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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第13回「家康、都へ行く」】
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どうするエロエロ
京都では、とにかく“女遊び”にからんだようなシーンが目立ちましたね。
徳川家臣団の頭の中はどうなっているのでしょう?
「おどろおどろしい清須城が、家康から見たらあのように映っていた」
というエクスキューズが通用するならば、京都でやたらと遊女に注目したり、それで徳川家臣団がオロオロエロエロするのは、彼らの頭の中がそればかりだからでしょう。
福沢諭吉が見たらどう思うことやら。
「は? 三河武士がエロエロ? 明治政府元勲の長州閥と間違えてない?」
本證寺でもナンパして、京都でもナンパして。毎回、デロデロしている連中なんて暗殺三昧で楽勝ではありませんか。
本多忠勝が急に「女の匂いで頭が痛くなる」なんて言ってましたが、本證寺で榊原康政と於大の方をナンパしたときに、そんな素振りは一切ありませんでした。
それが急にどうしたんですか? 京都だから?
『麒麟がくる』では、斎藤道三が敵の閨のことでも知っていると豪語していました。
何度でも言います。あの道三ならば、三河武士団をハニートラップに仕掛けて全滅させるくらい、余裕でこなせるでしょう。
ドラマの作り手としては、この手の描写を「センスいいw」と思っているのかもしれませんが、2020年代には地獄の片道切符を手にしているようなものです。
認識を改めた方がよいでしょう。例えばこういうツイートをしていた方も、ウケ狙いで、重大深刻な結果になるなんてきっと思っていなかったはず。
◆「ぷりっぷりの女子中学生と…」東京藝術大学に合格した乃木坂46・池田瑛紗に「職権濫用」発言でクビになったスタッフ、「セクハラは偉大な文化」“異常ツイート”連発の過去(→link)
どうするショッカー織田軍団
洛中で人を殺しまくる織田家臣団。
やはり本作は、歴史に興味関心がないのでは?と思ってしまいます。
軍隊がどこでも殺傷をすると、京都の人々が警戒してしまう。だからこそ、どうか甲冑をつけずに上洛していただきたい――『麒麟がくる』の明智光秀は、信長とそんな交渉を重ねていました。
武力の誇示は、人心掌握の上で逆効果のときもあり、何か不測の事態も起きかねないものです。
その点『麒麟がくる』の方がはるかに上手でした。
そもそも京都の治安維持は、あの上洛時点で織田がそこまで勝手にできましたか?
風紀を守ると言いながら、街中であんなド派手に殺しをしていたら、怖くて出歩けません。
出来の悪い二次創作みたいな展開ばかりしますよね。
どうするアップと絶叫頼り
漫画原作の実写化。
漫画ばかりをインプットしたクリエイターの映像作品。
昨今、そうしたものの弊害を感じます。
叫ぶとか、アップにするとか、大仰な演出とか。
これを漫画で読めば迫力があったのだろうけれども、映像にするとただただ陳腐でしつこい――その典型例が今年の大河ですね。
やりすぎて幼稚で、説明セリフだらけで、もう無茶苦茶です。
漫画を映像化するにしても、モノローグにあたる部分をナレーションでかぶせるという手法があります。
それを今年は妙なツッコミにして、序盤に入れると縛ったせいで、機能していない。
大河のナレーションって特徴的で、海外ドラマだとないことも多いもの。強みを自ら捨てているんですね。
どうする所作指導の差
所作指導が全体的に崩れている一方、できる人はできていて、戸惑いを感じます。
浅井長政は比較的ちゃんとしていました。
彼を見ていて『落ち着きあるな……』と感じた視聴者の方も少なくなかったでしょう。
同時に所作が大事な理由も見えてきます。美形度や気品が数割増すんですね。
逆に、それができていないと、よりダメに見えてしまい、俳優が可哀相になってきます。
わざと崩しているのではなく、単に知らないのでしょう。
せっかくの役者さんたちを潰さないでくれ……と願うばかりです。
どうするグローバルヒストリー
織田信長が地球儀を見る場面も、あまりに陳腐で使い古されたシーンで、悲しくなりました。
日本史の弱点として、東洋史の要素を捨てすぎたことがあげられます。
明治以降、脱亜入欧を掲げ、劣るアジアとの関連性を捨てる方向に向かってしまい、それではいかんぞ!と東洋史もある。しかし、軽んじられています。
受験科目の人気として、日本史が世界史を上回ることは長く続いています。
そこに脱亜入欧が加わることで「もうアジア、どうでもいいじゃんw」と思ってしまい、結果、日本史の理解までもがおかしくなってしまうのです。
織田信長がマントだったり、地球儀をおもむろに見る場面は、まさにそれが凝縮されている。
地図を見て、なぜ南蛮ばかり向かいますかね。
「うおおお、明って、デカッ!」
となっても全くおかしくないですし、世界史的に見て、当時の明・江南地方は最大の経済地帯です。
日本人だって、明の茶、書籍、文物などなど、ともかく欲しくてたまらなかった。それをすっかり忘れているか、あるいは作り手が全く知らないか。
『麒麟がくる』ではそこができていました。信長は、まず明と交易したくてたまらなかったんです。
茶屋次郎も金平糖を手に入れてきましたが、あれってただのスイーツ需要ですよね?
宇治茶の方がありえるのではないでしょうか?
京都の宇治は「明の本場と変わらない!」という触れ込みで盛り上がっていましたからね。
『麒麟がくる』で3歩進み、『どうする家康』で30歩下がったような認識。
そしてこれこそが本作の寿命を縮めることにもつながっています。
歴史総合が目の前に迫っています。あの科目は近代以降のグローバルヒストリーを重視するとはいえ、だからといってそれ以前を無視できない。
これから先、グローバルヒストリー、東洋史目線で日本史を見られないコンテンツは寿命が短くなります。
『麒麟がくる』は時代を先んじていて、教育効果もあるドラマとして歴史に残ってもいい。
一方、『どうする家康』は時代錯誤の象徴として刻まれることでしょう。
大河で作品を作るのでしたら、スタッフは『中国史とつなげて学ぶ 日本全史』(→amazon)ぐらいは読んでほしい。
むろんNHK全体がダメではありません。
Eテレもありますし、『麒麟がくる』も『鎌倉殿の13人』も『大奥』も、グローバルヒストリー対応済みでした。
今後、本作のようにグローバルヒストリーを無視した歴史ドラマに価値はないでしょう。
どうする砂糖
このドラマは、歴史における砂糖の役割をどこまで理解しているか。
砂糖は莫大な金になります。
この時代、砂糖を食すということは、いわば金をそのまま食べるような感覚でした。
日本で安定的な流通が整うのは、江戸時代が熟してからのことです。
そんな貴重品だからこそ、戦国大名は砂糖をともかく食べました。
信長が家康を接待した御膳を見た時、私はあまりの甘み尽くしに歯が粘りつくんじゃないかと思いました。
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三英傑にも、甘いお菓子のエピソードがそれぞれあります。
そんなこと、大河スタッフなら当然知っているかと思いきや、本作は
「スイーツ喜ぶのって女だけでしょwww」
とでも言いたげで嘆かわしい。
大河で砂糖に触れるのでしたら、岩波ジュニア新書の定番名著『砂糖の世界史』(→amazon)あたりは押さえておいて欲しいところです。
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