優勝1回
慶応大学 優勝1回
専修大学 優勝1回
東海大学 優勝1回
東京高等師範学校(筑波大学) 優勝1回

以下に年ごとにマトメておきました。

開催年優勝大学備考
992023年駒澤大学
982022年青山学院大学
972021年駒澤大学
962020年青山学院大学
952019年東海大学初優勝
942018年青山学院大学青学四連覇
932017年青山学院大学
922016年青山学院大学
912015年青山学院大学
902014年東洋大学
892013年日本体育大学
882012年東洋大学山の神柏原
872011年早稲田大学
862010年東洋大学山の神柏原
852009年東洋大学山の神柏原
842008年駒澤大学
832007年順天堂大学山の神今井
822006年亜細亜大学
812005年駒澤大学駒沢四連覇
802004年駒澤大学
792003年駒澤大学
782002年駒澤大学
772001年順天堂大学
762000年駒澤大学
751999年順天堂大学
741998年神奈川大学
731997年神奈川大学
721996年中央大学
711995年山梨学院大学
701994年山梨学院大学
691993年早稲田大学
681992年山梨学院大学
671991年大東文化大学
661990年大東文化大学
651989年順天堂大学順天四連覇
641988年順天堂大学
631987年順天堂大学
621986年順天堂大学
611985年早稲田大学
601984年早稲田大学
591983年日本体育大学
581982年順天堂大学
571981年順天堂大学
561980年日本体育大学
551979年順天堂大学
541978年日本体育大学
531977年日本体育大学
521976年大東文化大学
511975年大東文化大学
501974年日本大学
491973年日本体育大学日体大五連覇
481972年日本体育大学
471971年日本体育大学
461970年日本体育大学
451969年日本体育大学
441968年日本大学
431967年日本大学
421966年順天堂大学
411965年日本大学
401964年中央大学中央六連覇
391963年中央大学
381962年中央大学
371961年中央大学
361960年中央大学
351959年中央大学
341958年日本大学
331957年日本大学
321956年中央大学
311955年中央大学
301954年早稲田大学
291953年中央大学
281952年早稲田大学
271951年中央大学
261950年中央大学
251949年明治大学
241948年中央大学
231947年明治大学
221943年日本大学
211940年日本大学
201939年専修大学
191938年日本大学日大四連覇
181937年日本大学
171936年日本大学
161935年日本大学
151934年早稲田大学
141933年早稲田大学
131932年慶応義塾大学
121931年早稲田大学
111930年早稲田大学
101929年明治大学
91928年明治大学
81927年早稲田大学
71926年中央大学
61925年明治大学
51924年明治大学
41923年早稲田大学
31922年早稲田大学
21921年明治大学
11920年東京高等師範学校

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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

【参考文献】
読売新聞運動部『増補版 - 箱根駅伝 - 世界へ駆ける夢 (中公新書ラクレ)』(→amazon
生島淳『駅伝がマラソンをダメにした (光文社新書)』(→amazon
佐山和夫『金栗四三 消えたオリンピック走者』(→amazon
佐山和夫『箱根駅伝に賭けた夢 「消えたオリンピック走者」金栗四三がおこした奇跡』(→amazon
長谷川孝道『走れ二十五万キロ―マラソンの父金栗四三伝』(→amazon

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