英国女王メアリー1世

英国女王メアリー1世/wikipediaより引用

イギリス

なぜ英国女王メアリー1世はブラッディ・メアリーと呼ばれるのか 血塗られた歴史

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フェリペ2世と結婚するも……

彼女が結婚相手に選んだのは、スペイン王太子・フェリペ(後のスペイン王フェリペ2世)。

1554年7月のことです。

フェリペ2世(スペイン)/wikipediaより引用

しかし、スペインは伝統的にカトリックの国。

女王に加えてその伴侶までカトリックになってしまったため、イングランドの国教会教徒に

「いずれカトリックに回帰させられるのでは」

「女王の気分一つで、我々は迫害されるのでは」

という不安を植え付けることになりました。

この時点で大陸へ亡命した人も少なからずいたようです。

メアリーとしては「イングランドをカトリックに戻したい!」という気持ちが強く、スペインからその後ろ盾を得るためにフェリペを選んだとおもわれます。

しかしメアリーのほうが11歳も年上だったこともあってか、この結婚はうまく行かず、1556年にはフェリペがスペイン国王として即位するために帰国。

そのまま別居となってしまいます。

当然、二人の間に子供が生まれることもありませんでした。

しかもスペインとの関係が密接になったことにより、スペインが参加していたイタリアやフランスをでの戦争にイングランドが巻き込まれることに。

今も昔も、戦争に多くの人やモノ、それらを用意するお金がかかるのは皆様ご存じのとおりです。

さらにこういった戦争の影響で、百年戦争後も唯一”大陸側のイングランド領”として残っていた港町・カレーを失ってしまいます。

カレーは貿易港であり、イングランドの主要輸出品・羊毛の出荷先。カレーから入った羊毛がフランドル(現在のベルギー近辺)の毛織物産業を支えていましたので、その売上を元とする関税はイングランドの国庫の柱ともいえるものでした。

戦争で支出が増えた上に収入が減ったのですから、当然イングランドの財政は大幅に悪化します。

つまり、メアリーとフェリペとの結婚は、イングランドにとって全く旨味がなかったわけで……これでは、上から下までメアリーを支持する層が減っていくのは当然です。

ここで国内勢力の懐柔に切り替えればよかったのですが、メアリーは

「自分を支えてくれたカトリックこそが正しい」

と信じて疑いませんでした。

結婚から4ヶ月後の1554年11月、カトリックの枢機卿をイングランド議会に迎え、イングランドがローマ教皇庁に再び服従することが宣誓されました。

この後、メアリーは「異端者を処罰する」という法律を復活させ、1555年から3年9ヶ月の間にプロテスタント300人を火刑に処し、それ以上の者たちを獄中死させたとされます。

しかもこのほとんどは一般人、かつ老若男女問わないものでした。

同時期のイングランドでは、穀物の不作やインフルエンザの大流行による死者が多発しており、ただでさえ荒れている時期。

宗旨替えするにしても、まずはそれらが落ち着いてから……とか考えなかったんでしょうかね……。

そんなわけで、この女王はすっかり民衆に恐れられ、「血まみれメアリー」とあだ名されてしまうようになったのです。

 


国を乱した圧政者?

その上、メアリーはこれらの解決をやる前、1558年11月17日に亡くなってしまいました。

事ここに至ると、メアリー個人が嫌いだろうがなんだろうが、エリザベスへの王位継承を認めざるを得ないはずなのですが……亡くなる直前まで頷かなかった、とされています。

エリザベス1世/wikipediaより引用

自分も王位継承までの間にゴタゴタを経験したのですから、「アレをもう一度繰り返してはならない」と思っても良さそうなものですけれどね。

「自分はもう死ぬし関係なくなるから、最後まで意地を通したい」とか思ってたんでしょうか。そういうとこやぞ。

こうしたことから、メアリー1世は長い間

【国内を引っ掻き回しただけで終わった圧政者】

として評判が悪い王様の一人でした。

再評価しようとする人もいなくはないようですが……なにせ次代のエリザベス1世が不動の人気を誇っていますので、なかなか難しそうです。

死んでなお妹に勝てないとなると、あの世でも肖像画のような顔をしていそうですね。


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長月 七紀・記

【参考】
君塚直隆『物語 イギリスの歴史(上) 古代ブリテン島からエリザベス1世まで (中公新書)』(→amazon
青木道彦『エリザベス一世 (講談社現代新書)』(→amazon

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