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【『べらぼう』源内を廃人にした薬物はアヘンか大麻か】
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大麻
入手しやすく、かつ煙草に混入しやすいのが大麻ですね。

大麻草/wikipediaより引用
忍者は大麻のことを「阿呆薬」と呼び、実践に用いていました。
当時までに栽培や利用方法も確立していて取り扱いやすい。
源内の家にやってきた蔦重が、門前で何かの臭いを察知する場面もありましたが、確かに大麻には独特の臭いがあり、家の外まで届いても不思議ではありません。
源内がもしも長屋住まいであれば、異臭騒ぎになっていた可能性もある。
しかし、事件が起きた際、源内が住んでいた場所は“不吉の家”と呼ばれる武家の家でした。
庭と隣近所と距離があり、悪い噂があって立ち寄りにくい――そんな場所であれば、大麻を用いても発覚しにくくなるでしょう。
臭いを考慮するのであれば、わざわざ引越しまでさせたことに理由がつけられます。
臭い抜きにしても、ああも大掛かりな犯行となると、長屋ではできないことは当然考えられますが。
本草学者の平賀源内をどうやって騙したか?
平賀源内を狂わせたのはアヘンではなく大麻――そう結論づけたくなりますが、一つ重要な問題があります。
植物の研究をしている本草学者の源内であれば、大麻の臭いぐらいすぐに見抜けるだろう?
いや、アヘンだって、キノコだって、何か事前に異変を察知できていたに違いない。
なのになぜ容易にハマってしまったのか?
原因は判断力の低下でしょう。
平賀源内の頭脳がそれほどまでに働かなくなっていたということであり、そうした状況は劇中でも幾度か描かれていました。
決定打となったのがエレキテルです。

平賀源内作とされるエレキテル(複製)/wikipediaより引用
源内は弥七という助手によってエレキテルの製法を盗まれ、偽物を作られ、大量に売られてしまいました。
この偽エレキテル騒動により、源内の名声は地に落ちてしまいます。
しかし、本物のエレキテルにしたところで、医学的な効果がないことは劇中で示されています。
松葉屋の女将いねだけでなく、源内の盟友で蘭方医の杉田玄白が「エレキテルに効果はない」と断言。
通常時の平賀源内であれば、玄白のような蘭学者と語りあい、エレキテルの作用がないことを冷静に分析できたはずですが、偽物事件以来、それほどまでに心を蝕まれていたのです。
アヘンの副作用としては、吐き気、嘔吐、便通の悪化があります。
源内にはこうした症状は見られません。ドラマでは再現しにくいものばかりですが、仮にアヘンを使用するという設定でしたら、何らかの症状を見せたのではないでしょうか。
では大麻はどうか?
その副作用としては、天才を追い込む上で実に都合のよいものが揃っています。
・知覚、反応が歪み、鈍くなる
・短期記憶障害
・知能低下
・精神状態の悪化
源内の取り柄である知能が鈍くなってゆく。煙草と比べて依存症は低いとされるけれど、独特の浮揚感に溺れるとやめられなくなる。
ということで気づいた時には手遅れになっていたのでしょう。
劇中で源内が死に追いやられた理由は、徳川家基謀殺事件の捜査をしていたことが挙げられます。

徳川家基/wikipediaより引用
「危険すぎる頭脳を鈍化させ、源内はもうダメだ」と世間に知らしめるためには、彼を中毒にし、知能を破壊させておく必要があったのでしょう。
そこまで追い詰められておきながら、源内は明晰な頭脳で真相究明に挑む原稿を記していました。
その原稿も、サツマイモを焼くためにこの世から消え去ってしまうのですが。
一方で、一橋治済は健康体です。
頭も切れるうえに、朝から生卵を飲んでスタミナ補給をしていたと噂されるほどタフ。
ゆえに彼の記憶には、「源内は殺人犯ではない」と主張した須原屋市兵衛や、あの手袋についての原稿を依頼した蔦屋重三郎の名前が刻まれたことでしょう。
二人は、治済にとって邪魔者となったのです。
繰り返しますが、アヘンにせよ、大麻にせよ、公式発表がない以上は断定はできません。ご了承ください。
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