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【青天を衝け第13回感想あらすじレビュー】
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土方は一体なぜ?
はなからダメ出しして申し訳ありませんが。
役者――特に時代ものとなれば、シンパシーより重視されるのはエンパシーでしょう。
たとえば昨年、染谷将太さんがこう言ったらどうか?
「首を箱詰めにする。そんな信長にシンパシーを感じました……」
いくら大河レビューで口さがないことを書く奴がいて、始末したいと内心願っていても、それを言っちゃいけない。
そもそも芝居とは、ありえないことでもあったように生み出すイマジネーションの世界でしょう。
いちいち自分と引き合わせてはいけないのではありませんか?
特に本作の場合、天狗党にシンパシーを感じては危険すぎます。
同じNHKでも朝ドラの『おちょやん』は、むしろ演じる側が切り分けていました。
ヒロインの父や夫があまりにゲスで「一緒にしないでくれ!」と役者側が懇願するほど。
『おちょやん』のような近現代でも、現代人とは感覚が違う。
ましてや幕末です。今とは別世界のはず。
それなのにシンパシーと口にするのはどうにも危うい。
そもそも、なぜ土方がこんなに大きな扱いなのか?
新選組の意思決定者はあくまで近藤勇です。
教養、知性、政治的才覚において、近藤は飛び抜けていました。
例えば、土方が俳句を詠んでいたのに対し、近藤は辞世が漢詩。幕政にも献策をするほど切れ物でもあったのです。
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ゆえに戦前のフィクションでは、近藤の扱いが飛び抜けていて、それがいつしか土方が前面に出てくるようになった。
その辺に強く影響を与えたのが司馬遼太郎でしょう。
彼のせいで近藤は愚鈍、土方はシャープで聡明とされるのですが、これはなかなか困った話ですが、なぜ司馬はそうしたのか?
おそらくや「脱亜入欧、漢籍教養を嫌い、西洋思想を身につけた人物を高評価する傾向がある」んですね。土方が西洋思想を身につけていたとは思えませんが、肖像写真が洋装ですので、そういうイメージがつきやすい。
理屈としては、新選組の組織体系が西洋の軍隊制度に似ていて、土方は近藤にとっての副官のようなものであったとしている。
副官といってもまちまちでして、参謀役をするとは別に限りません。
第一帝政のネイとジョミニの関係でも反映したのでしょうか。
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近藤ではなく土方の理由は二番煎じですよね
新選組なのに近藤ではなく土方を目立たせた理由。
司馬遼太郎の影響もあるかもしれませんが、それよりも『あさが来た』の二番煎じでしょうか。
『あさが来た』に土方が出て視聴者にウケたのは『新選組!』の山本耕史さんだったことが大きいと思われます。
さらにそこに乗ってきた!
って何度同じネタをこすっているんでしょうか。「他人の褌で相撲を取る」とはこのことでは?
司馬遼太郎が大好きな中高年エリート自意識な男性層にせよ。
『るろうに剣心』や乙女ゲーが大好きな層にせよ。
そして『あさが来た』にハマった朝ドラ層にせよ。
別作品のファンに目くばせする。あまりにプライドがない。
もっと露骨だったのが「五代様」ですよね。
土方歳三の登場は「これだ!」と言い切ることはできない一面もありますが、ディーン・フジオカさんの五代友厚ともなれば、どう言い訳したって「あの」五代様ですよね。
こうした傾向は他にもあり、本作には薩摩藩の三島通庸も出るようです。
三島は、薩摩藩士としては、そこまで目立つ存在ではない。それでも『いだてん』の主要人物だった三島弥彦の父です。
そこも目くばせですかね。よりにもよって鬼県令・三島とは……。
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しかし、そんな小手先の出演者テクニックでどうこうなるのでしょうか。
最終的には「物語そのもの」が面白くなければ意味がありません。
センスの更新は大事です
こんなニュースがありました。
◆ 「真・三国無双」の実写映画が中国で大コケ 「ゲームの世界を再現」と高評価も…(→link)
一騎当千を再現したあのゲーム実写版ですが、見事に大コケ。
理由はわかります。古いんでしょうね。
もう20周年を迎えるシリーズですし、せめてもう少し早く映画化すればよかったと思います。
今、映像の世界もトレンドの変わり目を迎えています。
ああいうワイヤーアクションが派手なものは古い。好みが合う・合わないの問題ではなく、見ていて苦痛を覚えるのです。
中国語圏は70年代以前に回帰していて、古武術の動きを再現する方向へ向かいつつあります。
ドニー・イェンだって『イップ・マン』では詠春拳を渋くこなしていますからね。
70年代から大活躍していた、そんな倉田保昭さんが倭寇を好演した『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』はおすすめです。
渋カッコいい日本の武士が倭寇で大活躍!映画『戦神ゴッド・オブ・ウォー』が熱い
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『るろうに剣心』も残念ながら古い。
あれも完結がもう少し早ければよかったと惜しまれる作品です。
漫画の時点で比較するとわかるのですが、『鬼滅の刃』の方が武術を再現した動きになっています。
ポーズだけ比較すると、実は『鬼滅の刃』の方が実践的かもしれない。17巻表紙の風柱なんて、渋くてかっこいいんですね。
話を『青天を衝け』に戻しますと、こちらも殺陣と演出が古い。
今週は土方が出てきて、これ見よがしに炎が見えましたが、はっきり言ってやりすぎていて古い。
番組公式動画を見た時点で絶句していました。
所作指導者が皆逃げ去った感がある。
股立ちをとって走るとか。ちょうちんの持ち方とか。全部ダメ。何もかもおかしい。土方に対して、全く思い入れのない人がテキトーにカッコつけただけだとわかって悲惨です。
乙女ゲーの宣伝ムービーだと思えば、まぁOKなんでしょうけど、大河でそれで良いのでしょうか。
殺陣に関していえば、全体的に昨年より後退しました。
昨年はきっちり古武術の指導をしていたので、光秀と細川藤孝が対峙する場面なんて、向き合った時点で鬼気迫るような重圧がありました。
そもそも『麒麟がくる』は、70年代以前を回帰する意思があったんですね。
オープニングのフォント、映像の処理、センス。往年の時代劇復活を期していると思えたのです。
NHKもそこは自覚的だからこそ『柳生一族の陰謀』や『十三人の刺客』リメイクをしているのだと思います。
次は『魔界転生』か『駿河城御前試合』か、まさかの『戦国自衛隊』か?
以下の記事にもあるように、時代劇は残すべきだと感じます。
2020年代はVODで海外、しかも東アジア圏の作品が一気に鑑賞できてしまう。
うかうかしていたら、本当に危険です。
セクシャルハラスメントを楽しむ日曜夜8時
本作のニュースをみていると、顔がどんどん暗くなってゆく……。
初夜に色気。
いったい何を目的として大河を見ているのでしょうか?
◆ 青天を衝け:次週予告にディーン・フジオカ“五代様” ほんの一瞬も「色気ハンパない」 期待の声続々と(→link)
◆「青天を衝け」“五代様復活”でネット大騒ぎ「おディーン様!」「色気ダダ漏れ」 次回予告に登場(→link)
かつて、大河は勉強になる、教養の証になるとされた。
けれどもお色気もたまにチラッと入る。
勉強名目で向かい合っていたら、意外なエロ! ゴクリ、ムフフ。そんなスポーツ新聞に連載されていた、戦国大名と側室のエロ小説じみた需要があったわけですね。
って、一体いつの時代の話なのでしょう。
呆れてものも言えませんが、大河がそういう年齢層を視聴率ターゲットにしているからなんでしょうね。
一方で、おディーン様(すごいセンスだ……)に、はしゃぐ層もいかがなものでしょうか。
彼らは大手掲示板で性別を伏せてきた時代がある。そうしないと腐女子だのなんだの罵倒されてしまっていた。
しかしそれも過去の話。
SNSでは、どんどんエロトークが進む。ここでもまた時代錯誤的なハラスメント感覚が蔓延して、ネット大騒ぎになるんですね。
私はディーン・フジオカさんが心配でなりません。
このドラマはいろいろ危うい。下手をすれば中国語圏、海外での仕事が減るんじゃないかと危惧している。
大谷亮平さんも同様ですね。
本作は、役者のファンが騒ぐ記事はあるけれども、具体的にどの場面のどこが素晴らしかったか? 演技がどうよかったか? その理由まで踏み込んだ記事なり感想投稿は極端に少ない。
ゆるふわで「すごかった〜」と盛り上がるばかり。
要するに具体的に褒める箇所が見つからないのでは?
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