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賤ヶ岳から北ノ庄城まで約110km
賤ヶ岳の戦いとは、どんな合戦だったか?
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結論だけ申しますと、佐久間盛政の突撃で戦線が動き、さらに前田利家の戦線離脱で秀吉が勝利を得ました。
当初、利家は柴田軍の一翼を担っていたので、端的に言えば柴田勝家を裏切って秀吉についたのです。
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豊臣秀吉と柴田勝家が織田家の後継を巡って直接ぶつかった――賤ヶ岳の戦いは、前田利家の戦線離脱などもあり秀吉の勝利となりました。
合戦に敗れた勝家は本拠地・北ノ庄城へ帰ってきました。
現在の福井城ですね。
この城は、賤ヶ岳から現在の道路で110km程度しか離れておらず、すぐに秀吉もやってきて包囲戦が始まります。
先鋒は突如戦線を離脱した後、秀吉方についていた前田利家。
他にも黒田官兵衛など賤ヶ岳とその付近で功を挙げた武将たちがたくさんいました。
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24日の明け方に秀吉方が本丸にまで押し入ると、夕方には勝家とお市、そして、最後まで残った数十人の配下が自害したといわれています。
お市には、逃げるようにすすめていた!?
実は勝家は、北ノ庄城へ帰ってからお市に「逃げよ」と勧めたといわれています。
しかし、お市自身が「二度も逃げたくない」といって拒否。
勝家と自害する道を選んだのですが、勝家としては「愛する女性に生き延びてほしい」というより「まだ若いし、これからが大事な娘たちもいるから、母親がいなければダメだ」と思ったのではないでしょうか。
愛する妻を見る目というより、大切な元主君の妹という風に思えてきます。
お市が自害を選んだ理由としては「秀吉が嫌いだったから」とか言われたりもします。
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果たしてどうでしょうか。
娘達を直接秀吉に渡したあたり、100%嫌いとも言えない気がします。
本当にイヤだとしたら、何としてでも秀吉ではなく違う武将の下へ落ち延びさせたのではないでしょうか。
信長の存命中から浮気性で有名だった秀吉ですから、女癖の悪さがお市の耳に届いていた可能性は否定できません。
ただ、伝えられているお市の言動から「勝家や秀吉に対してどう思っていたか」をうかがい知ることはできないのが歯がゆいですね。
二人の辞世に同じ言葉「ほととぎす」
辞世の句からも、単なる政略結婚とか、「秀吉が嫌いだから勝家と仕方なく運命を共にした」というわけではない気がします。
二人の辞世に勝家と同じ「ほととぎす」という言葉が入っているのです。
いつも通りの意訳と共に掲載させていただきます。
◆お市
「さらぬだに 打ちぬる程も 夏の夜の 別れを誘ふ ほととぎすかな」
【意訳】「そうでなくても夏の夜は短いのに、ほととぎすが今生の別れを急かすようですね」
◆勝家
「夏の夜の 夢路はかなき 後の名を 雲井にあげよ 山ほととぎす」
【意訳】「夏の夜の夢のように儚い人生だった。山のほととぎすよ、せめて我が名を雲の上へ語り伝えてくれまいか」
辞世に返歌をする、というのは度々ありますが、同じ単語を入れるというのはなかなかありません。
ほととぎすは古来からその声の美しさや「夜に鳴く」という特徴を愛でられてきた鳥で、和歌にもたくさん詠まれています。
もしかするとこの二つの辞世では、秀吉のことをさしていたのかもしれませんね。
どちらが先に読まれたのか。
そもそも本当に二人が詠んだものかという証明ができないのでアレですけれど。
もしお市が先に詠んで覚悟の程を示し、勝家がそれを了承する意味で同じ「ほととぎす」という言葉を入れて自分の辞世を詠んだとしたら……そこには単なる恋慕や夫婦関係ではない、戦国ならではの信頼と愛情があったのではないかな、と思います。
美化しすぎですかね?
いずれにせよ織田家を思う勝家の気持ちと、お市の方の誇りには、一点の曇りもない気がします。
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長月 七紀・記
【参考】
小和田哲男『信長の婚姻政策とお市の運命』(→amazon)
橋場日月『政略の犠牲となった信長の妹・お市』(→amazon)
太田牛一/中川太古『現代語訳 信長公記 (新人物文庫)』(→amazon)
歴史読本編集部『物語 戦国を生きた女101人 (新人物文庫)』(→amazon)
渡邊大門『井伊直虎と戦国の女傑たち~70人の数奇な人生~』(→amazon)
国史大辞典
柴田勝家/wikipedia
お市の方/wikipedia