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【奄美大島で西郷の食生活】
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嗜好品・お菓子
奄美大島では、茶や酒、菓子といった嗜好品も当然のことながらありました。
島にもお茶の木はあったようですが生産量が少なく、交易で茶葉を得ていたようです。
この交換レートはあまり公正と言えず、西郷はのちに、その是正を提案しています。
酒は前述の通り、ソテツ焼酎がありました。
現在は奄美大島といえば黒糖焼酎が主流で、姿を消しているようですが。
奄美地方のソウルドリンクに「ミキ」というものがあります。神酒や造酒が語源で、製造方法は以下の通り。
1. 米を粉にして、練る
2. サツマイモと砂糖を加える
3. 発酵させて完成
味は甘酒に似ているとか。
特に夏場は、疲労回復に効くスタミナドリンクとして人気があるそうです(参考)。
ちなみに幕末は、塩で丁寧に歯を磨いた乙女が、米を噛んで作っていたそうです。
映画『君の名は。』に出てきたいわゆる「口噛み酒」ですね。
菓子類は特産品で黒糖、命綱ともいえたソテツを用いたもの等がありました。
小豆を用いた餡子菓子等は、悪くなりやすいためあまり食べられなかったようです。
型菓子(米を炒った粉と黒糖を混ぜて水を加えて練り、型に入れて焼いたもの)
煎粉餅(米を炒った粉と黒糖を混ぜて水を加えて練り、成形したもの)
船焼き(はったい粉と黒糖を混ぜて生地をつくったクレープ状の菓子)
シイ(椎)の実入り蒸し餅
一口香(小麦粉・水飴・水・黒糖等を混ぜ、原料にした焼き菓子。焼き上げると中が空っぽになる)
ぼうろ(丸ぼうろ、花ぼうろ)
葛の菓子(葛きり、葛ねり、葛そうめん)
ヒキャゲ(鹿児島・宮崎のねったぼ、サツマイモの餅と同じもの)
九州本土と共通のものもありますね。
奄美名物といえば何といっても「鶏飯」です!
奄美名物の料理といえば、なんといっても「鶏飯」でしょう!
元々は薩摩藩の役人を接待するための、豪華な料理として考案されたものです。
西郷が口にした可能性も高いはず。
現在のレシピは、米飯に鶏のだし汁をひたひたになるまでかけ、裂いた鶏肉、錦糸卵、シイタケ、パパイヤの漬け物や沢庵を載せた豪華なお料理です。
奄美大島に来たら絶対に食べてみたいメニューですね。
江戸時代以前の古いレシピでは、鶏肉からとっただし汁で飯を炊いていたようです。
この作り方は、九州の「かしわめし」にも似ていますが、中国語圏から東南アジアの料理「海南鶏飯」(カオマンガイ、シンガポールチキンライス等とも)とも共通しています。
外国からの影響もあったのもしれません。
炊き込みご飯とは違い、だし汁をかけて食べることがポイント。
奄美大島のみならず、鹿児島県を代表する味として、現在では大人気なのだとか。一度は食べてみたいものですね。
★
厳しい島の歴史や、環境が反映された奄美大島の食文化。
西郷も、愛加那の作る豚骨料理を喜んで食べていたそうです。
流刑は辛いことですが、愛妻の料理で西郷も元気が出たのかな、なんて想像してしまいますね。
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文:小檜山青
【参考文献】
鹿児島商工会議所編集ほか『増補改訂版 かごしま検定―鹿児島観光・文化検定 公式テキストブック―』(→amazon)
今村規子『名越左源太の見た 幕末奄美の食と菓子』(→amazon)