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城めぐりの注意点やマナー、服装についてもアドバイス
本作を読んでいてハッとさせられたのが、城めぐりの服装やおすすめの時期、注意とマナーが書いてあったことです。
なんで今まで気づかなかったのだろう。もっと早く知りたかった、と思いました。
例えば大河ドラマの紀行やガイドブックでは、城跡の見所は教えてくれますが、そこに熊や蛇がいることには触れられません。
(・(ェ)・)クマー
実際、城に行ってみると、楽しむ以前に虫さされに悩まされたり、靴擦れが気になって仕方なかったりしてしまう。
そんな経験、ありませんか。
完全に観光地化していて、自動販売機やトイレ、ロープウェーに土産屋さん完備の城なら問題はありません。
お城聞いて想像するのも、大体はそんな場所だと思います。
しかし、山城はなかなかトンデモナイですよ。
言われてみればもっともなことですが、城というのは攻めにくくするもの。
山城だと険しい山の上にあったり、霧深く他の場所と比べて寒かったり、そんなことは十分ありうるわけです。
夏場だからと半袖サンダルでうっかり行ってしまったりしたら、大変なことになります。
そういう「城で負傷」「城でうっかり遭難未遂」を防ぐための心得が、本書ではしっかり書かれています。
巻頭ページで千田先生がモンベルを着てバッチリ防寒しているのかも理解できます。
城めぐりは歴史、文系の趣味と思われがちです。
が、場所によってはトレッキングのような装備も必要になってくるんですね。
慣れてしまえば当たり前ですが、初心者だったらここは盲点。
ゆえに必携の一冊だと、私は強く主張したいのです。
松倉城快晴で凄い良かった
さて移動です pic.twitter.com/LGYb1E67uM— にの (@jokakusiromati) 2017年12月3日
(モンベルを着て冬の飛騨・松倉城を探訪される千田教授)
守り手攻め手の気持ちがわかる
なんだかヴィジュアル面や準備ばかりに焦点を当ててしまいましたが、もちろん中身は充実しております。
城の歴史や変遷、構造の解説、おすすめの城まで。
読めば読むほど、ここまで一冊にマトメられるのか、とうならされます。
中には「考証を無視して日本各地で建てられたなんちゃって犬山城風天守」といった面白コーナーもあり、頭のてっぺんからつま先までお城愛に満ちあふれています。
私が特に気に入ったのは「攻め手と守り手の気持ち」が、各城の紹介ページに掲載されているところですね。
「敵はきっとものすごい技術を持っているに違いない……」
「倍以上の敵が来ても追い返してやる!」
というように“なりきりコメント”までありまして。
これを参照しながら実際に行ってみたら、
「絶対、こんなところから攻めたくないなぁ」
「城へ一番乗りとかガンガンいっちゃう武将って、マジぱねぇ!」
と痛感できるはずです。
歴史を高みから俯瞰するのではなくて、当時の足軽や武将、城主の気持ちにも入り込める。心理的距離をグッと近づける仕組みが施されているのです。
城好きなら一層のめりこみ、特別な感情を抱いていない人でも引き込まれてしまう。
そんな魔法の一冊を今後のお供に。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考】
『日本の城事典』(→amazon)