鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第41回「義盛、お前に罪はない」

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我こそは鎌倉随一の忠臣じゃ!

和田勢を追い詰めた。我が方は勝利は目前だ。

大江広元の報告を聞いた義時は、ふと何かを考え、鎌倉殿の陣頭に立ってもらうことを提案します。

政子が理由を尋ねると、直々に声を掛ければ和田も降参すると狙いを語ります。

実衣が反対しても、私の言葉なら聞くと実朝は前向きな姿勢です。

流れ矢に当たったらどうするつもりか?と、なおも実衣がごねると、政子はキッパリ!

「武家の棟梁が流れ矢を怖がってどうするのです。戦をその目で見てらっしゃい!」

姉上は口を挟むなという実衣に対し、乳母は控えていろと返します。

勇気を得た実朝は、義時に頼みます。

「義盛は必ず私が説き伏せてみせる。命だけは取らぬと約束してくれ」

そして華麗な甲冑に身を包み、義盛の前へ。

矢を構えるよう命じていた義盛は唖然としています。

「鎌倉殿!」

「義盛! 勝敗は決した。これ以上の争いは無用である。おとなしく降参せよ!」

「俺は……俺はウリンが憎くてこんなことをやったんじゃねえんだ!」

「わかっている」

「鎌倉殿!」

「義盛、お前に罪はない。これからも私に力を貸してくれ。私にはお前が要るのだ!」

そう訴えられ、泣き出す義盛。

「もったいのうございます! そのお言葉を着方だけで満足です! みんなここまでじゃ。聞いたか。これほどまでに鎌倉殿心が通じああった御家人が他にいたか? 我こそは、鎌倉随一の忠臣じゃ! みんな胸を張れ!」

義盛の感極まった言葉が響く。

と、その時でした。

義時が目配せすると、それに応じた義村が矢を一斉に放たせるのです。

利で結びついた二人は、忠の象徴ともなった義盛を容赦なく殺す。

義盛以下、和田一族に続々と突き刺さる矢。

言葉を失くす実朝。

「お分かりか! これが鎌倉殿に取り入ろうとするものの末路にござる!」

忠などない義時がそう宣言すると、義村たちが和田勢に襲いかかってゆきます。

忠臣の死に涙するしかない実朝。

泰時は、ここで父のあまりに酷い策に気づき、思わず睨み返してしまいます。

泰時の目には八重の非難も込められているような気がする。あなたはこんな人じゃなかった、こんな人だったら愛さない! 八重のそんな声も聞こえてきそうです。

あるいは上総広常の声も混ざっているかもしれない。

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矢が刺さり、目を開けたまま屍となった義盛。

それに背を向け、義時が悠然と歩き去ってゆきます。

顔が一瞬だけ苦痛に歪みます。目には涙もうっすらと……ほんの少し、八重を愛し、広常を慕っていたころの顔に戻ったような瞬間。

義時は自分の意志でこんなことをしているのでしょうか?

それとも天の声に操られているとか?

あまりに恐ろしい運命です。

 


忠臣和田義盛の妻・巴なるぞ!

義盛の帰りを待つ巴のもとに、義盛の息子・朝比奈義秀がやってきます。

「すぐにお逃げくだされ……」

義盛は、言い残していました。

「もし俺に何かあった時は、お前は鎌倉を離れろ」

生き延びるんだ、あの時のように生き延びろ――その言葉を胸に、義盛の直垂の上に甲冑をつけ、馬に跨った巴の姿があります。

「我こそは忠臣和田義盛の妻、巴なるぞ!」

そう名乗ると、敵を斬り捨て、人馬一体となった巴は消えてゆきます。

義盛の遺骸を探しにゆくのか、菩提を弔いにゆくのか。はたまた駆けて駆けて、天馬となって空に飲まれてしまいそうでもある。何もかもが美しい人だった。

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かくして二日間にわたり繰り広げられた和田合戦は終結しました。

知家が戦の後始末をしながら、惨状を目にしています。

戦死者の妻が泣いていて、屍がいくつも並ぶ。こうした生々しい遺体映像は近年の大河では珍しいと思います。

敵方の死者は234で、生捕りが27。

対する味方は死者50に、手負いが1000。

討ち取った敵は片瀬川に晒したと報告する義時です。

実朝は義時に、政(まつりごと)はかくも多くの骸を必要とするのかと訴えます。

実朝が生まれる前から多くの者が死に、その犠牲の上に鎌倉はある。

義時はさらに

「人を束ねていくのにもっとも大事なものは、力にございます」

と結論づけます。

あの歩き巫女がその様子をジッと目にしている。

「力?」

実朝の疑問に対し、義時が説明を続けます。

力を持つ者を人は恐れる。恐れることでまとまる。あなたのお父上に教わったことだと言い切る。

「私は此度のことで考えを改めた。これより政のことはよくよく相談していくつもりだ」

そう言われ、義時はその通りだと言いたげです。そのために宿老はいるのだと。

「そうではない。万事、西のお方の考えを伺っていく」

「上皇様にですか」

上皇様に頼るのかと愕然とする義時。

「心を許せるものは、この鎌倉におらぬ」

義時はまた頼朝を持ち出し、朝廷に近づきすぎることを警戒していたと言い出します。

それても実朝は、父上や兄上のように強くないから、強い人の力を借りると言うのです。

「そうすれば鎌倉で血が流れることもなくなる。違うか? 小四郎、下がってよい」

実朝はそうして義時から遠ざかろうとするのでした。

 


そして実朝は朝廷へなびく

義時の前に、泰時、盛綱、そして朝時がいます。

義時は言いたいことがあれば申せと話しながら、勝手に戻っている朝時に「許した覚えはない」と冷たく言い放ちます。

と、ここで泰時が、和田合戦で板を盾とするアイデアを出したのは次郎であり、役に立つ男だと言葉を添えます。

「今の話、まことか」

「まことにございます」

義時の問いかけに応じ、即答する平盛綱。

「これよりまた私に仕えよ」

「ありがとうございます!」

この一件で、とりあえず朝時は許されました。しかし、朝時は知っている。その策は泰時のものだと。

「兄上……」

「役に立つ男になってくれ」

あっさりと返す泰時はいい人ではありますが、これではますます朝時の劣等感が高まり、こじらせてしまう危険性もありそうです。

「侍所別当になるそうですね」

政子がそう語るように、義時は政所も兼任することになりました。

これでもう向かうものはないと嬉しそうなのえ。時房も兄上はすごいと感動しています。

「あなたの望んでいた通りになったのではないですか、小四郎」

政子にそう言われ義時は、自嘲気味に笑います。

望みがかなったとはとんでもない。実朝は頼家どころか頼朝を超える強さがあるとのこと。

実朝はこう決意を固めていました。

「安寧の世を作る。父にも兄にもなしえなかったこと 戦はもういい。私の手で新しい鎌倉を作る」

そう誓う実朝を、千世が見守っています。

そこで関東に大地震が勃発。

マグニチュードは不明ながら「山崩れ、地避け、舎屋が破潰した」と理科年表にも表記される揺れで、建保元年5月21日、和田義盛が討死してから18日目に発生しました。

その後、実朝はこんな歌を朝廷へ送ります。

山はさけ
海はあせなむ
世なりとも
君にふた心
わがあらめやも

【意訳】山が裂け、海が干上がってしまうようなことがあろうと、私は君に真心をただ捧げます。

この歌を後鳥羽院が面白そうに披露しています。

「ちぎれるほどに尻尾を振っている」と笑みを含んだ声で言うのは藤原兼子

京都にしてみれば、鎌倉は野犬の群れに過ぎないのでしょう。

慈円は北条が酷い同士討ちをしたあとに大地震が起きたと指摘し、天はお怒りであると分析します。

鎌倉の安寧は、まだ先のようであると。

こうも血を流しても、鎌倉はまだまだ形を為さないのでしょうか。

 

MVP:和田義盛と巴

治める土地でも、財産でも、地位でもなく、忠にここまで価値を見出した坂東武者は、和田義盛が最初かもしれない。

思えば源頼朝は、これからは「忠義」を大事にすると言いました。

源頼家梶原景時に怒っています。

景時は結城朝光の引いた「忠臣は二君に仕えず」を責め立てておきながら、後鳥羽院に仕えようとした。

その梶原景時ならば、漢籍を読みこなし、「忠臣」がどういうものかくらい説明できたでしょう。概念は頭に入っている。

けれども「忠臣」という言葉に血を通わせ、鎌倉殿とこうも通じあい、響き合えたのは義盛が最初の気がします。

和田義盛もまた、武士道の一歩を刻んだ人物です。

忠臣の流した血は「碧血」と呼ばれます。

萇弘(ちょうこう)は蜀に死す。其の血を蔵すること三年にして、化して碧と為る。『荘子』「外物篇」

【意訳】忠臣であった萇弘は蜀で死んだ。その血は三年後、碧玉に変わった。

いま、碧血が流れる瞬間を見た気がします。

和田義盛は紛れもない忠臣でした。

忠臣が血を流したって、それが碧玉になるわけがない。そんなことは伝説に過ぎません。

けれども、人間はそうあって欲しいと願ってきました。

実物はなくとも、人々の願いの中で、流した血は碧玉となる。そういう思いがあればこそ、碧血という言葉は残ったのです。

 


総評

どう考えても酷い結末となる和田合戦。

しかし、義盛が成長していたこともあり、きれいな散り方に思えました。

作中でもあまり賢くない部類に入っていたはずが、あの策士の義村を上回るようなところまでみせる。

難しい言葉もテキパキと語り引き締めながら、大事な人には優しく熱く語りかける。

どうにも幼稚で子供っぽかったはずが、最終話で急激に成長したように思えます。大きくなり過ぎたからこそ、義時は卑劣な手を使うしかなかったとも思える。

巴も立派です。

生きて愛することを彼女は楽しんだ。悲しい別れであるという気持ちよりも、魅力が伝わってくる去り方でした。

私の中で巴は、あくまで義仲の横にいる人物という印象が強かったのですが、それが綺麗に上書きされました。実に素晴らしい女性です。

そんな中、主役である義時は完全に黒くなった。

しかもそれをやりすぎて実朝が上皇を頼るという想定外の選択をした。

策士が策に溺れている。あれだけ汚い手を使ったくせに目標を達成できない。そう自虐的に笑ってしまう。

こうも主役にいいところがないというのは、すごいことだと思えます。

愛妻であるのえも、危険だと察知すると実家に戻ると言い切ってしまう。それでいて出世するとホクホク顔だ。

そこには義盛と巴のような愛はなく、ただただ、利害関係しかない。時政とりくの間にだって愛はあったのに。

息子二人も父に心を閉ざしているわ。何もかも得たようで、全てを失ったような義時。そばに残ったものといえば、これまた策士の義村だけ。

意義のある死もあれば、無駄な生もある。

堕ち続ける義時に救いはあるのか?と考えてもしまうけど、なければないでよいと思える――そんな秀逸な展開がそこにあります。

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