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【イングランド女王メアリー1世】
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両親の離婚で王女からその他大勢に転落……からの復権
こうして結婚を否定されたことにより、キャサリンは王妃の座を追われ、メアリーも王女から庶子に身分を落とされてしまいました。
そしてアン・ブーリンが新しい王妃になり、その娘エリザベスが王女になったことで、彼女達の運命はこじれていきます。
というのも、メアリーは王女の位を剥奪されたとき、既に分別のつく年齢になっていました。
そのためアンが「妹を新たな王女として認め、臣従するように」と命じても断固拒否。
公的な身分は奪われても、心は王女のままだったのでしょう。
激怒したアンにエリザベスの侍女にされてしまい、ますます事態が悪化。
こうして、不遇で多感な少女時代を、メアリーはカトリックへの信仰のみを心の支えとして過ごすことになります。
これもまた、即位してからの彼女の行動に大きく影響しました。
その後もヘンリー8世は男子を求めて妃を次々と処刑、あるいは追放して換えていったのですが、得られた男子は結局一人だけ。
生まれつき体が弱く、何歳まで無事に生きられるかも危ういようなのちのエドワード6世でした。
これに不安を抱いたのか、最後に妃となったキャサリン・パーという女性がメアリーとエリザベスを救います。
エリザベスもアン・ブーリンが処刑されたときに王女の位を奪われていたため、メアリーとともに名誉回復が図られたのです。
キャサリン・パーはとても賢く慈悲深い女性で、メアリーとは歳も近く、姉妹にとって初めて”母の優しさ”を与えてくれた人でした。
さらに、メアリーたち姉妹の名誉を回復し、公務を手伝わせたりして、遅まきながら王族としての自覚を持たせていきます。
ふたりに王位継承権も与えてくれました。
“英国離婚王“最後の妻となったキャサリン・パー 6人目の王妃は超デキる女だった
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ちなみに、キャサリン・パーはヘンリー8世が亡くなった後、諸々の処理を済ませてすぐにイングランド王家を去っています。
ヘンリー8世としては彼女を信頼しており、貴族たちからもエドワード6世の摂政になってほしいと望まれるほどでしたが……なにか思うところがあったのでしょうね。
そしてトマス・シーモアという貴族と再婚して子供を授かったものの、産後の肥立ちが悪かったのか、亡くなってしまっています。
意地の悪い見方をすれば、綺麗さっぱり王家と縁を切るために、メアリーやエリザベスの地位を高めておいて、自分に仕事が回ってこないようにしたのかもしれませんね。
また、ヘンリー8世は亡くなる前に、今後の王位継承順位を
と指定しており、ここでも姉妹の地位が元通りになったことがわかります。
しかし……。
そして血塗れのメアリーへの道
メアリーにとって異母弟にあたるエドワード6世は一応王位を継いだものの、やはり若すぎる&病弱な体質のため、自ら政治の舵取りをこなすことは困難でした。
その間にジョン・ダドリー(ノーサンバランド公)という貴族が実権を握ってしまい、彼がメアリーやエリザベスへの王位継承を防ごうと一計を案じます。
それが、自分の息子・ギルフォードと、ヘンリー8世の妹の孫であるジェーン・グレイの結婚と、それを理由としたジェーンへの王位継承でした。
ジョン・ダドリーは今際の際のエドワード6世にこの二つについて承認を求め、無理やり認可をもらって実行します。人の心なさすぎるやろ……。
これによってメアリーは命を狙われましたが、ヘンリー8世の重臣だったノーフォーク公トマス・ハワードの領地に匿われ、難を逃れました。
その間にジェーンが女王ということになったものの、貴族や民衆は当然納得しません。
「先王の王女が存命中なのに、なぜそんなに血縁の遠い者がいきなり王位につくんだ!?」となるわけです。
ジョンたちの根回しが足りなさすぎたわけですね。いや、根回しできない人がクーデターをやるんじゃないぞ、と。
アリーの支持者が続々と集まり、ジョンとギルフォード、そしてジェーンらは捕縛され、処刑されました。
首謀者のジョンはともかく、ジェーンは完全に巻き込まれた側なので、同情した人もいたようで……彼女は「9日間の女王」と呼ばれ、悲劇として伝えられています。
こうしてさまざまな人の苦難の末、1553年7月19日にメアリーはイングランド女王となりました。
……が、ここから失策を重ねてしまいます。
王となったからには世継ぎをもうけることが最大の仕事。
即位時点で37歳になっていたメアリーには、もうほとんど時間がありませんでした。
ヘンリー8世の遺言通り、メアリーも早いうちにエリザベスを継承者と定めておけばよかったのかもしれませんが……。
前述の通り、キャサリンとアンの関係が最悪だったことに加え、エリザベスはプロテスタントになっていたため、信仰上でもメアリーにとってイヤな存在です。
父王の遺言があるとは言え、メアリーにとって異母妹への王位継承はそう簡単に認められるものではなかったのでしょう。
そんなわけで、メアリーは自ら世継ぎを得るため、早々に結婚しなければなりませんでした。
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