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真田丸レビュー

『真田丸』感想レビュー第13回「決戦」 第一次上田合戦・大勝利の中に紛れ込む悲劇

更新日:

【関連記事】史実の第一次上田合戦とは? 真田昌幸が勝利を掴むために仕掛けた「油断と地形、砥石城」

上田城

 

こんばんは。前回の地上波史料率がぐぐっと盛り返していて驚きました。

本作の欠点として、中央の動向がわかりにくいというのがあります。羽柴秀吉の勢力図がぐんぐん広がっているのに、その動きがわからないわけです。そのへんは適宜補えということか、それともこの頃の真田が羽柴の勢力拡大に無頓着であることを示しているのでしょうか。

後世の人間からしてみれば、信長の次は秀吉だということは常識であり、その動静に気を配らないなんて間抜けに思えるかもしれません。このあたりは大名でもかなり温度差があります。早く通じれば権威の拡大につながると渡りに船と飛びついた大名もいれば、あんなどこの馬の骨かわからない奴に従うなんて馬鹿げていると冷淡な態度を取った大名もいました。

真田は「こっちは徳川上杉北条と揉めているんだよ、それどころじゃねえ!」と思っていたと言えますか。秀吉が本気でブチぎれる寸前まで、命令に従わないのでした。

 

ちなみに今回の第一次上田合戦のネックは「信繁の参戦は軍記でしか出てこない」であったのですが、グッドタイミングでこんなニュースが出てきました。

第一次上田合戦で幸村も戦った? 「不参加」通説覆す学説浮上:長野:中日新聞(CHUNICHI Web)
http://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20160327/CK2016032702000008.html

そんなわけでいよいよ満を持して、第一次上田合戦の始まりじゃあ〜〜〜!

「真田丸」異例の1話まるまる守城戦 上田合戦あって真田家名挙げた(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160403-00000084-spnannex-ent

北条との小競り合い、山崎とか小牧長久手とかすっ飛ばしたため、合戦がないと言われてきた本作ですが、三谷さんや屋敷Pは若干切れ気味になりながら「上田でやるから待ってください」と思っていたのではないでしょうか。

合戦は予算的にそうしょっちゅうできるもんじゃありませんからね、仕方ないですね。

 

城下に丸太の乱杭(らんぐい)を設置して準備万端!

信繁は、先週で直江兼続が調達した援軍を目にします。ところがどう見ても老人と子供ばかり。これは史実で、彼らの年齢は六十才以上と十五才以下、要するに普段ならば戦闘員として動員されない男たちです。礼を言う信繁に、真田が滅びたら上杉と徳川との間にはさまる緩衝材がなくなる、というのが兼続は語ります。上杉もギリギリです。

徳川家では、本多忠勝が「なぜ真田攻めに行かせてもらえんのじゃ!」と不満げに吼えています。家康は忠勝を使うまでもないと判断したようです。この判断が、のちのち響いてくるのでしょうか。

秀吉に東の無双と呼ばれた本多忠勝(藤岡弘、さん)

東の無双と呼ばれた本多忠勝(藤岡弘、さん)

真田昌幸の弟で徳川にいる信尹は、徳川の囚われ人になってしまいます。この謀略のプロであっても、徳川家脱出はできなかった模様。家康は信尹の才を惜しみ、命は助けるようです。この人もなんだかんだで苦労していますね。

ここで上田へ攻めるコント集団三河武士やられ役部門三名(鳥居元忠、大久保忠世、平岩親吉)が登場。やられ役に必要なのはリアクション顔芸ですが、三者三様によい面構えをしています。

上田では真田側が防戦準備中。上田わくわくランドのアトラクションが次から次へと出てきます。戦で45分やるぞと言ったわりには実のところ、準備時間が長いのが特徴です。作兵衛らが設置しているのは乱杭(らんぐい)です。現在は歯並びの悪いことを「乱杭歯」と呼びますが、そのもととなった乱杭そのものはあまり目にする機会がありません。これが語源かと興味深いものがあります。

 

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薫が梅に寄り添い「私も自分のお乳で育てたの」

城では相変わらずマイペースな女たちが皆それぞれのキャラで話し合っています。こんなところでもしれっと、負ける匂いがないといいながら、今は薫の香のせいでそんなものはわからんなどと、味方を煙に巻くような発言をするとり。やはり昌幸の母ですね。梅は乳母を雇わず、自らの母乳で育てているため、戦の準備の合間をぬって授乳にやって来ます。

薫は孫かわいさに、意外なことを梅に告白。実は薫も乳母は雇わなかったそうです。公家の姫君とあればステータスのためにも乳母を雇いそうなものですが、実のところこの人にはそういう一面があるのですね。薫は最近よい味を出してきました。

昌幸は軍議で何故か餅をこねはじめます。こうやって餅みたいに分散させれば食えるぞ、と説明しますが意味がわかったようでわからない……昨年はヒロインがおにぎりを握り、今年はおっさんが餅をこねるわけですか。一体何がしたいのか、昌幸‘sキッチン。

肝心な布陣を聞かれると昌幸は、手を洗いに行くのですが、そこに出浦昌清が何を悩んでいるのか聞きにきます。昌幸は今まで俺は負ける戦なんてしたことない、今回も水を漏らさぬ策をたてた、しかし駒が足りないとつぶやきます。そこへ最後の「駒」、信繁が上杉からの手勢を率いて到着!

今回のミッションは信達の調略!

いよいよ合戦! 果たして見所は?

これでパズルが完成した昌幸、作戦を披露します。

◯信幸は戸石城で待機。開戦とともに上田城下に向かい、退却した敵を横あいから撃つ。
◯信繁は陽動役。敵を挑発し、上田城大手門まで導く。
◯作兵衛は城下のトラップ役。
◯出浦昌相は神川の堰を破壊し、川を渡り退却する敵を殲滅する。
◯矢沢頼綱(昌幸の叔父)は沼田城待機。北条が来た場合、迎撃する。

という作戦になりました。

 

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ダンジョンと化した城下で信繁と梅、スレ違い

戦の合間、やっと娘のすえを抱くことができた信繁は、孫にメロメロになった薫に驚きます。赤子にはそういう力があるととりがここで解説。きりはすえにの世話を担当していることもあるせいか、落ち着いて来た気がします。しかし、梅は隠れ場に移動しておりこの場におりません。

梅は隠れ家で作兵衛らとともに準備を整えています。鉢巻に袴姿が凛々しい梅ですが、城と隠れ家を移動するためなかなか信繁と再会できないのでした。

すっかりダンジョンと化した城下を歩く信繁と信幸。一方で梅は、迷子になった少年と出会います。少年の家で六文の銭を見つけた梅は、少年と交渉してその銭をもらい受けます。その間、信繁とはすれちがってしまいます。このすれちがいの場面が印象的です。

ここまででおよそ20分、持ち時間の半分程度経過しています。信繁はきりから、梅が作った六文戦をつなげたお守りを受け取ります。ここできりが主家の家紋を知らないのはいつものすっとぼけということで。夜も更け、いよいよ決戦が迫ります。信繁と梅はタイミングがあわず、やっぱり再会できないのでした。

 

信繁が「高砂」を歌って挑発 それに乗った徳川勢が……

閏8月2日早朝、上田城で昌幸は高梨内記と碁盤に向かいます。この決戦を前にして碁盤に向かう余裕が格好よいですね。万全の準備をしたからには、焦らないわけです。

神川の向かいに布陣した徳川勢。そしてその先には、「高砂」を歌い六文銭の旗を振る信繁の姿が。堺雅人さんの歌声が想像以上によく通りよく、さらに旗を振る動作が歌舞伎のようで決まっています。この挑発に乗った徳川勢は、勢いよく川を渡ります。川向こうに本陣を敷いたことが、今後致命的なミスとして響いてきます。開戦の知らせを聞き、信幸も移動開始!

作兵衛らの待機する中、乳が張った梅は城へと向かうのでした。やっぱり乳母は必要だったんじゃないかなあ。

陽動作戦で敵を城下まで誘い出した信繁。待つのは上田地獄のアトラクションです。信繁が鉄砲を前にして挑発するのは荒唐無稽に見えるかもしれませんが、彼は敵が一回射って装填している隙に挑発しています。竹を束ねた盾など、考証面の結実もじっくり見たいところ。

上田城下は本当にえげつない罠だらけです。進路は乱杭でふさがれ、建物からは石つぶて、熱湯が降り注ぎ、射撃されます。道には石がばらまかれて踏むと痛い。そしてさらには落とし穴。地味かつDIY感溢れる罠が徳川勢を苦しめます。地味な罠ってかえって痛みを想像しやすくてえげつなさが増しています。

梅はきりの制止も聞かず、城と隠れ家を往復します。ウザい女性キャラの担当が、きりから梅に変更されたかのようです。

 

一瞬の静寂、そしてテーマ曲と共に昌幸、登場す――

そんな中、昌幸はまだ碁盤の前です。待つことで高まる昌幸待望論とプレミア感!

梅は乱戦の最中に大手門まで出てきてしまい、敵に囲まれます。やっと一瞬、互いの名を呼び合う信繁と梅。予告でここを見た視聴者は、きっとここで梅が斃れると予想したのではないでしょうか。ところがここは佐助が梅を助け、無事大手門内に去ってゆきます。

信繁はついに大手門前まで敵を誘導。ここで一瞬の静寂のあと、門が開くとテーマ曲とともに昌幸が登場だーッ! 待っていたぞ昌幸!

ついに登場! 主役感、満載ですw

ついに登場! 主役感、満載です

ずっとずっと、これまで昌幸が戦で戦う場面は出てきませんでした。もう昌幸が出てくるだけでプレミア感があってまぶしいレベル。昌幸率いる真田勢は、ますますえげつない強さで敵を追い詰めます。退却する徳川勢は城下のダンジョンに迷い込み、罠にかかりまくります。さらに信幸まで迫る!

ここまでくると流石にオーバーキルと言いますか、えぐい。本当にえげつない。信幸が「かかれーっ!」と叫ぶところは鬼かと思いました。それにしても大泉さんはきりっとした顔をすると決まりますね。彼が凛々しい若武者に見えるなんて、正直『まれ』の駄目親父を見ていた頃は信じられませんでした。

この時点でかなりえげつないのですが、真田の罠はもうちょっとだけ続くんじゃ。鬼か!

ここで仕事人出浦さんが「さて、とどめといくか」と言います。彼の合図で神川の堰が決壊します。ボコボコにされた挙げ句、激流に流されていく徳川勢。まるでゴミのようだ。ここで川を渡れなくなった徳川勢は、たまらず上田城側に戻り、川の本陣へと向かおうと同士がぶつかります。この様子を見たきりは「もういくさとかそういうもんじゃない」とつぶやきます。本当にその通りです。

佐助が法螺貝を吹き、信幸が日の丸の扇を手にして勝ちどきを上げます。かくして第一次上田合戦終了! その様子を見る昌幸の額には汗ひとつにじんでいないのでした。流石父上です。

徳川を挟撃。兄がとどめを刺す!

徳川を挟撃。兄がとどめを刺す!

 

作兵衛は一命とりとめた、しかし、肝心の梅が……

城下を歩いていた信繁と信幸は、作兵衛らの隠れ家に通じる柵が破壊されているのを見つけます。追い詰められた敵がここに逃げ込んだのかもしれないと説明する信幸。信繁はたまらず走り出します。

そこで彼が目にしたのは、屍が転がる様でした。作兵衛は一命をとりとめており、梅がここにいなかったのが幸いだと語ります。赤子の泣き声を聞いた信繁らが顔をあげると、その視線の先に立っていたのは、梅ではなく何故かきりでした。

目を潤ませたきりは、梅が櫓から柵が壊されるのを見て、皆を案じ隠れ家に向かったと告げます。梅の名を呼び、探す信繁。作兵衛に呼ばれて信繁が目にしたのは、無残にも力つきた梅の屍なのでした。

愛妻を抱きしめ涙する信繁。そこでナレーションが、徳川の戦死者1300余りに対して真田は戦死者50以下と語ります。しかしその僅か50人の中に、信繁最愛の人がいたとは。きりはすえを抱きしめ、この子は私が育てると誓うのでした。

痛快な勝利、しかしあまりに重た過ぎる代償。信繁は一体これから何を見るのでしょうか。

 

今週のMVP:真田信繁 残念賞:梅

青春編ラストでやっとこのポジションに。「高砂」の歌い方、挑発の動作、全てが決まっていました。

ただし、本来MVPは彼女が取るべきだったのでしょう。しかしむしろノイズになってしまい、ここに来て女性ウザキャラの座をきりから奪ってしまったかのようでした。城と隠れ家をいったりきたり、授乳のためにいなくなる。しかもお供もつけずに単独行動。止めるきりの方がよほどまともになってしまった、という。

本作の女性キャラは構造上、割を食っていると思いますが、梅もまたそうでした。

上田合戦で死なせる。しかも赤子は巻き込まない。なるべくショッキングな方法で。この三条件をクリアするためには、梅の愚かで無謀としか思えない行動も必要だったのでしょう。大手門前信繁の目の前で亡くなるという予想を裏切り、隠れ家で最期を迎えたのはまだよかったと思います。櫓から柵が破壊されたのを見て現場に向かったのではなく、偶然隠れ家に残っていて死亡、の方がましだったとは思うのですが。意外性を狙ったせいで、梅がきりの制止を振り切り危険な場所に飛び込み、死んでしまったという無謀さが際立ってしまいました。無理があった梅の退場ではあるのですが、死者50名にとてつもない重さを持たせた意義はあったと言えるでしょう。

設定はともかく、黒木華さんの演技はよかったと思います。お疲れ様でした。

 

総評

満を持して、これが合戦だとぶつけるように挑んできた今回。しかし45分合戦といいながら、実のところ半分程度は戦闘の前振りなのです。しっかり罠を組み立て、策を示し、どこでどうすれば勝ちにつながるか、きっちり条件を見せる。その策の中に敵がはまりこんでいく様をじっくりと見せる。丁寧でした。華やかな武者がぶつかりあうのではなく、泥臭い老人や子供を含めた人々が、つぶてや熱湯で応戦する展開は燃えました。何も派手に、有名武将を目一杯出さなくても、リアリティのある合戦はちゃんと出来るのだと示しました。第一次上田合戦の特色が出ています。槍を突くのではなく叩く動作にしていたり、盾が竹束をたばねたものであったり、火縄銃の装填にタイムラグが出ていたり、そういったディテールの細かさも魅力的です。

コミカルさと残虐さの組み合わせが本作の魅力ですが、痛快さとえげつなさを今回も同居させています。もう絶命していそうな兵士を執拗に槍で突き刺したり、倒れ込む兵士をさらに堀に落としたり、同士討ちで混沌としている場をここぞとばかり映したり。そんな修羅場を安全な城の中から眺め、「これはもう戦なんてものじゃないわね」とつぶやくきりが印象的でした。戦でないなら何なのか。一方的な殺戮です。痛快な戦の結果、生じた累々たる屍をきっちりと映すところも本作の本気でした。

本先の別の本気は、真田側の死者50名にも深い意味を持たせたところですが。そのせいで前述の通り、ちょっと梅のキャラ像が残念になってしまったのは痛し痒しでしょうか。

そんなことを思いつつ眺めていたら、あまりに次週からの大坂編予告が濃くて頭がくらくらしてきました。どうなるのか、来週!?

 

今日の考察コーナー:屋敷P、世界へ漕ぎ出す

「『花燃ゆ』は最低視聴率じゃった。大河スタッフはふがいなさを恥じるばかりよ……」

「しかし、だからといって恥じているばかりではなりませぬ」

「わしもそう思うんだ。そこでここに赤いこよりと黒いこよりがある。赤はファミリー路線、黒は懐古路線。どちらが視聴率回復につながるか」

「赤を選んだら『花燃ゆ』で黒は『軍師官兵衛』でも確かその路線でしたけれども、一長一短が……」

「いや、どちらも選ばんぞ、わしゃ決めた! わしゃ世界を狙う!」

「世界をですか。いや、おもしろいですけどいきなり世界を!?」

「今世界で一番ヒットしているテレビドラマを知っているか? 『ゲーム・オブ・スローンズ』じゃ。これが一言で言えばアメリカン大河」

「ああ……でもこれって一話確か1,000万ドルかけているんですよね(11億円超、第6シーズン時点)。それを目指すのは流石に」

「予算がないのはつらいのお、確かに金はここまで掛けられん。しかし、そこは創意工夫次第よ」

「しかし、この作品はあまりに残虐で批判もあると言います。あのハードコアな残虐さに大河視聴者がついて来られるのかどうか」

「だからこその大ばくちよ。もっと視聴者を信じろ、これで描かれているのはほぼ中世イギリス史だろ。中世やSF、ファンタジーなど、今の視聴者は舞台が変わっていても受け入れてくれる素地があるということよ。ありのままの中世こそかえって新鮮。今まで大河は日本的なコンテンツじゃと思っておった。しかし、世界でもありのままの中世史が受けると証明された以上、このノリで大河を作って何が悪いんだ! うまくすれば世界にこぎ出せるぞ」

 

この会話はネタであって、ネタではありません。こちらのインタビューをお読みください。

戦国ホームドラマ『真田丸』は海外でも通用するハズ!?

http://dot.asahi.com/dot/2016033100268.html

これ、タイトルだけ見ると何言っているんだコイツ、となりそうですが、中身はかなりしっかりしていますよ。そして注目したのが、

今、海外の歴史ドラマが非常によくできていて世界中で見られています。たとえば『ゲーム・オブ・スローン』という作品は、描かれているのはほぼ中世イギリス史です。中世やSF、ファンタジーなど、今の視聴者は舞台が変わっていても受け入れてくれる素地がある。

日本の時代劇というのは本当に世界に通用するドラマなんじゃないかと思っています。

土屋P「女性たちに見てもらうために「イケメン俳優たちをキャスティングした」

屋敷P「日本の時代劇というのは本当に世界に通用するドラマなんじゃないかと思っています」

昨年と今年で差がありすぎるだろ、プロデューサーの意識!

今年の屋敷Pは大変頑張っていると思います。三谷氏以上に饒舌にドラマについて語り、連日のように発言が報道されているのが屋敷Pです。しかも長澤まさみさんを庇ったり、史実と違うと批判されている点について解説したり、実に丁寧でかゆいところに手が届くことを語ってくれます。きちんとコントロールして、役者や三谷氏が被弾しないよう気遣っているのもわかります。低視聴率の罪を主演に被弾させ、ポエムのような自画自賛を繰り返し、責任逃れをしていた昨年のPとは大違いです。

今週は屋敷Pの目指す地点について考察したいと思います。

昨年、私は『花燃ゆ』が駄作になったのは脚本家よりもプロデューサーのせいだ、と言いました。プロデューサーというのは実のところ大きな権限を持っている。本作は三谷作品とされますが、実は屋敷Pの好みや思考がかなり入っているのではないか、と思う次第です。

そんな屋敷Pの腹の内を明かすインタビューが、前述のものであったわけです。

やっぱりな、と読んだあと思いました。本作はやっぱり『ゲーム・オブ・スローンズ』(以下GoT)を意識しているんだと確認できてガッツポーズです。あのドラマを見て私はこう思いました。

「戦国時代みたいな世界観を再現してここまで面白くできるなら、大河だってできるはずなのにな」

そのネタで原稿も書いています。

おそらく同じようなことを屋敷Pも感じたのではないでしょうか。しかし、GoTの要素をそのまま大河で再現することは大変難しいと思われたはずです。

GoTは大河低視聴率の原因となりそうな要素を、ことごとく踏み抜いています。千名には達しそうな登場人物、長い放送時間、残虐描写、家族すら駒と扱うような冷酷さ、謀略、暗殺、複雑なプロット、狡猾な者が勝利する展開。近年大河視聴率が伸び悩んだ際、こうした要素が槍玉にあがりました。ネットやスマホが普及した現在、登場人物が多数出てくるドラマを45分間もテレビを見ていられないとか。残虐な場面は特に女性が嫌うとか。そうした批判をおそれ、縮こまった結果が近年のファミリー路線、その極みが昨年の『花燃ゆ』であったと思います。

そんな時、そうした要素を踏み抜き踏みつぶし大ヒットするGoTは、不思議で力強い存在であったことでしょう。屋敷Pは、「今だって歴史への愛と、残虐を描く勇気の旗を掲げていいんだ!」と思ったのではないでしょうか。

そこで屋敷Pが取ったアプローチを先ほどのいンタビューから推察しますと、まず残虐だの荒唐無稽だの、そういった批判を「史実で殴りに行く」スタンスだと思います。気鋭の時代考証担当者を三名もつけ、さらに軍事や風俗考証もつけ、堂々と胸を張って「だってこれが史実ですから」と答える。これがまず一つ目です。江戸時代から積み重ねられてきた講談やフィクションの要素をひっぺがし、ありのままの中世を描くことで、異世界を旅するような魅力を醸し出す。GoTのアプローチを大河でも使うわけです。現代の価値観から遠ければ遠いほど魅力が出る、そういうやり方です。

しかしありのままの中世は、流石に刺激が強すぎる。そこで作家性が強く、コミカルな脚本を書ける三谷テイストが必要となってくるわけです。さらに甘味料を果たすのが女性キャラで、視聴者の反応を見ながらシリアスとコメディを調整し、なんとか現代人でも受け入れられる地点を探る。そんな戦略があるのではないかと思います。なんとか調整しつつ、骨太テイストで大河を作れないか、練りに練られている本作の魅力は、屋敷Pの戦略もあってうまれているのでしょう。

このまま頑張って世界に漕ぎ出せ、『真田丸』! このクオリティをラストまで維持できればそれもありえないことではないと思いますぞ!

 

武者震之助・記
霜月けい・絵

 

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