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残った宋江らも奸臣の罠にかかって
史実では、この方臘の乱で200万人もの死者が出ています。
かなりの大乱で、北宋の弱体化、滅亡の一因となるんですね。
それほどの激戦であれば豪傑のうち七割が倒れても仕方ないのかもしれません。
ただ、そうはいっても、アッサリ死ぬ者ばかりで「もうちょっと何とかならないのだろうか?」と苦言を呈したくもなります。
生存した三割ほどのメンバーも、途中で旅に出て行方をくらましたり、危険を察知して逃げてしまったり……なんでやぁ!
そんな中でも悲惨な最期を遂げるのが、どうにかして開封までたどりついた宋江ら四名。
彼らは奸臣の罠にかかり、毒を盛られて殺されたり、自害してしまいます。
あれだけ暴れ回った108名は、最後は四つ並んだ墓になって終わるのです。
このバッドエンドぶりに嫌気がさしたのか。
清時代の作家・金聖嘆は、メンバーが勢揃いした時点で物語を終わらせる「七十回本」を作りました。
もともと『水滸伝』は「百回本(=100話)」や「百二十回本(=120話)」の話で構成されていたものを、いい感じで終わる70話に短縮したのです。
これがかえってウケてしまい、長いこと中国ではこのバーションしか読めない状況になりました。
確かに気持ちはわかるかもしれません。
後半は読んでいて悲しいもので、ある意味それも仕方ないことかもしれません。
豪傑たちはうまく立ち回ったとしても、あれだけ愛した祖国・北宋は遠からず女真族の金に滅ぼされるのですから。
それを見る前に退場した方が、まだマシなのかもしれません。
アウトローを応援したい そんな願望がつまった傑作
あまりのバッドエンドぶりに暗い気持ちにさせられるとはいえ、本作には確かな爽快感があります。
仲間を集める過程で幼児を殺すような、ちょっと今となっては受け入れがたい不穏な描写もありますが、それでもワクワク感はたっぷり。
二つ名がついた豪傑が次から次へと集結するというフォーマットも秀逸です。
前述の通り『南総里見八犬伝』は本作を翻案したものです。
いつの時代も人々は、法を破ってでも悪にお灸を据える、そんな物語が見たいという欲求があります。
そんな願いを叶えたのが、本作といえるでしょう。
なお、日本語対応したドラマ版もありますので、よろしければ。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
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【参考文献】
井波律子『中国の五大小説〈下〉水滸伝・金瓶梅・紅楼夢 (岩波新書 新赤版 1128)』(→amazon)