こちらは3ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【『べらぼう』感想あらすじレビュー第7回好機到来『籬の花』】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
新之助、助太刀いたす
蔦重と次郎兵衛が「あいつ、あぶねえな」とぼやきつつ帰っていきます。
女郎と吉原で働く若い衆の恋は厳禁ですので、そこを心配しているのでしょう。
すると、新之助が待ち受けていました。うつせみに会いに来たのではなく、『細見』改善案を持ってきました。
聞けば、今までの細見では分厚いそうです。懐に入れた時、かさばるのだそうで。
蔦重の脳内に熊吉と八五郎の場面が出てきて――確かに薄い方がいい!と納得しています。
この和服の構造は踏まえておかないと、失敗してしまうところですね。
『青天を衝け』では、渋沢栄一が懐から『論語』をおもむろに取り出す場面があって脱力しました。
んなもん懐に入れたら邪魔で仕方ねえ。そもそも、持ち歩くもんでもねえだろ。そこを踏まえて、明治末におさまりのいい『ポケット論語』が出たらブームになったんだってば!
渋沢栄一が『論語と算盤』を書いたことは知っていても、和服や和本の構造を真面目に踏まえないと、ああいうお粗末場面が出てしまうんですなァ。
細かい話とはいえ、今年の大河はそんなドジは踏まねえんで、重要アイデアとして「これだ!」と蔦重はニンマリします。
留四郎も「そもそも昔は一枚刷りで持ち歩くことが前提だった」とフォローします。
“かかり”こと製作費もおさえられるから、一石二鳥なんすね。
そして蔦重は、新之助に手伝いを求めます。
「うつせみに会えるくらいは払いますんで!」
「助太刀いたそう、任せろ!」
くーっ、なんていい奴なんだ! うつせみもぞっこん新之助に惚れているから、なんならそこにつけこんで、無料で遊んでもいい。
しかし誠実な新之助は、うつせみの借金が増えることは避けたいのでしょう。
蔦重は、まずは『細見』を分解し、内容を確認、省く場所とレイアウトを決めてゆきます。
西村屋は忠七に耳を掃除をさせつつ『細見』のことを話しております。
板木を一から起こすことになり、なかなか面倒なのだとか。
手間とかかりがあるとわかっていても、西村屋はなんとか蔦重の野望を阻止したい。
なぜなら蔦重が自由に動けるようになれば、今後、西村屋では吉原ものを出せなくなるから。逆にここで潰しておけば、吉原本を独占できると。
すると忠七から『細見』を出している男がいると聞き出した西村屋。
早速調べて、貧乏くさい『細見』の奥づけを確認し、浅草の小泉忠五郎だとアタリをつけます。
蔦重の思いは月光のように透き通っている
蔦重が、四五六という職人に、『吉原細見』の彫りを依頼しにきました。
木版画ですから板を掘って印刷することになります。しかし、あまりの文字の細かさに渋っている。
「割の悪い仕事は受けられねえ! べらぼうめ!」
と、キッパリ断る四五六。こういう仕事の断り方、いっぺんでいいからしてみてえもんよ。
そして短気な江戸っこらしく、「帰(けえ)れ!」と連呼して蔦重を追い出そうとします。
しかし蔦重は、相手が閉めようとする戸に桶を挟んで阻止。“吉原での大宴会”というオプションを吊り下げます。
これには四五六もにっこり。彼にとっちゃ吉原は、どうやら憧れのようですぜ。
この魅惑のオプションですが、新之助との会話によりますと、蔦重相手だろうと宴会が安くなるようなことはないそうです。忘八はとことんドケチなようで。
ただ、本が倍売れれば職人を一度もてなすくらいの利益は出るそうです。
そう聞かされ、新之助はそれでは蔦重は儲からないと指摘します。
「マァ、深川、品川で遊ばせろ言われたらなんですが、吉原なら行ってこいなんで」
そう返す蔦重。
新之助は、そんな蔦重の思いを「李白の『静夜思』のようだ」と感心しています。
李白『静夜思』
牀前看月光 牀前(しょうぜん)月光を看(み)る
疑是地上霜 疑うらくは是れ地上の霜かと
挙頭望山月 頭(こうべ)を挙げて山月を望み
低頭思故郷 頭を低して故郷を思う
月光を眺め、山月を望む。そんな純粋な故郷を思う念と、蔦重の吉原への思いを重ねているんですね。
新之助が真面目に学んできたことがわかります。そしてこんな欲に塗れた吉原で、蔦重が月光のように透き通っていることもわかります。
すると次郎兵衛が、親父様たちが蔦重を呼んでいるとやってきました。
西村屋と忠五郎の脅迫
忘八親父たちの前にいたのは西村屋と忠五郎でした。
なんでも忠五郎が「改」に回るんだそうで、その挨拶だそうですよ。
蔦重は、忠五郎は地本問屋の仲間内ではないはずだと確認します。だからこそ西村屋と手を組むんだそうで。
「定」に反していておかしいと蔦重が指摘すると、その通りだと開き直りながら西村屋は抜け抜けと言います。
蔦重じゃまともな『細見』が作れるか不安だから、今回だけルールの例外にするってよ。しかも仲間内からの依頼となると、当然、西村屋の『細見』仕入れを確約していると。
忘八が動揺していると、忠五郎は自分たちと一緒にやらねえかと誘ってきます。
「俺らみてぇな摺物屋風情が市中の本屋に加わるなんざ……」
「お断りします! 倍売れれば、俺は仲間に入れてもらえるって約束なんで」
あくまで倍売って、地本問屋の仲間に入ると宣言する蔦重。
西村屋と忠五郎も不機嫌な表情で、さすがに諦めたようです。
二人が去った後で、蔦重は駿河屋に尋ねます。
「あいつら一体どんな脅しをかけてきたんですか?」
聞けば、蔦重版『細見』を買った女郎屋の女郎は、今後『雛形若菜』に使わねえってよ。
それを聞いても蔦重は一歩も引きません。自分が代わりになるものを作る!
すると大文字屋が、どうせ倍なんて売れねえと否定し始め、蔦重に諦めるよう促してきます。
しかし、蔦重はあらためて言葉に力を入れる。
「あいつは吉原のことなんて考えてねえんですよ!」
狙いは吉原の入銀だと見抜いています。
※続きは【次のページへ】をclick!