青天を衝け感想あらすじ

青天を衝け第4回 感想あらすじレビュー「栄一、怒る」

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MVP:平岡平四郎

フレッシュな魅力と江戸っ子らしさを持ち合わせた粋な男でした。

 

総評

テンポよくスッキリといったところでしょうか。日本史をすんなり学べる――そんなドラマが求められている、という観点から物語が進んでいるようです。

日本男児の高潔さを語る栄一たち。

そこに気持ちよさを感じる方はここでページを閉じてください。

一方、そんな世界観についていけない方は先へお進みください。

 

『彼岸島』と『彼、岸島』

まずは大河と関係ない話で申し訳ありません。

吸血鬼サバイバルホラー『彼岸島』のスピンオフ『彼、岸島』が始まりました。

あの超展開を見せる名作にツッコミを入れていく斬新な漫画です。

 

もう今年の大河は、その主人公気分で見るしかなくなってしまいました。

◆「彼岸島」がギャグマンガに、人間目線でツッコミ入れるスピンオフ「彼、岸島」1巻(→link

真面目な話、『青天を衝け』と『彼岸島』には似ている部分があります。

説明セリフが多いこと。

ずーっと思ったままのことをそのまま会話にしている。そこがそっくりです。

演出もわかりやすい。冒頭の栄一なんて、観客を意識しているとしか思えないほどの笑みを浮かべて歩いてきます。

日常生活で、あんな笑顔をして歩いている人、います?

前から歩いてきたら、怖くありません?

『彼岸島』感覚でいえば、日米和親条約のところなんてすごかった。

「大砲すごいぞ!」

「戦か!」

「戦は避けるぞ!」

こういうことを立ち話感覚で進めて、その次には条約を結んでいる。思わず、えっ???となる。

本作でペース配分など考えてはいけないのでしょう。『麒麟がくる』の合戦スルーよりはるかに悪質です。

というのも幕末の外交ともなれば、戦国時代の合戦よりも視聴者の知識がないことは顕著。

それをタップしただけでクリアするようなゲーム感覚で進めるって問題があるのでは。

条約の一件が、栄一の周辺にも瞬時に伝わるかのような世界観もフシギです。

ネットも無い時代にどうしたことか。

と、そういう超展開が『彼岸島』のようでエモい。

永井尚志が「ペルリが! ペルリが!」と叫びながら走るところなんて、見ているだけで知性が奪われていくようで圧巻でした。

瞬時に重要な情報が駆け巡る世界――そこから見ると、大正時代になってもカラスで伝達している『鬼滅の刃』って不便ということになるのでしょうか。

 

英雄史観万歳ワールド

そういうしょうもないネタで語れるレベルなら微笑ましいものですが、本作は色々と危険なこともはらんでいます。

まずは尊王攘夷思想の美化でしょう。

説明セリフでちゃっちゃと江戸幕府の歴史を進め、気がつけば日本男児を連呼。

皇国史観の原産地である水戸藩由来の危険思想については、現代人は批判的目線も一緒に持ち合わせねばならないところでしょう。

慶喜が才能があるから将軍にしたい――そう誘導するあたりも、おかしな話です。

本日(8日)にBSで再放送される『柳生一族の陰謀』は、徳川家光徳川忠長の継嗣問題を描いています。

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あれにはどういう意味があるのか?

将軍の資質は問わない。人形を将軍の座に据えていようと、幕閣が揺るがない。

そういう国家作りが近代の課題で、イギリスの王政はこの典型例です。

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家光の方が弟より愚鈍だろうが、長子相続を守る。このことこそ徳川将軍家を磐石にすることだ。

そういう歴史観が反映されているわけで、柳生宗矩が腹黒いだけの話でもありません。

それなのに、嗚呼、それなのに。安っぽいRPGかオカルトのように、

「おお、慶喜こそ勇者の血筋……」

みたいなことを延々と説明セリフで語らせる。

家定はテンプレ通りのバカ殿描写。一体いつの時代のドラマなのかと焦燥感が募るばかりなのです。

エンタメを楽しみながら歴史が勉強できるどころか、視聴者の脳内に毒を注ぎ込んでいるような作品と申しましょうか。

こういう英雄史観は日本の特有の古い価値観であり、かつ危険なのですが……。

悪代官のテンプレ描写も凄まじいですね。本作の感想を読んでいると、間違った歴史を植え付けているのかわかってしまってつらい。受験生はむしろ見ない方がよさそうです。

とにかく最近気になるのが慶喜の聡明さ。しつこいばかりに口頭で説明されています。

『麒麟がくる』の場合、主人公の明智光秀がそこまで口だけで賢いとは言われてはいません。

具体性を伴っていた。

例えば、主筋の嫡男にあたる斎藤高政よりも早く、儒教の教典である四書五経を読みこなしていたり、斎藤道三に話を振られたときは数珠玉の計算方法もスッと思いつくといったシーンがあった。

何をどうしていたのか? 周囲と比べて優秀なのがわかりました。

家康の幼少期にあたる松平竹千代も、幼くして信長の弟・織田信勝より将棋ができることが示されていました。比較対象を示すことで、具体性がありました。

それが栄一の場合、具体性が乏しい。比較対象もない。明瞭とはいえない。

慶喜にせよ、セリフでただ「賢いです! すごいです!」と言われる。

どこが? と教えてもらいたい人は少なくないのでは?

慶喜の場合、テンプレバカ殿描写をされる家定より賢いとしつこいほどに示されますが、そりゃ、あれと比べたら誰だってそうだろうとしか思えないんですよね。

 

まだ戊辰戦争に期待してるの?

こんなニュースがありました。

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本能寺は心配ご無用でした。

じゃあ今年は?

◆ 『麒麟がくる』の予算が横滑りで豪華仕様に! 『青天を衝け』でNHKが恐れる“あの人”からの口撃(→link

心理劇重視だったので、コロナのせいで合戦が減ったかわかりませんが、それよりも注目したいのはここです。

『青天~』では、5億円以上をかけて東京ドーム5個分の敷地を群馬県で貸し切ってロケをしています。

これから描かれる戊辰戦争でも、同じくらいの規模のセットを作ることになっている。

『青天を衝け』ではそもそも戊辰戦争をしっかりやるとは思えません。なぜか?

徳川慶喜は、当時の江戸っ子も呆れ果てるほど腑抜けた態度で戦争を放棄し、その結果、新政府軍の憎悪とはやる血気は東北諸藩が血で贖(あがな)われた。

それが戊辰戦争です。

そこをあからさまに描けば、慶喜も、それに賛同する栄一も、福沢諭吉流に言えば「痩せ我慢もしない根性なし」に思えます。

そんな都合の悪い場面を徹底的に描くとは、到底思えません。

栄一周辺には参戦者もいますし、それこそ町田啓太さん扮する土方歳三は戦死を遂げます。

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彼らが凄絶な散り際を見せれば見せるほど、栄一は何をやっているんだとなりかねない。

ゆえにそこは“スルー”一択です。

そりゃ福沢諭吉も明治以降文句タラタラになりますよ。

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慶喜は偉いから戦争回避できたけど、東北諸藩は要領悪くて自滅した。

そしてその東北から北海道に送り込まれた屯田兵が苦しみながら開拓した北海道をビジネスチャンスにする。

それが明治の金です。

作風からして、そういう落とし所を探りそうな気がします。

なんのかんのいって、このドラマの目的は「上級国民は明治から偉かった」と描くことでしょうね。

それに……私の推測だけでなく、そのヒントも今回ありました。

ペリーの黒船の姿が見えない。スタジオ撮影をちょこまかと誤魔化しているだけ。礼砲を発射する場面すら出さない。

別に本物の船なんて必要ありません。VFXと音響で表現できます。でも、それすらしない。

スルーするにしたって、取捨選択はできます。

幕末もので黒船をろくに描かないとは?

インパクトが伝わりません。

要するに、歴史を描く気がないんですね。

これではマトモに戊辰戦争が描かれるはずもなく、すでに私は諦めました。

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