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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第13回「家康、都へ行く」】
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どうする甲冑
大河ドラマや時代劇で使う衣装をご覧になったことはありますか?
私は甲冑を見たとき、こんな軽そうなものがドラマでは重厚に見えるのかと、感心したものです。
しかし、それも役者の動きあってのことかもしれませんね。
今年はペナペナしているように思えます。
動きが軽い。重い甲冑をつけて動いているようには見えない。殺陣そのものが、甲冑の重みや制限をふまえないで作っているようにすら見えます。
甲冑は重いため、逃走中のような速度を重視する局面では脱ぎます。
このドラマでは逃げ惑う今川氏真でもフル装備であるため、どうにもおかしいのです。
甲冑の質感って、そういう演出や演技の配慮あってのものなのだと思えます。そこを踏まえて演じていたまともな歳の大河の皆さんって、素晴らしかったのだなと。
そういうところを手抜きすると、ドラマそのものがペラペラになります。今年がその悪い例。
質感が薄っぺらい。おまけに配色デザインセンスは小学生向けセット教材では、どうしようもありません。
本作のデザインって、こんなセンスですよね。
◆裁縫セットのデザイン、50年前は2種類…多様化の走りはあのキャラ(→link)
どうする露骨な営業姿勢
役者が大河ドラマに出るメリットとは?
まずは圧倒的に知名度アップでしょう。
確かにブレイクを果たした役者さんはいます。
近年ですと、緊急降板の代役から抜擢された、『麒麟がくる』の川口春奈さんがそうでしょう。
しかし、こうも露骨に狙われるとどうかと思います。しかも成功シナリオありきに思えてきます。
◆水着写真集も人気の関水渚 『どうする家康』でのブレイクで期待される「朝ドラヒロイン」への道(→link)
残念ながら本作の田鶴は、あの脚本のため、さして魅力的には思えませんでした。
一方、以下の記事は非常に興味深い。
◆グラドル清水あいり「どうする家康」出演で大バズリ! リハで松本潤とすれ違い聞かれたこと(→link)
こちらの部分です。
本当は三河弁で話すのですが、リハーサル日に演出家さんから「役柄を関西出身の設定にしますので、清水さんのいつもの関西弁でお願いします」と言われて、「私にはこれといって取りえはありませぬが、殿がお喜びになることなら、どんなことでも」をいつもの自分のイントネーションで話すことに。
現場の判断基準が弛緩しきっているのが明白ですね。
関西から三河まで、あの時代の女性が移動するのがどれだけ大変だったことか。
事前に関西まで情報が伝わってきていた設定なのか?
あるいは、たまたま三河にいた関西出身の女性なのか?
『麒麟がくる』の菊丸は「神出鬼没の三河農民」とされていました。のほほんと出てくるようで、移動範囲が広すぎて、只者ではないと思えていました。
そういう積み重ねをせず、本作では、場当たり的にノリで決めているだけ。
あまりに粗雑な現場ではありませんか。
おそらく話題性だけ集めればいいと開き直っているのでしょう。
どうする女性名
ふと気になったのが、このドラマの女性名です。
瀬名の母が「巴」。
早川殿が「糸」。
巴は『鎌倉殿の13人』。
糸は『軍師官兵衛』に同名女性がいます。
かぶっているのは偶然?
ちなみに三谷幸喜さんは、義時の妹・実衣については『ムーミン』のリトルミィから。
善児の後継暗殺者・トウは豆板醤から。
個性的なセンスを発揮しておりました。
本作では、今回「阿月」という女性が登場しましたが、耳にした瞬間、「あぁ、あれね」と思った戦国ファンも少なくないでしょう。
浅井長政が裏切ったとき、お市が兄の信長に知らせるため「小豆袋を送った」という逸話であり、後世の創作話です。
「阿月」という名は、その逸話が何らかのカタチで触れられる伏線でしょう。
何も知らない視聴者にとっては、驚きの展開になるのか。
「ネット震撼」とかなんとか、そういう見出しでニュースになるかもしれませんね。
どうする「伏線」
昨今、同一層が朝ドラと大河の感想をSNSに書き込む傾向が強まっています。
そうなると両者の傾向が混ざり合っていく。
好例がこちらです。
◆「オレ達の溝端淳平回」繊細な今川氏真像を演じSNS絶賛【どうする家康】(→link)
『おかえりモネ』で、ヒロインの相手役であった菅波につけられた「俺たちの菅波」というトレンドが、演者が同じ『鎌倉殿の13人』北条泰時にたどりつき、今年まで呼ばれたというものです。
なんでも同じ呼び方をすればよいというものでもないでしょうが。
また、朝ドラ発「反省会」というハッシュタグが、今年は大河でも広がり、中国語圏にまで拡大しております。
そんな朝ドラのトレンドを踏まえまして、
◆これを読めば“朝ドラあるある”がわかる!「朝ドラ辞典」<舞いあがれ!完結記念>(→link)
便利なこちらでも。
【伏線(ふくせん)】
重要な展開に関わることをあらかじめほのめかしてあるもの。そうとは気づかれないべきところ、近年、バレバレなものが視聴者には好まれる。フラグと混同されている節がある。本来の意味と誤解されがちな用語にはほかに「アドリブ」がある。
類語:フラグ
関連語:アドリブ
そして朝ドラ鑑賞者が、感動した事例がこちらですね。
◆【舞いあがれ!】初回冒頭シーンの“謎”がついに判明!?「全部繋がった」「ミスリードされた」(→link)
ネット上では「初回冒頭のシーンを見て『パイロットになる夢叶えて家族乗せるドラマか』って思ったけど…。次々と進む道が変わって迷走してると思いきや、最後に全部繋がったね」「ミスリードされた」「予告の時点で薄々察してたけど空を飛ぶ車のパイロットが舞ちゃんになる展開なんだろうな」とうなずいていた。
どんなに無茶苦茶でも、繋げればこう言ってもらえる。
この朝ドラの初回でヒロインが乗っていたのは大型旅客機で、最終回では「空飛ぶ車」でした。
機体が全く異なるのに、そういうことはどうでもよいのでしょう。
そもそもヒロインは、パイロットになるという触れ込みでした。
それが三菱ジェットをモデルとして展開しようとして、その三菱ジェットが頓挫したため、迷走に迷走を重ねる。
ヒロインが迷走する朝ドラは他にもあるものの、この場合は計画的にそうしたのか、はたまた現実に巻き込まれたのか、判然としないミステリアスさがあったものです。
それでも辻妻合わせをすれば、ネットのドラマ通は感謝してしまい、記事に仕立てれば「ネットでは大ウケ」となるのです。
さしずめ阿月については、こんな記事タイトルになろうか、と作ってみました。
◆【どうする家康】侍女・阿月の“謎”がついに判明!?「全部繋がった」「伏線回収」「騙された」
次週以降、こんなタイトルの記事を見かけたら教えていただければ幸いです。
どうする逆張り
本作は、過去大河のオマージュというより「パクリ」や「逆張り」を感じさせます。
時代が近いせいもあってか、『麒麟がくる』が特にひどい。
大河の近作で主役を務めたほどの人物ならば、それなりのリスペクトが欲しいところですがその逆です。
「明智光秀がイケメンで心清らかだと思ってた奴wwww」
「足利義昭ができる人だと思ってた?ww 残念w」
そう草を生やしながら、あえて神経を逆撫でするような人物像にしていると思えます。
『麒麟がくる』は、キャラクターとして捻っていたというよりも、近年の研究をふまえつつ、池端俊策さんが考えて練った像です。
そういう史実準拠でなく、このドラマはただの逆張り、キャラ付けとして描いているように思えます。
そんなことは大河パロディ枠でお願いしたいのです。
プロデューサー曰く、
◆「どうする家康」制作プロデューサーが語る!新たな家康像の魅力(→link)
今作の主人公である徳川家康の魅力について、磯さんは「真面目で誠実な人物が最終的に天下人になったことが面白いと思うし、今の人たちに夢を与えられるような気がしています」と語りました。
とのことですが、これ、『麒麟がくる』とかぶるのでは?
真面目で誠実な人物が最終的に謀反を起こしてしまう。
その信念は決して無駄ではなく、泰平の世をもたらした。
今の人たちに、そんな夢を与えられる『麒麟がくる』――そう語られるなら、納得できますが。
人生意気に感ず、功名誰か復た論ぜん
人生意気に感ず、功名誰か復た論ぜん。魏徴『述懐』(※魏徴作かどうか諸説あり)
作品の良し悪しは、グッと感じるところがあるかどうか。視聴率? キャストスタッフの知名度? そんなことはどうでもよい。
『光る君へ』で一条天皇も愛読の『貞観政要』は泰時も家康も参考にした政治指南書
続きを見る
漢詩名言から始めましたが、心理学用語【ハロー効果】でも説明できます。
ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる(認知バイアス)現象のこと。
例えば、ある分野の専門家が専門外のことについても権威があると感じてしまうことや、外見のいい人が信頼できると感じてしまうことが挙げられる。Wikipediaより
今回の大河って、ともかく「脚本家がすごいから褒めろ」という圧力が漂っているように感じます。
提灯ネットニュースなどは、脚本家の過去作品をずらずら並べたりしている。
典型的な【ハロー効果】狙いですね。
しかし、その効果はいつまでもつのか。映画は苦しいようです。
◆木村拓哉『レジェンド&バタフライ』興収30億円に届かず…終映間近も話題消滅!(→link)
今年はどうにも、脚本の時点で疑問を感じる描写が目立ちます。
そんな思いを抱えつつ、Amazonプライムを見ていたところ、大河脚本家が手がけた新作ドラマのバナー広告が出てきました。
大河と、このドラマを手がけるとなると、作業量が多すぎるのでは?
『麒麟がくる』のように、脚本家がチーム体制ならまだわかりますが、心配になってしまったほどです。
大失敗とは、得てしてこういうノリに乗った時に起こるもの。ますます不安感が募ります。
どんなに妙な展開だろうと、脚本の【ハロー効果】頼りならば、周囲は意見がしにくくなります。
諫言なんてできなくなって、むしろ先回りして忖度する。誰かの顔色を伺い、それに合致することが成功だと思うようになる。
組織はそうしてダメになってゆく。みんなが同じ方向に進めばこそ、完成度は高くなる。それが昨年で、今年はバラバラなのでしょう。
◆三谷幸喜「みんなが同じ方向に向かって進んでいった結果の完成度」 小栗旬と対談 きょう発売写真集で(→link)
そんな気配を感じるのです。細かい描写がどうこうではなく、決定的に何かがずれている。
『どうする家康』はペース配分がヤバい?1983年の家康大河と徹底比較
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このズレは、大河に向いていないことが根本にあるように思えます。
具体的に言いますと、民放テレビマンの感覚を持ち込み、大河でも成功させてやろうという野心ですね。
こういう記事にあるような感覚です。
◆カンニング竹山「なぜ抗議する?」 ペンギン池落下騒動に持論「炎上から謝罪までの“仕組み”気持ち悪い」(→link)
◆カンニング竹山にテレビマンから「よく言った!」の声 ペンギン池落下で持論(→link)
ペンギンの池に落っこちる――その感覚そのものがつまらない、というか見ていて辛くなるから炎上したのに、完全な逆ギレ。
「笑わない方がおかしい!」「ネット民が悪い!」というような理論を展開する。
日刊ゲンダイですらつっこんでいます。
◆テレビはなぜ腐ったのか…元テレビ朝日“中の人”がえぐる闇と問題点、そして未来(→link)
──なぜこうもテレビが衰退したのでしょうか。
「テレビ局内にあるいくつものピラミッドからくる“思い込み”だと思います。
テレビの世界は、キー局が一番偉い、局員が高給取りで偉い、男社会でプロデューサーに女性は極端に少ない。
テレビを支えるCMのメイン商品は女性のためのものばかりなのに、ピラミッドの頂点のオジサンたちの思い込みで制作されています。
トレンドに皆が飛びついたバブル時代と異なり、これだけ多様化した今、十把ひとからげに“女性に人気”“Z世代に刺さる”というのも無理な話。
ユーチューブやSNSに負けるのも無理はないと思います」
感覚がズレていて、つまらないからこそテレビ離れも進んでいるだけ。
ごくごくシンプルなことで、本作『どうする家康』の作り手にも熟読していただきたいところです。
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【参考】
どうする家康/公式サイト