高田馬場の決闘

江戸時代

高田馬場の決闘!西条藩士の些細なケンカが歴史に残る決闘物語となる

こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
高田馬場の決闘
をクリックお願いします。

 

村上が菅野の眉間を斬り、菅野は村上の両手に重症を負わせ

喧嘩から4日が経過。

現代人なら普通にアタマも冷えていそうなものですが、決闘は予定通り行われることになりました。

いったい何が原因で、お互いこんなに激怒が続いたのでしょうかね……。

そして2月11日、高田馬場の地へ菅野方が先に、後から村上が一人でやってきました。

菅野は「ひょっとして、どこかに味方を潜ませているのでは」と思い、家来にあたりを見回らせました。

すると、木の陰に村上の弟が二人潜んでいたことがわかります。

「挟み撃ちにするつもりか」と気づいた菅野は、素知らぬ顔で村上に話しかけたそうです。

そこから斬り合いが始まりました。

助太刀の者同士も戦っていましたが、菅野と村上もすさまじい斬り合いを演じています。

村上が菅野の眉間を斬り、菅野は村上の両手に重症を負わせたそうです。

手をやられた時点で菅野の勝ちも同然な気がしますが、村上は退かずにもう一度菅野の眉間を狙いました。

そこに菅野の助っ人である中山が飛んできて、村上を斬り伏せたといいます。

「当人同士の勝負じゃなくていいんかい?」

そんな気もしますが、助っ人を頼んだ時点で、お互いにそのことは織り込み済みです。

信憑性が高いとされている細川家の記録でもこのダイナミックさなので、この一件は作家や講談師の創作意欲を大いに刺激するのでした。

 

「18人も斬った」と喧伝された中山は

当時の瓦版でも「中山が18人も斬った」と喧伝されたそうです。

中山自身は3人と考えていたようなので、実に6倍もの詐称です。これはひどい(´・ω・`)

現在の新聞にあたる瓦版がそんな感じなので、芝居の脚本は言わずもがな。

現代でいえば、「大河ドラマや司馬遼太郎の小説の創作部分が事実と認識されるようになった」というところですかね。

決闘の舞台は、その後住所表記が変更され、現在は高田馬場ではなく西早稲田となっています。

近隣の水稲荷神社には、中山の武功をやや創作寄りに書いた記念碑が立っているとか。

漢文なのでなかなか読みづらいですが、ググる先生にお尋ねすると、書き下し文が出てきます。

水稲荷神社/photo by 三人日 wikipediaより引用

また、この決闘ゆかりの地として、学習院大学に「血洗いの池」というものがあります。

こちらは大正時代に同校(当時は学習院高等科)の生徒が考えた創作だとか。

血洗いの池付近にはハクビシンが住み着いているらしいので、そのうち関連した怪談でも出てきそうですね。

 

赤穂浪士のメンバーにもなったって!?

中山の活躍が派手すぎたせいか。

なぜ菅野と村上が決闘するに至ったのか、という非常に重要な部分は知られていません。

当事者が二人ともその場で亡くなってしまっているので、後から聞くこともできなかったのでしょうね。

どうせなら、中山には二人の代わりに事の経緯を書き残しておいてもらいたかったものです。

決闘するほど腹の立つ相手と同じ命日になるというのも、それはそれで無念でしょうねえ。あの世でも決闘してたりして、うーん。

ちなみに中山は「18人斬り」の評価が広まり、赤穂藩主・浅野長矩に引き抜かれ、赤穂藩士の家に養子入り。

名を堀部武庸(ほりべたけつね/通称:安兵衛)に変えると、その後の忠臣蔵こと赤穂事件での吉良邸討ち入りで活躍し、最終的に切腹しています。

赤穂事件(赤穂浪士討ち入り)
赤穂事件=赤穂浪士の討ち入りはテロ事件?史実はどのように進んだか

続きを見る

「二回も仇討ちに関わった人物」というのも、記録に残っている中ではかなり珍しいのではないでしょうか。

あわせて読みたい関連記事

忠臣蔵
フィクションの『忠臣蔵』と史実の「赤穂事件」では何がどう違う?

続きを見る

久米幸太郎
親の仇を捜し続けて41年~新発田藩士・久米幸太郎は本懐を遂げたが

続きを見る

鍵屋の辻の決闘
主君のBLに横恋慕して殺害!鍵屋の辻の決闘がなぜ日本三大仇討ち?

続きを見る

コメントはFacebookへ

曾我兄弟の仇討ち
曾我兄弟の仇討ちで工藤祐経が討たれ源範頼にも累及ぶ!鎌倉殿の13人

続きを見る

臼井六郎
父と母と妹を殺され犯人は無罪~臼井六郎が12年かけ日本最後の仇討ち

続きを見る

安藤信正
有能な幕閣だった安藤信正「坂下門外の変」で襲われて政治的失脚へ

続きを見る

長月 七紀・記

【参考】
国史大辞典
山本博文『これが本当の「忠臣蔵」 (小学館101新書―江戸検新書)』(→amazon
高田馬場の決闘/Wikipedia

TOPページへ

 



-江戸時代
-

×