どうする家康感想あらすじレビュー

どうする家康感想あらすじ

『どうする家康』感想あらすじレビュー第20回「岡崎クーデター」

2023/05/29

ぐるぐると綺羅びやかなロゴが回転して大河ドラマが始まります。

2024年大河『光る君へ』のロゴも発表されましたが、妙な飾りはなくオーソドックス。

落ち着きがあってよいものです。

今年は、土産物についているところを見かけるだけで疲れてしまい……さて、『どうする家康』第20回放送の舞台は岡崎です。

いかにも悪どい口調で、光秀が信長に説明セリフで語るところから始まります。

この冒頭からして、LEDスクリーンを背景にして語っているのでしょう。本作の好きな演出をざっと挙げてみますと。

・雷鳴や怪しい天気で緊迫感を表現!

・「神の君」としつこいナレーション

・パカパカとしたBGMを被せ、やたらとスモークを焚いた合戦場でゴチャゴチャ演出

・甲冑の重さを考慮しない軽薄な殺陣

・見づらいマップ ※コーエーテクモさんに監修を依頼していれば……

・説明セリフの連発

・武田勝頼は強いとしつこい

ここで、イケメンの武田勝頼が出てくるわけですが、衣装が台無しにしています。

目の前にある父の装束はあのサンタクロースモコモコ陣羽織。

なぜこの親子は、襟だけ別の色の着物が好きなのか。父の襟が白だったら子は襟が赤。しかも、昭和の不良が来ていたような長ランシルエットがダサすぎて、もう目が滑ってしまい辛いです。

そして「岡崎に迫る武田の魔の手」が映像化されるわけですが……。

武田菱、赤い頭巾。どれもこれもどうしようもない格好悪さでもう何もかもが嫌になります。

 


あらすじ:おじさん構文バージョン

ヤッホー( ◠‿◠ )

やっと、信玄が、死んだwのにwwwイケメンの勝頼は、強いしww_:(´ཀ`」 ∠):

なんとか、しようとした、家康チャンは、病気になりました( ;  ; )

瀬名チャンや、亀チャンが、がんばるけど、ムカつくイケメンの、弥四郎が、悪だくらみΣ੧(❛□❛✿)

ハラハラしちゃうね( ´ ▽ ` )

 


どうする衣装

今週は、武田勝頼のスチル写真を見ただけで、脱力感に襲われました。

毎度のこととはいえ、どうにも慣れません。毎回新たな絶望感を更新されます。

前述したように、勝頼の陣羽織のシルエットは昭和の不良みたいな長ラン。

ピンと来ない方は漫画ドラマ『今日から俺は』(→amazon)の伊藤をイメージしてください。戦国武将でやることじゃないんだわ……。

漫画『今日から俺は』(左側が伊藤)/amazonより引用

眞栄田郷敦さんが非常に頑張っているだけに、衣装が台無しで絶望感が湧いてきます。

勝頼の兜はサイズが合っているんでしょうか?

しかし、これは今更のことではないかもしれません。

穴山梅雪の頭巾もどこかフィット感がおかしい。現場で何か起きているのでしょうか。

 

どうする病気の描写

本作は病気の描写もおかしい。

・家康立ち上がる

・フラッと倒れる

あまりな雑展開に『えっ?』と感じた方も少なくないでしょう。

一応、自ら書状を記しているときに額の汗を拭うシーンはありましたが、ぶっ倒れるほどの疲労を表現できていたのでしょうか。

精神的にも疲労し、激務に追われた結果、自分でも気づかないうちに体調が悪化し、甲冑をつけたまま倒れる――そんな『麒麟がくる』の光秀とどうしてここまで違うのやら。

しかもあんな分厚い手袋をつけた鳥居元忠が、少し家康に触れただけで「すごい熱だ!」ってなんなんでしょう。

カメラマンあるいは他の現場スタッフも手袋を外すことに気づかなかったのでしょうか。

病臥している家康は顔色は悪くないですし、熱があるのに冷やすような工夫もないし、脂汗が滲んでいるわけでもなく、口調はハキハキしている。

仮病なのか? そういうストーリーなのか? と一瞬色々と考えてしまいました。

なんせ周囲の家臣たちも病気の殿への気遣いが感じられないですし、医者もいなけりゃ祈祷もない。

同じ脚本家の『レジェンド&バタフライ』でも、病気の妻の枕元で楽器演奏する信長が大迷惑そのものでした。

病気すら描けないんですかね。

『麒麟がくる』やドラマ10『大奥』の病気描写と比較すると、もう切なくなってきます。

 


どうする戦国ホームドラマ

信康と五徳、それに瀬名、亀が集ってうだうだ説明セリフを読む場面も見ていて辛い。

家族喧嘩単位で戦国時代を描くとは……。

しかも、五徳が癖のある悪役描写をされているのに、思ったことを全部そのままぶつけるんですよね。

もうわけがわからない。本作は、開始当初から説明セリフが多かったものですが、今はもうほぼ全てがそれで占められていて、作品としてひたすら陳腐になっています。

こんな幼児用プール並の浅さで、どう深読みしろというのか。

 

どうする大岡弥四郎

大岡弥四郎がダメで胡散臭いと描きたいのでしょうが、こんな腹に気合の入っていない発声を大河で聞かされるとは思いもよらぬことでした。

演じる側でなく、演出が見逃すことが悪い。役者は被害者です。

こんな見るからに怪しい奴、切り捨て一択では?

奸悪な男を描写するのに、『鎌倉殿の13人』の三浦義村の後にこれですか。

「あの大岡弥四郎が!」

と、唐突に言われたところで「知らんわ!」としか言いようがない。

本当にこの作品は、ポッと出の人物を皆さんお馴染みのように出すのが好きですね。

うまい飯食って酒を浴びるほど飲んで女遊びしてぇ!

って……もしかして『仁義なき戦い 広島死闘篇』で、千葉真一さんが熱演した大友勝利でも意識しとるんか? のぅ?

昭和のテキ屋と戦国武将を同列に描くにせよ、やり方いうものがあるじゃろうが。仁義ファンに喧嘩を売っとるか?

こがいなやり方を「顰に倣う」という。これについては後で解説しちゃる。『鎌倉殿の13人』と違い、うわっつらだけ真似てからに。

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仁義なき鎌倉殿の13人~実録ヤクザ映画と中世大河がリンクするのは当然のこと?

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どうする負傷者描写

女たちが負傷兵の看病をする場面の臭さはどうにかなりませんか。

治療しながら亀がメソメソ泣くあたりは『女の子はこういうとき泣いて欲しいんだよぉ♪』という妄想じみていてどうしようもない。

臭いBGMを背景に、瀬名がわざとらしくキビキビしていて、学級委員長じみた綺麗事をいう。五徳はわかりやすいゲスセリフをいう。本当に、しょうもない青春コメディだ。

負傷兵の取り扱いについては、残された文献や史料からある程度推察できるはず。

そういうリアリティが感じられず、せいぜいが体育祭で転んだ生徒に、マキロン塗りつけて絆創膏を貼る程度。

部活動の女子マネですか?

 

どうする攻城戦

どんな名城だろうが、落ちるときは落ちる。

それが「城が丈夫だからだいじょーぶ!」みたいな弥四郎の言葉に反論せず、それすら把握できない瀬名は愚かとしか言いようがない。

後に、不落の名城が落とされる小田原攻めがありますが、まぁ、整合性など、どうでもいいのでしょう。

あの下劣な秀吉に攻城戦をするだけの知恵があるようにも思えません。主人公補正で終わりますかね。

 

どうする母性愛ファンタジー

戦国時代なのに、瀬名と亀が並んで眠って、親子愛を確認ってどうしたことでしょう。

母と娘に妄想を膨らませる、本作制作陣の嗜好が痛々しい。

 

どうするBGM

このドラマは、BGMが悪目立ちしていませんか。

緊迫感のあるところでピアノがやたらと印象的な音楽が流れますが、劇伴として盛り上げるというよりも、音楽として目立たせたい個性が際立っていて集中できません。

こう思うのは、朝ドラ『らんまん』のせいもあるかもしれません。あのドラマはBGMの使い方が秀逸で、盛り上げる底上げをそっとしてきます。

本作は、単体で聴いたらよい音楽なのでしょうが、劇伴としては疑問を感じるセンスなんですよね。

 

どうする屋内戦闘

このドラマは殺陣すらおかしい。

屋内戦闘は柱や家具に引っ掛けないことが大事なのですが、あんまり考えていないように見えます。

刃同士をぶつけると破損することも多いので、リアリティを考えればあまりぶつけない。

かつての時代劇はともかく、今はそのあたりを考慮しています。

例えば『麒麟がくる』もその辺を考慮されていて、屋内戦闘では早々に相手を殺します。さらには段差や高低差を踏まえつつ、リアリティのある戦闘ができていました。

しかし、今年はただひたすら陳腐で……盛り上げるために暗殺未遂を入れているのが見え見えで、全くもって迫力がありません。

本気で殺す時は、もっと確実性のある手段を取って欲しい。

しかも、瀬名が緊張感のない声でウダウダ講評するものだから、遊びはその辺にして欲しいと思うばかりです。

本作は、戦国時代が舞台ですよね?

なのになぜ、どいつもこいつも本気で殺し合うことを意識していないのか。

歴史劇が見られる理由の一つは、血で血を洗う殺し合いもあるからでしょう。

そうした需要に対する供給をお願いします!

 

どうする平和を求める心

本作は『麒麟がくる』を雑になぞっていて腹立たしい。

家康が「ずっと戦ばっかりしている!」と大岡弥四郎に責められる理由が意味不明。

以前も指摘しましたが、このドラマの世代は、数代に渡って戦ってきていて、それが当たり前でしょうよ。

いわば、生まれてきてから戦漬け。それなのに「ずっと戦ばっかりで嫌だ!」という意味がわからないのです。

しかも「浴びるほど酒飲んでいい女を抱きたい」とか言うもんだから、世の中を「平和にしたい!」という崇高な理想はあり得ない。

忠義だのなんだの馬鹿にしますが、ただの逆張りに思えてきます。

 

どうする野生の軍団・武田家

武田の軍勢は、どうして野生動物みたいなノリで、山の中で軍議をするのでしょう。

武田家はキャンプ好き♪とでも言いたいのでしょうか。

信玄もよくわからん場所で野生のノリを披露していましたよね。

その信玄については、前回放送で死体が野晒しになったみたいな描写もありましたが、琵琶法師だという見方もあるようですね。

どのみち武田家は、死体野晒しOK♪ という風にも見えてしまい、何か恨みでもあるのかと思うほどでした。

海外のコンテンツが「日本人はゼン! ワビサビ! ゆえに死体は野晒し!」とやらかしたら苛立ちませんか?

そういうことを大河でやられて愕然とするのです。

 

どうする井伊直政

井伊直政の言うことが意味不明です。

家康の話をする時はみんな笑っている。笑顔にさせる。きっと幸せなんだ!

だから仕える!って、どういう理屈でしょうか。

わざとらしくうるさいBGMで、しまりのない笑顔を浮かべさせ、「おいら」と言わせ。

直政の喋り方、所作が現代劇と変わらず、本当に無礼な奴だと嫌になってきます。

井伊直政は美少年だのなんだの言われていますが、脚本、演出、ヘアメイクのせいで台無しにされています。

『おんな城主 直虎』の後で、どうしてこうなった?

 

どうする千代

千代が出てくるだけで嫌になる。

ヘアメイクはわざとかと思うほど酷い。隠密のくせに、いつでも見れば一発でわかる姿をしているのはどういう狙いでしょうか。

こんなわけのわからん巫女が、武田家臣団の代表でよいのか。

いや、よいのでしょう。きっと、こんな論調の記事が出ますよ。

◆「どうする家康」第20回「岡崎クーデター」女性たちのたくましさを象徴する瀬名と千代の言葉

実際にこんな記事があったばかりです。

◆「どうする家康」第19回「お手付きしてどうする!」女性たちのたくましさを象徴するお万の言葉【大河ドラマコラム】(→link

 

どうする瀬名

瀬名にしても、なぜ千代の正体をわかったうえで出迎えますかね。

捕まえてとっとと切り捨ててください。

「お友達になりましょう」だのなんだの、あまりにバカバカしい。

もう一度言います。本気で殺し合う、そんな歴史劇を作る気概はありますか?

あんな怪しい敵の巫女とお友達宣言なんてしてりゃ、内通を疑われて死にますよ。

この瀬名は徹頭徹尾愚か。おじさんの脳内に生息する、昭和平成のギャルみたいな人物像とでも言いましょうか。

公共放送の制作費を使って、自らの萌えを発散する二次創作をされているようで、どうにも頭が痛くなります。

 

顰(ひそ)みに倣う

『荘子』にあるお話です。

中国四大美人の一人に、西施(せいし)という女性がいました。

彼女は胸が痛くなることがあり、その発作の時、眉をしかめ胸をおさえ、苦しそうな顔になりました。

「うわーっ、西施たん萌え〜〜〜!」

そう周囲が大騒ぎするため、それを知った他の女性も、眉をしかめてアピールします。

するとかえって「表情だけ真似してモテると思うとか、アホじゃないの」と笑いものになってしまうのでした。

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本作は、まさに安易に真似をする「顰みに倣う」を彷彿とさせます。

『おんな城主 直虎』が、今回の放映後、SNSで話題になっていました。今回の直政をみて、あの作品の直政を思い出す人がそれだけ多かったのでしょう。あれは確かに素晴らしかった。

そういう過去の大河による積み重ねがあるからこそ、本作はまだなんとか持っている。

制作陣は、その辺をどう考えているのか。

考えてみれば、ロゴからして危険でした。作り手が自分の個性を強く出そうとするエゴに満ちている。

ロゴだけじゃなく音楽、演出、照明、衣装、殺陣……何もかも「俺だ! 俺をみろ!」「俺が楽しけりゃいい! このセンスがわかるイケてる奴らがついてくればいい!」と主張してくるようで、だから作品全体としてのまとまりも感じられない。

「陰キャヲタまみれでジジババの娯楽w そんな硬直した大河に、型にハマらない斬新な感性で風穴を開ける!」

本作は、そんなノリも押し出したいようですが、何度も言いますように「型破りができるのは、まともな型を学んだ者だけ」です。

やたらめったら感性をアピールするのではなく、謙虚に学んだ証拠が欲しい。

どんなに才能があろうと、大河ドラマは一人の才能で成功するわけでもありません。

先行作品や積み重ね、視聴者の受け止め方もあって成立するわけで、そういう看板を背負っているという自覚や謙虚さがあるのかどうか?

大河は歴史を元にしていて、やたらとお約束もあります。

イマドキの視聴者はそんなこと気にしていないとして、過去のお約束をアタマから排除するということは、踏むべき手続きを無視するということ。

そんな調子であれば、どこかで破綻が生じます。

勝頼の長ラン陣羽織などは、まさにその破綻が具現化しているのでしょう。

だからこそスチル写真を見た瞬間、アルミホイルを噛み潰したような嫌な気分を味わう羽目になる。

怖いのは、こうした風潮が作り手だけでなく、一定の視聴者層にも伝播し、ネットを通じて拡散するところかもしれません。

大河通を自認して、自分の配信動画なり、ブログに誘導する層がいて

「古い大河をぶった斬ってやったww シン・大河は年寄りにはわからんしwww」

といった趣旨でSNSでも盛り上がり、深掘りだの読み解くだのなんだの、根拠なく語られる。

『麒麟がくる』の場合、漢籍や東洋思想で読み解くことができましたが、今回はそういうエビデンスがありません。

「子どものころに少年漫画やお笑いを楽しんで、ゲームでも遊んだ! そんなイケてるノリを失わない永遠の少年魂の持ち主なら、このドラマを楽しんで深読みできるはずwww」

そんなノリが振りかざされています。

これでは過去の大河ドラマに対しても、あまりに失礼ではありませんか。

ネットの動きはメディアにも拡散され、例えばこんな記事がありました。

◆眞栄田郷敦『どうする家康』初登場 “勝頼”『真田丸』とのギャップに反響「大河史上一番強そうな勝頼」「とんでもなくかっこいい」(→link

『真田丸』の勝頼と比べていますが、あの作品では第1回放送で武田が滅びます。

滅亡直前の勝頼と、今作のまだまだ元気な勝頼では、ギャップがあるに決まっているでしょう。

そんな当たり前の状況でも、無理にこじつけて記事にするのはいかがなものでしょう。

盛り上がっているように偽装できればよいのでしょうか?

以下の記事もそうです。

◆<どうする家康>“いかにも”な明智光秀が話題 裏の顔ありすぎ? 足利義昭への「手のひら返し」と漂う「小物感」(→link

かつて時代劇は「年寄りの娯楽」と小馬鹿にされてきました。

いかにもコテコテのメイクをした悪役が出てくる。見た瞬間に悪人とわかる。そういう作りが陳腐だと笑いものにされてきたのです。

そうして笑っていたかつての若者層が、いままさに同じ轍を踏み、『どうする家康』を作っているようだ。

あんなコテコテ顔の光秀は、まさしく陳腐を具現化したようなものでしょう。

一体なぜこんなことになってしまうのか。

というと、先行作品はじめ、先人のことを学ばないから、同じ過ちを繰り返すのでは?

大河だけではありません。歴史そのもの、あるいは江戸時代から積み上げてきた、戦国時代作品に対しても失礼だと思えます。

本当に自分たちが画期的なことをしていると言いたいのであれば、先行作品に一礼するくらいの謙虚さは欲しい。そんな度量を求めてはいけませんかね。

そりゃあ、先行作品や真面目な相手に対し、冷笑を繰り返すことは、ラクで気持ちがよいでしょうよ。

「このドラマを、面白くないとか視聴率低いと言う奴は情弱バカw このドラマは革新的、SNSと親和性が高いww 深掘りできるww 解像度の低い考察しか出来ないクズは黙ってろw」

そうやって冷たく笑い飛ばしている間は「自分は他人よりすごいんだww」というマウンティング幻想に満ちています。気持ちいい。

とはいえ、所詮は麻薬の類であり、何も成長はなく、せいぜい仲間内のエコーチェンバーで結束が強まるだけ。

結果、残されるのは逆張り冷笑が得意な人だけです。

何もインプットしていないから、アップデートもできない。果たしてそれでよいのでしょうか?

 

沐猴(もっこう)にして冠す

沐猴(もっこう)にして冠す。『史記』

あいつらってさ、サルにスーツを着せたみたいなもんだよね。

この言葉をふまえまして、大河ドラマの深読みそのものは否定していません。

『麒麟がくる』では、明代の高啓作「尋胡隠君」が印象的に使われていました。

あの詩そのものも重要ですが、高啓は残虐でもある明太祖洪武帝・朱元璋に言いがかりをつけられて処刑されたことも、深読みのしがいがあります。

暴虐な主君と、それに抗う高潔の士。

あの作品での信長と光秀に通じるものがありました。

『麒麟がくる』は漢詩が登場する貴重な大河です。

背伸びしたところで、『どうする家康』の語彙力や教養、知識では、足元にすら及ばない。

無理に時代ものらしくしようとして、子どもが背伸びしたようなセリフになっていますが、使い方がおかしい。せめて添削するか、脚本協力者を起用して欲しいと切に願うところです。

大河では珍しいけれども、本場中国の時代劇では漢詩を用いないことがないほど。

戦いにあわせ、戦乱の惨禍を詠んだ詩にメロディをつけて重ねてくるような、繊細かつ高度な演出が味わえます。

戦乱中国の英雄たち
陳情令で中国時代劇に目覚めたら『戦乱中国の英雄たち』を読もう!

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今年の大河にはそんな高等なことは到底望めないので、代わりに試してみることにしました。

『三国志』でおなじみ、かつ詩人として名高い曹操作「薤露行」(かいろこう)です。

ニラの葉についた露はすぐ枯れてしまう――

そんな儚さを嘆き、こりゃもう終わったと慨嘆する。

本来は葬儀の定番ですが、曹操はオワコン漢王朝を詠んだ。そういうテーマです。

夏目漱石にも同名の短編小説があります。

では、超絶意訳というかこじつけをつけて、いきますよ。

惟漢廿二世  惟(こ)れ漢の二十二世

これは大河ドラマ62作目の話なんだけどな

所任誠不良  任ずる所 誠に良からず

指名された連中が、本当によくないんだよ

沐猴而冠帶  沐猴にして冠帯し

サルにスーツを着せてもダメだろ

知小而謀彊  知 小にして謀 彊(つよ)し

知識のインプットは不十分なのに、SNSやマスコミの盛り上げばっかりうまくてもな

猶豫不敢斷  猶予して敢えて断ぜず

立て直ししようにも、グズグズして同じ失敗ばかりよ

因狩執君王  狩りに因りて君王を執(とら)う

主演が浜松祭りに出たけど、そこまで盛り上がってないなんてツッコミ入るわ

白虹為貫日  白虹 為に日を貫き

戦国大河なのに視聴率ワースト2を確たるものにするわ

己亦先受殃  己 亦た先ず殃(わざわい)を受く

そんなことしたら作ってるやつら、バチが当たるぞ

賊臣執國柄  賊臣は国柄を執り

どうしてこんなマズイやり口で大河を作るのよ

殺主滅宇京  主を殺めて宇京を滅す

看板ドラマがコケたらNHKそのものがまずいよ

蕩覆帝基業  帝の基業を蕩覆(とうふく)し

大河の歴史を台無しにするつもり?

宗廟以燔喪  宗廟は以て燔喪(はんも)す

先行作品にものすごく失礼だしな

播越西遷移  播越 西に遷移し

もうさ、ドラマ10『大奥』か朝ドラ『らんまん』が大河枠になったのかと言われてるほどで

號泣而且行  号泣し 且つ行く

俺も号泣してる 推しが死んだからでなくあまりの出来の悪さに

瞻彼洛城郭  彼(か)の洛城の郭(くるわ)を瞻(み)れば

『鎌倉殿の13人』受賞ニュースを見ていると

微子為哀傷  微子 為に哀傷せん

去年の大河はよかったね、って泣けてくるわ……

 

大手代理店の調査では出演者の価値がガタ落ち

とにかく今年の大河はまずい。

後半になると、出演者の確保も厳しい可能性すら出てきました。

以下の記事をご覧ください。

◆松本潤、松本まりか、岡田准一ら『どうする家康』勢が続々! 視聴者1800人・春ドラマ「株を下げた俳優調査」入手(→link

大河の出演によって、俳優としての価値が上がったか下がったか?

そんな大手広告代理店のリサーチがすっぱ抜かれており、とにかく今回の大河ドラマ出演者の評判が芳しくありません。

「株が下がった」部門の1位が松本潤さんで2位にダブルスコアをつけているとのこと。

しかも、その2位にしても、忍者役だった松本まりかさんであり、以下に続々と続きます。

4位 岡田准一さん

5位 溝端淳平さん

7位 野村萬斎さん

11位 山田孝之さん

12位 古田新太さん

13位 大森南朋さん

17位 ムロツヨシさん

24位 有村架純さん

25位 松嶋菜々子さん

記事の中では「あまりに突飛な歴史解釈」とか「将軍の高貴さがなく、ただただ気持ち悪いだけ」とか「えびすくいが鬱陶しい」とか散々な評価が記されています。

大河作品が成功だったか失敗だったか?

今は、視聴率だけでの判定が難しい時代とされますが、こうして広告代理店から見て価値が下がったのであれば、役者さんとしては失敗作にほかならないでしょう。

大河は拘束時間が長いわりにギャラが安い。それでも出るメリットがあるとすれば、評価が上がることだった。

それが逆効果となったら?

来年以降まで禍根を引きずりそうで暗澹たる気持ちになります。

まだ序盤だから巻き返すチャンスは……残念ながら感じられません。

曹操がライバルである袁紹に勝利し、その遺児である袁尚と戦っていたときのこと。

本拠を目指し、急行する敵軍を前にして、曹操の家臣は止めます。危機を聞きつけてやってくる軍勢は勢いがあり危険だと。

しかし曹操はこう言います。

「連中が本道を進んでくるならば、確かにそうだろう。だが、西の山沿いを進んでくるなら恐ることはないぞ」

逃げ場がない――そうして正攻法で進む相手は、必死で勢いがあるから強い。

けれども、地形を頼りにし小細工するような相手は、心がゆるんでいるからさして強くない。

そういう理論です。

歴史や兵法の面白さとは、こういう冴えた思考を学ぶところにある。幼児のようにギャーギャー喚く武将からは、そういう魅力を感じられないですよね。

『どうする家康』は危難の中にいます。

しかし制作首脳陣にその自覚はないでしょう。

SNSを切り貼りした提灯コタツ記事、ネットの一部盛り上がりに頼っている。

現実逃避ばかりで必死になれないまま年末を迎えてしまう前に、どうにか立て直しをお願いしたいところですが……現状は厳しい気がしてなりません。

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文:武者震之助(note

【参考】
どうする家康/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

-どうする家康感想あらすじ

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