レジェンド&バタフライ

本能寺の変で長刀をふるう濃姫(帰蝶)と織田信長/wikipediaより引用

歴史ドラマ映画レビュー

ド派手な話題作りで中身は空っぽ?映画『レジェンド&バタフライ』

こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
レジェンド&バタフライ
をクリックお願いします。

 

役者の魅力に頼っているのに、魅力を殺す演出

まさか私が綾瀬はるかさんの魅力を感じないことがあるとは……見ていてそう愕然としてしまいました。

事前の感想を見ている限り、綾瀬さんはまだマシだという投稿はあった。

ゆえに少しばかり期待していたのですが、彼女の魅力をまるで引き出せていません。

メイクが浮いているわ。髪型が妙なアレンジをされていておかしく見えるわ。

所作指導も甘いのか。動きが雑に見えるわ。何より酷いのが発声指導です。

彼女の声はあたたかみがあり可愛らしい。しかし、その声のトーンでは似合わないセリフが多いのです。

そうはいっても、これは決して彼女の問題ではないでしょう。

木村拓哉さんもずっと、現代劇と変わらない荒々しい口調です。

剣道経験者だけに殺陣はよいという意見もありますが、江戸時代を挟むと剣術の型も違い、むしろ不自然に思えてしまう。

役者の魅力をそのまま出せばよいというのはわかった。

しかし、時代劇には時代劇のやり方があります。

これがもしもコマーシャルやキャンペーンの類ならば、齟齬が目立つことはなかったのでしょう。

2022年ぎふ信長まつりが盛り上がったことは理解できます。そこで終わっていればまだよかったかもしれません。

しかし映画できっちり映すとやはりまずい。

本作には、常に「コスプレ」感が漂っています。真面目に描くのではなく、雑に取り入れたなんちゃって要素があまりに多いのです。

 

歴史知識が曖昧で入り込めない

この作品は作り手の歴史知識が曖昧なのでしょう。

ともかくミスが目立ち、入り込めない。

台詞は語尾や語彙力だけ、どこかで聞いたようなそれらしいものにする。それもどこか間違っているように思えて集中できない。

この時代ですと、方言はむしろ一切使わないことが一般的です。

それを本作は特定の人物だけ、少し訛っているような半端なことをするため、余計に違和感が目立つ。

歴史劇として始まってすらいないと思います。

 

軍師・帰蝶の言いなりになっても、これでは勝てない

本作の特徴として、信長の決断の背景には帰蝶の指示があったとあげられます。

しかし、その軍師役である帰蝶の助言が無茶苦茶。

こんな戯言を聞いていたら信長は全く勝てないとしか言いようがありません。

桶狭間の戦いの際に、帰蝶があれやこれやと指示を出します。

ところがです。戦場の地形も考慮していないわ、思ったことを根拠もなしに並べるだけだわ、最後は根性論じみた気合の入れ方を入れてくるわ。

桶狭間では「大雨が降るから音が消える!」と言います。そういう対処を何もしていないと思ったのでしょうか? 荒天時の手立てはあるでしょう。

この程度です。得意げに出してくる策は、歴史を学びたての子どもが自由研究で出してきた程度のものばかり。全く説得力がありません。

よく勝てたよなぁ……と呆れるしかない。後の助言も、歴史の結果から逆算した見解を垂れ流すだけです。

信長の背後に帰蝶がいた――。

確かにこの発想そのものはありえます。

例えば『麒麟がくる』もそうで、鉄砲の買い付け交渉を実質的に帰蝶がこなしているという設定がありました。

戦国時代の文書は、女性が取り仕切ったものでも、署名が本人ではなく、男性名義にされていることがあるとしばしば指摘されます。

そうした歴史的要素を踏まえたのであれば適切。要するに『麒麟がくる』は無理のない範囲で、女性の活躍を描いていました。

それがこの映画は、ベラベラと説明セリフを並べ立てたり、アクションをさせなければ「活躍」に入らないとでも考えているようで……合戦がどういう仕組みであるかすら、理解できていないのではいかと思いました。

※続きは【次のページへ】をclick!

次のページへ >



-歴史ドラマ映画レビュー
-

×