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焼き味噌ジョーク、しかみ像ポージング
始まりました武田vs徳川。
合戦シーンは、ヒャッハーしながら走り回る、武田マッドマックス軍団の映像のみです。
そこで徳川家の皆さんが顔芸をしまくって、この危機的状況を伝えるしかない、と。
そうやって討って出た直後、画面が切り替わるとボロボロになって、「ぶほっ!」と放屁しながら家康敗走。
今回は方久のプロポーズシーンのエコーといい、この放屁音といい、なんだか音響効果、変な方向で頑張っていませんかね。
家康の尻のあたりから漂う異臭に気づく家臣たち。
戦国ファンにはお馴染みのアレですね。
三方ヶ原の戦い定番、家康のウンコ漏らしエピソードです。
家康はなぜ信玄に戦いを挑んだ? 三方ヶ原の戦い 謎多き戦場を歩く
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「焼き味噌じゃ! 焼き味噌が落ちたのじゃ!」
放屁のSE、焼き味噌ジョーク、しかみ像ポージング、「家康は脱糞をするほどの、大敗北を喫したのじゃ」というキレキレのナレーションで、三方ヶ原の戦いが終わりました……。
脱糞もしかみ像も、後世の創作というのが有力ですが、本作は敢えてわかって入れている演出である気がします。
武田信玄や織田信長の衣装スタイルもそうですが、皆がイメージする像をあえて取り入れる部分があるんですね。
「史実ではわかっていますけど、このほうが面白いでしょ」
そういうポーズがちゃんとできるのが、今年の強みです。
調べて、わかった上で遊んでいる。そう視聴者に伝わるんです。
受け手との信頼関係が構築できている作品だと思います。
直虎たちの工作で百姓たちは逃散完了
井伊谷の百姓は、直虎らの工作によって逃散完了しました。
川名の隠し里は異次元ポケットというか、もはや何でもアリだな、と思わないでもありません。
行く手を必死で探し回る近藤は、龍潭寺に駆け込みます。
南渓たちは
「皆戦いたくありませんしね~」
「井伊谷の百姓は逃散得意ですしね~」
とシラを切り通します。
「ここはいっそ、武田にくみしてはどうだろうかのぉ」
シレッと促す南渓和尚。
さらに弓を空射ちして挑発する傑山。
これに対し近藤は傑山に迫り、
「空射ちは怪我をするぞ!」
そう凄むのでした。
ここで「無礼者!」と言うのであれば、近藤は小者感溢れるんですけどね。こういう細かいところで筋を通すから、この人は嫌いになれなくなってくるんですよ。
近藤に毒を飲んで欲しくないのは何故だろう?
そのころ、近藤暗殺指令をくだされた高瀬は挙動不審です。
かわいい高瀬を苦しめる武田が憎い!!
一方、直虎と龍雲丸は、中野直之と協力して井伊谷城に潜入しました。
さて、どうするつもりか?
高瀬は近藤の食事に毒を盛ります。ここで近藤が口をつけるのか、どうするのか。
ハラハラさせられます。
あれ、何故だろう……近藤に毒を飲んで欲しくないのは何故だろう?
高瀬に逃げるように優しく促すし、近藤っていい人なんですよね。
近藤が食事を口にする寸前、武田襲来の知らせが入ります。
高瀬は口をつけなかった椀を取り捨てに行きます。
近藤が家臣に報告を受けていると、何者かがこう言い放ちます。
「それでもまだ戦うおつもりですか?」
男装し、潜入した直虎でした。
「井伊谷城にだけ奇跡が起こるとお思いか?」
直虎の声と同時に、中野直之が近藤の喉に刃をつきけます。
この場面、柴咲コウさんの目力、低い声、男装の麗人ぶりが際立ちます。
二千で守る二俣城も落とされた、五百の井伊谷城は持たない。
そう分析する直虎。
第15回で直之に変装した時もしみじみと思ったものですが、柴咲コウさんの男装姿の美しさは、キラキラと光を放つようで見惚れてしまいますね。
豪華絢爛な衣装を着た時よりも美しい気がするんですよね。
ポスト天海祐希さんと言いますか、この路線をもっと見たいです。
綾瀬はるかさんは『八重の桜』で女戦士役に開眼し、『精霊の守り人』で主演をつとめています。柴咲コウさんにもこの路線で何かドラマ作りませんかね。ここで終わりじゃもったいない!
「井伊谷城にだけ奇跡が起こるとお思いか?」
直虎はそう言います。
あぁ、彼女は変わってしまった……。
奇跡は起きない だからこそ厳しい決断を
幼い頃から、可能性をこじあけ、無理矢理にでも答えを見つけてきた直虎。
城主になって以来、不可能を可能とできるはずだと挑み続け「なんとかなるじゃろう!」と言い続けた直虎。
そう信じても、肝心な時に奇跡は起こりませんでした。
愛する者は死に、家は滅びてしまった。ここまで生きてきてはっきりとわかったのは、奇跡は起きないということ。
奇跡を待つより、現実を。
無力な者なりの、解決策を。
最小の犠牲で切り抜けることの重要性を、直虎は学びました。
だからこそ、直虎は降伏を迫ります。そして近藤も決断を下しました。
「三十六計逃げるにしかず、か。よかろう、そなたの言う通り皆とともに逃げよう。ただし帰順はせぬ!」
近藤は武田に城を渡すことだけは拒みました。
直之は苦悩の表情で「ここが落としどころでしょう」と直虎に告げます。
城を敵に渡さないために燃やすのは常套手段ともいえます。意地と命のせめぎあいの落としどころと言われればその通り。直虎は目を見開いて燃えさかる城を見つめます。
直之は逃亡の指揮を執る一方で、直虎は高瀬と龍雲丸を救いに城内に戻りました。
龍雲丸は炎に吸い寄せられるようにさまよっていた高瀬を救出し、直虎と合流を果たします。
燃えさかる井伊谷城で焼死した者はおりませんでした。
しかし、これだけの被害で終わるのでしょうか。
高瀬の件も、堺行きも、結論は先送りにされました。
MVP:近藤康用
次点は高瀬か焼き味噌家康。
近藤というのは何とも困った男ですよ。
第33回のあとは、憎しみしか抱けなかった視聴者が大半でしょうに。今はもう「この人、結構いい奴なんだな」と振り上げた拳をおろしようがない、そんな気分にさせられます。
高瀬や直之への態度も丁寧です。
目下の人に頭を下げる人っていいですよね。
政次のことをふまえますと、彼は善人とは言い切れないけど、あたたかみというか、味があります。
本当にただの嫌な男なら、直虎や直之も見捨てていたっておかしくはないでしょう。
彼なりの武人としての義の通し方、人間性、不器用さ。そういうものがつたわってきます。
演じる橋本じゅんさんの演技も大きいですね。
◆「政次の最期については、高橋一生くんと話して、僕なりにお芝居でお別れをさせてもらいました」橋本じゅん(近藤康用)(→link)
総評
今回は恐ろしいことに気づいてしまったんですね。
ハバネロ展開に慣れてしまって、今回のようにほっと一息付ける回があると「物足りないんだよなあ」と思ってしまうことに。
第30回くらいからボコボコにされてきて、今週はこんなぬるま湯でしょう? 政次退場の第33回あたりは見終えたあと阿鼻叫喚、虚脱状態でしたからねえ。
サブタイトルもおどろおどろしかったし。
こんな、誰も死なない、不幸にならない回だと気が抜けてしまうのです。龍雲丸が高瀬を救って焼死くらいするかと思っていましたよ。安心したのはいいけれども、拍子抜けです。
……こういう状態、刺激中毒状態にしてしまうのが本作の恐ろしさなんですよ!
とはいえ不安でもあります。
直虎が龍雲丸と堺に行き、我が子を抱いておとなしく暮らす、なんて展開にはならないでしょうから。龍雲丸との別離も先延ばしにされただけの気がしてしまいます。
「イケメンはリレー方式ですので、直政登場までは龍雲丸でつなぎます。しかし直政が出たからもうこれでおしまい」
そんなことになるのではないでしょうか。
ジェットコースターが登るときのように、これからの衝撃に備えてしまっている自分がいます。
しかし、これからは、明るくなるかもしれません。
政次の死が最も暗い時で、これからは光が射し込んできているのかな、そんなふうに思えた回でした。
全体を通して見ると、キャラクターの持つ推進力でくいくい進むような回でした。
直虎の茶目っ気と凛々しさ、家康のびびりぶり、近藤の優しさ、傑山の目力、娘の決断を後押しする佑椿尼などなど。
ある程度推進力をつけた自転車が漕がずにすーっと走るような感じです。
エンジンはかかっていません。
エンジンをふかして走り回るのは、青年直政登場からでしょう。
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著:武者震之助
絵:霜月けい
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【参考】
おんな城主直虎感想あらすじ
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』公式サイト(→link)