そもそも中学以来やってない! という方も。
以下のお名前を一人ぐらいは見聞きしたことがおありでしょう。
彼らに共通のキーワードは【百年戦争】。
イギリスとフランスを中心にドンパチやってる間に輩出された、欧州ではレジェンド級の有名人です。
本当に百年戦ったのかどうかはさておき、この戦争で一説には350万人を超える犠牲者が出たとも言われ、1431年の5月30日には英雄の一人であるジャンヌ・ダルクが処刑された日ともされます。
んで、戦争のキッカケは何だったのか? というと……。
「あれ? もしかして俺ってフランス王にもなれるんじゃね?」
そんなイングランド王エドワード3世の、かなり迷惑な思いつきのせいなのです。
いったい百年戦争とは何だったのか――。
イングランド王があつかましくもフランス王権を主張した理由には、ちょいと面倒な背景がありました。
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テンプル騎士団の呪いか? カペー朝断絶
そもそも何故フランス王権をめぐる争いが起こったのか?
端的には、フランス王室であるカペー家が1328年に断絶してしまったことがあげられます。
カペー家はおよそ四百年、15代にわたり存続してきました。順調に跡継ぎに恵まれていたものの、不可解なほど王の夭折が続き、断絶してしまったのです。
フィリップ四世がテンプル騎士団を壊滅に追い込んだあとの出来事ですので『騎士団の呪いだろうか?』なんて噂もチラホラ。
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テンプル騎士団の酷い最期~金と権力欲するフィリップ四世が潰して自滅
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フランスが王朝断絶の危機にあたふたしていたところへ、1337年イングランドのエドワード3世が口を出してきます。
「俺ってさぁ、なんだかんだでフランスの王位継承件あるよね」
「ない。この話は終了です」
「え、そういうつもり? じゃあ力づくでやるけどいいの?」
こうして開戦となりました。おい。
なぜイングランド王がフランス王権を要求するのか?
ハッキリ言ってこうしたイングランドのあつかましい干渉は、フランスにとって迷惑でしかありません。
当然ながら、日本人でしたらこの思い、一点でしょう。
「何故、イングランド王がフランス王権要求するの? かんけーないじゃん!」
その通りです。
いや、そうでもないのです。
実はイングランドの王家というのは、元をたどればノルマンディー人、つまりはフランス出身でした。
長いこと王家や貴族はフランス語で会話し、フランスに別荘地や領地をも所有していました。
「イングランドにも領地はあるけど、俺らフィーリングはフランス人だよね」
そんな感覚なので、こういうフランス王家の危機になると前のめりになるのでしょう。
しかしフランスも無策ではなく「サリカ法典」がありました。
要するに、女王および女系継承を禁じたものです。
フランス王家がイングランドから妻を娶り、その血が流れても王位継承権は持たないと定めたものなのです……相手には通じませんが。
「知らんがな。言うことを聞かないなら実力行使あるのみよ」
こうしてイングランドはフランス相手に、血みどろの戦争を仕掛けてきたわけです。
エドワード3世 新武器を試したくてウズウズ
さてこのエドワード3世。
この頃、暗君続きであった中で、やっとイングランドに登場した名君という扱いです。
彼の治世はペストが流行し、人口の四分の一が死亡するという大打撃を受けたものの、彼の父をも含めた暗君時代よりもマシとされてきました。
エドワード3世は高潔さを演出した人物でした。アーサー王の宮廷を真似、最高の栄誉とされるガーター勲章を設立したのも彼です。
しかし、だからといって隣国にヤクザの因縁めいた戦争のふっかけ方をしないわけではありません。
フランスにとって極めて不幸なことに、エドワード3世は新たな武器を試したくてうずうずしていました。
イングランド人の得意武器は伝統的にロングボウ(長弓)。ロビン・フッドの武器でもありますね。
とりわけウェールズ地方の弓兵から習得したその威力たるや、鎧をも貫通するやばいシロモノです。
熟練した弓兵であれば、たくましい馬上の騎士をもバッタバタとなぎ倒すのでした。
「ロングボウでヒャッハーしたい!」
ちなみにイングランドやオーストラリアでは、「裏ピース」、ピースサインを裏側にして相手に見せるジェスチャーは最悪の侮辱とされています。
由来は弓兵です。
フランス軍はイングランドの弓兵を捕縛すると、弓矢を射ることのできないよう、人差し指と中指を切断したとされます。
そのため二本指を見せるというのは「俺の指はまだあるから殺せるぜ、バーカ」という意味になるとか、云々。
ただし伝統的なイングランド弓兵は指を二本ではなく三本使用して射していたため、これは違うのではないか、という説もあります。
話がそれましたので、戻します。
ともかくエドワード3世としては欲求がウズウズ。
「ロングボウで敵兵めっちゃなぎ倒したい!」
そして1340年、その機会が訪れたのです。
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