こちらは3ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【青天を衝け第4回感想あらすじ】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
裸体無双&キュン死で鉄壁の布陣だ!
作家性を薄くし、ターゲット層を広げる。
本作は、クリエイターの個性ではなく、広告代理店が考えそうな手法を使っています。
案の定、こんなニュースが速攻で出されていました。
◆「青天を衝け」要潤、小池徹平の湯浴みシーンにネットざわつく「どんな気持ちでみれば…」(→link)
それは浴場で慶永が目を閉じて「水戸はほかの徳川とは違い頼りになる」などと語り、福井藩士・橋本左内(小池徹平)が慶永の右腕を洗いながら同調している場面。
半裸で登場した2人にSNS上では「この入浴シーンどんな気持ちでみれば…」「福井勢のBL感…」「福井勢のサービスシーン」「サービスシーンきた笑」「えっ何このシーン!?何のサービス!?」「良い背中やな」といった声が上がっていた。
もう演じる方へのハラスメントで絶句します……。
あの会話は別にお茶を飲みながら交わしてもよかった。
書物を読みながらでもよかった。
福井県民への嫌がらせとしか思えない。
地元の英雄・松平春嶽と橋本左内が、『西郷どん』に続いてこの扱いってどういうことでしょうか。
「計算通り……」とほくそ笑んでいる誰かの顔を想像してしまいます。
40代以上女性をメインターゲットとしていますから、長州に『花燃ゆ』あらば、水戸に『青天を衝け』ありですね。
その辺は出演者も織り込み済みです。
◆ 橋本愛「キュン死に度が高い」青天を衝けで妻役(→link)
『麒麟がくる』では、出演者が孔子のことを語っていて流石だと思いました。
今年はキュン死ですか。
これは役者の問題じゃない。
「キュン死しちゃった顔で演じてください〜」
みたいな言葉が飛び交う現場が想像できて辛い!
それがニーズですからね。この手のニュースを見ていて感じてしまうセンスの古さ。このあたりがもうとにかく辛い。
まぁ、本編もセンスが古いですから仕方ないですかね。まるで昭和の少女漫画です。
栄一の顔をのぞきこむ千代なんて、もうあれはなんなのか。
日米和親条約をスピード締結して、しょうもない少女漫画もどきは長々としつこくやる。
もう何度でも問いたい。これは歴史を描くドラマなのですか?
◆女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」大河ドラマ『青天を衝け』の渋沢栄一像に期待(→link)
◆挙手ボタン殺到…橋本愛「おなごが泡吹く」発信力(→link)
◆<青天を衝け>玉木宏“高島秋帆”の変わりぶりに反響「まるで白馬の王子様!」(→link)
「まるで白馬の王子様!」
って、一体いつの時代やねん。
◆ 「王子様はいない。最後のひと踏ん張りを諦めないで」女性が多様な選択肢の中で幸せに生きるための現実的ヒント(→link)
お姫様路線を徹底して押してきたディズニーですらそれを捨て去り、ありのままに生きるエルサがあれほど人気があるというのに……どういうことなのか。本当に信じ難い。
高島秋帆に注目を集めたい意図はわかりますが、「きゃーイケメン!」で終わったらただのコスプレでしょうに。
「明治維新で敗北した側にもスポットライトを当てます!」
「へえ。没落士族や屯田兵の苦労でもやるのか」
「いや、そういう暗い話、難しい話は、イマドキ視聴者の需要ないんで! 幕臣から経済人になった渋沢栄一、明治以降趣味人ライフを満喫した慶喜をイケメンとして描ききゅんきゅんさせます!」
「はぁ?」
こんな問答を脳内再生しちゃいますよね。
明治以降の慶喜の心境に関しては興味深い話はいろいろありますが、
このドラマに期待するのは無駄だろうとは思います。
本作の制作サイドが選択した手法は、これまでの大河固定層を逃し、流動性の高い新規層を確保するものでしょう。
それをそのまま固定させられたらよいものの、できなければただの損害。大河不要論が再燃するのではありませんか?
流動性の高い新規層にせよ、40代女性ならば層が厚いわけでも、新たなトレンドを生み出す可能性も高くはない。
大丈夫でしょうか?
資本主義の父を描くにあたり、本人とは似ても似つかない美形にして、13歳時に強引な展開で下着一枚にする。
松平春嶽と橋本左内は風呂場で会話する場面がある。
その未成年の下着姿だの、裸体が「ご褒美!」「えっちすぎますぅ!」「どういう気持ちで見たらいいの」だのなんだの大人が表明し、それをニュースメディアが取り上げる。
なにひとつとしてまともな要素がなく、めまいがするばかりです。
本当に若いか、トレンドを追える女子はこっちですけどね。
◆ 韓国時代劇『ヘチ 王座への道』をもっと楽しむための「7つ」の“キーワード”(→link)
そうそう、脚本家つながりの『あさが来た』ですが。華流『月に咲く花の如く』は上位互換ではるかに面白い。Amazonプライム他VODで見られます。
論語読みが論語を知らないどころか……
そういえば今週は漢籍出てきましたっけ?
『麒麟がくる』の方がよほど出てきていることは確かです。
そしてこんな疑念にも答えを推察しておきました。
「かつては『論語と算盤』が経営者の定番だったのに、最近の日本ではそうでもないなあ。なんでかなぁ?」
昨年の『麒麟がくる』では『論語』はじめ漢籍を引用し、伏線にしていたにも関わらず、大手メディアですらそこに触れない。漢文力の低下を痛感しました。
無理もないことかもしれません。
書店にいけば、儒教を学んでいたのは中国人と韓国人だけであるかのような誤誘導ベストセラーが並ぶわ。作家が漢文不要論を展開するわ……。
要するに、漢文力の底が抜けるという、明治以来でも直面しなかった危機に日本は直面しているということです。
日本史に欠かせない「儒教」って一体何なん?誰が考えどう広まった?
続きを見る
私の意見と前置きしますが、渋沢はじめ明治から学べることなんて現代人にさしてあるとも思えないのです。
当時、彼の自伝を書いた幸田露伴も「時代の子」と評しています。
『論語と算盤』現代語訳は読みました。
正直なところ、中国文学者による翻訳付き書籍の方が応用できると思います。ましてや漫画版となれば使えるかどうか、ちょっと想像つきません。
◆ 大河ドラマ『青天を衝け』の主人公・渋沢栄一の考えがよくわかる! 『まんが 超訳「論語と算盤」』が売れ行き好調で増刷決定(→link)
イギリスでは、大英帝国時代を懐かしむ連中は『モンティ・パイソン』で茶化されているもの。そういう恥ずかしいイメージが定着しているとか。
最近は世界的にそういう時代を懐かしむ愛国主義者もいるものですが、要するに時代錯誤とみなされるわけです。
できるビジネスパーソンを自認する方は、帝国主義礼賛『坂の上の雲』だの、渋沢栄一から学んでいると公言する状況は、世界規模ではかなり特異なものだと自覚しましょう。
それにしてもこのドラマって、女性雑誌の官能特集と経済誌が並んだ棚のようで圧巻ではあります。
上司が部下の生気を吸い取る世界へようこそ
本作関連のニュースはエモいと思います。
なんかこう、部下の活躍を見守る上司目線がエモいんですね。
この記事はおもしろいので、ちょっと分析してみましょう。
幅広い視聴者層をターゲットにするだけに、展開が早くテンポがいい。
吉沢の肉体美や恋愛模様で女性ファンのハートをつかむ傍ら、竹中や草ナギ剛のシリアスなちょんまげ頭で時代劇好きも飽きさせない。
「大人から子供まで、皆さんに楽しんでいただける物語」(脚本の大森美香氏)というコンセプトが伝わってくる。
ここです!
幅広い視聴者層をターゲットにするというのは、世界戦略的に見ると間違っています。
VODで配信がここまで発達すると「みんなでテレビを見る」という機会はむしろ薄れる。
各人がスマホなりタブレットを持ち鑑賞する。
となればむしろ作家性を濃くし、流動性の低いファンを掴んだ方が得策なのです。
視聴率だって計測方法が変化しています。
「大人から子供まで、皆さんに楽しんでいただける物語」と持ち上げてしまうとすれば、『ゲーム・オブ・スローンズ』ブームすら把握できない、アップデートできない作り手が揃ってしまったということです。
これは戦略時点で間違っています。
万人受けを狙って仕掛けた『100日後に死ぬワニ』が大失敗。ヒットすると予測すらできなかった『PUI PUI モルカー』が万人受けしている。
ヒットのセオリーも変化したと読み取れます。
それすらできなければ百戦百敗は当然の帰結でしょう。
次に……。
登場するたびにネット民は大騒ぎだ。
「ネット民」とか「ネットでは」という言い回しを、そもそも物心ついたころからネットのある世代は使いません。
ネットはただの道具でしかありません。
何を特別視しているのでしょうか。
そういえば、先週は諸葛孔明と斉昭のコラージュじみた絵がバズっておりましたっけ。
当時の技法でああいう画風はありなのか、風刺画はもっと複雑なものではないか、そもそも江戸の絵師があんなにも詳細に殿様の顔を知っているものなのか、疑念がつきませんが……ま、でもバズればいいってことでしょうか。
そしてここだ。
40代になると全力で走る機会が減るからか、他人の全力疾走を見ていると気持ちいい。物語全体を包む明るさの一因は、栄一の走りっぷりだと感じている。
要するに若いもんががんばっている姿がいいなあ〜と微笑む。
そういう昭和上司接待ドラマということ。
本物の若者はVODに流れ、そして、それに対応できそうもないい昭和世代が「やはり若者の走りっぷりがいいなあ」「ふんどしにきゅんきゅん〜」しているという、どうしようもなさが見えてきました。
私としては、そんな「剣闘士の戦いに声援を送るローマ市民」じみた楽しみ方はしたくないんでッ!
歴史上最もツラいブラック仕事は何だ?古代ギリシャ・ローマから探す
続きを見る
そもそも「大人の階段上る」の『想い出がいっぱい』って1983年の曲じゃないですか。
これが懐かしいってなる年代って……いやまあ、やめておきましょう。
◆『青天を衝け』応援したくなる“栄一”吉沢亮のピュアさ 草なぎ剛も無敵の透明感 (1)(→link)
ピュアか……『麒麟がくる』の信長や光秀もある意味ピュアでしたけれども、そういう屈折のないぴゅあぴゅあ感ですよね。
ピュアといい、透明感といい、それって演じる方の年齢を踏まえると、そういう褒め方って果たしてよいものなのかどうか疑問は湧いてきます。
※続きは【次のページへ】をclick!