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【藤原伊周】
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伊周が播磨へ 隆家は但馬へ配流
事件が発覚すると、一条天皇が藤原実資に命じて、藤原伊周やその家臣たちの屋敷を調べさせました。
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伊周には東三条院(藤原詮子)に対する呪詛の疑いもあり、罪状に加算。
その結果、同年4月に伊周と隆家の兄弟に配流が命じられ、彼らの異母兄弟や母の実家にあたる高階家なども処罰を受けてしまいます。
何より辛かったのは妹の藤原定子でしょう。
彼女はこのとき懐妊していて、二条北宮にいました。
そのため、伊周や隆家が出発までここに隠れているのではないかと疑われて捜索を受けるのです。
身重の定子にそんな負担をかけるわけない……と思われるかもしれませんが、隆家はそこに潜んでいました。
しかし伊周は見つかりません。
数日後に姿を見せたとき、僧形だったとかで、父の墓参りをしていたとも。
なんとも往生際が悪いですが、ドラマで三浦翔平さんがどう演じられるか、楽しみな場面でもありますね。
いずれにせよ罪に問われた彼らは、長徳二年(996年)5月15日に、伊周が播磨へ、隆家は但馬へ配流されることが正式に決まりました。
不幸の極みはその当日に起きます。
兄と弟が引き立てられていく様を目撃した定子は、その場で自ら手にはさみを取って髪を下ろし、身重の体で尼姿になってしまうのです。
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さらには伊周の母・高階貴子が出発しようとする伊周の車にすがりつき、同行を嘆願します。
もちろんそんなことは許されず、彼女はそのショックで病気に。
後日、誰かが貴子の病気を伊周へ知らせ、母が心配になってしまった彼は、同年10月、こっそり京都へ戻り、定子の御所へ身を隠しています。
しかし当然ながら見つかり、改めて太宰府へ送られます。
これでは「反省していません」と言っているようなもので、藤原実資が「当然の報いである」と記しているほど。
もっと見つかりにくそうなところに隠れるとか、まめに母と手紙をやり取りしてせめてもの慰めにするとか、もう少しお咎めを受けなさそうな方法を思いつけなかったのでしょうかね。
道隆の一族は「中関白家(なかのかんぱくけ)」と呼ばれますが、彼らはどうにも直情的なところがあるようです。
定子が亡くなってしまい
配流後の藤原伊周は、しばらく大人しくしていました。
そのおかげか、比較的早くチャンスが訪れ、長徳三年(997年)4月、東三条院の病気平癒祈願のため、大赦が決まりました。
伊周・隆家もその対象となり、京都に戻れることになったのです。
「大赦」というのは、罪人を許して徳を積むことにより、神仏に貴人の病気を治してもらおうというものです。
お祝いごとのときにも行われましたが、病気平癒祈願のケースのほうがよく話題になる気がしますね。
同じく平安時代の大赦として有名なのは、上東門院(藤原道長の娘・藤原彰子)の病気平癒祈願のため、前九年の役で朝廷に背いた安倍氏が赦されたことでしょうか。
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中関白家にとって不幸中の幸いだったのは、藤原定子が変わらず一条天皇に寵愛されていたことでしょう。
二人の間には長徳の変と同年に内親王が、長保元年(999年)には一条天皇の第一皇子・敦康親王が生まれます。
まだまだ希望は……と思いきや、そこへ暗雲が立ち込めます。敦康親王の生誕と同日に、入内したばかりの藤原彰子が女御になったのです。
女御とは、数多いる後宮の女性の中でも、特に身分が高く皇后候補となりうる人に与えられる位。
長保二年(1000年)には、道長の意向で彰子が中宮となり、元々中宮だった定子は皇后となります。
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名目上は定子が尊ばれているものの、明らかに端へ追いやられている。
そして定子は同年末にもう一人の内親王を産むと、産後の経過が悪く、そのまま亡くなってしまうのです。
このとき伊周は、臣下として産室のすぐ側に控えていたのですが、亡くなった直後の定子を抱いて慟哭していたといわれています。
定子の葬儀の日には、大雪の中、徒歩で棺に従い、この歌を詠んだとされます。
誰もみな 消えのこるべき 身ならねど ゆき隠れぬる 君ぞ悲しき
【意訳】人はみないつかは死んでしまうものだけれど、この雪の中で君が逝ってしまったことが悲しい
貴公子なのに残念な場面が多い。しかし、親族への愛情は本物なんですよね。
この歌は『続古今和歌集』にも採られており、後世の人々も伊周の悲嘆に胸を打たれたものと思われます。
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