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【麒麟がくる第32回感想あらすじ】
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藤吉郎と共に堺へ
場面変わって、獅子舞が鮮やかな堺へ。
光秀は木下藤吉郎とともにおります。
なんでも殿(しんがり)を請け負った藤吉郎は信長に叱られたとか。殿で奮戦したのは良いにせよ、その過程で鉄砲を失ってしまった。補わねば次はないと言われたそうです。
って、厳しいぞ、信長!
堺の今井宗久に買い付けを頼んだそうで。明智十兵衛ならば顔見知りということで、このコンビで来ました。秀吉は、光秀の人脈をおだてながら、堺の町にウキウキワクワクです。
しかし、遊女が袖を引いてもそっけない藤吉郎……と、ここでちょっとひっかかりませんか?
秀吉は歴史上「女好き」として知られます。そこを重視したら、もっとフランクでフレンドリー、ちょっと鼻の下を伸ばす場面でも入れて笑いに変えてもよさそう。
けれども、そっけない。
女好きとは言われるけれど、女そのものが好きなのか、それとも所有欲や征服欲から来ているのか?
秀吉の出自をふまえれば、身分の高い女を手に入れることとは下剋上そのものです。しかし遊女にはそうでもない?
考えすぎかもしれませんが、本作は何気ない場面が怖くて、ここでも秀吉の心の深みにまで到達しそうで……。
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二人は今井宗久に出会い、早急に鉄砲300挺が欲しいと依頼します。
宗久は明智様においでいただいたとはいえ、荷が重いと返すばかりです。
どうしたらその荷が軽くできるのかと光秀が問いかけると、今朝ほど250挺お約束したばかりとのことでした。
藤吉郎の目が、ここでギラリと光る。
購入したのはどこの大名なのか? そう問い詰めようとしても、商い相手は秘中の秘、教えるわけにはいかないと返す宗久。
「ほう……」
ここでの藤吉郎がやはり怖い。本作の秀吉は、いちいち怖いので本当に見ていて寒気がする。
藤吉郎は脅迫じみたことを言い出します。
2年前、堺の商人が三好に味方し、信長から罰として2万貫支払いを命じられたことを覚えているだろう。
「まさか同じ道を歩もうと言うのではありませぬな? 三好の一党に、その鉄砲を売るのではあるまいな?」
緊張感の走るこの場面――光秀が「ははははは!」と笑いとばします。
今井宗久殿はそのようなお方ではない。信長の上洛を陰で支えたとまで言い切る。
これは藤吉郎は知らない情報なのでしょう。
茶でもいただきながらゆっくり話そうと提案します。
茶会の名簿に
「茶?」と不思議がる藤吉郎。
宗久殿は商人であり、茶人でもあると光秀は説明。久方ぶりにお手間を拝見したと促します。
すると宗久は、ちょうど本日夕刻、顕本寺で茶会を行うと言い出し、「よろしければおいでくださりませ」と言います。
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それにしても、本作は茶人のルーツまでたどっていくようでおもしろい。
軍事物資を含めて提供してきた実例もあること。利に聡いこと。当時の新たな価値観と金を生み出すこと。
茶人が無害? いやいやいや……死なねばならぬ理由も、時にはあるということでしょう。
光秀たちは宿に戻り、藤吉郎が陽気な態度で茶道を練習しています。
と、ここで光秀に茶会参加者の名簿が届きます。
茶人の中に、筒井順慶が混じっている――。
商いの相手は言えませんが、茶会参加者は言える。この名簿のうち、大量の鉄砲を必要とするものは、消去法でいけば一人しかいない。
面目を保ちつつ、購入者を明かす宗久ですね。
しかし筒井順慶は、織田信長の同盟相手である松永久秀の宿敵です。諦めるほかないと光秀が浮かないでいると、藤吉郎はせっかくだから筒井の顔を拝んで帰ると言い出します。
そしてここで、藤吉郎はもう一人の参加者に気づきます。
なんと、あの駒でした。
大和の大名・筒井順慶
顕本寺に着くと、茶会開始まで歓談して待つようにと案内されます。
そこへ筒井順慶が入ってきます。
筒井順慶とは――「洞ヶ峠を決め込む」という創作エピソードが一人歩きしてしまい、『信長の野望』シリーズはじめ、各種ゲームでは地味な弱小大名扱いをされる。
敵対していた大和の松永久秀がキャタクターとして立っているだけに、割りを食っている感もあります。
そんな筒井順慶が、こうも存在感を放ちながらそこにいて……なんだか感慨深い。
駿河太郎さんの僧形が、あまりに自然。なにかすごいものを見せられている気もします。
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順慶と光秀、藤吉郎が挨拶をしたところで駒も入ってきました。
彼女の役割がまた絶妙で。順慶は、駒が光秀を美濃時代から知っていることを語ります。光秀が驚いていると、芳仁丸を家来衆に配っているからだと駒が説明します。
駒のビジネスはしみじみとすごいことになっていますね。
ここで光秀こそ、公方様上洛のキーパーソン、道筋をつけた方だと順慶が言うと、当人は謙遜し戸惑っています。
むしろ横の藤吉郎がノリノリで、光秀の功績を強調する。
明るいノリで、佐々木蔵之介さんがぱーっと演じるから、陽キャの王者のようではありますが、一方でそれを利用する気満々なのが、これまた怖いんですってば!
秀吉と光秀が共同作戦を実施し、信長を殺す……秀吉が光秀の“宿敵”であり、性格的な相違点もあるからには、それはないと思います。
駒様への話は公方様に筒抜け
どうやら順慶にも野望が芽生えているようです。
大和でささやかな父祖伝来の地を守るため、大敵と戦っている。それでも信長のことは把握しており、その家臣である光秀との出会いが嬉しいと語るのです。
「筒井様は鉄砲の買い付けに参られたとか」
藤吉郎が低い声で言い、光秀の袖を引っ張ります。声だけでなく、袖を掴む指までおそろしく見えてしまう。佐々木蔵之介さんはどういう演技をしているのか……。
「少々ご無礼をいたします」
藤吉郎が光秀を室外へ出るよう促すのですが……軽く笑いつつ「しばし」と言い、順慶が目を動かす。全部、何気ないようで、迫力があって、おそろしいものがあります。
外に出た藤吉郎は、鉄砲の話のことを光秀に念押し。同時にこんな話も切り出します。
「あの駒殿でございますが。噂ではこのところ、公方様のご寵愛を一身に受け、政所の摂津様も駒様、駒様、様付けで下にも置かぬ扱いだともうします。つまり、明智様が筒井様にお話しなさることは、全て公方様に伝わると思われてお話なさるのがよろしいかと……」
光秀はそれを聞き、中へ戻ります。
それにしても駒はえらいことになりました。
画期的なヒロインです。オリジナルキャラクターで、こうも大物と付き合い、寵愛を受けているとなれば、絶世の美女を想定することかと思います。
けれども駒はちがう。年齢的にも、若くはありません。その知恵と、生み出す商品、教養。そうした要素で、ここまで大事な人物になったのです。
今回の冒頭で、光秀との論戦は苦しいものになりえると証明済みです。
光秀はこの特技を生かし、鉄砲200挺を譲っていただけないかと問い詰めています。
順慶は妥協する。
明智様の申し出でも160挺は……と言葉を濁す。光秀は譲らず、戦が迫っていると迫ります。と、ここで駒が助力します。
「筒井様、私からもお願い申し上げます。信長様の戦は、公方様の戦でもあります」
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