番組側もSNS等で告知したようで、早速本編へ。
地震で倒壊した伏見城。加藤清正はいち早く伏見城に駆けつけ、被災者の救助にあたります。
この地震の影響で伏見城は木幡山に移動することになります。
もともとそこに目を付けていた昌幸は喜びますが、石田三成は「戦う城ではなく、居住用に切り替えるから、あなたは堀の普請に回って欲しい」と昌幸に告げるのでした。
伏見城を己の築城の集大成にしたかった昌幸はガッカリ。
その矢先、土佐にスペイン船サン=フェリペ号が漂着します。
七十万石に及ぶ積み荷を秀吉は己のものにしようとしますが、信繁が諫言します。
船の積み荷を勝手に奪ってはならないと五年前に布告を出したのではないか、罪のない船から積み荷を奪ってはいけない、と。
これを聞いた秀吉は「罪がないなら罪をつくればよい」と言い出し、バテレン追放令を持ち出します。
秀吉は船の積み荷収奪だけではなく、犠牲者の耳と鼻をそぎ磔にするという、凄惨なキリシタン迫害へと飛躍します。
秀吉への信繁の進言はいつも裏目に出てしまうのでした。
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秀吉の異変に気がついた家康と正信が動き出す
細川忠興の妻・玉(ガラシャ)のキリシタン仲間にもバテレン追放令の手は及びます。
この信者の集会には、きりの姿も。
先週出てきた大工のフランシスコ吉蔵は、自ら志願して捕縛されてしまいます。吉蔵は殉教者になることを選んだのです(日本二十六聖人の殉教)。
このあたりの事情は複雑です。
バテレン追放令を受けて布教活動を控えめにした古参のイエズス会とはちがい、新参者のフランシスコ会は堂々と布教しており、それが秀吉の怒りをかったとか、様々な要因があげられます。
またこの事件は、のちに関ヶ原前後に起こるオランダ船リーフデ号の漂着と比較するとなかなか興味深いものがあります。
秀吉の蛮行に、信繁や大谷吉継は心を痛めます。
一方、徳川家康と本多正信は、秀吉は衰えているようだと疑念を深めます。正信は手を打ち、情報を集めることにしたようです。
堀普請のやる気がうせた昌幸は、連日吉野太夫の元に入り浸っているようです。この艶っぽい美女を目にして、何か気にかかるのか、訝しむ様子なのが出浦昌相……。
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諸将が見つめる中で思わず漏らしてしまった秀吉
秀吉は明との和平交渉にのぞみます。
しかし明側の文書に、日本側を下に見て日本国王にすると書いてあったため、秀吉は激怒。
こうして水面下で多くの人々が勧めてきた和平交渉が白紙に戻ります。またも日本の大軍が渡海することになるのですが、ここでアクシデントが。
怒りの形相の秀吉の足下から、何か液体が漏れます。
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信繁が「拾様が粗相しました!」と誤魔化しましたが、秀吉の失禁であると周囲にはわかったはずです。
ちなみに今週は医事考証がついているので、老衰の描写が何ともリアルです。
長らく渡海していた加藤清正は、久々に秀吉に面会します。
面会前、石田三成は「秀吉が衰えたからと涙ぐんだりするな」と釘をさしていました。
しかし清正は、やせ衰えた秀吉から息子の拾のことを頼むと言われてしまい、こらえきれず泣き始めます。
三成の目はあきれるようであり、素直すぎる清正をうらやむようでもあります。
義を貫くことがこれほど苦しいとは
信幸は信繁から秀吉の病状を聞きだそうとしますが、信繁はかわします。
信幸は検地が進んでいない本領に戻ると信繁に告げます。
兄と別れたあと、信繁は妻の春に「私は兄を裏切っている。そして兄に私の心はお見通しだ」とこぼすのでした。
信繁は憧れた二人の人物、真田信尹と上杉景勝からかつてこう言われました。
「わしのようにはなるな」
生きるために人としての道、家のために信念を曲げた二人は、信繁に「義を貫け」と託したのです。
そのおかげで今、息を出来ないほど苦しいと吐露する信繁。義を貫くことがこれほど苦しいとは、と漏らします。
先週の信幸の読み通り、信繁は豊臣家に深入りするどころか、運命の糸にからめとられているのでした。
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沼田に戻った信幸は、豊臣政権はあやうい、戦乱にそなえ天守閣を建設すると告げます。
ウォーマシン矢沢頼綱(昌幸の叔父、信繁・信幸にとっては大叔父、矢沢三十郎の父、80歳)は喜び、雄壮なBGMを背景に生きているうちにまた戦に出られそうだわいと張り切り、こう言います。
「床の上で死ぬわけにはいかんわ!」
その後「矢沢頼綱は、このあと戦場に出ることなく天寿を全うした」と語られ、ナレ死するのでした。二コマ落ちかよ!
秀頼は5歳という異例の若さで元服す
秀吉の状態はますます悪化し、部屋からいなくなったかと思うと「千利休が呼んでいる」と言い出すほどです。
もう信繁の役回りが、ボディガードというより介護士。
こうした状況の中、三成は僅か五歳の拾の元服をすすめます。
豊臣秀頼の誕生です。
三成曰く、武家では異例でも公家ならばこの年齢での元服はあることなのだとか。
それにしても、人形のように可憐で幼い子が元服するというのは異常です。家康はこの状況をますますあやしみ、正信はほうぼうに情報網をはりめぐらせます。
大坂城から城下を眺める秀吉は、人生の目的を達成できていないと語ります。
平清盛のように、自らの都へ天皇を連れて来ることが秀吉の最終目標だったとか。
信繁はその宿願を秀頼がきっと成し遂げます、と秀吉を励ますのでした。
この場面、城から見える大坂城下のCGと、金色に輝く夕日が綺麗です。今週は「黄昏」のイメージか、黄色いライティングが印象に残る場面が数カ所あります。
茶々の無茶振り発動「秀頼が花咲か爺を見たいって」
慶長三年(1598)、秀吉は上杉景勝を呼び出し、越後から会津への移封を命じます。
表向きは伊達の押さえですが、本当の目的は徳川を北から見張って欲しいと、秀吉は景勝に告げます。
徳川に良からぬ動きがあれば、会津から関東に攻め込み秀頼を助けて欲しいと頼みながら、景勝の手を握る秀吉。
これは完全に関ヶ原の伏線ですね。
相変わらず直江兼続が冷たい顔で、この場面を眺めています。
兼続には、こんなふうに湿っぽく頼まれたら景勝がその期待に応えないはずはない、とわかっているのでしょう。
この年、秀吉の人生最後の大イベント、醍醐の花見が開催されます。
女たちを中心に千三百人を呼び出した晴れの舞台。
そのわりにはちょっと狭苦しいのは、仕方ないでしょう。桜のセットと、ずらりと並んだ女性たちの衣装は見応えがあります。
花見の席で信繁はきりとすれ違います。
キリシタンになりたいというきりに「やめておけ」と信繁は即答。
花見はなごやかに進んで行きますが、ここで茶々が「秀頼が花咲か爺を見たいって」と、ろくでもないことを言い出します。
空気を読めというか、一体この人は何を考えているのでしょうか。結構な死神気質です。
先週、茶々は我が子が第一なのだと説明されていましたが、だからってこれはないでしょう。
信繁や三成、寧ら周囲がはらはらしつつ見守る中、秀吉は木に登ります。
息子のために張り切って花咲か爺の真似をした秀吉は、足を踏み外し木から転落、腰を強打します。
その場は何とか取り繕ったものの、これ以来秀吉は歩行できず、寝たきりとなってしまいました。
そうなんですよ、お年寄りが転落や転倒で骨折し、寝たきりになって急激に容態が悪化するのはよくあることなんですよ。
本当に本作は、胃が重たくなるようなリアリティをつきつめていくスタイルです。
真田か豊臣か、はたまた徳川か 揺れ動く信繁と信幸
そんな中、稲はおこうを呼び出しある事実を告げます。
この二人のお腹は平らになっていますから、出産はもう終わったようです。
さらに稲は、本多正信から密書を受け取って内情を探るよう言われていたと、信幸に告白。
正信の狙いは、信繁経由で秀吉の容態を聞くことでした。
なぜそれを告白するのかと尋ねた信幸に、稲はここでやっと「私はあなたの妻で百助(信幸と稲の子、のちの信政)の母」と、デレたことを言うのです。
信幸は信繁を呼び出し、また秀吉の容態を聞きだそうとします。
秀吉の容態を徳川に流すことで、徳川の反応を試したいと信幸は信繁に提案。
信繁は板挟みの苦悩を舅である吉継に相談します。
吉継は己の決めた道を進むがよい、とアドバイス。ここはそうとしか言いようがない気がしますね。
吉継は利休事件のように己の手を汚すこともありますが、基本的にまっすぐな人です。
信繁は意を決し、秀吉の容態を信幸に伝えます。
この場には昌幸も同席しており、信繁の話を聞いています。
「秀吉は花見以来容態が悪化し、弱っているのは明白、もう回復の見込みはない」
そう語る信繁ですが、信繁の胸中、決断の理由は明かされません。
兄に嘘をつき続ける苦しみに屈したのか、それとも兄の提案に乗ったのか。
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ゲイシャ! ニンジャ! 外国人が喜びそうな戦国劇も
息子の会話を聞いていた昌幸は、吉野太夫にこの情報を漏らしてしまいます。
吉野太夫はその場を一時退席しようとしますが、そこに出浦昌相があらわれ、太夫の腹へ刃物をブスリ!
驚く昌幸に対し昌相は、吉野太夫の隠し持ったくないを示し、彼女は忍だと明かします。
さらに佐助が、本物の太夫は京の廓にいると補足。昌相は目を見て同類とわかったとか。太夫は本多正信の情報網のひとつだったようです。
ちなみに設定としては、今回の吉野太夫だけが別人に入れ替わっているそうです。
それにしてもこの短い場面、なかなかグローバルです。
海外に展開するなら、この場面は最高。
海外の戦国モノは、強引にニンジャとゲイシャをねじこんできます。
吉野太夫はゲイシャではないというツッコミはいりません。和風セクシーな水商売ガールはゲイシャですから。ニンジャがゲイシャを殺すなんてブラボー!に決まっています。
この偽吉野太夫の主君は誰かと言いますと、本多正信でした。
「役立たずめ」と吐き捨てる正信はまさに悪企みをする嫌なおっさんで、これまたなかなか味がありました。
ついには信繁の顔すら分からなくなってしまった
信繁の言葉を受け、信幸は舅の本多忠勝の元に向かい、秀吉の容態を告白します。
さて、徳川はどう出るか。
浮気相手がいつのまにか忍になっていて、しかも死んでしまった昌幸は、薫の元へと戻ります。
久々のイチャイチャタイムを堪能していると、おこうが孫の仙千代を抱いてあらわれます。そこへ稲も、同じく孫の百助を抱いて登場するのでした。
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一方、大坂では、己の老い先が短いと知った秀吉が形見分けをします。
徳川家康には明の水墨画、片桐且元には金子十五枚、石田三成には金子五十枚と脇差。
三成は一瞬固辞しますが、再度促され受け取ります。きっと三成は、のちにこれをすべて軍資金に回すのでしょう。
三成が「信繁にはないのか?」と尋ねると、秀吉は「知らん」と一言。三成と且元は、まだ仕えて日が浅いから仕方ないと信繁を慰めます。
信繁がその後秀吉の側に控えていると、秀吉が起き上がり話しかけて来ます。
ここで繰り返されるのが、第十四回放送「大坂」でのやりとりです。
あれから月日が流れ、輝いていた日輪の子は今沈みかけています。
黄色みを帯びた照明が、「黄昏」の寂しさを引き立てます。信繁はよちよちと歩く秀吉を床まで導き、幼い子どもをあやすように寝かしつけるのでした。
信繁が寝かしつける老人は英雄ではなく、かつて英雄だった人物の抜け殻のようでした。
今週のMVP:真田信繁&信幸
秀吉、実は別人に入れ替わっていた吉野太夫もよかったのですが、兄弟で。大坂編クライマックスで二人の成長や変化がよくわかりました。
領主として貫禄を見せてきた信幸。
板挟みに苦しみつつも、老いた秀吉に細やかな配慮を見せる信繁。
どちらも素晴らしいと思います。
総評
秀吉の死を前にして皆様々な思惑のもと動いていますが、そんな中で信繁がいかに進むべきか、生きるべきか迷っていると示されました。
そしてこの激動の中、信繁がたのみとするものが「家族」ではなく「義」に変化しました。
そのことを必ずしも肯定的に描いていないのも、本作の意地の悪さだと思います。
信繁が「義」を貫く豊臣政権は無茶苦茶です。
積み荷を奪うためにキリシタンを弾圧する非道っぷりはむろんのこと、肝心の秀吉その人は信繁のことを忘れている始末。
そもそもこうなる前の秀吉だって、決して仕えてよい主君ではありませんでした。
そのことは、落首事件、朝鮮出兵、秀次事件を通しで信繁自身がよく知っているはずです。
今まで丁寧に、豊臣政権が日本を支配することはよろしくないと描いて来て、それでも主人公にその政権への忠誠を誓わせるというのは、なかなかおもしろい点だと思います。
そうした描き方だからこそ、信繁の選択がいかに苦く、辛いものであったかわかります。
しかも信繁がそうした選択をしたのは、真田信尹と上杉景勝の言葉のせいもあったと劇中で語られるわけですが、本当にそれでよかったのだろうかと、どうしても考えてしまいます。
本作のコピーは「今だって、愛と勇気の旗をかかげていいんだ」でした。
そのコピーも、ここまで進んできたらやっと意味がわかってきました。
信繁は迷い、苦しみ、そんなもの掲げない方がいいとわかっていても、敢えて旗を掲げるのだと。
「義」に生き、貫く痛みと苦しみを、今週の信繁は表していたと思います。
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著:武者震之助
絵:霜月けい
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真田丸感想