徳川家康像/wikipediaより引用

どうする家康感想あらすじ

『どうする家康』はペース配分がヤバい?1983年の家康大河と徹底比較

2023/03/16

幼少期をすっ飛ばし、桶狭間の戦いから始まった2023年の大河ドラマ『どうする家康』。

「今年は主要イベントに集中して、効率的に見せていく流れなのか?」

開始当初はそんな印象を抱いた方も少なくなかったでしょう。

しかし、第10回放送が終わった現在、その印象は急激に変わりつつあります。

おままごとやら瀬名の奪還やら側室選びやら、独特すぎるオリジナル物語が展開され、今では逆に「進みが遅くなってきてないかか?」と心配する声も多数。

織田信長や明智光秀と違い、徳川家康は本能寺の変を終えてからも、まだその歴史は長く30年以上も続きます。

果たして描ききれるのか?

もしかして大坂の陣はスッ飛ばされてしまうのでは?

ということで本稿では『どうする家康』のペース配分について、1983年大河『徳川家康』の進捗度とも比較しながら、考察してみたいと思います。

 


ペースが遅すぎない?

いくらなんでもオリジナル展開が多すぎる――『どうする家康』については、他のメディアでもペース配分が取り沙汰され、すでにこのような記事も出ています。

◆『どうする家康』の「完全フィクション回」に驚きと賛否 41話で家康の生涯「残り54年描き切れるか」の憂慮(→link

本記事では、家康の正妻である瀬名(築山殿)の奪還で2週間も使ったことに着目し、懸念の声があがっていました。

《家康って長生きして大坂の陣まであるのに、フィクションに2話も費やして大丈夫なんか?》

《肯定・否定とかではなく、単純に時間が足りるのかが心配 瀬名奪還に2週もかけていると、「家康が絡んだ有名な出来事なのに駆け足orそもそも描かない」みたいなことも出てきそうな気が》

と、心配する声が。

桶狭間の戦いに続き、三河一向一揆も描かれ、当面の出来事はクリアされていますが、確かに家康はこの先もイベント盛りだくさん。

吉田松陰の妹・文が主役ならばともかく、家康のラブストーリーが延々と続いたりするのですから、視聴者が戸惑うのも自然なことでしょう。

しかし、こうした懸念をよそに「ペースが速い」という意見もあります。

 


「若者ウケを狙ってテンポが速い」という意見

「速い」という意見を見てみましょう。

以下の記事が公開されてから、なかなか沸騰しているのですが、

◆NHK大河「どうする家康」がさえない最大の理由 TV業界と視聴者の“感覚のズレ”あらわ(→link

いささか不可思議な記述もあります。

「一つ一つの話を派手にスピーディーにしたところで、大河は1年の長丁場です。ジャニタレを起用したって、そもそも動画を倍速視聴したり、緊張感が10分と持たない若者向きのコンテンツではないでしょう」と、あるベテランプロデューサーはこう続ける。

「一つ一つの話を派手にスピーディー」という見立てなのですが、前述の通り、瀬名の奪還で放送2回分、踊りながらナンパもしていた三河一向一揆で3回分を費やしていました。

前年『鎌倉殿の13人』では、三河一向一揆にあたる第8回が「いざ、鎌倉」であり、主人公の北条義時らが、いよいよ鎌倉入りを果たす局面でした。

石橋山の戦いに敗れた頼朝が房総の武士を味方につけ、関東での足場を固める――いわば一区切りついていたわけです。

『どうする家康』の問題は、むしろ、家康の成長がまったく見られず、いつまで経っても誰かのせいにするような、ダラダラとした性格が問題なのかもしれません。

彼は大将にもかかわらず、いきなり戦場から逃げ出すようなタイプであり、それがずっと続いて区切りも何もない。

それでも記者が「スピーディー」と主張されるなら、今川義元の扱い辺りから連想されているのかもしれませんね。

野村萬斎さんという大河主演の経験者を、第1回【桶狭間の戦い】でアッサリ退場させていた。

それがスピーディーという印象に繋がったのではないでしょうか。

瀬名と家康のおままごとや、側室選びなんかより、ずっと大事なはずの義元があの扱いでは、そう感じたのも無理はないかもしれません。

結局、今川の重要人物である寿桂尼太原雪斎は登場せず、氏真の妻・早川殿についてもキャスティングの発表だけで画面には現れず。

この辺りのチグハグさも、戦国ファンから不可解に思われている要因の一つでしょう。

 

大河の流れはどうなのか?

そもそも大河ドラマはどんなフォーマット(お約束)があり、それに伴う例外が存在するのか。

前提について見ておきましょう。

◆主人公の子役時代があるとは限らない

三谷幸喜さんの大河ドラマは、主人公の子役時代がありません。

近年では『麒麟がくる』も、青年期から始まっておりますが、回想があるため“子役はいる”パターンとなりましょう。

◆主人公が亡くなるまで描くわけではない

晩年、穏やかな生き方をしているように終わることも多い。

むしろ死の瞬間まで描いた『鎌倉殿の13人』が少数派ですね。

◆主人公のライフイベントで重要なものを消化しないこともある

『秀吉』は、晩年の失敗とされる【朝鮮出兵】を描きませんでした。

国際関係からの配慮だという指摘も見かけますが、豊臣政権の流れを大きく変えた【豊臣秀次事件】もなく、最晩年における秀吉の暗黒な姿を描かないことは、当時から批判の対象となりました。

近年でも『麒麟がくる』は【本能寺の変】までがじっくりと描かれ、光秀が討ち死にする【山崎の戦い】は描かれていません。ただし、これは池端俊策さんの構想通り。

少し古くなりますが、不可解だったのが『天地人』でしょう。

直江兼続の戦績でも最も有名な【慶長出羽合戦】が描かれなかったのです。

前田慶次の朱槍と最上義光の兜は制作され、原作にはあったのですが、なぜか放送されず――当初はやる予定が何らかの理由で取り止めになったと推察されます。

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こうした過去の大河を踏まえると、松本潤さんがお人形遊びをしていたことも、制作サイドとしては「あり」なのかもしれませんね。

最終的には、家康の悪事を描きたくないという理由から、淀の方と秀頼を死に追いやる【大坂の陣】をカット!という大胆な展開も考えられる。

【関ヶ原の戦い】で「小早川秀秋に対してどうする?」と焦りながら最終回だぁ!という斬新な家康もあるかもしれませんよ。

問題は、それで視聴者が楽しめ、納得できるのかどうか。

そこでこの先は、過去のクラシカルな大河ドラマで家康がどう描かれたか、比較してみましょう。

 


1983年『徳川家康』のペース配分は?

徳川家康が大河ドラマの主人公になるのは今年で3度目です。

過去2回は以下の通り、

1983年『徳川家康』
2001年『葵 徳川三代』

であり、後者の『葵 徳川三代』は文字通り三代を描くため、さすがにスピーディな展開でした。家康の時代は豊臣政権の手前から始まり、夏までには秀忠時代へ移っています。

ですので本稿では、1983年『徳川家康』の放送を見つつ、『どうする家康』の進捗度合いと比較しみましょう。

なお、当時の大河ドラマは全50回でした。現在は短くなり、2018年より、最長でも47話となっています。今年は47話の予定と推察できます。そこはご注意ください。

◆1983年大河『徳川家康』の進捗度

第1回 1月9日 竹千代誕生

第2回 1月16日 離別

第3回 1月23日 人質略奪

第4回 1月30日 忍従無限

第5回 2月6日 人質交換

第6回 2月13日 試練の時

第7回 2月20日 初陣

第8回 2月27日 桶狭間

なんと【桶狭間の戦い】を迎えたのは2月末、第8回放送でのことです。

これと比較すると、『どうする家康』は断然速い! しかし……。

第9回 3月6日 岡崎入城

第10回 3月13日 三河一向一揆

第11回 3月20日 興亡の城

第12回 3月27日 人生の岐路

3月になると、すでに『どうする家康』と同じところまで進んでいます。

むしろ途中から追い抜いているようにも見え、4月から5月にかけては、戦闘面での見せ場でもある対武田戦を迎えます。

第13回 4月3日 三方ヶ原合戦

第14回 4月10日 父と子

第15回 4月17日 陰謀

第16回 4月24日 無情の風

第17回 5月1日 無血の勝利

第18回 5月8日 謀叛発覚

第19回 5月15日 長篠の戦

『どうする家康』における武田信玄役は阿部寛さん、武田勝頼役は眞栄田郷敦さんですね。

西暦で見ますと、信玄とぶつかる【三方ヶ原の戦い】が1573年で、勝頼との対決となる【長篠の戦い】が1575年。

これに対し『どうする家康』の第13回は1570年で、京都見物を楽しむ様子です。

なんでも本多忠勝が浅井家の武士とケンカしてしまうとか。歴史的イベントには取り掛からず、お市の方の結婚にスポットが当たりそうです。

1983年版大河と比べて、やはり遅れが生じていますが、この先の描き方一つでペースが大幅に遅れてるとまでは言えませんね。

第20回 5月22日 難題

第21回 5月29日 信康追放

第22回 6月5日 落花有情

第23回 6月12日 安土への道

第24回 6月19日 本能寺の変

第25回 6月26日 伊賀越え

過去の大河にならうなら、5月後半か6月には、瀬名も織田信長も退場しそうです。

今から心の準備をしましょう。

第26回 7月3日 次に吹く風

第27回 7月10日 小牧長久手の戦

第28回 7月17日 数正出奔

第29回 7月24日 三河の意地

第30回 7月31日 両雄対面

第31回 8月7日 妻ならぬ母

第32回 8月14日 家康江戸入り

第33回 8月21日 戦雲動く

第34回 8月28日 渦中の人

7月から8月は、秀吉との対決になりそうです。

松重豊さん演じる石川数正が人気ですが、それも7月には豊臣へ出奔してしまうんですね。

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家康と結婚する秀吉の妹・旭姫は、キャストがまだ発表されていません。

『真田丸』の清水ミチコさんはなかなか印象的でしたが、今回は誰なのか、気になりますね。

第35回 9月4日 太閤死す

第36回 9月11日 分裂の芽

第37回 9月18日 窮鳥猛鳥

第38回 9月25日 機は熟す

第39回 10月2日 関ヶ原前夜

第40回 10月9日 関ヶ原

第41回 10月16日 将軍家康

第42回 10月23日 世界の風

第43回 10月30日 連判状の夢

9月から10月にかけて実りの秋では、家康も天下という大きな果実を求めて動きます。

関ヶ原がCG馬だらけではないことを願うばかり。

井伊直政と島津義弘の攻防については、大きな見どころになって欲しいですが、さすがに注目しないわけはないですよね。

ともかく家康史のメインディッシュの一つだけに、BBC『ウォリアーズ』を超える、そんな意気込みを期待しています!

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第44回 11月6日 騒動の根

第45回 11月13日 巨城の呼び声

第46回 11月20日 老いの決断

第47回 11月27日 大坂 冬の陣

第48回 12月4日 大坂 夏の陣

第49回 12月11日 落城

最終回 12月18日 泰平への祈り

思えば家康の人生は、最晩年まで戦が続いていました。

普通の大名でしたら【関ヶ原の戦い】がクライマックスで十分なのですが、家康はさらに【大坂の陣】でも中心にいるのです。

12月に大坂落城が描かれることをやはり期待してしまいますよね。

こうして過去大河と比較してみると、3月現在の展開速度はそこまで大きく遅れておらず、最終回が関ヶ原ということは流石になさそうではあります。

むしろ問題は「そうした指摘が出ていること」ではないでしょうか。

 

配分をどうする?

ペース配分が遅いにせよ速いにせよ、ドラマに何か違和感があるからこそ、記事や感想が出てくる。

要は「視聴者のニーズとマッチしていないのでは?」という問題が考えられます。

ではなぜ、そんな現状となっているのか、考察してみました。

◆テンポが遅いと感じるのはなぜ?

視聴者や語り手が望む見どころになかなか到達しない。つまり余計なシーンが多い。

主人公の人形遊び。

徳川家康と瀬名の馴れ初め。

「白兎」とねっとり語りかける織田信長。

こうした意味不明な要素はいらんから、もっと迫力のある合戦や、家康幼少期の逸話を見せくれ――そんなストレス感があるのではないでしょうか。

◆一方でテンポが速いと感じるのはなぜ?

こちらは必要な場面が無いからでしょう。

【桶狭間の戦い】ならば、あの名場面は欲しい。

真偽はさておき、信長が「敦盛」を舞うところは見たい!

荒唐無稽な忍者が出てくるのだから、定番のサービス映像があってもいいじゃないか――。

そんな感情を抱いている最中、いきなり今川義元の首を信長が槍投げしたら、何事か、と思っても仕方ないでしょう。

結論。

『どうする家康』は、誰も求めていないシーンばかり出てくる。視聴者のニーズに応じていないな……と思えるのです。

 

“シン・大河”に挑んだ?

これぞ新解釈だ!

古沢マジックだ!

“シン・大河ドラマ”だ!

放送開始前は、そんな盛り上げムードの記事が出ていた『どうする家康』。

いざ蓋を開けてみると、3月12日放送の視聴率が7.2%という惨憺たる結果となってしまいました。WBC戦とかぶっていたのでそこは考慮するとして、問題はそれまでの視聴率です。

第7話13.1%
第8話12.1%
第9話11.8%

WBCがあってもなくても、10%ギリギリの攻防だったかもしれないのです。

いったん離れた視聴者は来年まで大河を見なくなるリスクもある。

視聴率はもはや信頼度の足る指標ではないにしても、NHKオンデマンド(VOD)での成績が良いという報道もでない。

ここまで視聴者ニーズを外しているとなると、やはり根本的な戦略ミスがあったのではありませんか。

ゲームのようなVFX。

ダークな衣装。

軽快なノリ。

家康と瀬名がキス寸前となるラブシーン。

遊び女やくノ一が出てくるセクシー狙い。

プロレス技まで使うアクション。

素っ頓狂なナレーション。

そして頼りない家康。

その他もろもろ……。

どれもこれも絶望的なまでに噛み合っていませんが、その謎を解く手がかりとなる記事を見つけました。

各種メディアで派手な宣言をしていた『レジェンド&バタフライ』が、赤字になるというニュースです。

そこでは『どうする家康』と同じ脚本家起用の狙いが記されていました。

◆番宣23本出演、普段とは違うキムタクを見せたが…木村拓哉“信長映画”がそれでも赤字の理由(→link

問題の部分はこちらです。

「当初は10億円ほどの製作費で撮る予定でした。

古沢さんは低予算で撮れるラブコメを描こうとしたのですが、出来るだけドラマティックに描きたいという監督の思いもあり、製作費が徐々に嵩んでいった」

低予算で撮れるラブコメを描こうとした――。

これが大河でも求めていたものではないでしょうか。

低予算で、従来の大河ファンが求める映像は撮影できずとも、軽快なラブコメタッチならできるし、ヒットするかもしれない。そんなニーズを踏まえての起用かもしれません。

大河ドラマは、その路線で成功した先例もあります。

2021年『青天を衝け』です。

あのドラマはコスパがよく、【桜田門外の変】や【長州征討】そして【戊辰戦争】は、2013年『八重の桜』にはるかに及ばない出来でした。

パリでのロケが制限される状況で、VFXを駆使し、その出来は不自然さが目立ちました。

渋沢栄一の実績は、明治以降が重要です。

幕末は大した存在でないにもかかわらず、明治維新に入る以前を引っ張り、渋沢が成し遂げた商業成果の描き方はおざなり、上っ面だけなぞって、何ら詳しい説明のない描写ばかりでした。

ゆえに幕末史や日本近代史に詳しい人に感想を尋ねたら、いずれも苦笑あるいは憮然とされたものです。

それでもドラマとしては、成功したとされます。

渋沢栄一と千代の夫婦愛。

徳川慶喜の存在感。

『あさが来た』に続く二度目の五代友厚となったディーン・フジオカさんへの盛り上がり。

そうした視聴者側のキャラ萌え需要と、供給が一致していました。

明治以降の経済史――そんな堅苦しくて骨太な描写を求める視聴者は少なく、美男美女が繰り広げる恋愛ドラマとなれば数字が見込める。

需要と供給の一致が、ヒットへ繋がったのでしょう。

 

家康大河が本当に必要だったもの

本稿を書き進めていて、ネットミームとなった「顧客が本当に必要だったもの」を思い出しました。

ITビジネスにおけるシステム開発の迷走を風刺した絵です。

◆ 風刺画「顧客が本当に必要だったもの」の風景は実在した!? オチの絵にそっくりなタイヤのブランコが発見される(→link

『どうする家康』からは、そんな迷走を感じます。

そもそもの要求にこんな無理があったのではないでしょうか(あくまで私の妄想です)。

NHKが説明した要件

「徳川家康の大河を頼むよ」

「できれば若者にも受けるようにしてね」

「低予算でいけると助かるなぁ」

「難易度上げないでね。『青天を衝け』戦国版みたいな感じでどうかな」

それに対して、スタッフはこんな風に考えた(あくまで私の妄想です)。

甲の理解

「承知いたしました」

「でも、家康なんて……関ヶ原と大坂の陣まであるのに低予算とはなぁ……」

「そもそも家康って、若者に人気だっけ?」

乙の理解

「まぁでも、最近は『戦国BASARA』や『戦国無双5』でもイケメンで若いんですよ。発想を転換してみればあるいは……」

「よし、徳川史観を打破しましょう!」

丙の理解

「恋愛メインなら予算も抑制できるハズ。ジャニーズにしよう。『軍師官兵衛』も『青天を衝け』も、主役や準主役をそうしたじゃないか!」

「美男美女を揃えてこそ大河ですよ!」

丁の理解

「『鬼滅の刃』読んでます? もうめっちゃ面白くて。ああいう和風の世界観って、若い子も好きじゃないですか」

「で、『鬼滅』の魅力は彼! 我妻善逸くんです♪ ヘタレで泣いちゃうけど強い。そういうギャップ萌えですよね」

「和風の世界観でギャップ萌え、これですよ! ヒロインは禰豆子ちゃんみたいな感じはどうかな」

戊の理解

「最近、フェミがSNSなんかでうるさいよね。ちょっとエロいだけで大騒ぎしてさぁ。でも、エッチな路線が好きな男の子っていると思う! そういうちょっと懐かしいセクシー路線でいきましょう! ゲームや漫画でもあるし」

「なるほどー、若者ウケを狙えそう!」

己の理解

「そういう男性だけが得するようなサービスはいかがなものでしょうか?」

「腐女子のことも考えて!『鎌倉殿の13人』はボーイズラブあったでしょ!」

「イケメンドS王子の信長様なんていいじゃないですか。決め台詞は“俺の白兎”なんてどうですか?」

「もちろんイケメンに脱いでもらわないと♪」

庚の理解

「まあ、予算ケチるっていうし、そういうウケ狙い連発しかないかなあ」

「SNSを活用しましょうか。そういうウケ狙いを連発していけば、ハッシュタグも盛り上がるし。ファンアートも投稿されるし。そういう軽いノリが今どきの若い層にはウケますよね」

辛の理解

「そうすね。人間、案外自分の頭使ってねえし。若者なんか倍速視聴してじっくり見ないし。大丈夫っしょ。戦国時代は人気あるし」

「SNSのコメントをまとめたニュースをバンバン流せば、ま、なんとかなるっしょ。じゃあその辺考えていきますわ」

壬の理解

「映画とのタイアップも進めていきましょう!『レジェンド&バタフライ』というヒット間違いなしの大作映画と脚本家が同じです。こんなチャンスはありませんよ! 宣伝対策、オッケーです!」

「テーマがマニアックだった『鎌倉殿の13人』もウケたし。『青天を衝け』もなんだかんだで成功したし。大丈夫ですよ」

「じゃあウチからの隠し球『岸辺露伴は動かない』映画版とも絡めないと!」

癸の理解

「ええっと、恋愛メインでコメディ要素強くて、ドジっ子ヘタレ家康を描くってことか……」

「じゃあ、あの脚本家さんがいいっすね!」

一方、視聴者は?

視聴者

「まっとうな、オーソドックスな、家康の人生が見たかったんだよね」

「大河は勉強になると思ってみているけど、これは見た瞬間になんか怪しいって思えるんだよ」

「ちがう、こんなものは求めてない!」

長々と私の妄想にお付き合いいただき、ありがとうございました。

こんなにダラダラと書かずとも、「船頭多くして船山に登る」ということわざ一つでも表現できますね。

しかし、それでも成功作を生み出せる達人もいます。

大河は長丁場です。その方が成功することもありるのです。

典型例が『青天を衝け』の大森美香さんです。

彼女は朝の連続テレビ小説『あさが来た』を手がけました。

このドラマで五代友厚の人気がフィーバー状態となると、五代の出番を増やしたように思えます。そのせいか回収されなかった伏線があり、かつモデルの人物業績を端折るような構成になったのです。

それでも、それゆえにか、伝説的なヒット作となりました。NHKもその前歴を見込んで大河に抜擢したのでしょう。

『どうする家康』は、柔軟な脚本にしたのだと推察できます。

ざっと流してみて、手応えのある要素を分厚くして、そうでないところを薄くする――そういう手法が有効な場合もあります。

マイナーな時代や主人公ならば、アラが気づかれにくく、それでも問題がないこともある。

しかし、よりにもよって『どうする家康』は、日本史上屈指の有名人である徳川家康を扱ったのです。

小手先でペース配分をするような題材ではありません。

もしも、これがもっとマイナーな題材や時代であれば、かえって成功したかもしれません。

 

車の速度を気にする前にまずはパンク修理だ!

一方で、頑固な脚本家もいます。

2020年『麒麟がくる』です。あの作品は脚本家が複数いるチーム制でした。

しかし設定がぶれるとか。つなぎがおかしくなるとか。テーマが歪むとか。そういうことは無かった。

脚本家である池端俊策さんは、オファーを受けたことから、テーマや主役の選定まで、講演会で語っています。

その話からすると、NHK側が彼の作家性に合わせていることがわかるのです。

『麒麟がくる』は難解で個性的な作品です。

わかりやすさやウケ狙いばかりを考えていたら、ああした作風にはならなかったでしょう。ましてや複数の脚本家体制ですから、強固な思い入れあっての作品のはず。

『鎌倉殿の13人』は、三谷幸喜さんが先例ともいえる『草燃える』の大ファンだったことが重要に思えます。

三谷さんのそんな好みを理解したNHK側が持ち込み、かつスタッフは『ゲーム・オブ・スローンズ』を意識していたことを公言していました。

『草燃える』をベースとして、そこに2020年代らしい『ゲーム・オブ・スローンズ』のようなアレンジを加える。最新研究も反映させる。これで面白くないワケがない。

池端さんも、三谷さんも、歴史のおおよその流れは理解していて、噛み砕くことができる。

そんな基礎がしっかりしているからこそ、斬新な作品が生み出せたのです。

そうした基礎ができていない状態で、歴史ドラマにチャレンジしたらどうなるのか?

しかも、目新しさを狙うような取組をしたら?

SNSやニュースで盛り上げようにも限界はあります。『鎌倉殿の13人』はトークショーや祭りが賑わいましたが、それはドラマそのものに力があったからこそ成立できた。

思えば三谷さんも、舞台や民放でのヒットを提げて大河に起用されました。

もしも彼なら、今年はどう表現したか?

『鎌倉殿の13人』を『徳川家康』に置き換えると、想像できます。

先例ともいえる『徳川家康』をベースにし、かつ海外ドラマや今の潮流を入れつつ、最新研究を反映させる――それでよかったのでは?

『どうする家康』は、ペース配分が速いとも、遅いとも言えない。

ただ、根本の狙いが間違った。ゆえに速いとクレームをつけられ、遅いと批判される。

そして進んでも退いても苦戦する状況に追い詰められてしまったのでしょう。

車が走っている。

パンクしているのに、そのまま走っている。

その車の速度を考えますか?

それよりもまずタイヤ交換だろ!

と、なりますよね。

『どうする家康』のペース配分を考えるということは、この状況のようなもの。スピードが適切かどうか考える前に、まずタイヤ交換について考えねばならないのです。

それぐらい今年の大河は壊れている。

この状況で「パンクくらいどうでもいいよ」と走らせようとする者がいれば、その人は楽観的か無責任か、そんなところでしょう。

背水の陣で巻き返せるかどうか。

まだ序盤ですが、既に正念場です。

どうする製作陣――。

家康は幾度も窮地を抜け出し、江戸時代を切り開きました。そんな家康を扱うドラマの作り手は、どうなるのでしょうか。

みなさん不満なんですかねえ。


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文:武者震之助(note

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

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