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【抹茶の歴史】
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日本で独自の進化を遂げる抹茶
茶と言えば中国だし、抹茶はその代表で格式高いものかと思っていた――。
皆さんがそんな印象を持っていたとすれば、日本での茶道を大成させた千利休の影響でしょう。
栄西が実用的な健康飲料として伝えた抹茶は、時代が降るにつれステータスシンボルと化してゆきました。
もともと栄西が想定した茶の飲み方は、従者が淹れ、貴人に差し出すもの。
例えば修行に励む高僧に小坊主が茶を淹れて差し出すといった形式です。
しかし茶道はそうではありません。
茶室に招く側も招かれた側も、対等の立場として互いを理解するために茶を飲む――こうした形式を千利休が高め、日本独自の茶道が確立したのです。
ゆえに抹茶を使った茶文化は日本でのみ発達し、茶道が極まるにつれ、上流階級特有のものとなりました。
茶器、茶室、作法と、すべてを洗練させてこそ、一流とみなされたのです。
大河ドラマ『麒麟がくる』でも、茶に労力を注ぐ戦国末期の武将たちが描かれました。
高価な茶道具を用い、茶室に名画を飾ってこそ……と、武士たちの文化水準もそこまで高くなったのです。
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その後、日本では上流階級が極めた風雅の道として茶道と抹茶が残り、庶民の間では、もっと気軽に飲める煎茶が定着しました。
さまざまな偶然が重なり、抹茶は現代にまで残ったんですね。
菓子にも進出する日本伝統の茶
あの鮮やかな緑色と爽やかな香り、そして苦味は実に便利なもので、抹茶は様々な菓子にも用いられています。
ケーキ、チョコレート、クッキー、外郎(ういろう)、かき氷、アイスクリーム、フラペチーノ……そして鎌倉殿の13人と共に生まれた抹茶味の侍ハーバー。
侍ハーバーのパッケージは「カステラ」ではなく「かすてら」と記し、シレッと和風であることが強調されてます。
鎌倉時代に栄西が伝えた抹茶。
戦国時代末期にカトリックの宣教師が伝えたカステラ。
元々は和菓子メーカーだったけれど、その技術を活かし、洋菓子販売に転換した、ありあけのハーバー。
侍ハーバーには日本の歴史が詰まっているといっても過言ではありません。
紅茶、コーヒー、もちろん緑茶にもあい、個別包装されていてお土産にも最適です。
他のハーバーはモダンな洋菓子であることが持ち味なのに、こちらはしっかりと和菓子。
抹茶をかすてら生地、餡、蜜にまで加えていて、器用な菓子だなぁとしみじみ思いました。
これぞ和洋折衷の強みであり、海の開かれた神奈川にふさわしい味でしょう。
ただひとつ惜しまれることは期間限定であること。
大河が終わった後はロゴを外し、愛くるしい栄西の似顔絵つきで販売していただけたら嬉しいものです。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考文献】
小島毅編『義経から一豊へ: 大河ドラマを海域にひらく』(→amazon)
小島毅『義経の東アジア』(→amazon)
小島毅『中国の歴史7 中国思想と宗教の奔流』(→amazon)
藤田賀久/藤村泰夫『神奈川から考える世界史』(→amazon)
他