べらぼう感想あらすじレビュー

背景は葛飾応為『吉原格子先之図』/wikipediaより引用

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第5回蔦に唐丸因果の蔓 欲に目覚めてしまったら

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第5回蔦に唐丸因果の蔓
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蔦重、「欲」に目覚める

蔦重への文は鱗形屋からのものでした。

それにしても江戸中期で大物商人となれば、綺麗な文を書くモンですね。

恋文と誤解した次郎兵衛が「隅におけないねぇ、誰からだい?」とか能天気なことを言っておりますが、重大なオファーです。

なんでも蔦重を専属の「改」にしたいそうで。

それと引き換えに吉原で作った本を売り広めてやる。お互いのためにもそうしようと働きかけてきたとか。

次郎兵衛がすかさず「悪い話じゃねぇ」と意見を述べます。

それはわかっている。しかし不満な思いを消せない蔦重。どんだけ頑張っても、鱗形屋名義になることが納得できねぇようでして。

次郎兵衛は面白そうに「欲が出てきたな」と見抜きます。

「欲」とは?

骨折ったものをタダでやるのは合点がいかねぇ、それが欲だと見抜く次郎兵衛。

確かに名誉欲が出てきたと言えるのかもしれません。色欲と金銭欲が渦巻く吉原に生まれ育った蔦重が、名誉欲にとらわれた。なんとも業が深い話と言える。

ここまでの蔦重は、目の前で困っている女郎のために右往左往していました。

それが欲がムクリと湧いてきた。さぁ、どうなるのやら。

ハッとして、板元に拘ってんのは俺だけと気づく蔦重。自分が欲張りだってことを認めようとしています。

しかし、次郎兵衛は「それが悪いと言いたいわけじゃない」とのことで……まだ悶々と納得できない蔦重。

次郎兵衛が、鍵付きの銭入れを開けています。それを外から見つめている唐丸。

 


人は今も昔も、「欲」に絡め取られ生きる

この「欲」ってぇのが重要だと思います。

蔦重は初回から、ずっと女郎のために走り回っている。むしろ優しいんじゃないかというと、こういう趣旨のことを言われました。

「吉原のシステムを廃業しないで、そこから成り上がるのであれば私は認めない。

そんなものを大河で扱わないでください。

戦国武将が戦いながら平和を求めようとするとか、大河なんて嘘ばっかり」

いや、そういうのは、なろう系か転生ものじゃねぇと実現できねぇじゃねぇですか。大河への文句っていうより人類史そのもののクレームで、そんなもん言われたところで何をどうしろと。

吉原を廃業ねぇ……んなこと言われてもよ……。

これは歴史を見ていれば、無理だとわかるもんでして。

田沼意次のあと、松平定信(賢丸)の時代にはいくつかの遊里が廃止されます。

松平定信/wikipediaより引用

幕末の長岡藩家老・河井継之助も、人道的な配慮から自領の遊郭を廃止。

幕末水戸藩では、天狗党が遊郭に入り浸った結果、他の客が寄り付けなくなり結果的に廃業しました。

天狗党は幕府から討伐令が出されると、ヤケになって水戸近郊の遊郭まで破壊しながら遊んだため、これまた廃業に追い込んでおります。この水戸天狗党の話は悪い話かつ特殊例なので、忘れていいとは思いますが。

そして明治になってから「マリア・ルス号事件」を契機にして、「芸娼妓解放令」により遊里は閉鎖されたことになっている、と。

しかし、いったん女郎になったら、社会復帰は難しい。

世の中から偏見をなくし、代わりの職業を身につけさせ、雇用するようにしないとどうにもならないんです。

ちょうど先ほど、フランスのニュースが流れていきました。

売春規制をしたところ、抜け道をくぐる必要が生じてしまい、結果的にパリの従事者たちはブーローニュの森で危険に怯えながら、以前より安価な営業をしなければならなくなった。現代のフランスでも、性産業の撲滅は実に難しいことがわかります。

江戸中期に吉原を廃業しないとは何事か――そう大河にイライラするよりも、現実社会において考えることはあるんじゃないですかね。

そもそも蔦重も吉原の中では、自分の意思で選んだわけでもなく、児童労働からそのまま成長した一労働者に過ぎません。

吉原を変えたいというのであれば、それこそ松平定信のように老中にでもならなければ無理な話。

どうして一労働者に対してそこまで当たりが厳しいのか?

企業のハラスメントに苦しんでいる。あるいは苦しんできた人に対し、

「どうしてその会社を放置するの? 運動するなり、策を弄して潰さないのであれば、あなたは無力です!」

って言えますか?

とてもじゃねえが、私にはとてもとても、ンな冷てぇうえに諸葛亮ぶった助言をするこたァ、できかねますぜ。

話が脱線しましたけれども、蔦重のすることは吉原改革じゃない。

クリエイター業へ進みたい欲があるなら、そこをどうするか考えるってことだ。今は悪徳企業からクリエイターとして進むために動き始めたってタイミングだな。

そこへニヤニヤして懐手をしたあの向こう傷の浪人が近づいてきます。

素早く迎えようとする蔦重。唐丸が小声で「店に来ないと言ったはずだ」と困っています。人相の悪い男を蔦重は自分で迎えようとするも、唐丸が自らの手で強引に連れてゆきました。

男に金ができたか?と尋ねられ、鍵がないから無理だと返す唐丸。

すると、ここで平賀源内がフラフラになってやってきて、蔦重に助けを求めています。

どうやら腹を空かせているようで……次郎兵衛は「これが源内先生なのか!」と驚いています。

三人は半次郎の蕎麦屋へ。

男は唐丸に「今なら銭箱から盗める」とそそのかすのでした。

 

 


鉄から炭へ

半次郎蕎麦をうまそうにすする源内。いやぁ、本当に美味しそうですね。

ちなみに蕎麦価格は江戸の物価指標として重要です。

浮世絵一枚=蕎麦一杯で16文が基準。大判にしたり、ホログラムやエンボス加工をつけるとお高くなります。

浮世絵は刷りの効果も素晴らしいので、できれば現物をご覧いただくとよろしいかと思います。

蕎麦をすする源内は借金の金額を尋ねられ「千両くらい」と実にあっさり答えて、皆、驚いています。

どうやって返すのか?

半次郎が問いかけると、返せるわけねえ、返す義理もねえ、博打みてぇなもんだと笑い飛ばす源内。

この人、やはり悪人では……普通はそんなに借金して笑い飛ばせねえよ。

源内はニヤッと笑い、蔦重に助けを求めます。金がないと慌てると、どうやら計画があるようで、鉄ではなく炭を売り物にするんだってよ。

鉄の精錬には大量の炭を使う。もう炭焼きはできている。

だったらもう鉄でなく、炭を売ればいい――というわけでも炭を売るには“株”が必要だ。

そこで、蔦重に株を売りたい炭屋を探すよう頼むわけでして。

ちなみに以前作っていた炭は、公儀の依頼による試作品の余りを売っていた程度であり、今回はそれが大規模になるとのことです。

次郎兵衛は、この炭屋株のことを親父たちに聞いてみると言い出しました。話は一歩進んだのかな……。

この炭も、現代人からすればローテクノロジーのようで江戸からすればそうでもありません。産業革命は火力をどう生み出すか、ここが大事ですね。

もっと身近な存在である、料理にも火力は影響してきます。

例えば日本料理中国料理を比較してみましょう。

中国料理といえば、揚げ物が特徴ですよね。

実は日中の料理の差は、調理手法についてはかつてはそこまで差がつきませんでした。

『光る君へ』ではまひろが宋人の羊肉をおそるおそる食べておりましたが、ああいう肉や香辛料といった食材の差だけで、調理法はそこまで差がついていません。

それが宋代も後半になると、炭で火力が高まり、かつ精油技術も高まり、現代の中国料理にかなり近づいてきます。

大量の油を使い、高い火力で仕上げる調理法が定着したんですね。

日本では高火力と油の普及が遅れて、それが料理にも反映されます。

江戸時代にようやく油が広まり、最新鋭のファストフードとして江戸に天ぷら屋台が出てきました。

座敷で食べないのは火災対策で、かなり時代が進まないと屋内では食べるようになりません。

そして天ぷらをカリッと揚げるため、炭は欲しい。鉄よりはるかにピンとくる商品ということですね。

さて、留守の唐丸は浮かない顔をしています。

平賀源内が来て、吉原の親父たちが騒いでいる。

「鯛の味噌吸に四方の赤、飲めや歌えやチンドンチンドン……」

鋭い唐丸は、蔦重の声が明るくなったことに気づいているようです。

一方の蔦重は、唐丸に落ちる影に気づいているのやら。

 

向こう傷の浪人、唐丸を脅す

さて、源内はちょうどいい炭屋を見つけまして。店も居抜きでそのまま使う。こりゃいい話だと炭屋はニコニコ。

300両という価格を出してきます。

しかし、源内は値切ってくる。借金持ちだし、出せるのは50だという。温厚そうに見えた主人もこれにはムッとして声を張り上げる。

「こっちだって借金持ちだ!」

借金勝負に走る二人。負けず嫌いの江戸っ子だねぇ。で、話はまとまるんですかい?

一方、駿河屋では、次郎兵衛が金の減りがおかしいと気づきました。重三が高い本でも買ったのか?と唐丸に尋ねると、次郎兵衛が使ったのではないかと誘導してきます。

そこにあの浪人がやってきて、唐丸に迫ります。

「博打ですっちまってさ、もっぺん頼むわ」

「無理だよ。知ってるでしょ。鍵かかってるの」

そう断られると、隣でいいからなんとかしろと語りかける浪人。

唐丸が、いい加減にしないとお奉行所に言い、死罪になると脅し返すと、浪人は笑い飛ばし、こうきた。

「言ってみろ。俺はお前があの日、何したか言うけどな。そうなりゃ、お前ももちろん死罪だし、お前を匿ってた廉(かど)で、蔦重や次郎兵衛も死罪、遠島、累が及ぶだろうなぁ。とっくに詰んでんだよ、お前は」

唐丸は何をしたのか?

火災現場で立ち尽くしていたこと。これほどの重罪ということ。

つまりは放火をしたということでしょう。

長谷川平蔵宣以の父・宣雄が「メイワク火事」の放火犯は捕えたはずですが、どうなのか。身に覚えはあるようですが、果たして。

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