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【『光る君へ』で注目 平安時代の下級役人】
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女蔵人(にょくろうど)
内侍・命婦の下で雑用をする女性の役人です。
『紫式部日記』の冒頭にも登場していますので、見覚えのある方もおられるのではないでしょうか。
彰子の女房たちが女蔵人を呼んで御格子(みこうし)を上げさせようとしているシーンがあります。
御格子は現代でいうところの雨戸のようなもので、木でできた格子と板を組み合わせたような形。
現代でも寺院や神社で使われていますので、お立ち寄りの際は目を凝らしてみるといいかもしれません。
また、ある年の大晦日に盗賊が内裏に入り込んだときにも、女蔵人の「内匠(たくみ)の君」という人が登場します。
盗賊に襲われた他の女房たちの叫び声が聞こえた際、紫式部はこの内匠の君を先に歩かせて現場へ向かいました。
おそらく紫式部のほうが立場が上だったでしょうし、悲鳴が聞こえた時点でそばにいたようにも読めるので、日頃からある程度冗談が通じるような間柄だったのかもしれません。
女孺(にょじゅ)
宮中に仕えていた童女のことです。
現代では児童労働で大問題になってしまうでしょうけれども、そもそも近代までそのような概念はありません。
幼い頃から貴人の身辺に仕えることで、日常習慣や儀式の作法などを身につける意味もあったと思われます。
また『紫式部日記』では、前述の内匠の君が女嬬と思われる子供に縫い物などを教えていたことが書かれており、女嬬たちにとってはそれぞれの勤め先が学校のような役割も果たしていたようです。
なんせ成長後も宮中に仕えていれば、男性貴族たちと間近に接する機会もありますしね。
それまでに教養や才気を身に着けておれば、良い結婚相手に出会えることもあったでしょう。
正式な結婚をしなくても、何か一点に秀でて、かつ健康ならば宮中に長く仕えることができたり、主人の実家に頼られたり、比較的安泰な生活を送れたのではないでしょうか。
源氏物語では、かなりの高齢になっても恋愛を楽しんでいる「源典侍(げんのないしのすけ)」という女官が登場しますが、おそらく彼女は正式な結婚をせずにずっと宮仕えをしていたと考えられます。
源典侍は源姓なのでおそらく賜姓源氏の末裔と思われますし、女嬬からの生え抜きとはいえなさそうですけれどね。
さて、ふたたび男性の役人のお話に戻りましょう。
後宮の担当でない表の役人も『紫式部日記』にはたびたび登場します。
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