『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』/wikipediaより引用

西郷どん感想あらすじ

『西郷どん』感想あらすじ第16回「斉彬の遺言」

2018/04/30

こんばんは。

連休をエンジョイされておりますか?

まだ序盤の楽しいときに申し訳ありませんが、西郷どんレビューは今週も酷評になりました。

それにしても本作って不思議だなぁと思うことがあります。

重要人物が顔を見せないことがある点です。

前々回は、島津斉彬の建白書が重要な役割を果たすのですが、顔すら映らない。

前回は、一橋派の敗北確定の回です。

一橋派に担がれていて、しかも将軍になる決意を固めた慶喜が動揺する場面があってよさそうなものなのに、ありませんでした。

少しでも連続性を持って人物を出していればよさそうなものを、入れ替わり立ち替わりいろんな人が出てくるので、思い入れが湧きづらい。

主役の西郷ですら、斉彬や篤姫を必要以上に目立たせているせいもあってか、イマイチ思い入れが育ちません。

これが、マイナスなんですよね……。

 


大雨に打たれながらショックで動けない

京都にいる西郷隆盛

島津斉彬が上京するということで宴席は大いに盛り上がっております。

その最中、国元から手紙が届きます。

月照が届けて来ました。

この場面、なんだか既視感があるなぁと思ったら、篤姫が父親の死を手紙で知った場面に似ていませんか?

と、それより気になった演出が、

【わっぜ劇的な場面用BGM】

を背景に、大雨の中でショックを受ける吉之助です。

ショックを表すのに大雨を使うって、さすがに時代がかった演出のような気が……。

うるさいほどに音楽が鳴り続ける中、今こそ兵をあげるべきだと言い出す西郷どん。

次期藩主の意見も聞かずにそんなことをするのは、一種のクーデターだと思いますが。

どうやら斉彬は、閲兵でハッスルし過ぎて命を縮めたようです。

やる気をアピールしたいのかもしれません。

しかし、そこまで無謀なまでに働きすぎて、結果、亡くなるって、大藩の藩主としては無責任すぎる気もします。

西郷の郷中仲間の一人がそういう若気の至りを起こすならまだわかりますけど。

橋本左内は、毒殺を疑っています。

医者だけに、というところでしょうか。

やたらと毒殺を疑うと話がややこしくなる、と斉彬が西郷どんをたしなめたこともあったんですけどね。

まぁ、暗殺説が囁かれたりもしますので、それをフォローしたのかもしれません。

問題は孝明天皇から水戸藩に出された「戊午の密勅」について……。

 


「戊午の密勅」は吉之助と月照の工作で?

本作は、西郷どんと月照の工作で「戊午の密勅」が出たことにする模様です。

あーあー。なんでそういう雑なことにしますかね。

水戸・徳川斉昭の暴走気味の工作ということにしておけばいいのに。

「戊午の密勅」は、水戸藩にとっては呪いのようなものでして。

藩を真っ二つにして、血の海に沈めたような、極めて危険なシロモノです。

そういうものを西郷どんに出させたことにしてしまうって、それでよいのでしょうか?

せっかくここまで好青年アピールしてきたのに激しく恨まれまっせ。

大方の予想で、この先、西郷どんと「薩摩御用盗」の関係は、本作では触れないと思われています。

薩摩御用盗とは、江戸でのテロです。

幕府と戦争したい西郷は、強盗、放火、殺人などの犯罪行為を江戸の町で働かせました。煽ったんですね。

いわば暴力団の抗争事件で鉄砲玉を繰り出すかのような手口ですから、「心優しい」西郷どんのイメージとは真逆。

それだけにスルーすると思われておりました。

しかし、これまでのドラマを見ている限り、本作は物事を深く考えず【西郷どんのナイスアイデア】として薩摩御用盗を出してしまうかもしれません。

もし、そうなったら本当に凄い。

孝明天皇は、そこまで将軍継嗣問題には関心がないんですよ。

「戊午の密勅」を無視して「安政の大獄」を描くのは良いことではありませんが、本作のようにハンパに出すのもよろしくない。

多くの誤解が生まれてしまいそうです。

 

井伊相手にオラつくばかりの慶喜

一橋慶喜が江戸城にのぼり、井伊直弼に文句をつけます。

と、思ったら、あぁ、また【井】の字がorz

なんでしょう。

見ているコチラが恥ずかしくなるような演出。昨年のイメージまで壊しちゃってる気がします。

ここでメンチきる慶喜。

「勅許なしで条約とかなめてんのかテメー」

えぇ〜、今更かーい!

そうやってオラつくために乗り込んできたの?

「チェスト竹書房ォーイ!」と叫ぶ『ポプピピテック』じゃないんだからさ。

まるでヤンキー漫画みたいな慶喜。

私が井伊なら、

『このイキリバカボンを将軍にしなかった俺って人を見る目あるなぁ』

と自信満々になりますね。

「俺が睨み効かせてるの忘れんなゴラァ!」

と、完全にチンピラまがいの脅し文句を吐き捨て、立ち去る慶喜。

結局、何がしたいのでしょう。

本当に不明です。

実際、井伊のフザけた対応に何も突っ込めずで、これでは喧嘩に負けたチンピラが、

「今日はこのへんにしといたるわ」と捨て台詞を吐いて立ち去るみたいです。

 


「弁当くらい持ってきてないのぉ?」

ここで、密勅について連絡するため、京都から江戸に向かう西郷どんの移動場面が入ります。

今回は、雨の中を走るよ〜。

って、飛脚か早馬でも使った方が良くないですか?

ローディングが遅くて、移動ムービーをいちいち挟む――調整不足のまま発売しちゃったRPGみたい。

そのころ徳川斉昭と松平春嶽は、一足先の押しかけ登城が描かれます。

「安政の大獄」前です。

さぞかし緊迫感を伴うヤリトリが行われるのでしょう。

一体、何を言い合うのか。

心して待ち構えていたら、素っ頓狂なアホ会話で腰が抜けそうになりました。

「朝早くからきているのに、ご飯すら出ないとかどーゆーこと?」

「弁当くらい持ってきてないのぉ?」

ズコーッ! 怒っているのがそこなんかい!

ほんと助けてください。

本作の緊張感さんが行方不明です!

 

お芳とイチャついてる場合じゃないだろ

一方、慶喜はまた品川の磯田屋にいます。

女をはべらせてやる気のない慶喜にまた西郷どんが懇願するんですけど、前々回でこういうの終わりにしませんでしたっけ?

ドラマ全体の話が中々進まないのに、無駄に時間使ってどうするのか。

お芳が待ってるとか、慶喜が迎えに来るとか、正直、どうでもいいわけで……。

慶喜も、よく目をつけられている中、こんなアホなことをヘラヘラしているもんだと思います。ここから先三年間は謹慎ということで、ホッとしました。

そんな中でも、あまりに恥ずかしすぎて耐えられなかったのがこのセリフ。

「俺についてきたらお前は地獄行きだぜ」

何気に凄いセリフですよね。

とにかくもうダサさの極みだと思います……。

よくまぁ、こんな薄っぺらいセリフを書いて、完成原稿として誰かに提出して、これを読んだ人もOKを出せたなぁ。

商業誌ベースの作品だったら、赤字の入る陳腐な表現方法かと思います。

 

武士における切腹の意味とは

井伊は、密勅の存在を察知します。

一応出てきますけど、どうも本作の脚本家さんは、密勅がどういうものか、どれほどマズいのか、そして井伊直弼にとってどれだけ腹立たしい代物か、曖昧な理解のままシナリオを書いている気がします。

品川宿のイチャイチャを描く時間があるなら、そこをやればいいのに。

京都に引き返した西郷どんは、一橋派の面々と落ち込みます。

橋本左内もどんよりしていますが、本作における彼の政治工作って、遊郭で本を書いていただけなんですよね。

嗚呼、福井の生んだ若き秀才が、ナゼこんなことに。

一方、西郷どんは、月照に「死ぬつもりか?」と問われます。

月照も尋ねるのはいいにしても、切腹したところで血と内臓が出るだけ、と言ってしまうところが物足りない……。

なぜ切腹か?って、単に死ぬだけではなく、武士にとっては赤心を見せるとかいろんな意味が込められているわけで。

そういった侍の心をわからん奴だなあ、と残念なことになりましたね。ナレーションで説明しても良さそうなところです。

 

月照のコメディ山伏 タイミング間違ってません?

そしていよいよ「安政の大獄」開始。西郷どんと月照は、薩摩へ落ち延びることになりました。

ここでお虎による、ややコメディ寄りの山伏コスプレ入門。

あまり見られなかったお笑いシーンが急に来て、ビックリされた方もおられるかもしれません。

いや、月照にやらせるというのは悪い取り組みではないと思ったのですが、安政の大獄から逃れようとするタイミングで?という……。

それでも演じきってしまう尾上菊之助さん。

時代劇における歌舞伎俳優の強さが出ていましたね。

別れ際、橋本は西郷どんに薬を渡し、目をキラキラさせながら国作りへの希望を語ります。

また、空虚なポエムです……。

達成されなくてもいい曖昧な学級目標みたいなことばっかり並べて、何が言いたいのでしょうか。

本作の登場人物には、具体的な目標・目的が感じられません。

公式サイトでは【バディ】とかなんとか呼ばれていた西郷どんと橋本左内。

もうすぐこのコンビも見納めですが、具体的に何をどう目指していたのか?わかりやすく教えて欲しかった。

橋本は、このあとチンピラに捕まりそうになります。

刺客が襲って来るだの、チンピラにやられて捕まるなど、すごく安っぽい場面が多いんですよね。そのわりに緊迫感がないですし。

 

8時40分に現れた そう、それは亡霊の……

一方で西郷どんと月照は……やっぱりコチラも緊張感がない。

月照は、あれほどしつこく山伏の指導をされたのに、結局、普段の格好のほうがよい、ということで落ち着いてしまったし、会話も平気で薩摩弁。

人相書きまで出回っているというのに普段と変わらないのでは?

しかも夜中、うろうろして腹を切ろうと思い詰めるんですよ。

本作は漫画チックな場面が多い割に、まったく緊迫感がないのです。どういう演出プランなんだろう。

西郷どんが悩んでいると、蓑虫みたいな格好をした島津斉彬の亡霊登場です。

嗚呼、やってまった!

時計を見たら、案の定、8時40分です。

この時間帯に、これぞという場面を入れるのはもはや定番。

西郷どんは追われているにも関わらず、薩摩弁で喚きます。

緊張感さん、仕事をしてください。

もういっそ、殿様の亡霊呼び出しをデフォにしてしまいましょう。

呼び出しアイテムは、殿から貰った短刀です。

セーブポイントで使うと、すごくリアルな亡霊が出てくるシステム。

って、これは朝ドラの『わろてんか』方式ですね。

高橋一生さんが演じたことで爆発的な人気となった、前作『おんな城主 直虎』の小野政次

そんな人気キャラを回想場面でもほとんど出さず、結局、最終回ラストだけだった前作は偉かったと思います。

こんな死後すぐに出てきたら、余韻も何もないでしょ?

10秒考えたらわかる愚行をナゼ平気で行ってしまうのか……。

 

MVP:亡霊(北村藤吉)

前回の朝ドラ『わろてんか』に登場した、ヒロイン夫・北村藤吉。

彼は、仏壇の前でヒロインが鈴を鳴らすと、黄泉の国からすっ飛んできて、的確なアドバイスをする素晴らしい亡霊でした。

本作の島津斉彬も、藤吉ぐらい頑張ってドジっ子西郷どんを支えてあげてくれたらなぁ。

まだまだケン・ワタナベを見たい人は大勢いますからね。

 

総評

第一回で「武士のくせにお菓子を盗みに行くとかないわ。これ、基礎的なところがおかしい」とツッコミましたが……。

今回も、当時の武士としての規範を丸無視でした。

徳川斉昭と松平春嶽の

「朝早くから来ているのにご飯も出ない〜」

っていうのがほんとうに、もう。

「武士は食わねど高楊枝」ですよ。

お腹すいたとか、美味しいものを食べたいとか、軽々しく言っちゃいけないんですよね。

あの場面でお腹がすいたとブーたれていた松平春嶽は、まだ若い日に、農婦の食事を食べてその貧しさに驚き、自分の食事をとことん質素に切り詰めました。

そういうストイックな人物なのです。

ロケ弁が不味いと文句を言う、ダメなテレビ局スタッフじゃないんですからね。

こういうレベルの話をわざわざぶっこんできて、盛大にコケる。もう慎まれた方が……。

月照の「切腹なんて、血が出て内臓が出て、グロいだけですやん」も酷いです。

武士の心根なんか何も理解しない、というか最初からアタマにないから、こういう台詞がポンポン出てくるんですね。

それにしても。

西郷どんの家族が立て続けに3人亡くなった回で、思い入れがないため何の感慨も湧かない、と書きました。

彼らより詳しく描かれたにもかかわらず、「安政の大獄」関連での退場人物にも、やっぱり何の思い入れも湧きません。

橋本左内も月照も来週退場ですが、何も響くものがないんですよねえ。

島津斉彬もそうだったので、諦めていますが。

 

蛇足:命を賭けると連呼する胡散臭さ

特番で渡辺謙さんも突っ込んでいましたが、本作はことあるごとに、

「命を賭けて!」

「命がけでやる覚悟があるのか!」

と言っている気がします。

一橋慶喜が井伊直弼に啖呵を切った時もそうですが、本作の登場人物は、

【理屈や行動が正しいか、利益にかなうか】

よりも、

【一生懸命かどうか、命がけかどうか】

を重視しているように見えるのです。

こういう命がけだというタイプには、二種類います。

本当に命がけである人。

これはごく少数です。幕末ならば、現在よりは多かったでしょうが。

もうひとつは、失敗したら言い訳して、なかったことにするタイプ。

弁解が身についているため、深く考えずに言葉にする。そして、こちらのほうが断然多いのです。

こういうタイプの言葉は、実に空虚です。

本作の西郷どんも、そういうタイプに見えます。

西郷どん、島津斉彬、橋本左内、一橋慶喜。誰もが具体的に、命を賭けて何をするというのか?サッパリわかりません。

美しい国、誰もが米を食べられる国、異国に負けない国にしたい。

そういう、青臭い美辞麗句はやたらと言います。

しかし、具体的にそうするために何をするかの説明はなし。

あとは、自分の一生懸命さと意識の高さをアピールするだけなのです。

具体的に行動をしたとしても、一生懸命アピールすれば、ナゼか相手が納得するパターン(篤姫による徳川家定説得)ばかり。

それが通じない井伊直弼のような相手には、手も足も出ない無能のように見えます。

俊才の誉れ高い橋本左内ですら、一橋派のためにやることといえば慶喜ほっこりエピソード集という薄い本を遊郭で作るだけです。

もう、無能の極み。

本作では西郷どんがよく走ります。

これも一生懸命やっているぞアピールなのでしょう。

山の中の道を転げ回りながら走る場面は、薩摩へ急いでいることをアピールなんて、無能にしか見えないわけです。

エクセルマクロで計算する人を汚い卑怯者と責め立て、裏紙で筆算してそれをセルに書き入れる自分がいかに一生懸命か自画自賛するような――本作は、そんなレベルの話ばかりです。

一体、何がしたいのでしょうか。


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【参考】
NHK西郷どん公式サイト(→link)等

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

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