天文17年(1548年)、秋――。
京都は、細川晴元と三好長慶が覇権を争い、一触即発の状況でした。
下克上が横行する京都は不気味な静けさに包まれていたのです。
三好長慶が馬で駆けてゆく中、その姿を見る薦をかぶった男の目つきは鋭い。
名も無き者すら、不穏さを見せる。丁寧な演出が光ります。
お忍びで連歌会に参加する
三好長慶は、右腕である松永久秀と語り合っております。
細川晴元が摂津から兵を挙げ、攻め寄せて来るのではないかと疑心暗鬼に陥っている。
幾たびも裏切り、裏切られてきたゆえ、疑うことが習い性となってしまい、仕方ないと笑い話にしております。ストレスフルな状況です。本人たちは笑い飛ばしていますが、精神的にはよろしくないでしょうね。
そんな中、殿がお忍びで京都にいると知れば驚くだろうと、笑い飛ばす久秀。
しかも目的は、公家衆との連歌会。なんとも呑気といえばそうではあります。
久秀は、その連歌に晴元を呼んでしまったらどうかとすら言い出す。長慶としては、師の宗養もいるからには、悟られないようにお会いしたいと言います。彼なりの敬意がそこにはあるわけです。
ここで久秀はお供仕ると言い、武器を長押から引き出す。どこにでも武器を隠しておくあたりに、治安の悪さがわかります。
馬の嘶きも聞こえる。緊迫感が伝わって来るのです。
伊平次が耳にした陰謀
その頃、光秀は伊平次の技量に感心しております。悪童から成長したものだと感心しております。
そのうえで、玉の通り道の美しさに感動している。
「はぁ……うつくしきものじゃ」
それを見て美しいとおっしゃったのは、十兵衛様と松永様だけだと伊平次は言います。久秀は、人が工夫を凝らしたものは皆美しいという理念があるそうです。
殺傷に使えるものを美しいと褒めるのは、ちょっとおそろしいものがある。ただ、この二人の美的センスはかなりのもの。無邪気に日を愛でる素直さとも言えるのかもしれません。
伊平次は、世間では怖い方と言われているが、松永様はよい方だと言います。
本作の松永久秀は、最新の研究をふまえた造形だと感じられます。
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久秀にせよ、光秀にせよ。
どうしてその人物が悪名に塗れたのか? そこに偏見、後世のバイアスはないか? それが試されています。
彼ら自身のことではなく、見る側の偏見が試されているとも言える。
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そんな伊平次は、その松永様も今日という日を切り抜けられるかどうか。ご主人と討たれたらそれまで……そうつぶやくのです。
聞けば伊平次は、遊女屋で耳にしてしまいました。三好長慶、松永久秀、二人を斬る――そんな相談をする計画を。
遊女屋で聞いた企み
標的は?:三好長慶、松永久秀
警護の数は?:お忍びの連歌会ならば多くはない
襲撃者の数は?:20
場所は?:万里小路家
戯言ならばよろしいのだが……。そうは言っても、あまりに具体性のある計画です。
本作の特徴として、事件の詳細をきっちり語るところがあります。不確実な情報では動かないのです。
ちなみに日本の遊女屋は、これが筒抜けでして。幕末に来日した外国人は、
「こんなプライバシーのない場所で遊べないよ! 声が全部聞こえるでしょ!」
と、驚いたそうです。うーん、刺客よ、そこは部屋を選ばなくちゃ。
三淵藤英邸にて
三淵藤英の邸宅に、足利義輝がいます。能を楽しんでいるのです。
それにしても、公方様は今日もおうつくしい。透き通った烏帽子。たたずんでいるだけで美しい。けれども、その美しさは儚い。
何が素晴らしいか?
それは向井理さんが美形であるということだけではありません。役者は美形が当然ともいえます。
その上で憐憫がある。散る前の花の悲哀がある。『三国志』ならば献帝のような佇まいがうっすらとあるのです。
なまじ「剣豪将軍」であるだけに、いかついイメージを抱かれるかもしれませんが、私はこれが義輝としての最適解ではないかと思ってしまう。その答えは、この儚さにあります。
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そんな席に、藤英の近習がやってきて何事か耳打ちします。
「しばしお待ちいただけ」
考え込み、待っているのは十兵衛です。
「これは明智殿、いかがなされました」
藤英も愚かではありません。よくここがわかったと探りを入れている。理由もなく探り当てたとなれば、それこそ不審なのです。光秀から伊平次に案内をさせたと聞き、納得があるようです。
光秀は断りもなく訪れた無礼を詫びつつ、「卒爾ながら……」と切り出します。本作は語彙が盤石で心地よいですね(卒爾=軽率な、失礼な/デジタル大辞泉)。語彙といっても、当時そのまま再現すればそれは『タイムスクープハンター』になる。そこは、最近の時代ものですらちょっと遠かった語彙ということで。
三好長慶暗殺計画
いつ?:本日
どこで?:三好長慶、松永久秀が参加する連歌会
何を?:不逞の輩が、標的の三好長慶、松永久秀を討つ
十兵衛の話を聞いた藤英には迷いがある。松永殿のご家来衆の耳に直接入れるべきだと誘導します。
そこはぬかりがありません。光秀は既にご宿所訪れたものの、姿がなく、やむなくこちらに来たと告げるのです。
光秀はすぐに参らねば手遅れになると焦りを見せる。
しかし、藤英からすれば駆けつける理由がないということにはなる。三好長慶も、松永久秀も、昨年まで将軍家と争っていた。そう苦い顔の兄に、異母弟・細川藤孝は苛立ちを見せます。
確かに主にとっては敵。とはいえ、彼らと協力して京を安寧に保つと兄上は仰せではないか。そう弟は訴えるのです。
藤英もわかってはいる。しかも、その連歌会は、細川晴元が裏で動いていることも把握している。つまり、黒幕は細川晴元だとわかりきってはいるのです。
やはり藤英は優れています。その程度のことは情報収集できていればこそ、光秀の訴えを退けなかった。
だからこそ、こう言い切る。それは所詮、細川の家の内輪揉め。手を出すまでもない。そうそっけなく言うのです。
兄より熱いところがある弟は、こう反発します。
「私は細川晴元は嫌いです!」
去年まで、義輝様が去年まで近江に身を潜めるまでに陥れたのは、細川晴元。そこまで追い詰めたのは細川晴元であり、三好長慶・松永久秀ではないと言い切るのです。
兄上もわかっておられよう。そう言う口調からは、苛立ちが滲んでいます。そして、晴元では京都の安寧は持ちませぬぞ、そう言い切るのです。
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なにせ、晴元は義輝様の前で、平気で鼻をかむ男。兄上も見ておられたはず、あのような者に!
そう言い切る藤孝は、完全に気高さが出ている。マナーには言いたいことがある。そういう性格です。
このことを、再来年まで是非とも覚えておくと良さそうです。同じ武士でも『鎌倉殿の13人』の鎌倉武士と、この時代の武士はまるで違う。マナーのレベル、文明や文化の発展として、覚えておくとより歴史が楽しくなりますから。
たかが鼻、ちーん。されど、鼻ちーん。そこにはプライドの問題がある。
三淵藤英と細川藤孝。この兄弟の性格の違いが出ていると思います。兄は受け流せても、弟はできない。演じる谷原章介さんと眞島秀和さんが、これまた素晴らしいものがあります。
冷静で陰性な兄と、優美さの中に陽性、熱い滾りを秘める弟。本作は二人いる人物を対照的に見せる、そういう仕掛けが抜群にうまい。それに応じる役者さんも本気です。
「三好が斬られれば、晴元を抑えるものが皆無となる。あんな無礼者がこの都を!」
藤孝は人を集めるのですが、行くことはあいならぬと藤英は止めるのです。
武士の誇りゆえに
そのうえで、光秀に詫びます。わざわざお越しいただいたが、我らは将軍義輝様に仕える身。もしも動けば、将軍の御上意だと受け止められる。それは困ると。そのことをお含みいただき、お帰りいただくよう。そう言おうとすると、光秀は食い下がるのです。
「私が幼き頃、父から教わったのは、将軍は武家の棟梁であらせられるということです。すべての武士の頭であり、すべての武士の鑑であり、すべての武士を束ね、世を平かに治める方であると。今、この世は平かではありませぬ。この京都も家臣同士が争い合う。それを目にしたなら、武士をひとつにまとめ、将軍が争うなと一言お命じになれば、世は平かにはなりませぬ! 三淵殿が将軍のお側にいるのであれば、そう申し上げていただきたい! 私情ではない。武士の一人として、お願い申し上げておるのです!」
武士の誇りを忘れぬ男――キャストビジュアルでそう語られる、そんな明智光秀。彼は誇りゆえに、そう言うのです。
その場で光秀は誰にも相手にされぬようではありますが、彼の言葉を義輝その人がじっと聞いています。静かながらも、何かを動かされたような、それでいて哀しい表情なのです。
武家の棟梁という宿命を背負い生まれて、世が乱れ、何もできぬ存在。そのことがどれほど彼を苦しめているのか。そのことそのものを、義輝自身は考えないようにしてきたのかもしれない。
義輝はこうそっと言うのです。
「あの者の後を追え……」
義輝の口から出た言葉。それは武士の誇りが、武士の棟梁を動かした瞬間でした。
光秀には、人の心を動かす力がある。
連歌会、そのルールと効能
さて、連歌会です。
「では、始めさせていただきます」
笛が響いております。
と、話を進める前に、連歌の説明でも。
茶道と比較して、連歌の映像化はそこまで多くないとは思っておりました。理由は想像ができます。連歌は茶道と比較すると衰退している。準備も大変。そこまでがんばったところで、連歌需要なんてあるのか?
なんのかんので、千利休ほど知名度のある連歌師もいない――そういう状況が、個人的にはとても残念だと思っておりました。
楽しそうではあるのです。コンペのように商品はある。食事も途中で入る。香を焚き染め、音楽も鳴る。風流で良いものです。
ルールについては以下の記事をご覧ください。
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前々回、織田信秀は、望月東庵にしみじみと語りました。
蹴鞠も和歌もつまらない。どうしてやるのか? 劇中ではステータスシンボルという誘導をしておりました。これはその通りではあります。
ただ、古今東西、イベントには裏の意味がありまして。
2019年6月末、トランプ大統領と金正恩が面会を果たし、世界中が度肝を抜かれました。この前段階を辿ってゆくと、2018年平昌冬季五輪での南北対話も見えてくる。
オリンピックはじめ、スポーツイベントはただの運動会だ、楽しいだけだと言い張る。そんなものは幼稚な言い訳に過ぎません。
犬猿の仲だろうが、文化イベントがあれば参加せざるを得ない。浮かれ騒いでルンルンやって来ちゃうから? それもある。イベントや文化にはそういう吸引力がある。
人間とは食事だ、宴会だ、文化のお披露目だ、スポーツだと理由をつけて集まるもの。
そこをプラスに利用する例が、前述の米朝対談や1970年代の「ピンポン外交」だとすれば。
マイナス利用の代表例は1972年「ミュンヘンオリンピック事件」でしょう。いずれも20世紀以降のものです。
遡れば「鴻門の会」等、イベントを利用した血腥い話は山ほど出てきます。幕末なんて、宴会といえば襲われるような状態ですもんね。
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伝統の奥ゆかしき悪用例として、ここでの連歌会を舞台にした暗殺劇を見ていきましょう。
そうだ。戦国武将も大好きなこの連歌において、堂々たるナンバーワン発句数は、細川藤孝です。
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襲撃!
「いとはやも 天の戸わたる 雁金や」
祐筆が繰り返し、書き留めます。
「そなたこなたに なき渡る声」
万里小路、宗養……優雅な面々の中、筆を持って真剣そのものの三好長慶がおります。
そこへ向かう不逞の輩。車の前でお供たちが驚いております。
「聞く人の遠き松山 波越えて」
「月に孤影の 愁いとむろう」
そして刺客が向かうところで、音が全く入らなくなる――松永久秀が、「ん、うーん」とあくびをしてやっと気がつく。
と、ドターンと横の戸が倒れるのです。油断しおったな!
これぞまさしく杯盤狼藉! 斬り合いの開始です。
屋内戦闘らしく、御簾やら何やかやが倒れるところがよろしい。どういう見映えにするか、日本の屋内戦闘らしさをきっちり考えていて、本作の殺陣チームは実にセンスが抜群であると毎回わかって嬉しいものがあります。
『柳生一族の陰謀』に期待するしかない。なんか毎週期待が高まっている気がする!
ナンバ走りで、ざざざと駆けつける光秀や藤孝も素晴らしい。息があっていて、互いに気遣っているとわかるのです。
「殿ーっ、お逃げくださーい!」
久秀が必死で叫ぶ。
「いたぞ、逃すなーっ!」
喚声が響く中、乱闘になっております。この乱闘が素晴らしくて。暴漢が久秀に襲い掛かったところで、背中に刃が刺さる。それは光秀の突きでした。光秀の得意技は、鋭い突き。前回も藤孝相手に使っておりました。
光秀は、毎週新たな面が明かされてゆく。鋭い突きは先週出て、今週はそれが殺傷に役立つと証明されました。
鉄砲を美しいと言う感性は、松永久秀に通じるものがある。とてつもなく善良なようで、いざとなれば残酷な手段で目的を達成できるのかもしれない。そういう深みと凄みが出てきている。こんな複雑な人物を演じる長谷川博己さんに、幸あれとしか言いようがない。
藤孝もすごいものがある。やる気を持って暴漢を倒す。そういう血の気がわかる殺陣をこなしています。
「三好殿!」
「藤孝殿!」
光秀はそう叫び、屋内から庭へと飛びます。振り下ろされる光秀の一撃と、振り上げる藤孝の一撃を両側から浴びてしまう暴漢もいる。彼は不幸ではありますが、光秀と藤孝の息がぴったりとあった、凄まじい瞬間がそこにはありました。
目と目を合わせてうなずいておりますし、これはもう友情が生まれてしまっています。
本作は1970年代あたりと言いますか、ちょっとクラシックな要素を大胆に取り入れております。
一つ前のトレンドは最悪で、格好悪い。むしろ、二つ前まで遡ると斬新で格好良い。2020年代のトレンドは、1970年代リバイバルにしたい、そんな思いを見た。1980年代はひとまず横におきまして。1990年代から2000年代の流行は、最低最悪のものとして淘汰されると予測します。そこについていこう!
殺陣は本当に、今週も素晴らしかった!
紅葉が血のように散っている。この時点で圧倒的に美しい。屍が転がりっぱなしのところもよい。消えるゲームとの違いを見せつけていて生々しい。殺陣については、もう毎回満点以上を叩き出している感がある。抜群によろしい!
思えば殺陣は、迷走していましたね。2000年代以降、日本の武術や家屋に合わないワイヤーアクションぽいものと変な融合しちゃったりして。
しかし本作は、正統的な進化をしつつ、世界のトレンドにも追いつける。日本らしさも随所にある。正統進化を見ていると毎週噛みしめられて、もう言うことがありません!
新しさと伝統の融合って、本当に大変なことだと思う。けれど、本作はそこをちゃんとやりきるのだから、凄まじいものがあると思う。
「三好殿、松永殿! 表に馬が。松永殿、早く!」
そう促され、やっと標的二人は脱出に成功します。
刺客も撤収です。頑張って捕まえて、拷問していろいろ吐かせてもよろしいかと思いますけれども、黒幕は明白ですからね。遊女屋で漏らす程度ですから、ちんけな小悪党でしょう。
細川晴元は、潜んだ家屋の格子ごしに「しくじりおって〜!」と悔しがります。
金をケチりましたかね? 刺客は事前に計画を漏らしている地、入り口も塞いでいない。門を閉ざして火を放つとか。飛び道具も使うとか。そこはもっと頑張らないと!
あ、そうか……光秀は、こういう経験から効率的な暗殺を学び、本能寺でやるわけですね。
やはり暗殺にはセオリーがないと。【本能寺の変】は突発的なのか?
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ゆるい計画では失敗する。光秀がどうやって効率的な暗殺を学ぶのか、そこも考えてゆきましょう。
暗殺未遂事件の反省をしよう
・遊女屋で計画を話す程度のセキュリティではいけません。情報漏洩は阻止しましょう!
・そもそも計画を練る過程が粗雑ではありませんか? きっちり講習するくらいの気持ちで!
・退路を立ちましょう。門を閉ざし、逃げられないようにすること!
・飛び道具、火災もここは選択肢に入れたい。絶対に逃がさないためにも、そのくらいの思い切りは必要です!
作戦が雑すぎる。やはり、現時点で本作ベスト暗殺は、蝮(斎藤道三)のお茶会でしたな。当時の京都でどれだけ暴れられるか、そこは難しいところですが。
そしてここでもやはり、再来年まで覚えておくと良さそうです。鎌倉武士は、特に計画性や理由もなく、ムカついたから標的の周囲ごと殺害するくらい、ともかくアバウトです。
連歌会で暗殺なんて野蛮に思えるかもしれませんが、それでも鎌倉武士よりは洗練されています。そこに人類の進歩を感じたいところです。
光秀、倒れる
光秀は粗い息遣いになっております。ここで安心して、肩の傷に気がつくところに、リアリティを感じます。アドレナリンがほとばしっている間は、痛みに気づかない。安堵してきたところで、やっとわかる。そういうことです。
肩の負傷を三淵藤英に気遣われる光秀。
お気遣いなくと言うものの、結構な深傷です。医者の手配を申し出られて、光秀は望月東庵の名前を出します。
東庵の名前もちょっと微妙かもしれない。藤英はわからない。東庵が将軍を診察してから、年月が流れているのでしょう。配下の定永貞四郎という者はわかると言います。
案内を頼まれて、彼と光秀は東庵の元を目指すのですが、光秀は途中で座り込んでしまうのでした。
ヨシナノワレラガヒトリネヤ カバカリサヤケ……
駒の歌声が響く中、駒に支えられ、光秀が倒れ込む映像が流れます。ここで光秀は目覚めるのでした。
「十兵衛様! 十兵衛様、気づかれましたか? 先生、東庵先生!」
「駒殿……昔の今様かな? 誰かが歌っていた……」
「私です」
「誰に教わった?」
「子どもの頃、旅芸人の親方様に」
「旅芸人?」
ここへ東庵が顔を出します。
「おお、気づかれたか よかったよかった。ハハッ! ずいぶん熱が下がった。うん。これなら大事ない。大事ないぞ。脈を取ろう」
「ここはどこですか?」
「うむ、わしの家じゃ」
「十兵衛様は家の前で倒れ、気を失われていたのですよ」
「高熱でな。ほっておけば命に関わるところであった。肩の傷が、思いの外悪うてな。駒がこの二日間、ずーっと付きっきりで手当てをしてくれたのだ」
「二日? 私は二日も?」
「ずっと眠っておいででした」
「もう大丈夫。あとは傷がどれくらいで塞がるかじゃ」
「よかった。本当によかった!」
金瘡(切り傷)の場合、出血はそこまでなくとも、発熱はありえます。光秀も何か悪いものが入ったのでしょう。駒は喜んでいます。
「先生が初めて薬師如来のように見えます」
「ん? いつもはな何に見えるのじゃ」
「それは申しません」
どうせ双六大明神といったところじゃろう。そう軽口を叩きつつ、薬はいつも通りだと指示を出す東庵なのです。
「だめだめ、動いてはいけません」
「二日も。さほどに長く。かたじけない」
「二日ごとき、どうということはありません。三日でも四日でも、ずっとお側にいますから。そうずっと。変だけれど、ずっと楽しうございます。こうしてずっとお側にいるのが」
そう言いつつ、手当てをする駒。そこには幸せがあるのでした。
これは駒の恋心でよいとは思います。それはその通りなのですが、そう単純なだけでもない。その証拠に、もう一人誰かが登場するのです。
心をひとつに、世を平かに
十日後――。
細川藤孝がそっとお見舞いに来ます。そして壺を丁寧な手つきで差し出しました。
松永久秀から、明智殿へ。兄・藤英に託されたものだとか。万里小路では命拾いをした、明智殿のおかげ、今は動けず顔を拝せず、よしなにお伝えください。
光秀はご丁寧に、恐れ入りますと受け取ります。壺の中身は水飴でした。
「水飴? 大好きです!」
駒は思わずそう言ってしまい、頭を下げて出て行くのでした。
はしゃぐのも無理はありません。当時、まだ日本では甘味が貴重。庶民の味わえる甘みはせいぜい干し柿ぐらいです。水飴にせよ、砂糖にせよ、輸入便りの高いものであり、水飴を入手できる松永久秀は、リッチなのでしょう。
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藤孝は、松永殿が明智殿は酒をあまり嗜まぬので、甘いものにしたと言っていたそうです。藤孝は光秀に興味津々に思える。光秀は、松永殿がそう仰せならばそうなのでしょうと笑い飛ばします。
もう藤孝は、光秀に興味が湧いていてしょうがない。そう伝わってきます。駒も、藤孝も、光秀が好きで好きでしょうがない。そういう気持ちが伝わってくる。光秀め……。
そんな藤孝は、明智殿は不思議な御方だとしみじみと言います。
この都では、松永殿は鬼か、蛇かと言われ、皆恐れている。その方に、易々と親しくなるとは。どういう経緯か知りたい好奇心を感じます。美濃に置くには惜しい御仁だと。
光秀は、松永殿は田舎者である私を面白がっているだけだと返します。それはどうでしょう。久秀は、はじめこそ「あのソウルメイト・斎藤山城守の美濃!」という態度でした。けれども今は、光秀個人を推していると伝わってきます。
「失礼ながら、私も面白がっておる。明智殿は、大層おもしろい」
藤孝はそう言ってしまう。
兄の館においでになり、大きな声でで将軍様は武家の鑑であり、棟梁であると申し上げられた。将軍殿が争うなとお命じにならねばと言われた。
その通りなのです。明智殿は当たり前の事を申された。しかし今、今日でそう思う方は僅かに過ぎぬ。そのうえで、あの館に義輝様がいたと告げ、じっと聞いておられたと言うのです。
「私は胸が痛かった! 口惜しかった! 明智殿のようなお方が、あと二人でも、三人でもいて、我らの味方となってくれればと。いかがです。美濃へ帰らず、しばらく京にいらっしゃいませんか」
あ……ここで、この話を聞いている駒は反応を見せるのです。駒が光秀に恋をしていることはわかる。けれども大胆なアプローチはしない。そこをうまく見せてきています。
「そうはいきませぬ」
光秀はそう言い切ります。美濃も京も同じ。美濃の頭であった土岐家は力を失い、家臣は皆バラバラになっている。
かろうじて斎藤山城守(利政)が美濃を一つにまとめてはいるが、国の者が土岐家に代わる柱として従っているかというと、そうではない。
心苦しい。私も力になりたい。
どうすればひとつになれるか? それがわからない。
それゆえ、美濃に戻り、考えなければならない。
五年先か、十年先か。美濃がひとつになれたおり、またお目にかかります。その折には、美濃をあげて、藤孝殿を支えます。今はそう言うしかない。光秀は誠心誠意そう返せるのです。
これが彼の怖いところではある。久秀が聞いたらショックを受けそうなセリフではあるのです。立場を抜きにして誠意でぶつかっていくからこそ、光秀は尊いと思えるのです。
「わかりました。争いを終え、ひとつになった諸大名が京へのぼり、将軍家を支えるならば、世は平かになるはず。それまで戦う他ない」
藤孝はそう言い切る。断られたとはいえ、藤孝も満足感はあるとは思います。これほどの男と、思いが通じ合う。そういう気持ちが伝わってくる。
決意を固めるように互いを見つめる二人。駒はそんな二人を見ながら、苦しい胸を抱えているのでした。
美濃に戦雲あり
そこへ東庵がやって来ます。
「十兵衛様、十兵衛様、戦じゃ! 山城守様がまた戦を始めたそうじゃ」
大柿城の戦い
提供者:美濃の油売り
場所は?:西美濃・大柿(大垣)城
敵は?:織田信秀、知らせを受け、大軍を率いて背後を衝こうとするが、結局城を守ることはできなかった
経緯は?:斎藤利政(斎藤道三)が急襲。大柿は豊かな穀倉地帯、要衝、奪回が宿願であった。
勝利:斎藤利政、大柿城は美濃の蝮の手に落ちた!
ここでもテロップだけではなく、ちゃんと実写にするところが細かい。
エエトウエエトウ!
そう声をあげながら、凝ったカメラワークで城門を突き破る軍勢がしっかりと出てきます。
慌てて駆けつけようとする織田信秀も。
美濃の蝮は強いし、それ以上にいやらしい敵だと思います。敵に回したくない何かがある。そうしみじみと思えるのです。
かくして、光秀も美濃に戻ることとなるのでした。
肩を押さえつつ、帰路に着きます。
「駒殿。もうよい。私は大丈夫だ。ここから京にお戻りなさい」
「どうしてですか!」
東庵殿を一人残してくることに罪悪感がある。駒が美濃まで来るのは大仰すぎる。そう打ち明けるのです。駒は、この旅を一人で行くのは無理だと言い返します。
けれども光秀は、そのことを東庵本人から直に聞いていないと戸惑っています。
光秀が恋愛に鈍い云々言われておりますが、そこは人徳の高さゆえに。
戦は終わったし、そう慌てることはない。とはいえ、戻れと言うのならば私と京都まで行けと言われると、光秀は困ってしまうのです。
「それは困る」
「では、美濃までご一緒します!」
叶わぬ恋心
かくして、二人の旅へ。
ある夜、強い風の音がします。駒が、筵を手にして屋内へ駆け込んで来ます。
「裏の小屋に一枚あったので、拝借してきました。これ掛けて寝てください」
駒殿は? そう気遣う光秀に、焚き火のそばで丸まって寝ると告げます。すぐ消えると言われても、体が犬のようにぬくい、子どもの頃からそう、ご案じなくと返すのでした。健気です。
握り飯を二人で食べて、強い風の音を聞きつつ、二人は休んでいます。
「駒殿」
「まだお眠りになれませんか?」
「駒殿が気になる。ここに入らぬか。頼む。入ってくれ。そうでなくては眠れぬ。早う入れ」
「ですが……」
「構わぬ。ここで寝よ」
何度か瞬きをし、目を泳がせて、光秀の横にそっと入り込む駒。その肩を抱き、やっと目を閉じる光秀です。
「東庵殿の家で気を失って、二日の間眠っていた。夢の中で、駒殿の歌が聞こえてきた。どこであのような歌を教わったのかと聞いた。駒殿は、旅の一座の親方様から教わったと。いささか気になっていた。子どもの頃か?」
「私、東庵先生に引き取られる前。伊呂波太夫という旅芸人の一座に拾われて、そこで育てられ、あちこちを旅して暮らしていたことが。五つか、六つのころ」
「そうか……それで今様を……」
ヨシナノワレラガヒトリネヤ
カバカリサヤケキ冬ノヨニ
コロモウスクテ夜ハサムシ
駒の声が響く中、目を閉じるのでした。
MVP:明智十兵衛光秀
序盤、最初のパートもそろそろ終わりでしょうか。ここまで描いて来た光秀の魅力総決算のような回でした。
光秀は知勇兼備、容姿端麗。紛れもなく素晴らしい人物。
木行を象徴するだけあって、竹のように真っ直ぐであり、清らかさが常にある。
あやしい魅力の長谷川博己さんでありながら、フレッシュ過ぎて女性視聴者がガッカリだとか、そういう記事も見かけました。
「木行」という時点で、そういうことは諦めてくださいとしか言いようがありません。あんまりこういうことを言いたくはない、けれどあえて言いますけれども。相手が女優だろうと、男優だろうと、過剰なお色気を期待するのはいかがなものでしょう。
見られるのが役者の宿命とはいえ、彼らは別に自分の色気を鑑賞されるためにカメラの前に立っているわけではないと思うのです。
自己表現、限界に挑むため、脚本で描かれた人物像を描くため――あまり過剰に色気をどうこうクローズアップする報道には疑問を感じます。
むしろ本作って、そういうこととは違う。
駒との場面が早速「キュン死」なんて取り上げられ方をしておりましたが、むしろあの場面は、色気でなく清潔感が彼の魅力だと思えました。駒を守るべき存在だと思っていて、いやらしさをにじませない。
そういう古典的な、色に迷わないところが本作光秀の真髄だと思えるのです。
彼に魅了される人物は大勢いる。色気ではなく、美貌でもなく、その知性、誠実さ、そして心を動かすところに魅入られていると伝わってくるのがすごいと思います。
駒と細川藤孝が魅了されるところを、同時進行させるのがすごい。足利義輝すら動かしているところもすごい。
彼が隣にいるだけで、自分が求めているものがわかるような。そういう未解明のすごさが光秀にはあると思うのです。光秀と会話するだけで、悩みがとけていって、何かにたどり着けそうな気がする。そういう稀有な人物だと思えます。
光秀の魅力は、まだ未解明なようで、古典的でもある。
普遍的で、ずっとこういう人がいればいいとは思われて来た。その秘密がどこにあるか明かされていない。神秘性すら感じてしまうのです。
総評
おそろしい回だったとは思えます。
光秀は素晴らしい。けれども、その透き通った心の奥にあやしげなものも時折見えてくる。
鉄砲を美しいと語る感性。
人を斬ると苦いと語る。それにも関わらず、いざとなれば繰り出される必殺の突き。
そんな彼は、失敗に終わった暗殺から、何を学んだのか?
どうしたって、光秀には悪名がつきまといます。本作では聖人君子みたいだけど、ケチだの、冷酷だの、結局はなんだかんだで主殺しだという記事も見かける。
そこが本作の怖いところだと思う。
悪事を為すのが悪人だけだったら、どれだけ楽なことだろう?
そうではなくて、善良な人でも苦しみつつ、悪に向かっていってしまう。泣きながら悪事を為してしまう。
そういう心の葛藤に踏み込んでいくようで、本作はおそろしい。人間の心の持つ深淵に、毎週踏み込んでいくような感覚が深まっていくばかりなのです。
こと昨年と比較して、王道だの、年寄り向きだの、伏線がないだの、イケメン頼りだの、そういう意見はいくつか目を通したのですけれども。
それこそが罠だとここまで見て来て思えるのです。
この作品における光秀は紛れもなく素晴らしい。私は『三国志演義』における蜀の英雄のような像を思い出してしまう。そういう古典的な、人の道徳が求めるような像の中に、何かひびが割れていくようなところがあって目が離せない。気がつけばこの作品のことを考えてしまう。
長谷川博己さん以下、役者も神経を削るでしょうね。
彼らのコメントを読んでいると、皆聡明で、誠意があって。顔ぶれからして、役のニュアンスを丁寧に反映する――見た目以上に知性で選んでいると思えて来ます。
今週もがんばっていた細川藤孝なんて、これはもう、設定をもらっただけで演じる側は気が遠くなるほどすごい人物だと思うわけですよ。
そんな要求に対して、眞島秀和さんは、100やれと言われて、常に120、200を返すような誠意を感じてしまう。
これは彼一人だけでなくて、皆そうだと思う。駒の恋した心を目の動きで見せる門脇麦さんも素晴らしかった。彼らだけではない。三好長慶を見つめる薦を被った男まで、全員がすごい気魄。熱気を感じます。
100を120以上出せるような、そういう何かが現場にあるだろうと伝わってくる。なんだかものすごい作品になりそうで。
※編集注:なお鉄砲作りの名人・伊平次を演じられた玉置玲央さんは、技術指導を受け当時の鉄砲を分解&組み立てができるようになったとのことです
【伊平次でした】『麒麟がくる』ありがとうございました。
伊平次はこれにて撤退です。
いやー働きました笑技術指導受けてこの時代の鉄砲を分解、組み立て出来るようになりましたので、ご用命有れば是非。
国友鉄砲の里資料館の方のお墨付きですぜ。なんかで再登場しないかなー。
— 玉置玲央 (@reo_tamaoki) February 23, 2020
で、来週は織田信長がやってくる。
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こういうことを予想するのは気が引けるのですが、視聴者の8割が、最低3回くらい絶望する。そういう信長像だと予測します。
ピュアだと染谷将太さんはいう。
ピュアって何?
ピュアな気持ちで焼き討ちとか、あれやこれやをやらかす信長。ピュアな気持ちで細かい折檻状を出される佐久間信盛さんなんか、かわいそうすぎるでしょ。
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そんなもん何かの冗談だとしか思えない。染谷さんのインタビュー、他の方のコメントも読みました。とんでもない信長だということはわかった。
だいたい、キャッチコピーが「尾張の若きうつけ者」。
現代風だと「名古屋のバカなガキ」です。
最悪じゃないか! もう意味不明。胃が弱いくせに台湾ラーメンを食べて腹を壊してる。そういうアホを連想する。
予告動画も、なんか無駄に船の上に立っててなんなんだこいつ。だいたいキャストビジュアルの時点で三白眼でおかしい。他の写真だとニコニコしててやっぱりおかしい。
染谷将太さんがイケメンだから、パラダイスというニュースは読んだ。本気か?
いや、彼のビジュアルに文句はないです。けれども、あんな三白眼信長と恋をしたいの? 本当に? いや、どうでしょう。怖いよ!
これは私の持論ですが、『なつぞら』で染谷将太さんが演じた神地は、信長の予行演習を兼ねていると思いました。モデルがモデルであるからか、神地は変でした。締め切りと予算設定されただけで動揺する、社会人としてぶっ壊れた存在でした。腕はいいアニメーターですが、圧倒的におかしかった。
で、この神地は集中する顔がすごかった。背景にチラッと写る場面でも、集中していると伝わってくる顔がすごい。こういう一点集中、突破力が信長にもあると思うのです。
まったく新しい信長像――いろんなアプローチがなされて来ました。女体化。美少女化。現代人がタイムスリップ。けれども、どれも不要だということになるのかもしれない。
頭の中身を入れ替えればよい、思考回路をチューニングする。最新の、日本史以外の研究成果をふまえていじる。それで十分!
そんな凄まじい信長にするとは思います。ただ、それが従来の信長像と違いすぎて、絶対に荒れることは予想できるのです。
うーん、でも私は、信長像には期待しかない!
『MAGI』の吉川晃司さんの信長を見て、『麒麟がくる』の信長には同情しました。あれを超える信長像はできるのかどうか。そう思ってしまいました。
本作は二枚看板で挑むらしい。
従来の信長像には、信秀の高橋克典さんを吉川晃司さんにぶつけて対抗する。そのうえで、染谷将太さんをオルタナティブ信長像としてぶつけるようだ。
今から来週が楽しみです!
おまけ:視聴率低下のワケ? まったくわからん!(わけでもない)
本作は観光効果抜群だそうです。
ただ、視聴率は低い。これについては、私は予想済みです。第一回で書きましたが『真田丸』のマイナス1〜3%範囲でしょう。
なぜ視聴率が低下したのか?
このことについては、作品の出来そのものを考える必要性を感じません。
箇条書きにしてまとめましょう。
◆枠ごと沈没した
いくら『真田丸』が素晴らしいと言い張ったところで、視聴率ではあの『天地人』に及ばない。『独眼竜政宗』を今さら持ち出すことが適切とも思えません。
◆枠ごとの沈没傾向が、ここ数年で決定的になった
一昨年、昨年でかなりの視聴率を裏番組に取られました。視聴週間の変化は戻せません。若い層は、はなから見ることもないでしょう。
◆地上波そのものが減衰している
低視聴率をキーワードにしてニュースを探れば、答えは見えてきます。朝ドラも、民放も、低視聴率のものが多い。地上波全体に減衰傾向を見て取れるのです。
◆しかし、その現実を認められない
それなのに、的外れな役者色気不足云々のニュースが出てくるのはなぜなのか?
長いことテレビありきで人生を過ごしてきた層にとっては、テレビが終わる日を想像すらできないのでしょう。ゆえに、現実逃避をするのです。
そうした的外れの指摘であろうと、アクセスを稼げるのであれば記事になります。
◆人は「周囲がどう思うか」を気にする
本当にそこまで視聴率を気にしているのか。明智光秀、歴史、大河に興味があるのか。それはわからない。
ただ、人は「周囲がどう思うか」気になるものです。さして話題にならなくても、惰性で大河視聴率ネタを話のネタにしたくなる。そういう心理はあるのです。
◆テーマが明智光秀だから
それはそうとしか言いようがありませんが、光秀であることに意義があるとは思います。
本作の織田信長は、今までにない新しい像になる。
それを信長自身の目線で見るのではなく、
【側にいて、彼の理想についていくものの、何らかの齟齬が生じてついていけなくなった光秀】
の目線で見るところに、本作の斬新さがあるとは思うのです。
ちなみに、これは海外の歴史ものでは定番の描き方ではあります。英雄ではなく、誰かの目線で見た英雄像や権力闘争を描く。群像劇にすることもよくあるアプローチです。
悲しいことに、日本ではその視点が定着しておりません。しかし、だからといって日本独自のフォーマットで描き続ければ、大河、日本発の歴史ものに未来はないのです。
新たなものを作るためには、ある程度の出血は必要なのです。
そのことこそが、本作の挑戦なのでしょう。
私は「ドラマ通」であったことが生まれてこのかたない。このレビューさえ読めば、大河通になれるなぞ、大仰なことを言うつもりはございません。自分の無知と非力は自覚しております。
学校でもどこでも、ドラマの話の通じない、隠キャとしてぼっち飯を味わってきました。ドラマが好きだとか。テレビが好きだと思ったことはない。これからもない。
大河(と朝ドラ)の話を誰かとすることを想像するだけでゾッとするし、したら確実に人間関係が崩壊することくらい理解できています。流石にそのくらい、もう学びました。
得てしてそういう人間の方が、見えるものがあるのかもしれません。
絵の全貌は、少し距離をおいた方が見えることがあるのでしょう。
嫌な現実を踏まえて、次の一手を踏み出すことも大切ではありませんか?
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【参考】
麒麟がくる/公式サイト























