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【稲生の戦い】
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蘭丸&長可の父ちゃん、大活躍!
まず、柴田勢と信長勢の兵が衝突しました。
序盤は、信長方の多くの兵が討たれ、生き残った者も怖気づいて逃げてきてしまいます。
織田信長のすぐ前まで逃げてきたらしいので、柴田勝家の勇猛さや勢いがうかがえますね。
そこで、信長の側に控えていた者のうち、織田信房(一族ではなく織田姓を貰った家臣)と森可成(よしなり)が打って出て、敵の首を取りました。
「信長の怒号で兵がひるんだ」とも書かれているので、それも功を奏したのかもしれません。
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また、信房がこのとき配下の兵に「首をお取りください」と言われても、「今はその時ではない!」と返し、攻め続けることを命じたとか。
この人は、少なくとも2話で述べた【小豆坂の戦い】あたりから織田弾正忠家に仕えていたので、古強者の経験からそう判断したのでしょう。
信長自身も、自ら兵を率いて攻め手に加わりました。
その中の一人・黒田半平という者が林美作と長時間切り合い、半平は左の手を切り落とされる大怪我をしてしまいます。
しかし美作も息が上がっていました。
お互い一時休戦になっていたところに、信長が駆けつけて自ら美作に挑んだといいます。
これこそが信長の魅力の一つですね。
大将なのに自ら前へ出て戦う――そして自らの手で林美作を討ち取り、首を挙げました。
信長公記には「無念を晴らした」とあるので、信長からすると秀貞より美作のほうが問題だったのかもしれません。
また、このとき、口中杉若(ぐちゅう すぎわか)という身分の低い者に功績があったので、信長は彼を取り立てて、杉左衛門尉と名乗らせたとか。
信賞必罰を迅速に行うのも、信長の長所の一つですね。
翌日清洲で首実検
こうして【稲生の戦い】は信長方の勝利で終わりました。
落ち着いた頃を見計らって、各自、馬に乗り、首を取りに向かったようです。
この日、信長は清州城に帰り、首実検は翌日を行いました。
首実検とは、字面の通り、
【首を実際に見て検(あらた)め、将兵への褒美を決める作業】
です。
特に稲生の戦いのような身内の戦の場合、どの首が誰のものなのかすぐわかるので、功績が明確にわかります。
これが敵国同士の戦いだと「その辺の一般人を適当に殺して首の数を水増しする」ような不届き者がいたとか……。
まぁ、一般人の中にも落ち武者狩りをする者がいましたので、どっちが悪いと一概には言い切れません。強いて言うなら世情が悪い。
このとき信長軍が挙げた首は、なんと450以上もあったといいます。
柴田勢と林勢を合わせて1700前後の兵数でしたから、少なくとも1/4は信長軍に討たれたことになりますね。
凄まじい戦果です。
ただし身内を削るために自殺行為でもありますが……。
実母の頼みとあっては断るワケにも参らぬ
完膚なきまでに叩かれた織田信勝、そして秀貞らは、城に籠もるほかありませんでした。
この状況で籠城したところで、助けに来る味方はいない時点で意味はありません。
しかし、八方塞がりだったのでしょう。信長は念押しのため、これらの城近くまで町を焼き払っています。
ここで、末森城に住んでいた信長と信行の実母である土田御前(どたごぜん)が登場、両者の仲裁に動きます。
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清州城から信長の家臣を二人呼び寄せて、彼らを土田御前の使者とし、信行方から信長へ詫びを入れたいと申し入れたのです。
カーチャン頑張って!
さすがの信長も母の意見を無下にはできず、彼女の提案を受け入れました。
それに対し、信勝、勝家と、もう一人、津々木蔵人(つづき くらんど)という信勝の家臣が、墨染めの衣を着て清州城を訪れ、信長に直接赦免の礼を述べています。
秀貞も赦免
暗殺計画については林秀貞本人から「実は、5月26日に殿を殺すつもりでした」と白状してきたため、信長はその時の状況を思い出しました。
『こやつ、やろうと思えば俺をあの場で殺せたのに、そうしなかったな。ならば、俺を殺したいほど憎んでいるというわけではないのだろう』
そう判断し、秀貞も赦免しています。
信長って実は優しい(甘い)よね、と判断される一つのエピソードでありますね。
信勝派との戦いはいったん落ち着いたかに見えました。
「見えた」だけで、そうは行かなかったのですがね。それはまた後日……。
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信長公記をはじめから読みたい方は→◆信長公記
長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
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太田 牛一・中川 太古『現代語訳 信長公記 (新人物文庫)』(→amazon)
日本史史料研究会編『信長研究の最前線 (歴史新書y 49)』(→amazon)
谷口克広『織田信長合戦全録―桶狭間から本能寺まで (中公新書)』(→amazon)
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谷口克広『織田信長家臣人名辞典』(→amazon)
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