鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第41回「義盛、お前に罪はない」

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鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第41回「義盛、お前に罪はない」
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ハル王子とヘンリー5世

このドラマの実朝と義盛は、シェイクスピア『ヘンリー四世』のハル王子とフォルスタッフをイメージしているとか。

ただ、このハル王子は即位してヘンリー5世となる前、フォルスタッフを冷酷に突き放します。

そしてヘンリー5世は百年戦争で滅法強いけれども、残酷です。

ハル王子が実朝や木簡を数えていたころの義時ならば、ヘンリー5世は現在の義時のようにも思えます。

BBC『ホロウ・クラウン』ではトム・ヒドルストンが演じております。

小栗旬さんの変貌は、あのトムヒの演技を思わせて見事です。

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クランクアップおめでとうございます

まだ10月なのに、クランクアップをされたようです。

本作はかなり余裕がありましたね。例年よりクランクアップが早いのは、脚本の仕上がりも早かったからでしょう。

小栗旬さんはじめ、出演者の皆さんもやつれていない。

現場が過酷なのか? 大河ドラマは終盤になると役者さんの顔色が悪化したり、荒んでいることも時折あります。

しかし今年はみなさん目に力があって、余力があるようで何よりです。

要因としては、三谷さんの脚本の仕上がりに加え、小栗さんが今回の大河にハラスメント講習を導入したこともあるのでは?

彼は周囲にともかく気を使うと聞こえてきます。

マスクにメッセージを書くのもその一つですよね。

そういうリスペクトがあって、余裕があるから、存分に力が発揮できていると思える。

アクションでも難易度が高く、危険なものがある。それでもこなせるのは信頼と自信があるからでしょう。

撮影時の無茶振りを自慢する悪習が残る日本の芸能界――そんな悪習を断ち切る一歩となるのだとすれば、本作は実に意義があります。

みなさまお疲れ様でした。

 

碧血

碧血という言葉が日本で一番有名なのは、箱館戦争慰霊碑である「碧血碑」でしょう。

ここまで幕府に忠義を尽くして死んでいったものは、まさしく碧血を流したという意味です。

箱館戦争といえば、そういう忠誠心が重要なのです。

それをぶち壊しにしたように新政府に仕えた榎本武揚は、福沢諭吉はじめ旧幕臣たちから面汚し扱いをされました。

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お前みたいに無駄に生きるくらいなら、あの函館山で碧血を流した方がマシじゃい!

そんな認識であり、そうした気持ちは、実は今も日本人に広がっていると思えます。

だって、函館のシンボルとして扱われる人物って、榎本武揚より断然、土方歳三ですよね。

榎本は本当に素晴らしい才能の持ち主ではあるのですが、人気は土方に到底及びません。

なぜか?

この不思議な現象に「忠」が関係しているように思えます。

武士の中で「忠」が重視された結晶が、函館の土方にあるのではないか。

土方の「忠」は徳川慶喜松平容保ではなく、近藤勇に捧げられていたとされます。

近藤の死後、どうすれば己の命で報いることができるのかと口にしていた。そんな近藤への「忠」が碧血になったと思えます。

そういう意味では、山本耕史さんが三谷大河で演じているのに、土方歳三と三浦義村がまるで正反対にも思えてきます。

もしも近藤への「忠」がなければ、そんな土方は単なるコスプレイヤーであり、中身がない、魂がない存在だと思います。

何の話か?って、『青天を衝け』のことです。

あの土方はセリフで近藤への思いを語ることすらない。

実際に面識があったかどうかも曖昧な渋沢栄一への目配せばかり。あの土方が流した血は、碧玉にはならないでしょう。

そういう魂が入っていない人物像を大河で見たくはありません。

 

天譴論

慈円が最後の場面で「天の怒りをかっている」と告げていました。

これは中々鋭い指摘ではないでしょうか。

旧約聖書にはソドムとゴモラという都市が出てきます。住民が堕落したため、神の裁きによって滅びたとされます。

このようにキリスト教では神は堕落した民に直接的に罰を与えます。

東洋になると、ワンクッション入ります。

君子とは、天意を受けて民を治める。天変地異はその意に逆らった君子を罰するために起きる。

これを【天譴論】と言います。

渋沢栄一は関東大震災の際、天譴論を持ち出しつつ、「東京の民が不倫みたいなゲス恋愛をするから悪い」と主張しましたが、本来の用途を捻じ曲げたものです。

キリスト教の知識でもかじりつつ、取り入れたのでしょう。

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しかし今年は本来の【天譴論】が出てきた。本当によかった。

華流や韓流ドラマの名君は「自分の行いが悪いからこんなことになるのか?」と悩む状況がしばしばあります。

そういう思想が発揮されているようで、あの場面は日本らしいおかしさがあります。

天の声を聞き、意を受けた君主が京都にしかいないのであれば、鎌倉を襲った流血の惨事は天皇のせいということになる。

そもそも京都には上皇と天皇がいる。

その上皇は「鎌倉ざまあみろ」と面白がっているわけで、何がなにやらわかりません。

頼朝の時点で、彼は天の意を受けて動いていると思えた。

そして義時は、その頼朝の後継者は自分だと思っていながら、実朝を傀儡にしている。

天意を聞くのは誰なのか?

京都も、鎌倉も、曖昧な理解のまま、歴史は流れてゆきます。

 

『SEA SIDE WADA BLUES』

サザンオールスターズの『SEA SIDE WADA BLUES』という曲をご存知でしょうか?

歌詞はこちら(→link)をご覧いただくとして、私も義盛に思いを馳せて作詞してしまいました。

御所に灯りがともるころ

晒し首が並ぶ片瀬川

やるせない大河の展開

いつもと同じ小四郎のせいだよ

由比ヶ浜に徒花と消えたのは

義盛という名の随一の忠臣

和田が滅んだ 嗚呼 族滅です

鶴岡八幡宮あるいは由比ヶ浜などを訪問する機会がありましたら、この曲、いかがでしょう?

ちなみに『鎌倉殿の13人』ファンにおすすめの細川重男先生『論考日本中世史: 武士たちの行動・武士たちの思想』(→amazon)には、もっと秀逸な鎌倉時代をテーマにした替え歌が大量に掲載されています。

替え歌で現実逃避は案外よい手かもしれません。

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※著者の関連noteはこちらから!(→link

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文:武者震之助(note
絵:小久ヒロ

【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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