べらぼう感想あらすじレビュー

背景は葛飾応為『吉原格子先之図』/wikipediaより引用

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第7回好機到来『籬の花』泣かせやがるぜ瀬川の侠気

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第7回好機到来『籬の花』
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腐れ外道にも「侠気」はあるはずだ

入銀ものなら懐も傷まない。手も銭も抜き放題。

その本で吉原を盛り立てようなんて考えは毛筋ほどもねえ。

ただ、楽して儲けたいだけ。

そう言いつつ、蔦重が忘八親父たちを相手に説得を始めます。

「考えてみてくだせえよ。やつらに流れる金は、女郎が体を痛めて稼ぎ出した金じゃねえですか! それをなんで追い剥ぎみてえな輩にやんなきゃなんねえんです!」

さすがの忘八親父たちも耳を傾けているようで、さらに蔦重は続ける。

「女郎の血と涙が滲んだ金を預かるなら、その金で作る絵なら、本なら、細見なら、女郎に客が群がるようにしてやりてえじゃねえっすか! そん中から、客、選ばせてやりてえじゃねえっすか! 吉原の女はいい女だ。江戸で一番だってしてやりてえじゃねえですか! 胸張らしてやりてえじゃねえっすか!」

こう語るうちに、感銘を受けた色が滲んできます。

あの忘八親父どもが……道徳心なんて捨て去った奴らの顔に何かが浮かんだ。

「……それが女の股で飯食ってる腐れ外道の忘八の、たったひとつの心意気なんじゃねえですか。そのためには、よそに任せちゃいけねえんです。吉原大事(でえじ)に動く、自前の本屋を持たなきゃいけねえ。今はその二度とない折なんです!」

ここで蔦重が皆の顔をみつつ、こう念押しします。

「皆様、つまんねえ脅しに負けねえで、共に戦ってくだせえ」

深々と頭を下げる蔦重。

シンと静まり返っております。

 


なぜ、日本では『水滸伝』が廃れたのか?

中国四大奇書という作品があります。

『三国志演義』
『水滸伝』
『西遊記』
『金瓶梅』

『べらぼう』と何の関係があるのか?

ありやす、ばっちしあります。

当時は、輸入してきたこうした作品を翻訳するなり、翻案するなりして、挿絵つきで売ることが一種の流行となりまして。

んで、今、中国では葛飾北斎歌川国芳が描いたこうした本の絵が人気でやんす。

特に『三国志演義』と『水滸伝』は、ことのほか江戸っ子に愛されたのです。江戸時代に限っていえば『水滸伝』が上ですかね。

しかし、考えてみてもくだせえよ。

いま『三国志演義』は定番の人気があるものの、『水滸伝』はそうでもない。

なぜ江戸っ子は『水滸伝』が大好きだったのか?

それなのに、その人気はなぜ、日本で衰えたのか?

その答えが今回、わかった気がします。

今回、蔦重が忘八の前で演説を展開するところは、大変『水滸伝』みてぇな流れなんですな。

『水滸伝』の百八星は、魔の星として世にあらわれる。実際、殺人やら強盗やらやらかした、とんでもねぇ連中です。ある意味、吉原者もそういう悪党だといえる。

でもだからこそ、団結してせめて名を馳せたい。

ああして団結して何かに立ち向かうということは、それだけでもグッときたのが江戸っ子なのでしょう。

そういうボトムアップ、下から突き上げて何か変えようとすることを、明治以降の日本社会は否定してきたんじゃないかなと思ってしまうわけでして。

代わりに『三国志演義』の諸葛孔明みたいなのが突如現れ、なんとかするような、そういう鶴の一声――トップダウンに期待する思考ルーティンになっているんじゃないかと思えまして。

そりゃ『水滸伝』に興味持たれねえわ。

でもそれじゃあ、いかんでしょ?

松葉屋では、いねが夫からその話を聞いています。

花魁たちに胸を張らせてやんのが、忘八のたった一つの心意気じゃねえか。そう言われ、この忘八は心が震えたようですぜ。

「共に戦おうって。さすがにグッときちゃたよ」

「戦うってのはどういうことだい?」

それは『細見』を倍売ること。西村屋という敵に勝たなきゃいけない。いねですら老舗と知っている西村屋に勝ち目はあるのかと聞き返す。

この会話を花の井がじっと黙って聞いていました。

「花魁、ひとつ俺たちも考えてみるかい?『細見』を倍売る手立てをさ」

松葉屋は花の井にそう語りかけます。

「あい!」

即座に返答する花の井。ここで助太刀して、彼女もただの籠の中の鳥でないことを示さねばなりません。

 


なんとしても西村屋に勝つためには、ネタを増やす

西村屋と忠五郎が打ち合わせをしております。

忠五郎は闘争心に火がついている。彼は、わきまえない蔦重に怒りをたぎらせていました。

めんどくせえけどよくいるタイプね。酷い扱いをしている会社や上司でなく、労働条件の改善を求める同僚にキレ散らかすタイプよ。おめえみたいな奴が世の中を悪くしているって気づいて欲しいぜ。

西村屋が出てきたことで、蔦重チームは「さらなる一手が欲しいところだ」と作戦会議中です。

「もう十分ではないか?」

新之助がそう諭すものの、蔦重はさらにネタを増やすと言い始めました。

半値なら買う連中も増える。でもそういう連中は大見世は手が届かない。ならば河岸見世まで網羅するものにする。そう決意を固めたようです。

しかも、薄さはそのままであり、無茶だからこそ値打ちがあると言い切ります。

蔦重の覚悟につられて新之助も決意を新たにし、細見の見直しに同意。次郎兵衛はムードメーカーなので、特に何もしねえと。

蔦重は足を使って吉原を巡り、リニューアルに励み、この終わることのない作業につきあわされる新之助。

書く。破く。その繰り返しよ。

そしてついに新之助は気づいた。次郎兵衛は何もしていないことに。

「あんた何やってんですか! 手伝ってくださいよ!」

「留(とめ)〜」

「あ〜!」

ま、アリの群にも仕事しねぇ個体がいるというし。こういう次郎兵衛みてえなアホを認めてこそ、多様性ってやつだと思うぜ。

こんなとき、せめて唐丸がいたらな。

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蔦重は忠五郎と遭遇し、嫌がらせを受けつつも、めげずに作業に励みます。

修正を入れては割付(レイアウト)を一からやり直し。

修正を入れては割付(レイアウト)を一からやり直し。

まるで電車の時刻表を何度も修正させられているようで、さすがの新之助もぶっ倒れて「無理〜」と呻いております。誇り高い武士が弱音を吐くなんてよ……。

そして出来上がった原稿を彫る四五六も「こんなもん吉原十遍でも足りねえぞ、ええっ!」と限界突破でやんす。

「申し訳ねえ、ごめんなさい、すいやせん」

「てめえ、謝りゃいいって思ってんだろ!」

ついには大事な商売道具である鑿を蔦重に投げつけるのでした。危険すぎやすぜ。

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