三谷幸喜さんが手掛けた映画『清須会議』。
その元ネタとなる史実の【清洲会議】は1582年7月16日(天正10年6月27日)に開かれ、以下にその詳細記事がございますが……
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清洲会議|秀吉が三法師を担ぎ上げたのではなく実際は“名代”を決める場だった
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今回、注目したいのは映画のほう。
同作品が公開された2013年から3年後に大河ドラマ『真田丸』が、9年後の2022年には『鎌倉殿の13人』が放映され、いわば“三谷三部作”を比べて見る楽しみ方も出てきたからです。
2013年の公開当時、私達は『清須会議』という映画を三谷さんらしい遊び心満載のコメディとして楽しみました。
では2016年を経てからの2022年以降はどうなのか?
『真田丸』や『鎌倉殿の13人』と比べることで、三谷さんの力量がどれだけ磨かれたのか?
比較しながら振り返ってみましょう。

映画『清須会議』(→amazon)
※TOP画像 映画『清須会議』/amazonプライム 2025年7月16日レンタル440円(→amazon)
| 基本DATA | info |
|---|---|
| タイトル | 『清須会議』 |
| 制作年 | 2013年 |
| 制作国 | 日本 |
| 舞台 | 日本 |
| 時代 | 安土桃山時代 |
| 主な出演者 | 役所広司、大泉洋、小日向文世、佐藤浩市、浅野忠信、鈴木京香、寺島進 |
| 史実再現度 | 史実ではなく、江戸時代以降の『太閤記』ものの再現 |
| 特徴 | 三谷幸喜さんらしい遊び心ある歴史コメディ |
”作られた名場面“を再解釈する
映画『清須会議』のプロットは、江戸時代以降に広まっていた【清洲会議】を描いています。
早い話、史実ではなく元々あったフィクションをさらにアレンジしたコメディであり、主な登場キャラは以下のような人物像となっています。
・堅物で戦バカの“親父殿”こと柴田勝家(役所広司さん)
・明るくひょうきんで、聡明さを秘めた羽柴秀吉(大泉洋さん)
・勝家と秀吉から憧れの眼差しを向けられながら、秀吉を断固憎むお市(鈴木京香さん)
・正真正銘のうつけである織田信雄(妻夫木聡さん)
・聡明で織田の家督を狙う織田信孝(坂東巳之助さん)
上記のようなメイン以外の人物も、だいたい江戸時代以降のイメージで肉付けされていて、そうした基本設定を活かしながら三谷さんらしく軽妙に仕上げてゆく。
現在の研究成果からすると会議の内容ほとんどがフィクションであり、突拍子もない奇策として秀吉が担ぎ上げる三法師は、史実ではすでに当主になることが決まっていた既定路線であったとされています。
勝家とお市の結婚も、背景には信孝の意思がありました。
しかし、こうした状況を正確に反映させるとなると、映像作品としては非常に苦しくなってしまうでしょう。
秀吉が三法師を抱いて現れ、度肝を抜かれる――このクライマックス場面すら差し替えねばならず、もはやエンタメとして成立しなくなる。

『絵本太閤記』に描かれた清洲会議のシーン/wikipediaより引用
しかし……例えば源平合戦にしたって、武者絵や映画、ドラマで繰り返し何度描かれてきても、今はもう「牛若丸と弁慶が三条大橋で出会う場面」は作られません。
三法師を抱いて秀吉が登場する場面も同じ。
あくまで“作られた名場面“なのです。
「そんなもん、面白ければいいんじゃないの?」
2013年の公開当時はそう言えたかも知れません。
しかし、他ならぬ三谷幸喜さん自身が、そのお約束を破壊したと思えます。
『真田丸』歴史と物語の融合、次の段階へ
映画『清須会議』の3年後、2016年に三谷さんが手掛けた大河ドラマが『真田丸』です。

大河ドラマ『真田丸』(→amazon)
本当は、大坂の陣400周年を狙い2015年の作品にしたかったのでは?と私は推察していますが……いずれにせよ映画『清須会議』と近い作品。
『真田丸』で三谷さんは相当磨き上げ、次の段階へ進んだと思えます。
特徴的な一例が主人公の名前です。
真田幸村ではなく、真田信繁として描きつつ、後半になって“幸村”とした。
その描き方からは「既存の歴史物語の醍醐味と史実のすり合わせ」を目指した次の目標が感じられました。
話としての面白さを取るか?
それとも史実の重要度か?
振り子のように揺れながら進んでいくドラマ。
『真田丸』では第二次上田合戦が、この選択肢の俎上にあります。

上田城西櫓
史実を重視した結果、今までのフィクションほど大きな勝利を収めず、対戦相手の徳川秀忠も、そこまであわてふためかない展開となりました。
結果、そこが物足りないという意見も視聴者から出ていたものです。
映画『清須会議』からの続投となった大泉洋さんは、『真田丸』では主人公の兄・真田信幸に大抜擢されました。
生真面目でありながらとぼけた味のある演技。
映画『清須会議』で秀吉を演じた大泉洋さんから感じたことには、信幸ではまだ到達できていません。
あの映画ではめっぽう明るく、ひょうきんだった秀吉が、いずれ関白・豊臣秀吉となり太閤となり、惨い殺戮に手を染めるドス黒い未来の姿はどう描かれるのか?
今にして思うと、三谷さんもそこが気になっていたのかと思えます。
『鎌倉殿の13人』悪役としての彼を作り上げる
映画『清須会議』
大河『真田丸』
大河『鎌倉殿の13人』
近年の三谷3作品に皆勤賞の役者さんは何名かおられます。
その中で際立っているのが、大泉洋さんでしょう。
映画『清須会議』を見た後に大河『鎌倉殿の13人』を振り返ってみると、彼ならば晩年の酷い秀吉でもおぞましく演じ切れただろうと確信できます。

『醍醐花見図屏風』に描かれた豊臣秀吉と北政所/wikipediaより引用
むしろ三谷さんは、おぞましい大泉洋さんを描きたくて仕方なかったのではないか?とすら思えてくる。
『鎌倉殿の13人』において、当初はとぼけていて、どこか甘ったれたところもある貴公子・源頼朝。
初回から女装を披露し、序盤はコメディセンスが存分に発揮され、徐々に残忍な一面が顔を出していくようになり、上総広常を酷い殺し方をするあたりからそれはもうドス黒く変貌してゆく。
弟・源義経の首桶を抱いて泣く場面は、忘れ難いものがありました。
『鎌倉殿の13人』のキャストを最初に見たとき、違和感や不安を覚えた方もいたかと思われますが、一通りドラマを見終えてどうでしょう?
あの大泉洋さんは素晴らしかったと思いませんか?
まるで、ひとつの到達点のような、歴史劇における大泉洋さんをああも活用する。
三谷さんという脚本家が、最高傑作を作り上げていく過程として、その第一段階として映画『清須会議』はおすすめできます。
彫刻家は、石を見ただけで像の姿が見えるという。
埋もれた像を取り出すように、作品を生み出すという。
映画『清須会議』とは、三谷さんという彫刻家が、大泉さんという最高の大理石の前で考え込み、掘り出し始めた……そんな過程を見ることができる映画だと私には思えてくるのです。
花をいきいきと咲かせる
三谷3作品の皆勤賞といえば、鈴木京香さんもそうです。
映画『清須会議』を見ていて感じるのは、どうもヒロイン描写がまだ硬いということ。
高嶺の花であるお市。
気高き松姫。
明るいねね。
神秘的な女性刺客。
悪いとは思わない。でも、いいとも思えない。その程度に収まっています。綺麗な花だけど、印象に残らないというか……。
それが『鎌倉殿の13人』になると、ヒロインが実に生き生きとしている。
映画『清須会議』が花瓶の花ならば、大河『鎌倉殿の13人』は生き生きと野に咲き誇る花になりました。
鈴木京香さんのお市は最初から最後まで一本調子には思えました。それと比較すると、『鎌倉殿の13人』の丹後局は、場面によって妖女にもなれば、頼り甲斐のある姉御肌にもなる。そんな千変万化の女性でした。
『鎌倉殿の13人』のとき、三谷さんはインタビューの中で「女性描写が苦手だ」と語っていたものです。
それがこうも進歩する。
あれほどの大作家で、三作も大河を手がけて、まだまだ成長する。その謙虚さと成長性が、三谷幸喜さんの素晴らしさだと思えます。
2022年以降に映画『清洲会議』を見るということ――それは三谷幸喜さんがいかに素晴らしいかを再確認すること。
彼は才能があるから素晴らしいだけではない。
学ぶことを忘れず、どんどん大きくなるところこそ、その魅力の真髄であると思えます。
2013年と2022年を比較し、その進歩の幅を、ぜひ実感してみてください。

映画『清須会議』(→amazon)
◆映画『清須会議』/amazonプライム 2025年7月16日現在レンタル440円(→amazon)
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【参考】
映画『清須会議』/amazonプライム 2025年7月16日現在レンタル440円(→amazon)





